再認識1話
今日も無理せず、無事に一日を終えられたらいいですね。
無事に一日を終えられたら、悩みや心配を忘れてゆっくりお休みください。
お休みの時間なら、私の作品とともに明日への準備ができることを願っています。
読者の皆様の人生に、私の作品が大きな助けになることはできないかもしれませんが、
少しでも活力の源になれたら嬉しいです。
いつも作品を読んでくださって本当にありがとうございます。
大好きです、読者の皆様。
(そうか……そういうことか……)
これまで断片的にしか思い出せなかった、エーテルブレードに関する記憶。
一度意識を失い、再び目覚めたことで――それらははっきりと繋がり、鮮明な像として浮かび上がっていた。
そして、自分がどういう形でやられたのかも。
「邪外神の使徒……!」
エーテルブレードにおいても、相応の能力と装備を整えたうえで対峙しなければ、甚大な被害を免れないよう設計された存在。
いかに剣の達人――ソードマスターであろうと、
近接戦闘を難なく捌く規格外の魔法師であろうと、
あるいは広域殲滅を得意とする魔法師であろうと――
まるで玩具のように弄び、圧倒する、まさに“怪物”。
(こうしている場合じゃない!)
このまま手をこまねいていれば、アルドリックはもちろん――遠征隊そのものが全滅しかねない。
「ぐっ……!」
焦って身体を動かそうとした瞬間、胸部に再び耐えがたい激痛が走った。
「坊ちゃん、ちょっと出てきんしゃい!」
「くっ……ぅ……」
すぐにでも移動しようとレバーへ手を伸ばす。
だが、意思だけではどうにもならない痛みが、それを許さなかった。
『グッ……』
『シィィィィィッ』
ボタンを操作すると、空気の抜ける音とともに、
強い衝撃で歪んだハッチがゆっくりと開いていく。
痛みに耐えながら、俺はコックピットの外へと這い出た。
「はぁっ……はぁっ……ぐっ……!」
エヴァン少領に手を借りて地面へ降りた俺は、そのまま大の字に倒れ込む。
「こりゃあ……肋骨、きれいにいっとるですばい。」
「なんでも……いい……はぁっ……早く……!」
「大人でも気ぃ失う痛さですばい!」
「時間が……ねぇ……っ!」
一度息を止め、痛みがわずかに引くのを待つ。
そして、俺はもう一度言葉を絞り出した。
「わかってる……急いでくれ……頼む……ぐっ……!」
視界は痛みで霞んでいたが、それでも俺は必死にエヴァン少領を見つめた。
「あとで文句はなしですばい!」
その言葉と同時に、エヴァン少領が呼んだ一人の男が駆け寄ってくる。
(俺に何ができるかは分からないが……)
今は、一人でも戦力が欲しい。
急がなければ、全員が無駄死にする。
そして邪教徒どもは、思うがままに計画を進めるだろう。
『ドサッ』
「ぐぅぅぅっ……!」
「完全に折れてますね、少領。治癒術師を呼んだ方が――」
『コクッ』
エヴァン少領は、俺に聞けというように顎をしゃくった。
「術師を呼ぶ時間は……ない……はぁっ! 処置を……急げ……!」
「旦那様に首を飛ばされかねません。」
「父上には……俺が……っ、話す……ぐっ……!」
「はぁ……仕方ありませんね。」
俺が譲らないと分かると、男は肩をすくめ、エヴァン少領へ視線を送る。
「わかったか?」
「よーく分かりました、少領。」
「なら、さっさとやるばい、軍医殿。」
『コクッ』
俺がただの兵士だと思っていたその男――軍医は、脇に鞄を下ろし、
短く息を吐いてから口を開いた。
「できるだけ早く終わらせます。暴れないでください。」
「……努める……ぐっ!」
軍医は細心の注意を払いながら、同時に驚くほど手際よく処置を進めていく。
その様子は、痛みに喘ぎながらでもはっきりと分かった。
「うっ……!」
「これ以上、痛みを抑えるのは無理です。」
「分かってる……続けろ……!」
(これは……きついな)
正直なところ――
毒が骨まで回ったため、麻酔もなく傷口を切り開いて掻き出す治療を受けた、昔の人間の話が脳裏をよぎる。
あるいは、出血と脳震盪を抱えたまま走り続け、村に辿り着いたあと、
同じように無麻酔で治療を受けながらも平然としていた僧侶のように――
そうありたいと思った。
だが現実は違う。
軍医の手がわずかに触れただけで、
胸部には電撃のような激痛が走り、体内からは煮えたぎるような熱が込み上げてくる。
「無理すんなら、しばらく休んだ方がよかですよ?」
エヴァン少領の提案に、俺は即座に首を横に振った。
「それはできない。」
「ソードマスターが四人もおって、どうやって勝つつもりですかい?」
「この世には……俺たちの常識を遥かに超えた怪物が……いるんだ、少領。」
俺の言葉に、エヴァン少領は驚きと疑念が入り混じった表情を浮かべた。
「ソードマスターは、騎士が十人がかりでも倒すのは難しかとですよ? そのソードマスターが通用せんと?」
「……そうだ。」
どうしても信じられない――そんな顔だった。
(しまった……)
俺はすぐに気づいた。
これは、大きなミスだ。
いくら領主の息子とはいえ、まだ十歳の子供に過ぎない俺が、
常識を覆す話をして――
それを即座に信じる人間など、ほんの一握りしかいない。
そんな当たり前のことを、俺は忘れていた。
(少し……説明がいるな)
どれほど切迫した状況でも、
納得できる理由がなければ、人は動かない。
むしろ非常時であればあるほど、その傾向は強くなる。
だから俺は思考を巡らせ――
やがて、一つの“材料”を思い出した。
(これなら……いける)
次回の話は2026年4月9日(金)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!




