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第27話 兄、ダンジョンを進む。

【異世界生活10日目 昼過ぎ】


 ざしゅっ。


 俺は、仕留めそこなったゴブリン、床で暴れるゴブリンにメイスで最後の一撃を食らわせる。


「これで最後か?」

そして俺はみんなにそう聞く。


「こっちの出口も増援は止まったね」

フブキが楽しそうに言う。

 逆にミユキはもうこりごりだって顔をしている。


「入り口からの追撃も止まりましたね」

エリーは大きく息を吐いてからそういう。

 エリーの装備しているナックルのついた篭手、『獣王の爪(ビーストファング)』が真っ赤に染まり凄い事になっている。

 まあ、俺のメイスも凄い事になっているんだが。

 とりあえず、ゴブリンの飲み水であろう水瓶に入った水でメイスを洗い、倒したゴブリンの服で血のりを拭く。

 エリーも近くにあった水瓶で血のりを落とす。


 俺達はダンジョンを進み、いくつかのゴブリンのたまり場をつぶしていったが、4つ目か5つ目あたりのたまり場を潰したところで、仲間を呼ばれてしまい、ダンジョンじゅうからゴブリンが集まってしまったようで、3方向の通路から包囲、攻撃され、今いる部屋で1時間以上、防衛戦を続けた感じだ。


「お兄ちゃん、矢がいっぱい刺さってるよ」

カミラが痛そうな顔をしてそう言う。

 

「ああ、通路から来た奴らにやられた」

俺はそう答える。俺の担当した通路は結構直線が長かったので、前衛のゴブリンを倒すとすぐに、後ろから矢が飛んできたのだ。

 盾で受ける努力はしたのだが、同時に3本も4本も矢を射られるとさすがに受けきらないことがあった。腕や足に刺さった矢が4本、傷も浅く、致命傷にならないような位置ばかりだが、痛いものは痛い。


「すぐに治療をしますね」

エリーがそう言うと、自分の二の腕に刺さった矢を無造作に抜き、包帯代わりの布を巻いて俺に向かって走ってくる。エリーも矢を受けていたようだ。


「おいおい、エリーこそ大丈夫なのか?」

俺は慌てて寄ってきたエリーを抱きかかえる。


「エリーちゃん、私の回復薬使いなよ」

カミラがそう言って、自称マジックバッグから以前お世話になったよく効く回復薬を取り出す。

 俺はそれを受け取り、エリーが無造作に巻いた包帯代わりの布をほどくと傷口に垂らしてやる。

 傷口が泡立ち、見る見るうちに回復していく。


「ミユキも怪我しちゃったよ」

フブキがそう言ってミユキを連れてくる。

 ミユキも右肩に矢を受けてしまっている。


 エリーが慌てて、ミユキの肩から矢を抜き、俺から回復薬を受け取ると、傷口に数滴垂らし包帯を巻く。


「フブキは大丈夫か?」

俺はフブキのケガも心配する。


「私は大丈夫、矢がかすっただけだし」

フブキがそう言い、頬の擦り傷と太ももの破れたズボンとそこから覗く擦り傷を見せてくる。


「ゴブリンの矢に毒が塗ってあるかもしれないから、一応回復薬を塗ってもらいな」

俺はそう言い、エリーが頷く。


「いいよぉ、高そうな薬だし」

そう言ってフブキが遠慮する。


「値段は気にしないでいいよ。私のお母さん、回復魔法が使えるから、家に帰ればまた回復薬作ってもらえるし、在庫も結構あるしね」

カミラがそう言う。

 ぶっちゃけると、嘘だ。カミラ自身が回復魔法使えるし、神官しか作れない回復魔法の付与された回復薬も作れるのだ。

 友達のエリーが回復魔法を使えないことをカミラが気にしているのか、何か隠さないといけない理由があるのか分からないが、俺以外の仲間にもそのことは内緒にしている。


「というか、お兄ちゃん、毒を受けているよ」

カミラが笑顔でそういう。鑑定スキルで毒もわかるっぽいな。

 マジか!?

 どおりでちょっと気分が悪くなってきたと思ったら。というか、カミラめ、笑って言うことじゃないだろ?


「まあ、矢を抜いて傷の治療をしてから、その薬を一舐めして少し休めばすぐ回復するよ」

カミラがそう付け足す。

 この回復薬、傷はもちろん、毒にも効く万能薬だそうだ。


「まるで、エリクサーだな」

俺は元の世界のゲーム知識でそう呟く。


「ああ、でも、死んだら、復活は無理だからね。死にたてなら傷をきれいに直せば何とかなるかもしれないけど、死んで魂が抜けちゃったらどんなにレベルの高い神官が作った薬でも無理だし、神官も死んだ人を生き返らせるのはむりだからね」

カミラが呆れ顔でそういう。


「エリクサーはおとぎ話の中のお薬で実在はしませんね」

エリーも呆れ顔でそう言って笑う。

 この世界では蘇生魔法みたいな都合のいい魔法も蘇生薬もないそうだ。

 勇者でも死ぬときは死ぬ。昔の勇者も行方不明という事はそういう事なのだろう。

 

 そんな感じで順番に治療していき、最後に俺も体に刺さった矢をエリーに力いっぱい引っこ抜かれ、回復薬で傷を塞ぎ毒を消す。


「なんか、神官なのに回復魔法や解毒魔法が使えなくてすみません」

申し訳なさそうにエリーがそう言って謝る。

 獣人族の神官はバフ魔法がメインらしい。そして、ぺろぺろすることで傷を回復させることができるらしいが、それを使えるのは家族限定、他人にするのは恥ずかしい事らしい。


「エリーの姉貴はそこらへんの戦士と比べ物にならないくらい強いから問題ないよ」

フブキがそう言ってエリーの戦闘力を絶賛する。

 そうだな。前衛としては十分すぎる強さだ。


 

「俺達、ゴブリンを結構倒したよな?」

俺は毒の効果が消えるのを待つため、この部屋で少し休憩する。


「そうだね。200体以上は倒したかな?」

カミラがまわりを警戒しながらそう言う。


「鉄くずも結構たまりましたよ」

ミユキとフブキがゴブリンの武器を解体して鉄くずを回収しながらそういう。


「魔法石も結構な量ですね」

エリーはゴブリンを解体して体内から魔法石を取り出す。

 俺は、毒が消えるまで無理ができず、魔法石の回収を手伝えないことをエリー達に詫びる。 

 女の子達の治療を優先させていたら、少し毒が回ってしまいフラフラになってしまった。


「もう少し進むと第二階層に続く階段があって、第二階層の奥のボスを倒すと第三階層にいけるようになるよ」

フブキがそう言う。

 雪豹族の双子が、爺さんが昔使っていたらしいダンジョンの地図を持っていて、フブキがそれを見ながらそう教えてくれる。


「ちなみに、このダンジョンって何階層あるんだ?」

俺は双子に聞いてみる。

 

「全部で4階層らしいよ。本来なら、第一階層がゴブリンのエサになるようなスモールラットやスモールバット、スモールリザードの棲む階層、第二階層がゴブリンの住処って感じだったみたいだけど、ゴブリンが増え過ぎちゃって第一階層まであふれちゃった感じかな?」

フブキがそう教えてくれ、ミユキも頷く。


「昔、王国がダンジョンの魔物狩りに報奨金をつけていたころ、お祖父ちゃんや私達の両親が鉄くず拾いをしていたころはもう少し、第一階層は簡単なダンジョンだったらしいですよ」

ミユキがそう付け足す。


「第三階層からはまた違う魔物がいるのか?」

俺はミユキに聞いてみる。


「地図には第三階層は第一階層と同じくスモールラットなど魔獣の住処、要は上位の魔物達のエサになるような魔獣がいる階で、第四階層にはオークが出ると書いてありますね。でも、この感じからして、第三階層もオークが溢れていそうですよね」

ミユキがそう教えてくれる。

 ゴブリンの次はオークか。


「オークはゴブリンより少し強い魔物だよ」

フブキがそう付け足す。


「ちなみに、第二階層のボス部屋というのはそのオークとゴブリンが共食いをしないように、ダンジョンを管理する精霊がものすごく強いゴブリンを閉じ込めて第二階層にオークが上がってこないようにする部屋の事らしいです。まあ、第三階層から地上へは隠し出口があるらしいので、増え過ぎたオークは二階を通らずその出口を使って地上には出ることもできるらしいですが」

ミユキがボスについてそう教えてくれる。


「それと、ダンジョン攻略ってどうすると攻略なんだ? 第四階層の奥まで行けば攻略か?」

俺はもう一つ気になったことを聞いてみる。


「えっと、そんな感じですね。第四階層の奥にもボスがいるらしくて、それを倒すと、その奥にダンジョンコア、魔物を生み出し、ダンジョンを管理する、精霊の分身みたいな魔道具がいるそうです。そいつがこのダンジョンから逃げだしたらダンジョンクリアですね」

ミユキがそう教えてくれる。


「ダンジョンコアが逃げ出すときに落とす宝石、魔導石が結構価値のある石なんだよね。この杖の石とか、服についている防御魔法を生み出す石が魔導石だね。魔法石をエネルギーにして魔法を発動させるのが魔導石、魔道具の心臓になる石だね」

カミラが少しどや顔で解説する。

 要は魔法石を電池に例えるなら魔導石はモーターや電球みたいなものか。


「ちなみに、ダンジョンコアはダンジョン攻略者が立ち去ると、こっそり戻ってくるそうで、ダンジョンが無くなる心配はないので、今後の鉄くずの回収の心配はしなくて大丈夫です」

ミユキがそう言って笑う。

 まあ、ダンジョン攻略者がやりすぎたり、最下層に居座ってしまったりすると、ダンジョンコアが引っ越しして新しいダンジョンを作ってしまうことはあるらしい。あまりダンジョンコアを追い詰めてはいけないと。


「それと、ダンジョンコアって破壊しちゃダメなのか?」

俺は気になって聞き返す。魔物が出なくなるのなら妹のあてなの為にはそれはそれでありなのではと思ったからだ。


「歴史的にダンジョンコアを破壊したという人はいないみたいですね。ダンジョンを管理する精霊というのが神に準ずる存在なので、その精霊がさらに作ったダンジョンコアも神に準ずる存在で、それを破壊することは神様を殺すようなことに近いそうなので普通の人間には無理だそうです」

エリーがそう言う。教会でそう言い伝えられているらしい。


 悪い魂から生まれる魔物が直接人間を襲わないようにダンジョンに閉じ込めているのが神の使徒の精霊で、ダンジョンコアはその精霊がダンジョン管理を任せた存在と。

 悪いものではないらしいが、ダンジョンを作って魔物を管理、魔物に餌を与えたり、武器や生活に必要な道具も与えたりしているそうで、それを聞くと魔物の仲間のようにも思えてしまうな。

 エリーの話、教会の解釈ではダンジョンに魔物を少しでも長く居座らせるための飴と鞭の飴らしいが。


 

「よし、体調も良くなったし、ダンジョンの事も色々聞けたし、そろそろ行くか」

俺はそう言って立ち上がり、休憩していた仲間達も立ち上がる。

 

 休憩中、カミラに『危険感知』のスキルで警戒してもらっていたので、ここからは俺が『危険感知』のスキルで警戒しながら進み、カミラを少し休ませる。


 そんな感じで、さらにダンジョンを進み、スモールバットなど雑魚魔物を倒しつつ、ゴブリンが15~20匹程度たむろしている小部屋を3つほど潰したところで、第一階層の最奥に到達する。この奥に第2階層につながる階段があるらしい。


「なんか、いやな気配がするね」

カミラがそう言う。


「ああ、俺の『危険感知』のスキルもいつもより警告が強い気がする」

俺はそう答える。

 いつも、進む先に敵が隠れていると、ダンジョンの壁が透けて見えて魔物がいそうな場所に緑色の光が見える程度なのだが、それに加え、今は首の後ろの辺りがチリチリと嫌な痛みを発している。

 まるで強い敵がいるぞと訴えるように。


「ダンジョンコアと関係なく自然発生した中ボスって感じかな?」

カミラがそう言う。

 なるほどな、第一階層のゴブリンの群れのボスってところか。

 

 俺はそう理解し、武器を構え、警戒を強める。


 次話に続く。

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