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33話

「それ、なんちゅうこと言うんですか侯爵はん!」


「平民の俺が見ても、今の言葉はありえんばい! もう一回考え直してくださいばい!」


「…………」


信じられんという顔で顔を歪めて反発する二人。

だが俺は彼らとは違い、静かに実父であるフェリックスを見つめた。


「ワハハハハハハ! いつも父親らしいところを見せられなかったから驚くのも無理はないな、ハハハハハハ!」


「そ、そんなつ、そんなこと考えてません」


俺は必死にポーカーフェイスを保とうとした。

しかしフェリックスはまるで魔法でも使ったかのように、俺の心をズバリ言い当てた。

さすがポジウェル家を率いる当主だけあって、人間離れした洞察力だ。


「デミアンが同行するという決定は覆さん」


「今それどないいうことや!」


「その口閉めて、黙って聞いとけ」


「代わりに遠征人員はエヴァン少領が選んだ者たちとし、さらにガレット卿が実力を保証する騎士三人と兵一小隊を加えて出発させる」


「ううむ……」


「了解や」


二人とも受け入れがたい顔をしていたが、ひっくり返すほどの名分もなく、とりあえずは受け入れた。


「では明日出発だ。しっかり準備をしておけ」


『ズカズカ』


人選のため指揮室を出ていく二人。

俺もその後を追おうとしたとき、フェリックスの声が響いた。


「デミアンは少し残れ。話がある」


――


父上に夜遅くまでこっぴどく説教を食らった後、

明け方まで準備を続けた俺は、睡眠不足のまま疲れた朝を迎えた。


「ふぁぁぁ……」


注意事項を頭に叩き込みながら、冷たく湿った空気が漂う建物を出る。


『みんな早いな……』


まだ陽も昇らぬ時間、森との境界に位置する要塞は深い霧に包まれていた。

夜の冷え込みで問題が出ぬよう、建物隅々に火鉢が置かれている。


「うー、ちょっとマシになった」


「もうすぐ交代だから、体ほぐしとけよ」


「クソ邪教徒どもが、こんなド田舎のどこがいいって押し寄せてきたんだよ……」


「理由わかろうがわからまいが、金もらって飯食う以上は仕事しなきゃな」


「そうだな……クソが……」


少し歩いただけで、子供の体には骨まで凍みるような冷たさだった。


「ううう……」


「ご苦労さん」


「あ、は、はいっ、騎士様!」


「敬礼なんていい。この際だからこれでも飲め」


「か、感謝します!」


反射的に敬礼するほど規律の取れた兵士たちを背に、

アルドリックが何かを持って俺のところへやってきた。


「ずいぶん慣れたもんだな」


「俺も昔はあいつらと変わらん立場やったから、つらいのはようわかる」


「そうか……ううう!」


「これでも飲め、親分」


アルドリックが差し出した湯気の立つカップを受け取る。

中には生姜と香草、それにこの辺りでよく使われる作物が混ざった、体が芯から温まるお茶がたっぷり入っていた。


「俺にくれちまうと、お前は?


「ふふ、貴族の坊ちゃんとは思えん気遣いだな」


『もっと我がままな方が貴族らしいのか?』


前世のメディアで学んだ貴族像は、忙しそうにしているくせに何もしてない自己中人間だった。

『でも俺はそうなりたくない』


俺がそんなことを考えながらお茶をすすっていると、

火をぼんやり見つめていたアルドリックが口を開いた。


「このくらいの寒さは慣れたもんだ。火のそばに座ってじっとしてりゃ、だいぶ楽になる」


『コクン』


いつもより饒舌に説明してくれるアルドリック。

俺はそれ以上何も言わず、ただ頷いた。

そしてカップの中の熱くて酸味のあるお茶を、ゆっくりと味わって飲み干した。


『いろいろ入ってるな……』


生姜のピリッとした香り、香草の柔らかな匂い、酸味と甘みが絶妙だ。


『酒の代わりに飲む奴もいるくらいの逸品だ』


体の中を巡る温かさのおかげで、すぐに寒さを感じなくなった。


「口に合ったか?」


「もう一杯欲しくなるくらいだ」


「ふふ、飲みすぎると腹を壊すからほどほどにな」


その瞬間。

俺は、アルドリックが普段見せない顔をしていることに気づいた。

逃亡者になる前は、きっとこんな表情の騎士だったんだろうな、という優しい顔。


『こんな顔もできるんだな』


俺が見てきたアルドリックはいつも無口で、笑うと言っても口角を少し上げる程度だった。

なのに今は、年下の騎士や甥っ子にするような顔をしている。

新鮮で、そして少し照れくさかった。


「もう一度確認しておいた方がいいんじゃないか?」


「あ、ああ、そうだな」


俺はもう一度機体の状態を確認するため馬車の上に上がった。

露で濡れた機体表面を拭きながら内部パーツをチェックしていると、

墜落などに備えてアルドリックが周囲で待機してくれた。


約10分ほど確認し、のんびり待っていると――

遠くの霧を掻き分けて、一団の者が近づいてくるのが見えた。

私の作品に貴重なお時間を割いて読んでくださる読者の皆様に、心より感謝申し上げます。

また、皆様のご家庭と、貴方が取り組まれているすべてのことや計画が順調に進み、

さらには幸福と健康に満ちあふれた日々となりますよう、心からお祈り申し上げます。

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