30話
『考えが変わったのか? それとも目を逸らすための演技か……』
邪教徒たちは初日、あの短い時間だけ優位を握ったあと、
要塞に近づくどころか、まるで自殺行為のような無意味な突撃を繰り返すだけだった。
みんながかなり衝撃を受けたが、功は功、私事は私事。
どうあれ敵を撃退するのが軍人の務めだから、騎士も兵士も黙々と仕事をこなした。
そんな状況をアルドリックから大まかに聞けた。
「お越しやす」
「デミアン、暮らしはどうだ?」
「父上や皆が気遣ってくれるおかげで、極めて快適ですよ。ただ……」
「ただ、なんだ? もったいぶらずにさっさと言え」
俺が言葉を濁して口をつぐむと、フェリックスは眉をピクリと動かし、俺の声に耳を澄ました。
「屋敷の工房みたいに道具が揃ってないんで、ちょっと不便ですね。本当にちょっとだけですよ」
「はっ……ハハハハハハ!」
「さすが侯爵はんの息子はんや! 顔だけやなくて中身まで親のコピーやんか! ククククク!」
「何度も言わなかったか! ガレット卿」
「なんとなくは知ってましたけど、ここまで瓜二つやとは思わんかったわ!」
フェリックスとガレットは、今の状況の重荷をすっかり忘れたみたいに腹を抱えて笑った。
そして少し時間が経つと、再び真剣な顔に戻った。
「これ見てくれやす、今日の朝のやつや」
ガレットは俺とフェリックスを見ながら、ぼんやりと空いた壁を見つめた。
「何ぼーっとしてんねん! さっさと映せや!」
「す、すみません!」
『パッ』
疲労でボケていた兵士は、ガレットに二度も怒鳴られてようやくハッとし、ボタンとレバーを慌てて操作した。
すると指揮室中央にある、数百年も前のビームプロジェクターみたいな、ホログラム投写機の元祖みたいな装置から光が飛び出した。
『サーーーー』
天井に吊るされた機械から放たれた光は、スクリーンも何もないのに、しっかり空中に映像を結んだ。
『地球の技術と比べたら解像度は低いけど……それにしてもこの技術力、比べ物にならんくらい高いな』
感嘆はさておき、地球の写真とは比べ物にならないほど粗い解像度の画像が空中に浮かんだ。
「急いで撮ったんで、めっちゃボケてますわ」
申し訳なさそうなガレットに、フェリックスは「構わん」と手を振った。
「これは要塞後方の村から上がった緊急信号か?」
フェリックスは事態の深刻さを察し、危機感を顔に滲ませながら聞いた。
ガレットは平然と答えた。
「まさか。あいつらがそこまで有能やったら、俺らとっくに死んでますわ」
その返答に、フェリックスは何かを悟ったように口を開いた。
「まさか開拓村で異変が起きたというのか?」
「その通りや」
「ううむ……こうなるなら後方の部隊を呼び戻して速やかに鎮圧しておくべきだった……俺の失策だ」
「侯爵はん、今さら悔やんでも変わらしまへんて」
「そうだな……」
フェリックスは地面が抜けるようなため息をついた。
少し時間が経ち、再び顔を上げたとき――
『普段は絶対に見せない顔だ』
技術者に指示を出すときも、ロウェナや他の美女たちと遊び呆けているときも、微塵も見せなかった鋭さ。
研ぎ澄まされた刀を思わせる眼光が、フェリックスの澄んだ瞳から放たれた。
その瞬間、部屋の空気は一気に重くなった。
次回の話は11月26日(水)午後8時にアップロードされる予定です。
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