第44話 水のダンジョン中ボスの処理と第三階層へ
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【異世界生活20日目 昼過ぎ】
「ワーフロッグの強い奴と聞いてどうなる事かと思ったが、何とかなったな」
俺は第二階層のボス部屋、ボスの馬のような魔物、ケルピーとワーフロッグジェネラルを倒し一息つく。
「でも、銛が折れてしまったな」
テミスがそう言い、俺は慌てて借りた三つ又の槍を返す。
「そうしたら、タイヨウお兄さん、この武器を使ったらどうですか? ワーフロッグジェネラルのドロップアイテムのようです」
エリーがそう言って、鞘に入った長剣を俺にくれる。
「これも使えるんじゃない? 兄貴?」
同じようにフブキが丸盾を持ってきてくれる。
どちらも、普通の武器と盾だが、盾の縁や剣の柄、鞘の金具など全体的に水色で装飾されていて、カミラやテミスが使っている三つ又の鉾と雰囲気が似ている。
そして、盾にも剣にも小さな宝石、魔導石が付いている。
「それは、水属性の付与がされていて、水に入れても錆びないようになっているからいいぞ」
テミスがそう言う。
「そうなのか?」
俺はテミスに聞き返す。
「ああ、アレン兄様とこのダンジョンを攻略したときにもドロップしたからな。その時はお兄様の仲間の人達が使っていたな。ちなみに、この三つ又の鉾は第四階層の取り巻きのドロップだ」
テミスがそう教えてくれる。軽いネタバレをされつつ。
「そうしたらありがたく使わせてもらおう。剣の使い方はよく分からないけどな」
俺はそう言う。
「まあ、斧使っていた感じで、刃の方向を意識して使えば折れることはないと思うよ」
双剣使いのフブキがそう教えてくれる。
「タイヨウお兄さんはメイスも使ってましたし、剣でも大丈夫じゃないですかね?」
エリーもそう言うのでとりあえず、刃の向きに気を付けながら使ってみよう。
とりあえず、テミスに簡単に剣の握り方と振り方を教えてもらい、軽く素振りをしておく。
「それと、長剣もう1本と、胸鎧も落ちてたけどどうする?」
フブキがそう言って俺のサイズの胸当てと長剣1本を持ってくる。
「胸鎧は倒した人間のサイズにリサイズされてドロップするから、タイヨウが装備すればいい。これも水中で錆びない水属性付与がかかっている」
テミスがそう言ってくれる。
「長剣は誰も使わないし、テミスさんが持って帰ればいいと思うよ」
カミラがそう言い、みんなも頷く。
ちなみにフブキは反り剣じゃないと合わないそうだ。
「もしかして、テミスさんのビキニアーマーもここのドロップ品?」
カミラがいやらしい目でテミスのビキニアーマーを見ながらそう聞く。
「まあ、そんなところだ」
テミスが恥ずかしそうにそう言い、俺の視線から隠すように体をひねる。
毎回それをやられると俺も結構精神ダメージが大きい。俺はいやらしい目では見ていないぞ。
「あとは、ケルピーからは、ケルピーの骨とかいう素材が落ちたよ。肋骨かな? 2本ドロップしていたよ」
フブキがそう言って白い動物の骨を2本抱えている。
「それは、鍛冶屋に持っていって加工代を支払えばナイフに加工してもらえる。骨製なので水で錆びない。まあ、切れ味は鋼より少し落ちるがな」
テミスが俺にそう教えてくれる。
「加工を待つ時間があればその骨をナイフに加工してもらってもいいが、すぐにできる物じゃないよな?」
俺はテミスに聞いてみる。
「さすがに1本につき1週間はかかるだろうな。在庫があれば、差額を払ってナイフと交換してもらえるかもしれない。昔はダンジョンに挑む者も多かったし鍛冶屋にナイフに加工済みの在庫があるかもしれない」
テミスがそう言う。
「じゃあ、今日は少しだけ早めに帰って、鍛冶屋に寄ってみようよ。あと、魔法石の換金もね」
カミラがそう提案するので、今日はもう少し進んだら早めに帰ることにする。
とりあえず、大きな骨2本は俺のリュックに入れ、今まで使っていた小盾はカミラの自称マジックバックに入れさせてもらい、長剣と丸盾、そして錆びない胸鎧は今着ている皮の服の上から着て、今まで来ていた皮の胸鎧は骨と一緒にリュックにつめておく。
あまり、カミラの自称マジックバックに詰め込むとそれがマジックバックではなくマジックボックスというレアスキルだとみんなにバレてカミラが嫌がりそうだしな。
「丸盾もいい感じだ。フブキのサイズにリサイズされているんだろう。少し小さめで素人の俺でも使いやすそうだ」
俺はそう言ってフブキを褒める。
「怪我の功名ってやつ?」
そう言ってフブキが笑う。
さびない鉄の胸当ても少し重いが、泳ぎの邪魔にならないようなデザインと最低限の面積になっていていい感じだ。
ちなみに、カミラの話では、ボス部屋の取り巻きのワーフロッグジェネラルはレベル45、ケルピーはレベル50だったらしい。結構な強敵だったんじゃないか。
そんな感じで、俺の装備を一新し、先に進む。
ボス部屋のもう一つの扉をくぐると、元の岩むき出しの洞窟のようなダンジョンに戻る。
そして行き止まり。
横に流れている川を潜れってことだろうな。
「エリー、フブキ、装備の交換を。それとカミラ、もう一度魔法一通り頼むな」
俺はそう指示する。
エリーとフブキが鉄製の武器と腰に付けたナイフをカミラに渡す。俺も腰のナイフが錆びないようにカミラに渡す。なるほど、さっきの骨をナイフにするとこの手間が省けるわけか。
エリーとフブキは代わりに銛を受け取り、準備完了。
第一階層の最後と同じように、カミラが最初に雷の魔法を連射して川に潜んでいる魔物を感電死させる。
その後、風の魔法で顔のまわりに空気の膜を作ってもらい、川に飛び込む。
すると、川の上流、行き止まりの岩にできた穴の先にもなにかが飛び込む気配。魔物か?
テミスを見ると、事前に決めておいた手信号で、『戻れ』と合図を送ってくる。
俺は頷き、反転、後ろから続いて飛び込んできたフブキとエリーとカミラにも、手信号で『戻れ』と伝え、急いで元の所に戻る。
そして、後ろを振り向くと魚のような人間が凄いスピードで泳いでくる。
テミスと俺はそいつらに警戒しながら、泳いで足の着くところまで戻る。
そして現れる魔物。半魚人!?
「半魚人だ。鱗が結構硬いから気をつけろ。剣で軽く薙いだぐらいじゃ、鱗は切れないぞ。思い切り突くか叩き切れ」
テミスが全体に向けてそう叫ぶ。
「いつもの武器じゃないのが不安だよ。カミラちゃん、武器返して」
フブキが使い慣れない銛を抱えて不安そうにカミラにそう言う。
「武器交換している暇はないよ。銛で戦って。というか、そんな暇あったら1発でも多く魔法を使った方が早いし」
カミラがそう言って、水面から出てくるマーマンの喉元に魔法の三つ又の鉾、『水精霊の三叉槍』で突き刺す。
テミスも自分の三つ又の鉾で応戦する。
「テミス、早く水から上がれ。カミラに魔法を使ってもらう」
俺はそう言い、テミスは対峙するマーマンを三つ又の鉾で突き刺すと慌てて川から上がり、カミラも川から上がる。
そして、それ追いかけるようにわらわらとマーマンが川から上がってくる。
「お兄ちゃん、魔法を詠唱するから、川から上がってくるマーマンを抑えて」
カミラがそう言って俺の後ろに逃げ込むと、魔法の詠唱を始める。
俺は剣を構え、その横にテミスとエリー、フブキも並ぶ。
「フブキ、使えそうならこれを使え」
テミスがそう言い、さっき拾った長剣を投げ渡す。
「ありがとう、テミスさん。こっちの方がまだ使えそう」
フブキがそう言ってお礼をすると、銛をマーマンとは反対側に放り投げて長剣を鞘から抜き、両手で構える。
ちなみに俺は、長剣を片手で使っている。片手剣としても両手剣としても使えるちょうどよい長さの剣だ。
「来るぞ」
俺はそう言い、対峙するマーマンの銛を盾で受ける。
ほとんどのマーマンが石を削って作った穂先のついた粗末な銛を装備している。
銛にする木があるってことはこいつら専用の出入り口もあるってことかもしれないな。
俺はそんなことを考えながらマーマンの銛を盾でいなし、銛の柄を剣で叩き折る。
そして、返し刀でマーマンの首を切り裂くが、鱗にはじかれ、表面を軽く斬った程度の傷しか与えられない。
マジでこいつらのうろこ硬いな。
俺は今の攻撃でよろけたマーマンを鱗に逆らわないように下からすくい上げるように剣で突き、喉元に深々と剣が刺さる。
なるほど。こいつらは上から叩き斬ろうとすると鱗にはじかれるが、下からすくい上げるように突くと鱗を剣先が避けるように剣が吸い込まれていく。
妹のあてなの為に覚えた料理がこんなところで役立ったな。魚の鱗は尻尾の方から撫でると簡単に取れるのだ。マーマンも同じように鱗の生えている向きを意識して剣を振るえば何とかなりそうだ。
周りを見ると、フブキは天性の才能で気づいたのか、下からすくい上げるように両手でフルスイング、マーマンの首が大きく切り裂かれる。こいつ、反り刃の剣じゃないと合わないと言っていた割に直刀の剣も結構気に入っているんじゃないか?
エリーもフブキの攻撃を見て理解したのか、銛を下から上に向けて突き、半魚人の喉元に銛を突き刺す。
そして、カミラの魔法詠唱も終わり、雷の魔法を連射、川から上がり切らなかったマーマンが感電して絶命していく。雷魔法1発では死なないようだが、3発も喰らえばさすがに生きてはいられないようだ。
「あー、魔法石が流れていっちゃうよ」
カミラが残念そうにそう呟く。
川の深い方で雷魔法を受けたマーマンはそのまま川に浮かび上がると、死骸は流れに乗って流されていく。
俺とテミス、エリーとフブキは陸に上がった残りのマーマンを斬り倒し、全滅させる。
そして魔法石を回収し、落ち着いたところで、もう一度川を潜って第三階層に移動する作業をする。
さすがにカミラが雷魔法を連発したおかげか、マーマンは追撃してこない。
無事に第三階層の川岸に上陸したところで、少し離れたところで様子を見ていたマーマンが襲ってくる。
「こいつらを少しでも多く減らすのが今日の作業だな」
テミスがそう言い、襲ってくるマーマンに対峙する。
俺もテミスの横に並び、マーマンに斬りかかる。
カミラとエリーは急いで武器を交換し、川を使って回り込もうとするマーマンを倒す。
カミラはテミスが横を取られないようにしたり、エリーやフブキに川を使って迂回してくるマーマンが集中したりしないように、魔法攻撃でマーマンの全体の動きをコントロールしてくれている。
「ワーフロッグに比べるとマーマンの方がまだ倒しやすい気がするな。マーマンはかなり鱗が固くて防御力が高いが、攻撃が当たるだけまだ楽な気がする」
俺はマーマンを倒しながらそう言う。
ワーフロッグは動体視力が凄すぎて攻撃が当たらなかったもんな。
「お兄ちゃん、そうは言っても、マーマンのレベル40だからね。ワーフロッグのレベルが35だったから、それより結構強いはずだよ。攻撃当たらないように気を付けてね。当たったら結構痛いよ」
カミラがそう言う。
レベル40か。結構強いな。
「マーマンにはべとべとの舌攻撃がないのもありがたいです」
エリーがそう言って嫌な顔をする。
エリーはカエル嫌いだもんな。
そんな感じで不慣れな長剣を使い、たまにマーマンの鱗に跳ね返されたり、マーマンの銛が露出している二の腕や太ももにかすり、小さい傷を受けたりしつつも、何とか倒していき、第一階層や第二階層でやったように、分岐点や行き止まりも進んで、魔物を減らす作業をする。
たまに、巨大なワニや、カニ、ザリガニなど、多分、マーマンの普段のエサになっている魔物なども倒したりして、ダンジョンを掃除していく。
そして、カミラが夕方になったと時間を教えてくれたので、そこで戦闘終了。撤退に移る。
今日は第3階層の半ばほどで退却することとなった。
今日早く帰るのは、さっき拾ったケルピーの骨を鍛冶屋に持っていって在庫があればナイフと交換してもらう為だ。まあ、在庫がなければ素材として買い取ってもらう。
今日の中ボス戦で、水に対応できる武器が増えたのはありがたい。これで、ケルピーの骨で作る錆びないナイフも手に入ればさらに水を潜って進まなければいけない場所での鉄の武具や鉄の道具の持ち替えの手間がさらに省けるわけだ。
帰り道も魔物を倒しながら帰り、面倒臭い、武器を持ち替えて川を潜って階層を移る作業を2回行って、ダンジョンを出て町に帰るのだった。
次話に続く。




