0mmの期待
理想のヒロインなんてこの世にはいない、もしも本当にいるとしたらそれは人間では無いのかもしれない
とある心理学者は言った…かもしれない
「理想の女の子は画面の向こう側にしかいない。これは変えられようのない絶対のルールである」と。
恋は画面を隔てなければ不純物と化し、ただのゴミと成り下がる。現実の女の子が少しでも裏切る可能性を孕むのなら恋をしなければいいじゃないか。
「顔良!スタイルやば!胸でっか!」
俺は都内の公立に通う一般オタクであり、2次元の女の子に恋をしている。オタクキモイって?2次元は人畜無害、現実の女の子と違ってスマホの通信料だけで絶対の恋愛をできるのだ。選ばない理由がない。
ちなみに今見ている女の子はラブコメの「転生したらサラリーマンの髪の毛だった件」のヒロイン、コンディショナーちゃんだ。この作品の良さはなんと言っても、髪の毛になった主人公をヒロインが全力で癒すという奇抜な状況だ。
まあ、俺がここまで2次元信者になったのには理由がある。簡潔に言うと、昔彼女に浮気された。これだから現実は…。あいつ今どうしてるかな。
って訳で俺は今理想の女の子と共に人生を満喫している。
桜が落ち、緑が増え始めたある日の放課後
「それは何を見ているんですか?」
うわっ、嫌な奴に声をかけられた…。
彼女の名前は三笠里奈。高一になって隣の席になった、黒髪ロング巨乳美少女with黒タイツとかいう理想つめつめ展覧会みたいなやつだ。普通の男ならすぐさま好きになるだろう。だが俺は違う。こういうやつほどビッチですぐ裏切ってくる。断言できるね。
「トリートメントちゃんって言うんだ。知らない?」
早くどっか行けよ…
「知ってます!私大好きです!」
はいダウト。誰だよトリートメント。な?こういうやつほど信用出来ない。
現実なんてこんなもんだよ。諦めろ。
「じゃ、推し活してくるからまたね」
「あ、あの!私も着いていっていいですか…?」
え?何が目的だこの女。怖い怖い…弱みでも握られるのか?
俺は彼女の本心を負の方面へと決めつけ、逆に弱みを握ってやろうという方向に舵を切った。あの時のショックが一抹の期待すらさせない。現実の女の子は信用出来ない。
黒髪ロング巨乳美少女とかいたら会ってみたい。