9話
「…」
俺は今、かなり気まずい状況に陥っている。
-処罰は避けられないな…-
家の大事を扱う執務室のテーブルには、俺と両親であるフェリックスとロウェナが座っていた。
いつも優しい顔しか見せなかった二人が真剣な表情を浮かべていると、俺はどうしても緊張し、縮こまらざるを得なかった。
「すでに雇った後でこんな話をするのは無意味かもしれないが、あの男について調べてみた。」
「特に問題になる点は見当たらなかったよ。」
-ってことは、話が誇張されてたってことか?-
俺はアルドリック本人が言ったことと両親の言葉が一致しないことに違和感を覚えた。
「逆謀罪みたいなものではないが…うむ。」
フェリックスは理解しがたい顔で、言葉をためらった。
「あなたは騎士じゃないから、理解できないのも当然よ。」
明確な説明ができないで唸るフェリックスに代わり、ロウェナが俺に説明してくれた。
騎士団内部の派閥争いに巻き込まれて濡れ衣を着せられ、結果として逃亡者になったのだと。
「じゃあ、なんで俺には大罪を犯したと言いながら話すのを嫌がったんだ?」
「第三者の立場では、はっきりわかることはないのよ。」
「本人が話すまで待つしかない。わかったな?」
「はい。」
-ん?-
俺はしばらく研究ができなくなったり、別荘で謹慎させられる覚悟をしていた。
だが、信じられないことにこんな簡単に話がまとまり、呆気にとられた気分だった。
「次からは危険なことを自分で解決しようとするなよ。」
「家のために働く者は皆、お前のためにいるんだから。わかるよね?」
俺は余計な言葉を言わず、頷いて理解したことをフェリックスとロウェナに伝えた。
-カチャン-
デミアンが執務室を出た後、フェリックスとロウェナは今回の事件について話し合った。
「あなたに似たのか、ちょっと大胆すぎるわ。」
「何!ロウェナに似たんじゃないのか?」
「もう…」
ロウェナが頬を膨らませて不満を表すと、フェリックスはすかさず話題を変えることにした。
「子供のくせに妙 に大人びて、自己啓発しか知らない奴がこんな衝動的なことをするなんて…」
「そうね、わたしたちが余計な心配をしてたみたい。デミアンもやっぱり子供なのね。」
「そういえば、俺たち、ひとつ忘れてたことがなかったか?」
「大事なこと?」
「うん」
思い出せないロウェナに、フェリックスは記憶を呼び起こすように言った。
「誕生日プレゼントの話だよ。」
「あ…」
デミアンが望むプレゼントを思い出したロウェナは、顔を赤らめた。
「坊ちゃま、今日もお出かけですか?」
「乳母、何か用か?」
「いいえ…」
母と同等の存在である乳母は、しばらくためらった後、言った。
「あまりにも早く大人になられて、この乳母は嬉しい反面、ちょっと寂しいんですよ。」
「ハハ!じゃあ、これからは乳母と過ごす時間を増やすよ。」
「本当ですか!?」
「もちろん、俺が二枚舌を使うと思うか?」
一気に気分が良くなった乳母を後に、俺は部屋を出た。
-ドンドン-
人の気配が全く感じられない長い石造りの廊下に、俺の足音が響く。
望んだわけでも、意図したわけでもないが、これまでの歩みを考えると心がさらにざわついた。
-こんな恵まれた環境で暮らせるなら、何か一つでも突出するのが当たり前なのに!-
俺はまだ才能を開花させられていない。
開花させたくないわけでもないのに。
-フェリックスは俺の 成果がめっちゃ早いって言ってたよな…-
家庭教師をつける前から、言語や算数は前世の記憶を頼りに簡単にこなした。
-それだけでポジウェル家の先祖の中でも最も優れた者と同等だって…-
でも、俺はそんな慰めを聞きたかったんじゃない。
自分が改良し、発展させた道具が動き、俺たちを豊かにするのをこの目で見たいのに、思うように進まない。
そうしてデミアンとして生きてきた時間が積み重なり、俺は9回目の誕生日を迎えた。
次回の話は30日(土)午後8時にアップロードされる予定です。
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