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第4話 兄、とりあえず、宿屋と武器屋に行く。

 俺は今、傭兵ギルド、要は異世界のハローワークのようなところに来ている。

 それが、妹に会うための最短ルートだと思うからだ。


「それで、受付嬢さん、さっそく仕事を斡旋してもらいたいんだが、王城での兵士の仕事はできるか?」

俺は、さっそく、妹への最短ルート、王城への就職活動を始める。


「受付嬢さんだなんて、これからお世話になるので、アイナとお呼びください、タイヨウさん」

受付嬢、もとい、アイナさんがそう言って笑う。ギルド登録したせいか、急に距離が近くなり焦る俺。


「そ、それじゃあ、アイナさん、仕事の斡旋をお願いしたいんだけど」

俺は改めて聞き直す。


「はい。王城での兵士の仕事ですね。残念ながら、タイヨウさんではレベルが足りませんし、王国の大事な要所を守るわけですから人物信用度が必要になります。もう少し依頼難易度の低い仕事から受けてみてはどうでしょうか?」

受付嬢のアイナさんにやんわり断られる。身元不明で信用度ゼロだからな。


「ちなみに、信用度の上げかたはさっき聞いたが、レベルというのはどうやって上げればいい?」

俺はレベルという概念が気になって聞いてみる。


「レベルですか? 方法はいくつかありますが、一つは鍛錬による上昇、もう一つは魔物と戦って経験を積む方法ですね。剣術の教室などもありますが、比較的裕福な方がお金を払って通う場所なので、人に習うのはお金が貯まってからってところでしょうか? お金に余裕のない方はまずは、実戦あるのみ?」

アイナさんがそう言って、俺を応援してくれる。

 会話の内容は雑だがな。


「魔物討伐の依頼を受けながら魔物を倒すのはどうでしょうか? 魔物を倒して、魔核と呼ばれる魔法石を集めることで報酬も貰えます。そして魔法石は一定の魔道具に入れると燃料としても使えます。ランプの油のようなものです」

そう言って、この街の近くに生息するらしい、魔物一覧とそれぞれの魔核がある場所が書かれたA4くらいの羊皮紙を見せてくれる。

 

「これって、もらえるのか?」

俺は羊皮紙に手を伸ばす。


「いえ、有料です。1枚銀貨4枚です」

アイナさんがにっこり笑う。

 

「羊皮紙は高いな」

俺は渋々それを買う。


「あまり町や街道から離れないでくださいね、強い魔物がでますから。大体の生息地と地図は後ろに貼ってあるのでご参考になさってください」

アイナさんがそう教えてくれた。


「見るのは無料だよな?」

「はい、見るだけなら無料です」

俺は冗談でそう言い、アイナさんも付き合ってくれる。


「じゃあ、とりあえず、その仕事をしてみるよ」

俺はそう言って、とりあえずレベル上げに専念することにした。

 ぶっちゃけ、生活するだけなら、王様からもらった金貨でなんとかなりそうだしな。

 とりあえず、その仕事は出来高制なので登録は必要なし、魔法石を持ってくれば換金してくれるそうだ。大体の相場もさっき買わされた魔物一覧に書いてあった。


 生活と言えば衣食住だ。衣服はそろったが、食べ物と住むところか。あと、魔物と戦うなら、子供のころにやったRPGみたいに武器屋で買わないとダメか。

 俺は、そのあたりの事もアイナさんに聞いてみる。


「宿と食事でしたら、隣の施設が食堂兼酒場、宿屋も併設しているので便利ですよ。食事は市場などで食べたりする人もいますね。それと武器などもこの建物の周りにいくつか店があるので見て見るといいですよ。武器屋さんのお勧めは右二つ隣の武器屋さんです。初心者にも親身に相談に乗ってくれるのでお勧めします」

アイナさんが色々教えてくれた。

 宿屋は傭兵ギルド直営で治安はいいそうだ。問題を起こせばギルドから締め出されるらしい。


 俺はとりあえず、アイナさんにお礼を言い、アイナさんに方角や地図の見方、現在地を聞きながらこの街の地図と周りの地図、魔物の生息地を確認して、隣の酒場兼食堂兼宿屋に移動し、部屋を一つ借りる。チェックアウトするまで借りっぱなしで毎朝清算とのことだった。今日は前払い、1日分の銀貨1枚を払うと部屋の鍵を貰えた。酒場の奥、階段を上がると2階が宿屋のようだ。


 とりあえず、部屋に行く。粗末なベッドと机、ランプ、そして洋服タンスがある。ベッドのシーツは良く洗われているようだ。

 元の世界の服を洋服タンスに入れ鞄を空にする。そして、妹から最後に貰った二つ折りの鏡も大切に洋服ダンスにしまう。

 貴重品は置くなとのことなので財布は持ち、部屋をでる。 


 宿を出るときに、受付のおばちゃんに注意事項を言われる。

 ベッドシーツを洗って欲しければ受付に出す、服も出せば洗ってくれるらしい。有料で。布製の敷布団と毛布も丸洗いできるそうで、洗った物と交換して欲しい場合は受付に持ってきて交換、もちろん有料だ。あと、ランプの油の補充も有料だ。早く寝ろとの事だ。

 ベッドメイクと掃除は自分で。マンスリーマンションみたいな宿屋って感じだな。まあ、お金さえ払えば清潔度は維持できそうだ。

 食事や女性の持ち込みは自由らしいが自己責任とのこと。持ち込むことはないだろうがな。


 そして、酒場を見渡すが、さすが傭兵ギルドという名前だけあって、厳ついおっさんや柄の悪いおっさんが多い。稀に女性もいるようだが、気の強そうな女ばかりだ。俺の可愛い妹を見て見習って欲しい。


 とりあえず、俺には時間がない。妹が魔王退治に行かされる前に何とかしたい。そして、会う為にも兵士に、その為にはレベルと信用度が必要だ。

 とりあえず、武器を買って、魔物を狩り、少し無茶をしてでもレベルを上げる。そんな方針に変わった。


 

 宿屋を出て、アイナさんに言われた通り2つ隣の建物にある武器屋を訪ねてみる。


「いらっしゃい。新人か?」

威勢のいいおっちゃんがカウンターからそう声をかけてくる。

 すこし黒光りしたマッチョなひげ面おっちゃんだ。10歳若ければ魔物狩りをした方がいいんじゃないか?って風貌を醸し出している。なんかテレビで見た昔の有名外国人プロレスラーみたいな人物が頭に浮かぶ。


「見かけない風貌だな。かなり遠くの国から来たのか? 訳ありのように見えるが」

おっちゃんが、そう言ってあごに手を置きながら首をひねる。


「そんなところだ」

俺は少し警戒を強め、言葉少なく答える。


「まあ、訳ありだろうと、人殺しや犯罪とかしなければ大歓迎だ。詮索はしないし、相談には乗るぞ」

おっちゃんが慌ててそう言い笑う。

 いい人そうだな。


「とりあえず、レベル10の素人が扱える武器で魔物を倒したい」

俺はそう言って相談する。


「レベル10か。剣の経験はあるのか?」

おっちゃんが聞いてくる。


「ああ、全くない。素人だ」

俺はそう答える。


「そうか。そうなると、比較的扱いやすい、槍か殴るだけの鈍器だな。下手に剣や斧なんかに手を出すと、刃がブレて折れたり、刃が刺さらなかったりするからな」

そう言って、斧を手に取りブルブル左右に横回転させブレさせる。なるほど、刃をまっすぐ振り下ろすのが難しいのか。


 俺は剣道経験なんてないからな。中学生の時に体育の授業で素振りとチャンバラごっこをやらされたくらいだ。剣の使い方は全く分からん。

 そして、元野球部。バットのような鈍器に気持ちがいく。

 これならフルスイングでぶったたけば魔物も気絶くらいはするだろう。

 俺はそう考えながら、木でできたこん棒を手に取る。少し重いが悪くはなさそうだ。

 隣にあった、金属製の金棒も気になったが、これは重すぎる。

 同じようにメイスというのか? RPGで僧侶が振り回しそうな武器も少し重い。

 木の槍も構えてみたが、悪くはないがしっくりこない。

 俺は最初に持ったこん棒を手に取る。


「おっ、初心者にしては落ち着いているな。悪くない判断だ。レベルが上がって力がつくまで、それでいいんじゃないか? あとは鎧だな。鎧もレベルが低いうちは軽くて動きやすいものがいいぞ。皮の鎧、いや、皮の服って感じか。レベルが上がったらこの上から皮の胸当てでもつければいい」

そういって、武器屋のおっさんが厚手の茶色いなめし皮でできた貫頭衣のような服を勧めてくれる。


「それと、厚手の皮手袋に皮のブーツがお勧めだ。頭の装備はもう少しレベルが上がってからだな」

そう言って皮の服と色の合った、茶色いなめし皮製の手袋とブーツを出してくれる。

 サイズも大体あっていて、紐で調整できるタイプなのでひもをきつめに絞れば脱げたりしなそうだ。


「いい感じだ。全部でいくらだ?」

俺は初心者向けでいいと思ったのでそのまま買う気になる。


「そうだな、こん棒が銀貨3枚、皮の服が銀貨5枚、皮の手袋銀貨2枚に、皮のブーツが銀貨3枚、銀貨13枚ってところだが、1枚まけて銀貨12枚ってとこでどうだ?」

おっさんがそう言ってすこしだけまけてくれる。よくわからないが、3万円前後ってところか?


「じゃあ、それで頼む」

俺はそう言って首のところから紐で財布を出し銀貨を12枚出し渡す。

 おっちゃんが、お金を受け取り、顔を少ししかめる。


「兄ちゃん、その財布だと、首が痛いだろ? サービスだ。これもやろう。ベルトに着けるタイプの小物入れだ。これならベルトを切られて、引き摺り回されでもしない限り盗まれることもないしな。いや、もっと丈夫なベルトも付けて銀貨1枚でどうだ?」

おっちゃんが、そう言って手に収まるようなポシェット風のかばんと確かにナイフ程度では切れそうに名分厚い皮のベルトを出してくれる。

 今つけているベルトは元の世界のファッションベルトだしな。ナイフで切られたら財布も取られるし、ズボンも落ちる。


「おっちゃん、商売上手だな」

俺はそう言って銀貨を2枚渡す。


「気前いいな。そうしたら、もう一つアドバイスだ。水と非常食は切らすなよ。これは本当にサービスだ」

おっちゃんはそう言って、皮でできた水筒を出してくれる。

 確かに失念していた。水は大事だよな。


「酒場にいけば、湯冷ましした飲み水をくれる。喉が渇いても絶対、生水は飲むなよ」

さらにアドバイスをくれる。ありがたいな。


「まあ、酒に強いなら、酒を詰めてもいいけどな。酒なら腐らない」

おっちゃんがそう言って笑う。

 まあ、酔っぱらった状態で魔物と戦う余裕や自信はないな。


 俺は武器屋のおっちゃんにお礼を言って、一度宿屋に戻る。

 皮の装備に着替えて、財布を詰め替え、下の酒場で湯冷ましした水を貰う。ついでに非常食として使える、固焼きパンとベーコンのような干し肉を買う。小銀貨2枚だそうだ。

なんか、新しい貨幣が出た。小銀貨5枚で普通の銀貨になるらしい。それともっと安い銅貨というのがあるそうだ。感覚的には小銀貨が5~600円、銅貨が30円? 銅貨はあまり使われることはないそうだが。


 よし、行くか。

 俺は背中にこん棒を背負い、初心者丸出しの装備を気にせずに宿屋を出て、城の外をめざすのだった。


 次話に続く。

 なんかモタモタしてすみません。

 次からサクサク進みます。きっとサクサク進みます。


 ちょっと金と銀の価値が高い世界です。物価は少し安い?

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