12話
「わあ!この装飾品、ちょっと見てよ、ね!」
「まあ!?これは装飾職人で有名なロベルト・ペトゥッチーニが作ったみたい…本物かしら?」
屋敷で朝早くから仕事をこなし、行商が村に来ても買い物に行く時間がないメイドたちは、喜びの叫び声を上げ続けた。
「見る目がありますね、お嬢さんたち。」
メイドたちが品物を手に取るのを待ち、獲物をさらう鷹のようにつかみかかる商人。
「こ、この魔道具は、アルフォンソ・エリクサーの手がけたものじゃないか!」
「旦那の見識、素晴らしいですね!」
あちこちで値切りが起こり、品物と貨幣が交換された。
-安物を高級品に見せかける悪徳商じゃなさそうだな…-
ガリンド商会。
この地方やポジウェル家に必要な資材を運び、さらには人を派遣したり連れてきたりする、信用ある商団だった。
-こうやって直接見るのは初めてだな。-
これまで何度も訪れたと聞いていたが、俺は全く興味がなかった。
忙しく動くあちこちを覗きながら見回していると、ふとアルフレッドが近づいてきて囁いた。
「今回、デミアン様の誕生日プレゼントを運んだのもこの商会です。」
アルフレッドの説明で、俺はこの商団が信用だけでなく能力も持っていることを改めて認識した。
「ふむ…」
装飾品や道具、近隣では手に入りにくい食材の状態を、
専門家じゃない素人の目で見ても悪くないと感じながら、俺は品物を眺め続けた。
-うーん…気まずいな。-
服屋の店員と同じように、鋭い視線で俺をじっと見つめる商会の者たち。
前世ではそんな店を気まずく思っていたが、今は堂々としていても問題ないはずなのに、つい昔と同じように振る舞ってしまう。
「ん?」
アルフレッドが持ってきた書物にあった概念を発展させた装備を見たような気がした。
「デミアン様?」
突然人混みに紛れ込む俺の行動に驚いたアルフレッドの声を聞きながら、前に進んだ。
-やっぱり…!間違いじゃなかった!-
マナやエーテルについてはさんざん勉強したのに、どう応用すればいいか全くわからなかった。
-全く別の学問だからか…それとも本当に工学者と呼ぶには才能が足りないのか…-
ポジウェル家の先祖が残した記録。
そこには、今でも難易度が高く、他の学派の技術者なら想像や空想にすぎないとされる高レベルな記録があった。
でも、俺は漠然とその技術が実現可能だと感じていた。
-先祖に顔向けできないことに、どうしても実現する方法が見つけられなかったけど…-
-カタン-
俺は手を伸ばし、現実にその形を降臨させたマナ発電機に触れた。
いや、正確には…
「エーテル・フラックス・コア…」
自然に散らばるマナを基に、使いやすい形に加工して動力として使えるようにする装置。
-発電機に間違いない。-
手に触れる金属の重く冷たい感触が、夢じゃないと実感させてくれた。
「こりゃ…すごい見識を持ったおチビさんだね。」
-バッ!-
背後から響く太い声に、俺は反射的に振り返った。
「奴隷商…?」
そして、目の前に現れた人物を見て、つい失礼な言葉が口から飛び出した。
だが、その男は全く不快そうじゃなかった。
むしろ楽しそうに、柔らかい笑みを浮かべていた。
「フフフ、もうそっちの商売からは足を洗って久しいよ、坊ちゃま。」
次回の話は9月7日(日)午後8時にアップロードされる予定です。
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