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第45話 兄、ドロップアイテムの処理と、テミスに剣術を習う。

【異世界生活20日目 夕方】


 俺達はその後、早めにダンジョン攻略を切り上げ、町に帰ってきた。

 日が暮れる前に鍛冶屋に行き、ドロップアイテムのケルピーの骨について相談するためだ。

 町に着くと、まずはギルドで魔法石の換金をして、分配、その後、鍛冶屋に向かう。


「よう、兄ちゃん、いい武具を手に入れたみたいだな」

鍛冶屋のおっさんがそう言って俺の背負っていた丸盾を褒める。


「武器も手に入れたんだよ」

フブキがそう言って、錆びないように水属性付与された長剣ロングソードを鍛冶屋のおっさんに見せる。

 結局、テミスが持つ予定だった長剣は、フブキが水中での装備として使う事になったらしい。反り刃の方が使い慣れているが直刀でも使えないことはない、最初に使っていた錆びても使い捨てにできる安価な鉄の銛よりはマシとのことだ。


「そういえば、この錆びにくくなる魔導石を私の双剣に移植することとかできないのかな?」

フブキがぼそりと鍛冶屋のおっさんに言う。


「できないことはないが、魔導石を取り除いた長剣ロングソードの方がただの長剣ロングソードになって二束三文の代物になるぞ、どうせ、この町のダンジョン以外では使い物にならない魔導石だ。そのまま使って、ダンジョンの攻略に飽きたら売ればいい。そっちの方が得だと思うぞ」

鍛冶屋のおっさんがそう言う。


「そっか、ここのダンジョン以外じゃ使い物にならないなら仕方ないね。私の双剣に傷が付いたり、バランスが崩れたりするのも嫌だしね」

そう言ってフブキは剣を背中に背負い直す。


 フブキの雑談が終わったので、俺は本題に入る。


「おやじ、ダンジョンでケルピーの骨を手に入れたんだが、これと同じ素材のナイフの在庫はあるか?」

俺はそう言って、背負ったリュックサックを下ろし、中から2本のケルピーのドロップアイテムの肋骨らしき湾曲した骨を二本見せる。


「ああ、ケルピーの骨か。久しぶりに見るな。昔はダンジョンに挑む冒険者が結構いたから、見ることもあったが、最近はさっぱりだ。ただ、昔にダンジョン攻略をしていた冒険者が必要なくなって売りさばいた中古品なら何本かあるぞ」

そう言って鍛冶屋のおっさんは棚から、柄の白いナイフを取り出し、合計3本のナイフが並ぶ。

 革製の鞘から抜くと刀身も真っ白だった。


「柄も白いんだな」

俺は疑問に思ったことをつぶやく。


「ああ。刀身も柄も1本の骨からつなげたまま削り出した造りだからな。刀身と柄の間につなぎ目がないだろ?」

鍛冶師のおっさんがそう言うので、柄の部分と刀身の部分の間を見ると確かにつなぎ目はなくつながっている。


「いくらだ?」

俺はそう聞き返す。

 

「そうだな。ケルピーの骨を加工する代金が普段、銀貨7枚なんだが、その骨と交換なら、中古品だし、1本銀貨3枚でいいぞ」

鍛冶師のおっさんがそう言う。


「ちなみに、骨と交換ではなく、買う場合はいくらだ?」

俺は3本目も買う場合いくらになるか聞いてみる。


「銀貨13枚だな。3本とも買うなら、1本はその値段になる」

そう答える鍛冶師のおっさん。


「お前達、要るか?」

俺はカミラ達に聞いてみる。


「私は要らないかな? マジックバッグに入れておけば錆びないし」

カミラがそう言う。


「私もそうだな」

テミスもそう答える。テミスは自分の家に伝わるマジックバッグを持っているもんな。


「私は、あればダンジョンの攻略が少し楽になりますが、どうせ、武器の交換はしなくちゃいけないですし、高いお金を払ってまで手に入れる必要があるかと言われるとなくてもよい気がします」

エリーはそう言う。


「ちなみに切れ味は普通のナイフよりいいの?」

フブキが鍛冶屋のおっさんにそう聞く。

 テミスの話だと、若干、鋼のナイフより切れ味は劣ると聞いていたが。


「鋼のナイフに比べると、若干、切れ味は劣るが、切れ味は悪くないぞ。それに、水はもちろん、血糊がついても錆びないしな。刃こぼれもしにくいし、鋼のナイフより手入れは楽になるな。まあ、もちろん、鋼のナイフ同様、時々砥ぐ必要はあるが」

鍛冶屋のおっさんがフブキの問いにそう答える。まあ、だいたいテミスから聞いた通りだな。


「私もあれば便利だけどなくてもいいかな? って感じかな? というか、鍛冶屋のおじさん、この骨で槍作れば売れるんじゃないの?」

フブキがそう答える。


「確かにそれは名案だな。槍の穂先を作って木の柄につければ水陸両用の槍が作れそうだ。まあ、また、王国からダンジョンの魔物狩りに報酬が出るようになって、冒険者達がまたダンジョンに潜るようになったらの話だが」

鍛冶屋のおっさんがそう言って感心する。

 骨の長さ的に剣は無理だが槍の穂先にはなりそうだな。


「エリー、この骨で槍でも作ってもらうか?」

俺はそう聞いてみる。


「うーん、この町でしか使わないなら要らないですかね」

エリーは鉄の穂先の銛でいいらしい。水から上がった時に拭いたり、宿に帰ったら手入れをしたりするのが大変ではあるが、銀貨7枚でそれが解消されると言われても確かに勿体ない気はするな。


「とりあえず、ナイフ2本と骨2本を交換しよう」

俺はそう言って銀貨6枚とケルピーの骨を渡す。

 素材を渡すことで安く手に入る2本分だけ購入することにする。

 そして1本は俺が使う事にしてもう1本はどうするか。


「フブキ、ケルピーの骨のナイフ使うか?」

一応興味のありそうなフブキに聞いてみる。


「エリーちゃんが使いなよ。私は双剣も水属性付与の長剣ロングソードもあるから、ぶっちゃけ、それで魔物の魔法石採りとかはできないこともないしね」

フブキがそう言う。

 確かにそう言われると、格闘術がメインで刃物の武器を持たないエリーの方がナイフの需要は多いかもしれない。


「そうしたら、エリー、これを使いな。水に潜る時に装備を交換する手間が少しだけ省ける」

そう言って俺はエリーにケルピーの骨製のナイフを渡す。


「ありがとうございます。大切にしますね」

エリーが嬉しそうにナイフを受け取る。

 ナイフの利用価値より俺にプレゼントされたという事が嬉しいみたいだな。

 俺は反応に困る。エリーの事は好きだが、あくまでも女友達というか妹というか、少なくとも、奥さんや彼女の感覚ではない。歳の差があり過ぎるんだよ。

 俺はそんな事を考えながら悩んでしまう。


 そんな感じで、ケルピーの骨も無事、ナイフに交換ができ、水に潜る時にそのまま装備できるナイフが手に入った。俺に関しては水を潜る時に武器やナイフを交換する必要がまったくなくなったわけだ。


 用事も住んだので、テミスの実家の宿屋に向かう帰路に着く。


 その途中、町の中央にある広場を通り、町のかわら版、この国のニュースが書かれている大きな黒板をついでに見て帰る。

まわりはもう暗くなってきたので、カミラに明かりの魔法を出してもらい、かわら版を読む。


『キッシュの町に14日に到着した勇者アテナ様、なんと、わずか2日で土の精霊の迷宮を攻略。その後、森や町の周辺の魔物を狩り、兵士達と共にアテナ様が町の最外周に防壁を再構築する計画始動、町の再建に大いなる貢献』

そんな内容の記事が書かれていた。


「勇者様には報道官も付いていて、リアルタイムに彼女の近況を周りの町に送ってくれるみたいだね」

カミラが俺に気を遣う様にそう言う。


「とりあえず、あてなは町の最外周の石垣を直し終わるまでこの町に来ることはなさそうだな」

俺はカミラにそう答える。


「ああ、でも勇者様だから、土魔法とかもきっと得意だよ。倒した魔物の魔法石の力で土魔法を使ってどんどん石の壁を作っていっちゃう感じじゃないかな?」

カミラがそう俺に教えてくれる。


「そうなのか?」

俺は勇者の事をほとんど知らないのでそう聞き返す。


「多分ね。歴代の勇者は大抵、剣技が優れるけど、それプラス、魔法も得意で、風火土水の四精霊の魔法に光と闇の魔法、それと回復魔法も得意なのが一般的な勇者って感じかな?」

カミラがそう教えてくれる。


「何かあったのか?」

一緒に鍛冶屋についてくれていたテミスがかわら版を見つつ、俺に聞いてくる。


「ううん、なんでもないよ。タイヨウお兄ちゃんは、勇者様のファンなんだよ」

慌ててカミラがそうフォローする。


「勇者アテナか・・・。アテナ、タイヨウの本当の妹の名前と一緒だな」

テミスがかわら版を見ながらそう呟く。


「あちゃ~、そう言えば私、お兄ちゃんの本当の妹さんの名前教えちゃってたか」

カミラがバツの悪そうな顔でそう言う。

 そういえば、以前カミラがテミスに余計な事を結構話したんだったな。


「まあ、そう言うことだ」

俺はテミスにそう言う。


「タイヨウの妹、勇者アテナと合流すれば魔王も倒せるんじゃないか?」

テミスが周りに聞こえないように抑えた声で俺に言う。


「それができればいいんだが、俺は欠陥転生者でお荷物なんだ。何の力もないから、勇者のあてなのまわりをうろつくと、王様に処分されてしまうかもしれないらしい」

俺は自分の無能を自嘲するように笑い、そう答える。あてなに渡された手鏡に書かれた『逃げて』の言葉を思い出しつつ。


「そうか、そんなこともあるんだな」

テミスはバツの悪そうな顔でそう答え、無言でかわら版を見る。

 もしかしたら、テミスも王様に謀殺されたお兄さんの事を思い出しているのかもしれない。

 というか、俺が別の世界からきた転生者であることはどうでもいいのか?


「まあ、今の話で、タイヨウが妹の為に魔王を倒したいと言っていた理由が分かってよかったよ」

テミスがそう言い、微笑む。

 こいつも笑うことがあるんだな。というか、初めて会った時より感情を出してくれるようになったよな。


 俺とカミラはその後、テミスに事情を説明しつつ、テミスの実家の宿に向かって歩く。 

 そして、宿につき次第、みんな、浴場を借りて湯あみをする。

 俺は節約のために庭の井戸で水浴びだけどな。


「今日は町に入る前に川でカエルの粘液を落としましたけど、やっぱり、お湯と石鹸で汚れを落とすとさっぱり感が違いますね」

エリーが湯あみを終え服も着替えて食堂で合流する。

 他の仲間達も次々と湯あみと着替えを終え、食堂に降りてくる。そして、テミスも何故か食堂に来て一緒に食事をとるようだ。こう見えて結構寂しがり屋なのか?


 そんな感じでテミスも加えた5人で食卓を囲み夕食を食べ、食後はテミスから槍術や剣術を習う。

 今日は特に、武器が銛から長剣ロングソードに変ったので剣術を教えてもらう。


「タイヨウ、お前、剣術をかじったことあるな?」

俺に素振りをさせたところでテミスがそう聞いてくる。


「ああ、元の世界じゃ、学校という国中の子供が全員勉強させられる施設があってな。そこでの教育の一環として初歩の剣術を習うんだよ」

俺は正直に答える。


 なんだかんだ言って、俺、というか日本人全般、中学高校と剣道を授業で習うので剣術の基礎は何となくわかるのがありがたい。まあ、できるのは素振り程度だけどな。


「なるほどな、素人ならただ棒を振るうところから始まるんだが、タイヨウは剣の作りを知っているような素振りをしていたからすぐにわかった」

テミスがそう言う。


「だが、素人に毛が生えた程度だ」

そう付け足すテミス。厳しいな。


「とりあえず、素振りは自分一人でもできそうだからな。私との訓練は2時間組み手をする。それで剣の使い方と体の動かし方を体に叩き込め」


 そんな感じで、とりあえず、二人とも木刀を持ち、組み手を始める。

 槍の鍛錬の時と同様、テミスは防具なしの身軽な衣装、俺は前の町でそろえた防具一式を身に着けている。テミスは俺に木刀を当てられるつもりは全く無く、俺を木刀で叩く気は満々だ。


 体育の剣道の授業と野球部を続けていたおかげかわずかな記憶と運動神経でなんとなくだが組手らしい組み手になる。

 ただし、こちらの世界では直刃の両刃の剣がおもに使われていて、フブキが使うような反り刃の片刃刀は珍しいようだ。

 しかもこの世界のスタンダードな武器、長剣ロングソードは両刃で剣の裏側、自分に向いた方向の刃も有効に使おうとする剣術になっている。刃の裏を使って敵の攻撃を受け逃したり、絡めとったり、元の世界の剣道が通用しない部分もあるようだ。

 まあ、熟練した剣道家なら峰を使ってからめとる技や相手の剣を受け流す技もあるのかもしれないが、生憎おれは中学高校の体育のレベルの剣道しか知らない。


 俺が、片刃等の反り剣での戦い、要は日本の剣道の戦い方をするのに対し、テミスはそれとは違う戦い方をする。両刃を活かした攻撃、そして剣の裏刃を使った防御や絡み取り、受け流し、俺は慣れない動きにバランスを崩し、脳天にキツイ一撃を受ける。


「タイヨウ、お前、片刃の反り刀の剣術を習ったな? 動きに癖がある。片方の刃しか使っていないし、剣の握り方も、シェイクグリップしか使えないみたいだしな」

何度か組み手をして、何度か俺が脳天にキツイ一撃を受けたあとでテミスがそう言う。

 まあ、確かに、元の世界で習った剣道は片刃の反り刀、日本刀を想定した剣術だもんな。


 そんな感じで、剣の握り方から学び直し、両刃を上手く使う方法を1から教えてくれるテミス。

 日本の剣道の場合シェイクグリップ、構えた時に刃の向きが正面に行くような握りになるが、両刃の剣の場合はサムグリップと言って、シェイクグリップを90度回転させた握り、要は剣を地面に置いて真上から握るようなグリップをするらしい。それにより両方の刃を使えるようになるそうだ。

 もちろん、両刃剣の場合でもシェイクグリップを使うこともあるし両方をうまく使い分けるそうだ。 


 そんな感じで両刃剣の両方の刃を使う戦い方を2時間みっちり叩き込まれるのだった。

 うーん、剣術って奥深いな。


 その後も自主練と称して、真夜中まで、素振りをしたり、シャドーボクシングのようなまねごとをしたりして今日習ったことを体に叩き込む俺だった。


 次話に続く。

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