17話
魔導工学をまるで知らないアルドリックが見ても、本格的な戦闘には程遠い見た目の機体。
そんなものを操り、滑稽な姿で剣術を披露するなんて想像したから、彼は避けたかったんだろうな、俺はそう思う。
「じゃあ、さっそく…!」
完成したばかりの機体を直接試してみたくて、俺は操縦席に乗り込んだが、ちょっと困惑した。
「お、おっと…?」
「子供を使う場所なんてないから、当然だろ。」
アルドリックは全てを予見していたかのように言いながら、俺に近づいて手を差し出した。
「俺が代わりにやってやるよ、親分。」
「これは剣術師範の仕事でも、護衛の務めでもないだろ?」
「変わった坊ちゃまに雇われた時点で、こんなことくらい予想してたさ。」
この1年で少し柔らかくなったアルドリックの姿に、俺は違和感と同時に新鮮さを感じた。
「早くどかないと、やらないぞ。」
モタモタしてる俺の耳に響いた彼の声で我に返り、俺は素早く操縦席から降りた。
「ほお…こんな感じか…」
ただのソードマスターじゃなく、経験豊富なアルドリックだからか。
俺の説明を聞かなくても、迷うことなく一つずつスムーズに操作をこなしていた。
-ウーンウーン-
-ガチャン-
-ガコン-
「なるほど…前の機体と比べると、まるで別物だな。」
最初は慣れなくて少しぎこちなかったアルドリック。
だが、時間が経つにつれ余裕が生まれ、無駄のない滑らかな動きを見せ始めた。
「こりゃ…形式を変えて、マナ適性のない兵士が使うようにしてもいいんじゃないか?」
「そんなこと、考えてもみなかった…いいアイデアだな。」
さすが正道の境地に立つソードマスターだけあって、彼は鋭い観察力で気づいたことをすぐに俺に伝えた。
「これは何だ、親分?」
「それはな。」
-いつ気づくか、首を長くして待ってたんだ!-
アルドリックが動かせば、驚くどころか気絶するほどの体験になるはずだと、俺は隠された仕掛けに自信があった。
「百聞は一見に如かず! さあ、押して動かしてみろよ。」
「よし…」
-プシューーー!-
-ウーーーン!-
過熱を防ぐ冷却水が流れ、機体の排気口から蒸気が噴き出し、低い駆動音が工房内に響き、壁を震わせた。
アルドリックは突然の音に、半分心配、半分期待の表情を浮かべながら、ゆっくり機体を動かした。
-ズシン ズシン-
-ヒュオーン-
-ビョン!-
「こ、これは何だ!?」
-やっぱり、俺の予想通りに動いてるな。-
アルドリックが見せた反応は想定内だったが、とりあえず満足した。
次回の話は9月22日(月)午後8時にアップロードされる予定です。
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