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第39話 兄、水のダンジョン挑戦に向けて

 ブックマーク2名様、☆1名様ありがとうございます。

 それと誤字脱字報告いつも助かっております。

【異世界生活16日目 朝】


「カミラ、起きろ。今日は宿を引っ越す予定だったろ?」

「うーん、もう少し寝かせて」

俺はカミラを叩き起こす。こいつに付き合っているとキリがないからな。

 そして、フブキも朝が弱い。カミラの隣でぐっすり寝ている。


 今日から、道案内をしてくれている女騎士のテミスの実家の宿にお世話になることになっている。

 

「私はギルド直営の宿でもよかったんですけどね」

エリーが残念そうにそう言う。


「テミスの実家の宿なら、トリプルルーム、ベッドの数を調整できる部屋があるらしいからな」

俺はエリーにそう言い、エリーがさらに残念そうな顔になる。


「私はタイヨウお兄さんと一緒のベッドでもよかったんですけどね」

エリーが引っ越しに消極的なのはそこらしい。


 この町から、フブキが仲間に加わり、ツインルームではベッドが足りなくなった。

 しかもギルドの宿はトリプルルーム、3人部屋というものがなく、4人部屋はそもそも数が少なく、常に満室だった。

 そうなるとツインルームを2つか、ツインルームとシングルルームを1つずつ借りるという話になるのだが、ツインルーム二部屋は宿泊代が高すぎる。ツインルームとシングルルーム1つずつは、誰がシングルルームに行くかという話になり、俺が行くことはエリーとカミラが反対、カミラかフブキがシングルルームを借りるのは贅沢過ぎる、というか、宿代を自分で払いたくないとなり、結局ツインルームで俺とエリーが一つのベッドで寝て、カミラとフブキがもう一つのベッドで寝るという、不謹慎極まりない状況が続いていたのだ。


 しかも、あのあと、元執事で宿の支配人のシュナウズさんに宿の話も聞いたところ、テミスの実家の宿は、ツインルームにベッドを一つ移動させるだけなので宿代も今と同じ値段でいいという。しかも、ベッドシーツの交換が毎日無料だそうだ。サービスが良すぎる。


 そんな感じで、ギルドで魔法石を換金してから、俺は、引っ越しに乗り気でテミスの実家に向かう。

 魔法石の換金のためにわざわざギルドに足を運ばないといけないのは面倒だが、宿のサービスの良さや食事が美味いと聞くので引っ越しする価値は十分にあった。


 そして、宿に着くと、シュナウズさん自ら部屋を案内してくれる。

 外から見た感じ、綺麗そうな宿だと思ったが、予想以上に中もよく掃除がされていて綺麗だった。しかも、ギルド直営のツインルームより広い。ベッド3つ入れても丸テーブルが一つ置けるスペース。もともとトリプルルームだったといわれても疑わないレベルの広さだ。


「ベッドはどうするの?」

フブキがさっそくベッドの争奪戦を始める。


「タイヨウ様? 4人部屋も空いていますが、いかがですか?」

案内してくれたシュナウズさんがそう聞いてくる。


「お金がないからそれはいいよ。私とエリーちゃんが一緒に寝ればいいし」

カミラがそう言う。

 さすがに4人部屋になると宿代も上がる。カミラも俺が宿代を払っている事を配慮してくれているようだ。というか、宿代が上がるようなら少し払わせる気もあったんだがな。


「やったぁ、私一人でベッド使ってもいいの?」

フブキがそう言って喜ぶ。


「フブキちゃん寝相悪いしね」

カミラがそう言って呆れ顔になり、フブキが頬を膨らます。


「私がタイヨウお兄さんと一緒でもいいですよ?」

「それは俺がお断りだ」

エリーの提案に俺は速攻でお断りを入れる。今度はエリーが頬を膨らます。


「タイヨウ、部屋は落ち着いたか? 朝食を食べたら、注文していた装備を取りに行くぞ」

そう言って、テミスが部屋を覗きに来る。

 テミスは自分の部屋があるので、今後も朝合流する感じだ。まあ、いつまで案内してくれるのか分からないが。


「うん、予想通り、朝食も美味しいね」

カミラが嬉しそうに笑い、フブキもうんうんと頷く。

 確かに料理人の腕が明らかに違う。今までのギルド直営の酒場が町の定食屋や安い居酒屋レベルだったのに対し、ここの料理はホテルのレストランのシェフが作っているような、根本的な味付けや調理法が違うのが分かる。

 もちろん、あくまでも宿屋。食材や料理のレベルは庶民向けに落としてあるのだが、味付けが奥深いのだ。


「本当に美味しいですね」

エリーがそう言って舌鼓を打つ。


「ここの料理人は、元々、私の家が貴族だったころからよくしてくれた料理人だからな。没落してからも付き合わせてしまった。申し訳ない気持ちだがな」

何故か一緒に朝食を食べているテミスがそう言い、その話の内容に、みんなが驚く。

 

「もう、シュナウズから聞いているんだろ?」

テミスが俺にそう聞いてくる。


「ああ。ということは、俺達の事もどこまで聞いた?」

俺はそう聞き返す。


「魔王を倒しに行くという事まで」

テミスがそう答える。


「あくまでも、魔王を倒しに行くのはお兄ちゃんだけだけどね」

カミラがスクランブルエッグを頬張りながらそう付け足す。

 そう聞いて、テミスが俺の顔色を伺う。

 

「ああ。あくまでもカミラとエリーは魔人族の領地にある故郷に帰る為に同行しているだけだし、フブキは武者修行、同行はこの町までの予定だ」

俺はテミスにそう説明する。


「わ、私はタイヨウ様の妻ですから、最後まで付き合います」

エリーが慌ててそう付け足す。


「結婚の話はエリーのご両親に相談してからだ。命を助けてもらったことには感謝しているが、獣人族のしきたりだけでエリーに嫌々結婚させるつもりはないからな」

俺はそう答える。


「嫌々なんかじゃじゃないのに」

エリーが物言いたそうにそう呟くが今はスルーする。


「協力してくれる仲間がいればいいが、いなければ一人でも魔王を倒す。それが妹の為になると信じているからな」

俺は自分に言い聞かせるようにそう言う。


「ちなみに、妹っていうのは私の事じゃないよ。アテナちゃんっていう本当の妹がいるの。その子の為に、この妹馬鹿なお兄ちゃんは魔王を倒すんだってさ」

カミラがそう言う。


「カミラ、それ以上余計な事を言うなよ」

俺はそう釘を刺す。こいつ、色々嘘の事をバラしやがったよ。これ以上放っておくと、妹のあてなが勇者って話までばらしそうだしな。

 カミラが文句ありそうな顔で口をつぐむ。


「妹の為に魔王を倒すか・・・」

テミスが独り言のようにそう呟く。

 その後は何もしゃべらず、沈黙が続き、黙々と朝食を食べる。


「そういえば、今日はどうするの? ダンジョンに行けそう?」

沈黙が辛かったのかカミラがそうテミスに聞く。


「2~3日はダンジョンまでの道のりを掃除だな。昨日のような戦いがずっと続いてはダンジョンまでつくことができない。ある程度魔物を減らす必要がある」

テミスが俺にそう答える。

 無視されたカミラが不機嫌そうだ。

 テミスは本当に俺としか会話ができないようだ。過去に色々あったのかもしれないな。

貴族の家の没落や兄の死、そして、王国の謀略。人間不信になるには十分過ぎる経験をしたのかもしれないな。


「それと、注文しておいた装備も取りに行かないとな」

俺はそう付け加える。


「そうだな、実際ダンジョンに入るのは3~4日後だが、余裕があるうちに受け取りに行こう」

テミスがそう言い、朝食のあと、仕立屋や鍛冶屋に水に潜る為の装備を引き取りに行くことになった。

 


「皆さん、試着はされていきますか?」

「いやいい。ダメだったらまた直してもらいに来る」

仕立屋の提案を速攻で却下する俺。

 ここで、こいつらに水着なんて着せようものなら余計なフラグが立つのが目に見えているからな。

 今日の魔物狩りに行けなくなる。


「え~、ちょっと着てみたかったのにな」

「私もタイヨウお兄さんに見て欲しかったです」

カミラとエリーが不満を漏らす。

 そうなると思ったから却下したんだ。


「とりあえず、俺が夜の魔物狩りにでも行っている間に試着してくれ」

俺はそう言い、さっさと仕立屋を後にする。


 そして、仕立屋で水着もどきを受け取り、鍛冶屋で水に濡れても大丈夫な皮鎧を受け取り、最後に靴屋に、水の中でも脱げない、泳ぎやすい靴を受け取り、宿屋に置きに帰る。


「今日は水着を着なくてもいいんですか?」

エリー名残惜しそうに水着を抱えて言う。


「今日、明日はどうせダンジョンまでたどり着かないんだ。わざわざ、劣化した装備を着ることはない」

俺はそう答え、テミスも同意する。


「水着が必要になったらその時に言う」

テミスが俺にそう答え、エリーががっかりした顔をする。


 とりあえず、水属性のダンジョンの準備もでき、今日はとりあえず、いつもの装備でダンジョンまでの道のりの魔物狩りをする。


「というか、後ろの馬車はなんだ?」

俺はテミスに聞く。

 なぜか俺達の後ろに昨日カニやザリガニを解体した商人たちが馬車に乗ってついてきている。


「カニやザリガニを回収しながら進んだ方が早いからな」

テミスがそう言う。

  

「有料で魔法の氷出すよ」

カミラが商人たちと交渉している。

 余計な事するなと言いたい。


 そんな感じで、俺達がカニやザリガニやワニを倒すと後ろからついて来る商人たちが軽く解体して馬車に積んでいく。そして、カミラが川の水を氷に変えて木箱に放り込んでいく。

 俺達はいったい何をやってるんだ?


 昨日は、カニの死骸を守るために立ち往生してしまったが、今日はすぐに解体して馬車に乗せてしまうので順調に先に進める。

 まあ、ぶっちゃけ、早く進むためにはカニやザリガニの死骸を放置しちゃえばいいんだが。

 金にもなるし、町の人の役にも立つという事でまあ、有効活用していこう。


「というか、商人のおっさんたち、普段の仕事は大丈夫なのか? 店とかあるんだろ?」

俺は気になってテミスに聞く。


「ああ、店はかみさんや店員に任せてあるから大丈夫だ。それより、これだけいい食材が手に入るんならお前さん達について来る方が絶対正解だよ」

馬車でついて来るおっさんがそう言って笑う。


 とりあえず、日が暮れだすまでダンジョンに向かって歩き続け、魔物を狩り、商人のおっさんたちはザリガニやカニを解体して馬車に積んでいく。


「お嬢、そろそろ帰るか? 町に帰る前に日が落ちてしまうぞ」

商人のおっさんがそう言い、テミスが頷く。


「タイヨウ、そろそろ帰るぞ。続きは明日だ」

テミスがそう言うので俺は頷き、帰路に着く。


「ちなみに、今日はどれくらい進めたんだ?」

気になって俺はテミスに聞いてみる。


「そうだな、今日は道のりの半分以上は進んだんじゃないか? 明日にはダンジョンまで行けるようになると思う。本格的なダンジョン攻略は明後日からだな」

テミスがそう言う。


 帰り道も、ワニやザリガニに襲われながら町に戻り、商人たちは食材の代金をテミスに渡すとホクホク顔で帰っていく。


「それじゃあ、俺達も帰るか」

俺はそう言って、テミスの実家の宿に向かって歩き出す。


「今日も体中、カエルやカニやザリガニの臭いがひどいです。早く湯あみがしたいです」

エリーがそう言ってぐったりする。

 カエルの唾液やザリガニの体液が結構時間がたつと臭いんだよな。

 さすがに俺も夕食の前に井戸で水浴びをして着替えてから夕食を食べる。


 夕食も素材自体は質素で値段も安かったが、やっぱり美味い。料理人の腕、味付けや調理方法が根本的にちがうのだろう。

 安くてうまい夕食が食べられ、みんな満足で部屋に上がっていく。

 その後俺はもう一度町の外に出て魔物狩りをする。せっかく1日戦っても疲れないスキルっていうのがあるしな。


 そんな感じで次の日も同じように魔物狩りをしながらダンジョンをめざし、日が暮れる前にダンジョンまでは着くことができた。とりあえず、これで、魔物狩りも一段落、ダンジョンまでの道はクリアにすることができた。


 明日から、本格的なダンジョン攻略、水のダンジョン攻略が始まる。 


 次話に続く。

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