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第48話 兄、水のダンジョンの攻略とテミスのこの先。

【異世界生活22日目】


 俺はこの日、ベッドから起き上がることができなかった・・・。


「お兄ちゃん、これって、新しいスキルの反動だね」

カミラが楽しそうに笑う。

 こいつは人の不幸を見るのが楽しいらしい。


 実際、昨日シオンとかいう害虫、愛しい妹あてなに色目を使う勘違いイケメン野郎を撃退するのに使ったスキル、『妹の為に悪い虫は叩きのめす』のせいで、全身筋肉痛、ベッドから体を起こそうとするだけで全身に激痛が走るのだ。

 シオンとは同レベルだったが、剣技に明らかな差があったようで、新スキルがかなりのバフ効果を俺に与えてくれていたようだ。その分、スキルが切れた後の反作用が半端なかった。

 新スキルはバフ効果でステータスを格段にあげてくれる代わりに上げた分だけ、MPを吸われ、全身の筋肉への反動が激しいそんなスキルだった。

 

「シオン程度でこの筋肉痛だったら、魔王相手にこのスキルを使ったらまさに半年寝込むレベルだな」

俺はそう言い、カミラが笑う。


 とりあえず、今日は俺以外の4人でダンジョンの魔物狩りに行くらしい。

 エリーは俺が早く先に進むために、テミスはもっと強いダンジョンに行くために、さっさと水のダンジョンをクリアしたいらしい。

 フブキはダンジョンが楽しいから、と遊び気分でエリーとテミスに同行、カミラはテミスとエリーからお金が貰えるらしく、渋々手伝うらしい。


 そんな感じで、俺は一日、宿屋のベッドで養生、夕方パーティメンバーが帰ってくるころには何とかベッドから立ち上がり動けるようにはなった。朝起きた時は酷い筋肉痛だったが、今はだいぶ治まった。異世界あるあるなのか、1日寝ると回復する超回復力? それともスキルの反動だからだろうか? とにかく、筋肉痛の回復のスピードは異常だった。朝の痛みも異常だったが。



【異世界生活23日目 朝】


 昨日はその後も1日ゆっくりすることで次の日には筋肉痛もほとんどなくなっていた。

 動くとちょっと痛いが、戦闘できないほどではない。

 なので、今日は水のダンジョンの攻略を再開する。


 テミスとエリーが中心になって昨日ダンジョンの魔物減らしをしてくれたらしく、今日にでも最深部に到達できそうだとのことだ。

 いや、どちらかというと、俺の為にラスボスを残しておいてくれたというのが正解かもしれない。


 いつも通り、途中、装備を交換して水中に潜りながら、第二階層、第三階層を進み、魔物を狩る。

 そして第四階層。昨日4人がかなり積極的に魔物減らしをしてくれたようで順調に攻略が進み、お昼を過ぎるころに第四階層の最深部に到着する。

 第四階層の最深部にも、第三階層同様、中ボス扱いのマーメイド、名称詐欺の、巨大な♀マーマンが陣取っていたが、さすがに一度戦った経験もあり、難なく退治することができた。

 そして、その後ろにはいつもおなじみになった不自然なボス部屋。

 洞窟の中に突然現れる巨大な扉とお城を思わせるきれいな石壁が目の前に現れる。


「この部屋の魔物を倒せばダンジョン攻略成功だ」

テミスが俺にそう言う。

 ここで俺は疑問が生まれる。このダンジョンを攻略したらテミスはどうするのか? また以前のようにソロで町のまわりの魔物を倒してレベル上げを続けるのか?


「そういえば、テミス。このダンジョンを攻略した後はどうするんだ?」

ボス部屋に挑戦する前に、一度休憩をとり、そんな話題を振ってみる。


「そうだな。元の生活に戻るしかないだろうな。父と母を残してこの町を離れることはできない。ああ見えて二人とも生活力は皆無だからな。私が魔物狩りを続けて生活費を足してあげないと、宿屋と食堂の利益だけでは厳しいかもしれない。元執事のよしみでついてきてくれているシュナウズに世話になってばかりだし、他の従業員たちにもなるべく適正な給金は払ってやりたいしな」

テミスがそう言う。


 そうだよな。あの宿屋や食堂はクオリティが高すぎる。

 きっと、貴族だったころの執事やメイド、下働きの人や料理人をそのまま雇い続けているのだろう。経営には詳しくないが、経営者であるテミスの両親も働いている従業員たちもギリギリの節制と好意による労働であの宿屋は成り立っている気がする。


「正直なところを聞きたいんだけど、テミスさんは、お兄ちゃんと一緒に来たいの?」

横で聞いていたカミラが単刀直入にテミスにそう聞く。


「そ、そうだな。たぶん、この町にいてもこれ以上レベルを上げるのは難しい。できればタイヨウと一緒に魔族の国近くまで遠征して、強い魔物を倒せればレベルの上がる可能性は出てくるだろうな。それに、タイヨウ独自のスキルによる経験値効率の良さは捨てがたいとは思っている」

テミスが言葉を選びながら、困った様にちぐはぐとカミラに答える。


 テミスのレベルは現在80。レベル81になるには大きな経験値の壁があるのだ。

 テミスのレベルに対して格下のこのあたりの魔物でレベルを上げるとなるとかなりの時間がかかることが容易に予想できるし、その後のレベル上げの苦労もよそうがつく。


「俺も格上のテミスがついてきてくれると今後も助かるな。剣術もさることながら回復魔法を使える聖騎士パラディンだもんな。剣術や槍術の指導も続けてくれるとありがたいんだけどな」

俺は率直に感想を述べる。


「私一人では、タイヨウお兄さんの目的である魔王討伐の道筋は見えてきませんが、テミスさんみたいな仲間が加わってくれれば少し可能性が見えてくる気がします。少なくとも行けるところまで行ける気はします」

エリーがそう答える。

 確かに王国が総出で挑んで倒せない魔王を討伐。そんな偉業を俺とエリーだけで達成することはおろか、今の状態では道筋すら思いつかない。だが、テミスが仲間に加わってくれるなら、少なくとも魔王に近づく道筋は少し見える気がする。


「お兄様が軍を率いて達成できなかった魔王討伐を私が代わりに達成する。それは私の夢でもあるし、進む方向は同じ気がする。だが、両親を置いてこの町を出るのは今の経済状況を考えると難しい部分もある」

テミスがそう言って難しい顔をする。


「だったら、このダンジョンの攻略報奨をそのままテミスさんを雇う契約金としてあげればいいんじゃない? そのお金で1年以上テミスさんがこの町を空けても大丈夫になるだろうし。ただし、テミスさんは今後、タダ働きだからね。生活費くらいは渡すけど、前払いの契約金分働くまでただ働きだよ」

カミラが意地悪そうな顔でそう言い笑う。

 テミスはそれを聞いて驚くが、すぐに、表情を変え、微笑む。


「それも悪くないな」

テミスがそう言ってもう一度微笑む。


「それじゃあ、それで決まりだね。ダンジョン攻略の報奨のうち、フブキちゃんの分け前を引いた分をテミスさんに渡す。そのお金で、私とエリーちゃんが、魔人族の国の中にある故郷まで帰りつくまで護衛してもらう感じで。その後はテミスさんの判断に任せるよ。ちなみに私は魔王討伐には参加しないからね。テミスさんにもバラしちゃうけど、私、魔人族の国に住む側の人間だから」

カミラがそう言う。

 テミスはカミラが魔人族の国出身と聞いて驚かなかった。今までに何か感じるものがあったのだろう。代わりにフブキが驚いた。そう言えばフブキにも言ってなかったっけ?


「私はここまでしかついて行けないんだよね。お祖父ちゃんとの約束だし。本当はもう少し一緒に行きたかったんだけどね。お祖父ちゃんもミユキも心配だしね」

フブキがカミラの爆弾発言から気を取り直したあと、申し訳なさそうにそう言う。

 腕試しでこの町までは付き合っていい。それがフブキと爺さん、そして俺達との約束だったしな。


「タイヨウ、カミラ、そしてエリー。そうしたらその条件で同行させてもらえないだろうか? 契約金分の仕事はするし、そこから先は私の夢でもある。付き合えるところまで付き合おう」

テミスが申し訳なさそうにそう言い、頭を下げる。


「そうしたら、ここのボスを倒したら、テミスも正式な仲間だな。これからもよろしく頼む」

俺はそう言って、テミスに握手を求める。

 この世界に握手という文化があるのか知らないが、戸惑いながらもテミスが手を伸ばし俺の手を握り返す。契約成立だ。


「あと、テミスさん、契約事項として今日からタイヨウお兄ちゃんのことをお兄様って呼ばないとダメだからね。これ、契約事項だから」

カミラが意地悪そうにそう言って笑う。


「な、なぜ?」

テミスが戸惑う。


「その方が、お兄ちゃんの固有スキルの恩恵を受けやすいからだよ。エリーちゃんも兄弟じゃないのにお兄さんって呼んでいるしね」

カミラがそう言って楽しそうに笑う。人に罰ゲームを与えて喜んでいる悪ガキ状態だ。


「ス、スキルの恩恵が変わるなら、し、仕方ないな」

テミスが顔を赤くしてそう言い、


「これからよろしくお願いします。タイヨウお、お兄さ、、、ま」

テミスが恥ずかしそうにそう付け足す。最後の方はほとんど聞こえないような声で。


「呼びにくかったら今まで通りでいいんだぞ」

俺は可哀想になってそう答える。


「ダメだよ。それじゃあ、面白くないじゃん」

カミラの本音が出た。こいつは人が恥ずかしがるのを楽しみたいだけだ。

 

 そんな感じでテミスの今後の方向性も決まる。


「とりあえず、この先のボスを倒さないと先に進まないしな。そろそろいくか」

俺はそう言い、気を引き締める。


「そうだな、ダンジョン攻略できてからの話だしな」

テミスもそう言い、手に持った三つ又の鉾を構え直す。


「私にとって最後の大舞台、がんばっちゃうよ」

フブキもやる気満々で双剣を鞘から同時に抜く。


「ふふっ、なんだか楽しくなってきたね」

カミラがそう言って笑う。

 エリーはカミラの笑顔を見て俺に向かって呆れ顔で微笑む。

 俺も心の中で同意しながら笑い返す。魔王を倒すという途方もない旅だが、少しだが希望や道筋が見えてきた気がする。


 俺は立ち上がり、ボス部屋とダンジョンを隔てる巨大な木製の扉に向かって歩き出すのだった。


 次話に続く。

 今週もブックマーク1名様ありがとうございます。

 最近、リアルが忙しくて更新が遅れがちですが週末には更新続ける予定なので引き続きよろしくお願いします。

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