プロローグ
卑屈とは
自分に対して必要以上に低い評価をしてしまうこと。
自分を卑しめ他人に諂う様。
妄想や想像でさえ前向きには生きられない
夢は諦めず追い続けるのに
成功するイメージさえ卑屈すぎて描けない
むしろ成功したことを想像することさえ
烏滸がましいと思う程の卑屈な青年の頭の中のお話し
「はぁーーー…しんどい。コンビニで唐揚げでも買うか…。」
スタジオ練習の帰り。いつもの帰り道。
日が傾きオレンジの夕焼け空が身に染みる。
身長は平均よりやや低く、中肉中背な姿。平凡な顔をつきをした青年は
背を丸めトボトボと歩きながらスタジオでの出来事を思い出していた。
よくスタジオで会う音響監督に言われた
『君の声はほんとに使いにくいね』
言われた言葉を頭の中で反芻しながら
どうしようもない現実にいつも通り胸を痛める。
毎度突きつけれる現実。オーディションにも落ち、嫌でも分かってしまう。自分の声に特徴がなくかと言ってモブとしても使いにくいマイクにのりにくい声。
バイト先では「放送上手ですね!」と褒めてもらえても声優専門学校を出てれば発声と滑舌くらい誰でも良くなる
褒められるのが嬉しくない訳じゃない
ただ素人に褒められても何にもならない。
それで声で演じられる人間に成れるなら
誰でも声優という職業に着けてしまう
素直に褒められたことを受け止められない自分にも嫌になる。でもこの性格はもう一生治ることは無いだろう
俺は、人を不快にさせることもあるほどの卑屈なクソ野郎で
周りの「普通の」人達は
「そんなこと思ってないって!考えすぎ!」
「もっと前向きにいきましょう!」
…とか耳心地のいい言葉を投げかけてくる。
「普通の」人たちからしたら励ましの言葉なんだろうと思う。ただ、それは有難いものではなく、煩わしいとさえ思う。
卑屈な人間にとってはポジディブな言葉ほど嫌な雑音に変わる。
周りは悪くないから腹ただしく、歯痒い。
周りの空気に合わせ笑ってはいるが、心の中はぐちゃぐちゃだ。
治したいが治らない。根っからの卑屈。
前向きな人達が、普通に生活してる人達には
理解できないだろう。
治らない性格はもはや直す気もない。