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36話

『旅行なんて元々こんなに退屈なものか……』


機体を積むためやむなく大型化した馬車の内部には、まだ小型化されていない時計が掛かっていた。

『マナで駆動するって言ってたな……』


屋敷にいた時、どこを見ても電池を入れるところが見えないので気になって聞いたら、他の動力源は一切使わずマナだけで動くという説明だった。

時間についてはマナの流れを感知して合わせるということだ。


『どうやって可能なんだ? 回路もないのに……』


アルカンテラで10年ほど過ごしたが、まだ理解できない、受け入れがたい内容が多い。

この世界より地球で過ごした期間の方が長いから仕方ないが……工学者としては愉快じゃない。


『今はそんな時じゃない!』


俺は時間が金より貴重だということを思い出した。せっかく暇なんだ、以前まとめきれなかった知識を少しでも蓄えれば、後で絶対役立つと思った。


『よし!』


俺は荷物袋にしまっていたクリップボードと裏紙を取り出し、記録を始めた。


『今の人工知能は……コアが一つだから……』


前世で専門分野じゃなかったから明確にまとめるのは難しかったが、少なくとも概念は知っていたのでなんとか進めた。


『後で他の専門家の手を借りればどうにかなるだろ』


無責任だと思ったが、不得意な分野は力を合わせる方がはるかに合理的だと思った。

そして今亡き先祖を責めることもできない。

なぜならポジウェル家はソフトウェアの開発を専門とする家ではないからだ。

だから委託するのがベストだと思った俺は、次の原案をまとめた。


『そういえばアルカンテラには空を飛ぶ移動手段がなかったな……』


父上の配下の技術者たちと一緒に、後で研究するものをまとめ、思い浮かぶことを記録している俺の耳に、そっと近づいたアルドリックの声が急に聞こえた。


「それは一体なんだ親分? 風車がそんなにたくさん必要なほど事を起こすのか?」


「これを使って空を飛べばいいと思わないか?」


「空を……か?」


「そうだ!」


俺が確信に満ちた顔でアルドリックを見ると、彼は俺と馬車から見える空の一部を交互に何度か見て、眉をひそめた。


「全く可能だと思えないんだが?」


「それは当然だろ」


アルカンテラでは誰も空を飛ぼうと試みなかった。

それ以外にも制約がかかっていたためだ。

まず浮遊と移動で消費される大量のマナ。

人間の魔法使いが、自分の体でこれを全て管理しようとすれば、何人いても足りない。


その他の問題は、空を領域とする各種怪物たちだ。

従来の武器では十分な火力を出せなかった。


『最後が画竜点睛だな』


アルカンテラでは古い童話にしか出てこないような道具以外、空を飛ぶ方法は皆無だった。

つまり使用者便益はもちろん、安全性も無視されていたということだ。


『これは俺の趣味だな』


「それは少し面白そうだな」


「さっきまでは否定的じゃなかったか?」


「それはそれ、これはこれだろ、あまり突っつくんじゃないよ親分」


俺も思ったが、男の心を震わせるロマンがあふれる概念だと思った。


「人間の体で、道具の力を借りたとはいえ……太古から神々の領域である空を飛べるとしたら、誰が拒むだろうか親分?」


「まあな……」


だからこそ空を征服しようと、古い昔に一組の兄弟が挑戦した。

最初はたった数十秒に過ぎなかったが、偉大な挑戦であり行為となった。

そしてその始まりは人類にとって先駆けとなり、大きな進歩を成し遂げることができた。


「本当に飛べる形としては少し難しいけど……それよりいい素材はないか?」


何かを始めるには俺はあまりにも未熟で経験が不足している。

フェリックスの話によると俺は異質だと言うくらいポジウェル家が積み重ねた知識をスポンジのように吸い込むと言っていた。

そんな話を聞いても俺個人としてはこの世界について知らないことが多いので、継続的に探求しなければならないという方針を取っている。


「ワイバーンの皮膜なら、空を飛ぶのに役立つという噂を聞いたことがあるぞ」


「空を飛ぶために他の生物のものを狙わなければならないのか?」


「そうだ」


「うむ……」


人は生まれて呼吸し生きる。

最後に死を迎え、再び土に還るまで、意図的か否か他の命のものを奪うしかない。

俺は聖人であり一宗教の創始者である偉人と同様に殺生戒を主張する気はないが……なんだか嫌だ。


『人間じゃなくてもな……』


「技術者たちと話せば答えが出るかな?」


「一人で頭を抱えるよりよっぽど建設的だろ」


『ガタン』

『ギィィィィ』


「うわっ! な、なんだ?」


「何かあったみたいだな……襲撃じゃないようだが、うむ……」


アルドリックは馬車から顔を出した。

そして目を細めて先頭を観察した。


俺も同様に先頭を確認しようと体を外に出し、事件が起きた場所を見た。

だが見えるものはなかった。


『さすがソードマスターだな』


マナ回路が損傷した状態でもアルドリックは遜色ない。

そんな彼が突然眉をひそめた。

俺の考えを読んだのかと思った時、彼が言った。


「まだ目的地まで半分くらい残ってるのにこの騒ぎか……いや、あいつらにとって今が最適のタイミングだろうな」


「一体それが何の……」


何の話か詳しく説明してくれと口を開いた時だった。


「エヴァン少領! 道が障害物で塞がれてます!」


「なんじゃそりゃ! そんなもん一つ片付けられんばいって泣き言やろが? 朝飯食ってきたんか?」


「気持ちは山々ですが……どうも時間がかかりそうです」


昼間なのに森の中の道は異常なくらい静寂に満ちていた。

鳥や野獣の鳴き声さえ聞こえない中、彼らの声が響いた。


『どうしようもないな、こんな時に助けたら後で恩返しがあるだろ』


そう思った俺は馬車から降りて問題の場所へ向かおうとした。

次回の話は12月25日(木)午後8時にアップロードされる予定です。

ぜひご覧ください!

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