41話
障害物を片付けるのに邪魔な杭を抜こうと、忙しく機体の両腕を操作していると、突然地響きがした。
いや正確には、今まで駆け寄ってきた邪教徒たちは俺たちの戦力を分析するための矢面だとでも言うように、森をびっしり埋め尽くすほどの数の邪教徒が駆け寄ってくるのが見えた。
『ドドドドドドド』
「うおおおお!」
「わぁぁぁぁぁぁ!」
「我らの主よ、新鮮な供物を……!」
「血だ! 異端どもの熱い血をぃぃぃ!」
どういう手段を使ったのかはわからないが、邪教徒たちは髪の毛一本も見せず、今まで完璧に隠れていた。
静かな森を混沌の坩堝に変えながら、奴らは土煙を上げて駆け寄ってきた。
「ひどいもんだな」
「そうだな、手法もそうだが特に匂いがな」
防陣を組んで邪教徒たちを防ぐために立っている兵士たちは、誰一人眉をひそめずにいなかった。
「うっ! うぅぅ……!」
邪教徒たちの匂いはコックピットにいる俺にまで感じられるほど酷かった。
『まるで奴隷船みたいだな……』
遠い昔、地中海の覇権を争うために血で血を洗う海戦を続けていた国々には、慢性的に人手、特に漕ぎ手になる男が不足していた。
比較的最近の20世紀でも海軍の人手補充は拉致まがいの徴兵方式だった。
ましてや古い地中海では、辛い仕事に動員されるのは人間扱いされない奴隷だったと記録されている。
辛い仕事を強制されるが、食べ物はごくわずか、洗う行為は贅沢扱いされるほど劣悪な環境で、人間として当然のものを享受できなかった。
そしてそんな奴隷船が補給のために港に来ると、数キロ先でも匂いがわかるほど酷かったという。
その日はカモメも見えない日だったため、人々は窓を閉めたり避難したりしたという記録が残っている。
「うぅぅぅ! このクソ野郎ども、風呂も入らずウロウロしとるんか!?」
鼻が腐るような悪臭に、エヴァン少領は鼻を押さえ、目を潤ませた。
悪臭という外的要因はあるが、エヴァン少領は冷静さを失わなかった。
『スッ』
徐々に近づく邪教徒たちを見ながら、エヴァン少領は片方の腕を上げて少し待った。
「1列目、撃て!」
命令と同時に、エヴァン少領が上げていた腕が下りた。
様々な騒音で声が届きにくい位置の兵士たちも、腕の合図を見て遅れず弩に装填していた矢を放った。
『シャザザザザザザ』
『プスッ プスッ バキッ』
「うおっ!」
「ぐっ!」
「げっ!」
大規模に押し寄せてきた邪教徒たちの先頭は、エヴァン少領の指示に合わせた弩の矢を受けて絶命した。
中には死なずに倒れた者もいたが、すぐに後ろから駆け寄る者たちに惨めな死を迎えた。
それでも邪教徒たちの数は全く減らないように見え、引き続き防陣、遠征隊に向かって狂ったように駆け寄ってきた。
「もう持ってる手をケチる時じゃねぇ!」
2本のピンチアームで杭を抜こうとした試みは、木々が頑強に絡み合っているせいで不発に終わった。
同時に試みたノコギリによる切断も、木々の隙間に挟まって失敗した。
『道具が良くても、使う俺の経験が少ないからこういう結果になるのは仕方ない!』
自分の慢心を自責した。
だが時間は容赦なく過ぎていく。
『チカチカ』
今は優勢だが、エヴァン少領も兵士たちも人間だ。
だからいつか疲弊し、敗北を味わって死ぬかもしれない。
俺は薄い補助腕2本を起動させるレバースイッチの横にある他のスイッチをすべて倒した。
『カチャン』
『ウゥゥゥン』
『カチャカチャ』
「弱音吐いたら誰かが代わりに解決してくれるわけじゃねぇ!」
前世からそうだった。
俺は誰にも頼らず、自立的に考え行動して問題を解決してきた。
そんな生き方が異世界に、貴族として生まれ変わったからって変わるはずがないだろ。
『カチカチ』
俺はボタン数個を操作して、機体の主腕に加え、背面に収納されていた4本の補助腕を操縦桿に連動させて動くようにした。
『カチャン カチャン』
『ウィィィィン』
『ん、問題なく動く!』
合計8本の腕が俺の動きに即座に反応するのを見て、俺は少し安堵した。
「これだけ片付けたら残りは楽勝だ!」
さっきと同じように巨木が山積みだったら、マナタンクに溜めたマナを全部使っても片付けるのは極めて困難だった。
だが今。
半分近く減った木なら、機体の出力で十分対応できると判断した。
『ゴリゴリゴリ』
「抵抗すんなよ、こら!」
『ミシミシミシ バキバキバキ』
最初は反抗するように抵抗していた木々も、継続する力には耐えきれず、砕けたり折れたりした。
そのおかげでチェーンソーを噛んで離さない木々を一つずつ処理できるようになった。
次回の話は2026年1月19日(月)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!




