異形体と復活12話
今日も無理せず、無事に一日を終えられたらいいですね。
無事に一日を終えられたら、悩みや心配を忘れてゆっくりお休みください。
お休みの時間なら、私の作品とともに明日への準備ができることを願っています。
読者の皆様の人生に、私の作品が大きな助けになることはできないかもしれませんが、
少しでも活力の源になれたら嬉しいです。
いつも作品を読んでくださって本当にありがとうございます。
大好きです、読者の皆様。
「は、ははっ……くくっ、あはははははははッ!」
マナの枯渇を悟ったアルドリック。
だがそれとは対照的に、異形体は一瞬目を見開き――すぐさま卑劣な笑みを浮かべた。
「奇妙な力も、どうやらここまでのようだな!」
『ヒュルルルルッ』
次の瞬間、まだ無事な触手の中でも最も太い一本が、アルドリックへと狙いを定めて放たれる。
「くっ……ちくしょう!」
迫り来る触手から逃れようと、アルドリックは身体を動かそうとした。
だが――
極限まで消耗した肉体は、もはや意思に応えることができなかった。
『ガシィッ!』
「ぐぅぅっ……!」
(無我夢中で突っ込んだツケか……)
アルドリックは歯を食いしばる。
不確実な手段にすべてを賭けた、自分の甘さ。
そして、二度と巡ってこないかもしれない好機を、無為に潰してしまった愚かさ。
後悔が重なり、やがてそれは自己否定へと変わっていく。
自分の無力さが、骨の髄まで突き刺さった。
「アルドリック卿!」
「くそっ……!」
ガレックとバンスは、すぐさま駆け出そうとする。
だが――
二人もまた、すでに限界に近い状態だった。
「はぁッ!」
『ザシュッ!』
『ドサッ』
『ブゥン ブゥン』
ロデリックがハルバードを軽く振るうと、細い触手が数本、地面に叩き落とされる。
次々と襲い来る攻撃をいなしながら、彼は低く呟いた。
「四面楚歌、か……」
オーラを纏った斬撃すら通じない。
全力を叩き込んでも揺るがない怪物。
そんな相手に、さらに不利な状況で戦い続けなければならない。
三人の騎士は、血が乾いていくような圧迫感を覚えていた。
もはや、立っていることすら困難なほどに消耗している。
「もう二度と邪魔はさせんぞ、下等生物ども!」
『ベキィィィィッ』
人の形を保っていた異形体の上半身が、突如として縦に裂ける。
内部から現れたのは、びっしりと並んだ鋭利な牙。
「散々手こずらせてくれたが――ここで終わりだ!」
「く、くそっ……こんなドブ臭ぇ口の中が最期とはな……!」
人間のそれとは比べものにならないほど濃密な悪臭。
その巨大な口へと、アルドリックの身体がゆっくりと引き寄せられていく。
「おいガレック! 何か隠し玉はねぇのか!」
バンスが叫ぶ。
「はぁ……っ! あったらとっくに使ってる……くっ!」
「こうなるなら、もう少し力を温存しておくべきだったな……」
ロデリックが、静かに後悔を吐き出したその時――
遠く、遠征隊の仮設陣地から、大きな音が響いた。
「……まったく、踏んだり蹴ったりだな」
状況が好転する気配はない。
そう判断したロデリックは、重い身体を引きずりながら、なおも抗おうとする。
「……う……」
意識が戻る。
鼻を突くのは、油と金属の濃い匂い。
視界いっぱいに広がるのは、冷たい金属に囲まれた空間だった。
「ここは……くっ……!」
わずかに身体を動かした瞬間――
胸部に、耐えがたい激痛が走る。
「なんだ……?」
しばらくじっとしていると、痛みはわずかに引いた。
ゆっくりと顔を上げる。
目に入ったのは、見覚えのある装置だった。
(ポジウェル家の祖先が作ったベルト……)
この安全ベルトを装着した記憶は、一箇所しかない。
そして、ぼやけていた意識が徐々に鮮明になっていく。
視界が開け、周囲の状況を正確に把握できるようになった。
(改造した作業用機体のコックピットか……)
自分の位置と、四肢が無事であることを確認した俺は、
機体の状態を把握するため、レバーに手をかける。
『ゴン! ゴン! ゴン!』
「坊ちゃん! 寝とる場合やなかとばい!!」
コックピットのハッチ。
何かの衝撃で、わずかな隙間ができている。
そこから聞こえてきたのは、聞き慣れた声だった。
『カチッ』
エヴァン少領の疲労のにじむ声に応じるため、
俺は外部スピーカーに接続されたレバーを操作する。
「エ、エヴァン少領……! くっ……状況は……はぁ……どうなってる?」
「ほんに意識戻っとるとですかい!?」
「……ああ、本当だ……ぐっ!」
俺の意識が戻ったと確認すると、
エヴァン少領は、これまでの経緯を手短に説明し始めた。
「つまり……はぁ……邪教徒の……っ! 秘密兵器が……出てきたってことか……」
「兵器かどうかは分からんばってん、だいたいそげん感じですたい!」
話を聞き終えた俺は、まず機体を起こすべきだと判断する。
「くっ……!」
レバーを動かすと、機体が震動する。
それに伴い、再び激痛が襲ってきたが――
歯を食いしばって耐えた。
「……あれは……」
レンズ性能の低い視界の中でも、
俺にははっきりと分かった。
次回の話は2026年4月4日(土)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!




