28話
-ズカズカ-
-キィ-
要塞のあちこちを数分かけて横断した末、俺たちはある部屋の前に辿り着いた。
そしてガレットはドアを乱暴に開け放つと、中へズカズカと踏み込んだ。
-カツン-
「お揃いでございます、ガレット隊長殿!」
「敬礼なんぞええ! 報告、さっさとせんかい!」
その声にピリッと緊張した部下たちの動きが、1.5倍ほど速くなった。
-ドスン-
「ここにあります。いつものように不要なものは除外しておきました。」
「ようやった。」
労をねぎらい、適度な休息を取るよう指示を出したガレットは、メモを睨んだ。
数秒も経たないうちに内容をすべて読み終えたのか、彼は顔を上げた。
「エヴァン少領は今どこで何しとるんや?」
「少領は現場で指揮中です。」
「はぁ~、まあそうやろなぁ……」
予想通りの展開にガレットは後頭部を掻きながら眉をひそめた。
「国境越えてきた野郎どもが、難民やなくて?」
「はい、衣装で正体を隠すのが上手い邪教徒と推定されます。」
「ほんまか?」
-コクン-
「わかった。」
ガレットはため息をつくと、状況を把握しきれていない俺とフェリックスの方へ振り返った。
「侯爵はん、運がええわぁ。」
「難民とはどういうことだ?」
「約二週間前から、兆しもなしに、一人二人と集まって、ここへ来とるんですわ、まさに“泣く子も黙る”……今日があいつらの“本気の日”やったみたいで……ほんま、悔しいわ。」
「他の貴族が送った軍隊ではないのか?」
「それやったら少領だけ送り込んで指揮させとくかいな? 俺も出とるわ。」
「確かに……」
フェリックスは頭の中で状況を整理し、何かに気づいたのか、真剣な顔でガレットに尋ねた。
「邪教徒とはいえ軍隊ではないだろう、そうであればここまで混乱する理由がないはずだが……」
「せや、だからこそ侯爵はんが俺らに投資してくれたんやないですか。」
-コクン-
信じられないといった様子で、ガレットは呆れた声でフェリックスに状況を共有し続けた。
「あいつらはただの盗賊どもとは次元がちゃうんですわ」
「ん? 待て……今、邪教徒と言ったか?」
「せや……さっきからそう言うてますやん」
「ふぅぅ……」
自分が最初から的外れだったことに気づいたフェリックスは、地面が抜けるようなため息をついた。
そして何か知っている事実があるのか、眉をしかめて言った。
「デミアンと戦闘に不向きな使用人たちを避難させる時間はあるか?」
その問いに答えようとしたガレットは、申し訳なさそうな顔をした。
「あ……それ、ちょっと厳しゅうなりました。」
「回りくどいことは言わず、説明してくれ。」
ガレットは指揮室中央の地図へ。
そこに置かれたボードゲームのような精巧な駒を動かし、何かを示した。
-泣く子も黙る、このことか……-
要塞の責任者であるガレットの説明によれば――
モンスターか異民族、あるいは戦争を逃れて国境を越えた難民に偽装した邪教徒。
奴らは何らかの企みで、要塞と領地を結ぶ街道を封鎖していた。
-街道以外にも道はあるが、大量の物資と人を運ぶのは困難だ。-
俺には、奴らが単に私利私欲で動いているようには見えなかった。
高度な計算を施した――まるで政治的な取引か解決屋のような、計算ずくの集団に見えた。
次回の話は11月16日(日)午後8時にアップロードされる予定です。
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