10話
「来年、欲しいプレゼントがあったら言ってみな。」
「プレゼント?」
「そうだ。」
突然の言葉に、俺は全く理解できなかった。
まだずっと先のことなのに、こんな早くから話して準備するなんて、特別な理由でもあるのか?と考えると、ある考えが浮かんだ。
-クリスマスプレゼントみたいに準備する習慣でもあるのか?-
俺がわけもわからず呆然としていると、ロウェナが少し心配そうな顔を笑顔で隠しながら言った。
「健康を祈る気持ちで続いてきた伝統なのよ。」
「あ…」
俺は一瞬忘れていたことを思い出した。
-アルカンテラの医術は地球のものと似ているか、ちょっと遅れてるくらいだけど…-
乳幼児の死亡率が高くなるしかない生活環境だから、当然のように生まれた風習だ。
-俺は恵まれた環境で暮らしてるけど、他の人はそうじゃない。-
頭だけでなく心でもこの風習が生まれた理由を受け入れられた俺は、首を長くして俺の言葉を待つ両親に言った。
「家族が増えたらいいな。」
「何!?」
「まあ…!」
俺の口から出るとは全く予想していなかった言葉に、フェリックスとロウェナはしばらく呆然としていた。
「デミアン…その…兄弟は簡単にできるものじゃないのよ。」
「え?」
俺には理解できなかった。
-フェリックスとロウェナの仲の良さは、俺が見てきたどの夫婦とも比べられないくらいなのに…-
一つの命が生まれるのがそんなに難しいことなのか、と思った時、
子は人が作るものじゃなく天が授けるものだ、という昔の人の言葉が頭に浮かんだ。
-じゃあ、仕方ないか。-
納得した俺に、フェリックスが言った。
「他の誕生日プレゼントならできるから、言ってみな。」
「うーん…あ!」
「思いついたなら遠慮せずに言うんだ!大抵のものなら叶えてやれるぞ。」
俺はいつも、切磋琢磨できる存在がいたらいいなと思っていた。
男だから、できれば可愛い女の子がその役割を担ってくれたら、なんてね。
-フェリックスのように女なら我慢できない色男じゃないから大丈夫だ…-
俺は再び、首を長くして待つフェリックスとロウェナに言った。
「可愛い女の子の友達。」
「ワハハハ!さすが俺の息子…うっ!」
「…」
よく見ると、ロウェナがフェリックスの背後に隠れて、こっそり脇腹に拳を入れていた。
「そ、その…えっと…」
「はあ…」
ロウェナは俺の願いがフェリックスの影響が大きいと思ったのか、今日こそ決着をつけるぞという顔で何度もため息をついた。
「わ、俺が教えたんじゃないぞ、ロウェナ!」
ますます冷たくなるロウェナの視線。
フェリックスはなんとか状況を変えようと、焦った目で俺を急かした。
「二足歩行兵器と建設機械が見たい!」
「我が家…いや、違う、どこのでもいいんだな?」
「学べるならどこのでもいいよ。」
「そう、それでこそポジウェル家の後継者だ。」
「知り合いにせっせと連絡しないとね、あなた。」
「ハハ!それが何の難しさだ!」
フェリックスとロウェナはさっきの話より気に入ったのか、笑顔で心から喜んだ。
「本当におめでたいことです、ご主人様!」
「アルフレッド!領民に穀物を施し、技術者に休息を与えなさい!今日はめでたい日だ!」
周りの皆が幸せと喜びに浸り、俺も同じだった。
「奥様が新しいお子を妊娠されたんですか?」
「一人じゃない、三人だ。」
「まあ!」
誕生日から少し経ち、父フェリックスの猛烈な愛情攻勢のおかげか、ロウェナは三つ子を妊娠した。
普通の夫婦なら関係が冷めることが多いが、二人は主治医から安定するまで控えるように言われるほど、ますます愛を深めていた。
「こ、この何だ…!」
9回目の誕生日を迎えた俺は、ちょっと変わったプレゼントをもらった。
同い年の子ならおもちゃやカッコいい鎧、剣を欲しがるだろう。
でも、俺は違った。
「俺が見つけられなかっただけだ!」
フェリックスに願った通りのプレゼント、二足歩行攻城兵器の図面と建築機器を手に入れた俺は、衝撃を抑えきれなかった。
-ドサッ-
「は…何だこれ、さっぱりわからん。」
巨大な金属をいじり回して力尽きた俺は、地面にへたり込んだ。
「これが最新だって?」
怒って手に持った工具を投げ捨てそうになったが、深呼吸して冷静さを取り戻した。
-落ち着けデミアン、技術の差は大きいと前から想定してたじゃないか。-
俺は技術の差が素材工学や熟練度に限られると思っていた。
だが、現実は俺の想像をはるかに超えていた。
-油圧システムどころか、それらしいものすらないなんて。-
そうだった。
アルカンテラ。
地球とは全く違うこの世界は、20世紀程度の精度、いやそれ以前と言っても過言でない耐久性と信頼性の機械で動いていた。
次回の話は9月1日(月)午後8時にアップロードされる予定です。
ぜひご覧ください!