異形体と復活11話
今日も無理せず、無事に一日を終えられたらいいですね。
無事に一日を終えられたら、悩みや心配を忘れてゆっくりお休みください。
お休みの時間なら、私の作品とともに明日への準備ができることを願っています。
読者の皆様の人生に、私の作品が大きな助けになることはできないかもしれませんが、
少しでも活力の源になれたら嬉しいです。
いつも作品を読んでくださって本当にありがとうございます。
大好きです、読者の皆様。
「はぁ……はぁ……ゴホッ!」
荒い呼吸を繰り返していたアルドリックは、大きく咳き込んだ。
その拍子に、ふと足元へ視線が落ちる。
地面には血痕が広がっていた。
「ちっ……この程度で弱音とはな……」
思っていたよりも早く悪化していく自身の体調。
アルドリックは嫌でもそれを認識せざるを得なかった。
(もう少し……持ちこたえないと)
老僧の助けで牢を脱出し、逃走する過程で負った内傷。
それは完全に治りきらないまま、感染後の潜伏期間を経たウイルスのように、今になって再び姿を現していた。
『スッ……ザッ……』
『スッ……ザッ……』
体が、少しずつ重くなっていく。
その感覚をはっきりと感じながら、アルドリックは近づいてくる異形体を見据えた。
(奴も……)
もし自分が打撃を与える前であれば、わざわざ二足で歩く必要などなかったはずだ。
とっくに接近し、攻撃を仕掛けてきていただろう。
「不敬な下等生物どもめ……吸収などありえん」
『ピタッ』
異形体が突然足を止めた。
何か思いついたのか、不快な笑みとともに、ぎらりとした眼光を放つ。
「死ぬことすらできぬ体にして、不敬の罪を償わせてやろう!」
『シュアアアアッ』
短時間では、さすがにすべての触手を再生することはできなかったのだろう。
数を大きく減らした触手が、アルドリックへと放たれる。
(今だ)
アルドリックは、敗北して死を待っていたわけではない。
恩を返すため。
そして、自分にはまだ果たすべき使命が残っている。
残されたわずかな機会を最大限に活かすため――
彼は、ぎりぎりの瞬間まで耐え、待ち続けていた。
(残り三割……それでも!)
自分の体も。
マナタンクの残量も。
長くは持たない。
だからこそアルドリックは、この瞬間にすべてを賭けることにした。
今生まれた刹那の隙。
その一瞬に、乾坤一擲の一撃を叩き込む。
一世一代の賭けだった。
『タタッ』
『ドンッ』
『ボトボトッ』
「ハハッ! こんなに簡単に終わるのに、無駄に足掻きやがって――……何だ?」
異形体はすぐに違和感の正体に気づいた。
攻撃を放った触手を確認する。
そこには、何の痕跡も残っていなかった。
(どこへ消えた……!?)
確かに、この目で確認して攻撃したはずだった。
慌てた異形体は周囲を見回し、必死にアルドリックを探す。
「どこへ行った、下等生物!」
『ハッ!』
人間とは比較にならないほど鋭敏な感覚が攻撃を察知する。
異形体は反射的に触手を振るった。
『ブゥン』
だが触手は、再び空を切った。
「この下等生物が! まだ懲りずに小細工かぁぁぁ!」
『パッ』
「そこかぁぁぁ!」
(また……!?)
アルドリックは、自身の反射神経でも追えないほどの速度で移動していた。
異形体は胸の奥から湧き上がる恐怖を押し殺しながら、必死に触手を振るう。
「死ね、下等生物!」
『ブゥン』
「偉大なる御方の使徒である――この俺に!」
『ブウゥン』
「死ねと言っているのだぁぁぁ!」
いつの間にかアルドリックは、異形体の目前に立っていた。
確かにそこにいる。
だが触手は何度振るっても身体に触れることすらできない。
ただ虚しく空をかすめていくばかりだった。
焦り始めた異形体。
そのとき――
アルドリックの視線が、自分へ向けられていることに気づく。
(あの目……!)
気に入らない。
嫌悪しか湧いてこない。
下等な生命体のくせに。
この下位次元とは比べ物にならない高位次元に存在する神の使徒を――
殺そうとする者たちの目。
アルドリックの瞳には、かつて対峙した連中と同じ感情が宿っていた。
それが、たまらなく不快だった。
「ぐあああああ!」
『ブゥン』
『ヒュオッ』
至近距離まで迫った異形体は、脚と腕を乱暴に振り回した。
触手も加えれば、当たるはずだった。
だが違う。
先ほどなら確実に命中していた攻撃が、未だ一度も当たらない。
すべてが空振りだった。
「ちくしょうがあああ!」
『シュアアアアッ』
『ズブッ』
「ぐふっ!」
異形体の胸へ、オーラを纏った剣が深く突き刺さる。
アルドリックは無表情のまま剣を引き抜いた。
「ふぅ……」
この一度の成功のために、二度の失敗を経験した。
そのアルドリックに残された体力は、ほとんど残っていない。
それでも。
ここで終わらせなければ、安らかに休むことなどできない。
彼は剣を振るった。
――いや、振るおうとした。
(くそ……こんな時に……)
アルドリックは不運を悟った。
それでも最後まで諦めない。
彼は攻撃を強行した。
『ザシュッ』
『ピタッ』
タンクに残っていたマナは、ついに一粒残らず尽きた。
マナによる強化が消えた瞬間。
激しい疲労が波のように押し寄せる。
異形体の首を斬ろうとしていた剣は――
半ばを少し越えたところで、虚しく止まっていた。
次回の話は2026年3月30日(月)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!




