43話
他の誰かなら、目の前に広がる異質な光景に圧倒されてパニックに陥ってもおかしくない、奇妙で不気味な風景が俺の目に映った。
「うむ……」
俺は動揺していないわけではなかった。
いや、何の感情も表に出せなかった。
『かなり疲れているみたいだな』
『ゴシゴシ』
『パチパチ』
「痛いな……」
最近の俺は子供の体でかなり無理をしていた。
だから疲労による幻覚じゃないかと思った。
目をこすっても変わらない。
だから次の推測、夢じゃないかと思い、古来の覚醒法を試した。
だが痛みは鮮明に感じられたので、この風景は偽りではなく本物だと判明した。
「これは……あり得るのか?」
俺の周囲の空間は幻覚のように見えた。
「宇宙は真空のはずだろ?」
地球で得た知識によれば、宇宙には空気がない。
だから生命体が生きることはできない。
地球上や生命が住める環境が整った惑星とは違い、宇宙は生命体を徹底的に拒絶していた。
俺の知識が正しければ、そうあるべきだった。
「これは……あり得るのか?」
アルカンテラという地球の常識とは完全に異なる世界。
地球にいた頃なら、今の状況を受け入れられなかったに違いない。
だが10年ほどとんでもない世界で生きてきたおかげで、すぐに納得できるほど柔軟な思考を手に入れていた。
「俺もずいぶん変わったな」
俺の周囲の空間は漆黒に染まっていた。
どんな周期かはわからないが、時折通り過ぎる彗星。
太陽のような恒星たちが素早く通り過ぎるたびに目が痛くて辛かった。
「別に熱くもないだろ?」
俺が知る自然の法則が一つも当てはまらないことに、精神が遠のくような感覚が強く襲ってきた。
ぼんやりと周囲を見回していた俺は、無意識に片足を踏み出した。
『サラサラ』
「ふう……10年縮んだ」
地面をなぞるように足を動かしたおかげで、
その場にあった小石や少しの土が、果てしのない漆黒に向かって吸い込まれていくのが見えた。
少し慎重にしようと決意した俺は胸を撫で下ろした。
「勝手に動いたら次は俺の番だな」
恐怖という感情が湧き上がり、全身から冷や汗が流れたが、俺の探求心は止まらなかった。
そんな中、一つの疑問がふと頭に浮かんだ。
「どうやって戻ればいいんだ?」
まだ終わっていない用事もあった。
現世への未練があるので、俺は出口を探そうと動き出そうとした。
「まったく……」
捜索は開始されてわずか1分で終了した。
俺が立っている荒野はキングサイズのベッドとほぼ同じ大きさだった。
そしてこの小さな地面と繋がる道、階段、他の場所と繋がる人工構造物は、俺の目には一つも見えなかった。
「困ったな、みんなが待ちわびてるだろうに」
独り言を呟いた瞬間。
頭の中にその考えを否定する言葉が浮かんだ。
『誰が俺を待ってるって言うんだ?』
「そりゃもちろん……」
デミアンとして生まれる前の人生の記憶。
そしてこんな奇妙な場所に意図せず来る前にあった出来事がふと思い出された。
苦痛も、当時の混乱も、何一つ抜け落ちることなく鮮明に浮かんだ。
『ドサッ』
「俺の人生は……また終わったのか?」
俺の記憶に誤りがない真実なら、俺は本当に二度目の死を迎えたということになる。
『今生でも何も成し遂げられなかった……』
前世と同じように、俺は世間と大切な人たちに負った莫大な借りを一つも返せなかった。
男としてこの世に生まれ、ただ自分だけを慕う女もおらず、後世に長く残る業績も達成できなかった。
死については、諦めがついた。
一度経験したからか、冷静に受け入れられた。
だが二度も何も成し遂げられなかった事実は、俺をとても憂鬱にさせた。
「はあ……ここまで来たら、もうどうしようもないな」
全身を襲う脱力感と無力感に、もう抵抗する力すら残っていなかった俺は、裸の地面に大の字に横たわった。
「ふう……」
大地が沈むような深いため息をついた俺は、しばらくそのまま横たわっていた。
「なんだ?」
いつからか視界の隅で何かが点滅しているのが見えた。
俺は時折通り過ぎる彗星や恒星だと思い、無視しようとした。
だがその光は点滅を続け、徐々にその輝きが強くなり、もう無視できないほど明るくなった。
そして俺は感じた。
「俺を呼んでるのか?」
直感に従って動こうとした次の瞬間、俺は止まった。
「道もないのにどうしろってんだ?」
俺の愚痴にも構わず、光は点滅を続けた。
「もう知るか! 男なら一回死んで二回死ぬかよ!」
俺は自棄になって、まるで怪物の顎のように口を開けた宇宙。
虚空に向かって足を踏み出した。
次回の話は2026年1月29日(木)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!




