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第20話 兄、新しい双子の妹と魔物狩りに行く。

【異世界生活7日目 朝】


 今日も6時ちょうど、教会の鐘で目を覚ます。

 昨日も12時近くまで魔物狩りをしてきたので少し眠い。

 だが、今日から、鍛冶屋の爺さんの孫娘二人のレベル上げをする。家に迎えに行くので準備の時間などを考えると6時過ぎには起きないといけないのだ。


「おはようございます。タイヨウお兄さん」

さわやかに挨拶をしてくるエリー。


「で、なんで俺のベッドにいるんだ? エリー?」

何故か目の前にエリーの顔があって、逆にドン引きして冷静に聞いてしまう俺。


「なんでって、夫婦になるんですし、そろそろ一緒に寝てもいいかなって」

エリーがペロッと舌を出しながらそういう。


「カミラも部屋にいるんだから、自嘲しろ」

俺は呆れてそう言う。


「私は別にいいよ。うるさくしなければね」

カミラが目をつぶったまま寝ぼけ顔でそう言う。意味わかって言っているのか?

 そしてそのままごろんと背中を向けて寝てしまう。


「とりあえず、エリーのご両親に事情を説明して対策を考えるまでこういうのはナシな」

俺はそう言って、さっさとベッドから起き上がる。

 こんなおっさんと結婚したがる少女の気持ちがまったくわからんしな。


「両親へのご挨拶、大事ですもんね」

エリーが夢見る少女のまなざしで見当違いな事を言い出すが、面倒臭いのでスルーする。


 とりあえず、いつも起きた時のルーチンになった身支度、井戸に行って体を拭き、顔と頭を洗う。

 そして、部屋に戻って魔物狩りの装備を固め、宿屋の酒場に行きエリーを待つ。

 エリーも朝、浴槽のない浴場で湯あみをしてから着替えるのが日課になっているようで、準備が終わるのを酒場で待つ。待つ間にギルドの受付で、魔法石の換金もしておく。昼間の魔物狩りと夜の魔物狩りで手に入れた魔法石がそれぞれ混ざると面倒臭そうだしな。


 そして、二人そろったところで朝食を食べながら今日の打ち合わせなどをする。


「タイヨウお兄さん、昨日もお疲れみたいでしたね」

エリーが朝食を食べながらそう言って笑う。


「ああ、昨日この町に着く前に馬車がミディアムラットに襲われた地点にいってみたら、その時ほど大群ではないけど、ミディアムバットの群れに襲われた。やっぱり、あの森には何かあるんだろうな。ダンジョンからあふれた魔物が居座って、森に元々すんでいた魔物を追い出しているとかかな?」

俺は昨日の昼間の大ネズミの群れと、夜の大コウモリの群れを思い出してそう言う。

 とりあえず、昨夜は大量にあらわれた大コウモリを休憩なしのエンドレスで倒し続けて、心も体も疲労困憊で部屋に帰ってきてエリーに心配させてしまったもんな。

 おかげで、俺のレベルが43になったし、カミラもレベル42にはなったが。


「ダンジョンが一段落したらそっちの駆除もしてあげたいですね。魔物が街道に溢れて、乗合馬車や商人の馬車が定期的に来られなくなったら町の人達も色々困ることになりそうですしね」

エリーがそう言う。

 俺的には妹のあてながこの町に来る途中で襲われる可能性があるのが心配だ。


「まあ、夜のカミラとの魔物狩りはそっちを中心にやることにするよ」

俺はエリーにそういう。


「そうしたら、北東のダンジョンまでの道のりの魔物狩りは私とタイヨウお兄さん、ミユキちゃん、フブキちゃん4人で何とかしなきゃって感じですね」

エリーがそう言う。


「まあ、どうしようもなくなったら、カミラに言って、夜の魔物狩りもダンジョンまでの道のりですることにすればいいかな?」

俺はそう言い、少しゆったりした気分で朝食を食べ終わり、カミラの朝食をテイクアウトして部屋に置いてから昼間の魔物狩りに出発する。

 とりあえず、雪豹族の双子を鍛冶屋まで迎えに行こう。


 そして、予想はしていたが、鍛冶屋の爺さんに孫娘たちの魔物狩り参加は反対され、孫娘2人と爺さんの家族会議に付き合わされることになってしまった。


「ミユキとフブキがどうしてもっていうならしょうがねえな」

30分ほどの押し問答と俺とエリーの説得の末、何とか爺さんの許可をもらうことができる。


「そのかわり、孫たちに無理させるんじゃないぞ。なにかあったら、ワシが黙ってないからな」

爺さんがそう言って俺にすごむ。


「分かっています。あくまでも俺が前面に立って戦う感じにするので、お孫さん達には怪我のないよう最善の注意を払います」

俺は爺さんの信用を得るために一生懸命誠意を見せる。


「孫を守るのはあたりまえだ。それと、これを持っていけ、型も古いし中古品だがないよりましだ」

爺さんはそう言って、小さい盾、バックラーを俺にくれる。


「ダンジョンには小鬼ゴブリンという魔物がいる。奴らは投石器(スリング)や粗悪だが弓矢なんかも使ってくる。盾持ちが一人いないと面倒臭いことになるからな」

爺さんはそう説明してくれる。

 そして、ついでにエリーの分の盾も聞かれたが、


「私は修道僧(モンク)なので、盾は無い方が戦いやすいかもしれません。ご厚意はありがたいのですが、申し訳ないです」

エリーがそう言ってお断りを入れる。


 そんな感じで少し出発が遅れたが、俺は中古の小盾(バックラー)を貰え、少し装備が充実した。

 そして、雪豹族の双子、ミユキとフブキが仲間になった。


「そう言えば二人は戦士としても戦えるのか?」

俺は歩きながら、双子に戦い方などを聞いてみる。


「私はお母さんに剣術も習っていたから剣で戦う剣士って感じだよ」

フブキはそう言って腰にぶら下げた2本の剣を叩く。

 双剣使いの剣士らしい。防具は服の下に皮の貫頭衣、皮手袋と革のブーツ。俺と同じような装備だ。

 そして、服の上から胸当て(ブレストプレート)も着けている。見かけは皮製だが、中に鉄板の入った結構いい物だそうだ。ちなみに手袋とブーツにも鉄板が入っている。

 俺の防具よりかなりいい物だったようだ。


「私はどちらかというとお祖父ちゃんとお父さんから鍛冶を習っていたから鍛冶師って感じ。でも、お祖父ちゃんに戦い方も習ったから、最低限の戦闘はできるよ」

そう言うミユキ。

 こっちの装備は、俺と同じような小盾(バックラー)を持ち、武器は戦鎚(ウォーハンマー)らしい。片手でも両手でも扱える接近戦向けの武器っぽいな。

 そして、防具は服の下にチェーンメイル、服の上から鉄製の胸当て(ブレストプレート)、革製のブーツと手袋の上から、鉄製の篭手と脛あてを着けている。かなりの重装だ。


「ミユキはお祖父ちゃんに、これでもかってくらい重武装させられているけど、私は素早さ重視の戦い方だから重い防具はお断りしたんだよ」

フブキが笑いながらそういう。

 ミユキはSTRちからVITたいりょく重視、フブキはAGIすばやさDEXきようさ重視の戦闘をするらしい。受けるタンクと避けるタンクって感じか。双子でよく似ているのに戦い方や性格は違うみたいだな。


「それと、カミラが昨日言っていたように、俺には特殊なスキルがあって、俺と妹と認識した相手で経験値を共有することができる。で、そのスキルを活かすためになるべく俺が魔物を倒した方がいいらしくて、ミユキとフブキはエリーと3人で戦ってもらっていいか? 俺が盾役をすると経験値効率が悪くなるらしいんだ」

俺はそう説明する。

 俺と妹で経験値を共有することはできるが、妹同士では経験値を共有できない。つまり俺が敵を倒すと全員に経験値が入る。そんな面倒臭いスキルらしい。


「もちろん、戦闘に参加しないと経験値は入らないらしいから、しっかり戦えよ。あと、エリーは2人が怪我をしないようにしっかり見てやって欲しい」


「了解だよ」

「わかりました」

フブキとエリーがそう返事をする。


 そんな感じで、町の中を東に向かって歩く。町の東門から出て、北東に伸びる道を歩くとダンジョンのある森につくらしい。

 とりあえず、東門をくぐり、町の外に出る。

 この町も結構しっかりした防壁に囲まれた城塞都市って感じだ。まあ、そうしないと周りは魔物だらけなので住人が暮らしていけないのだろう。


 町を出ると、小麦畑が広がっている。

 そして時々に背の高さほどの石垣と粗末な木の門が点々と存在していて、警備兵らしい戦士が立っている。農家の人が魔物に襲われないような最低限の魔物対策なんだろう。

 

 そして、石垣を2つほど超えると、急に荒れた、雑草の生い茂る小麦畑になる。

 ここら辺は開拓をしたが、魔物に襲われて農家の人達が住めなくなってしまったエリアなのかもしれない。小屋なども見えるが半壊している。


「このあたりから、魔物が出だすから気を付けてね」

フブキがそう声をかけてくる。

 危険喚起をしている割に声は楽しそうだ。この子も少し戦闘狂の類かもしれない。


 ときどき、スライムやスモールラットが現れる。スモールだが大きいネズミだ。

 こいつらなら、ミユキやフブキのレベル上げにもよさそうだな。俺は、経験値効率より、戦闘経験を積ませるためにミユキとフブキを中心に雑魚モンスターを倒させる。

 うん、やっぱりフブキは戦闘狂だ。楽しそうにネズミを追っかけている。

 逆にミユキは冷静沈着って感じだな。防御に徹しつつ、確実に魔物を仕留めていく。


 というか、見かけにゃんこなフブキがネズミを追っかける姿、にゃんこがおもちゃに興奮している姿みたいで可愛いな。


 そんな感じで、雑魚魔物を倒しつつ、荒れた農地の間を通る農道を歩いていく。

 3つ目の石垣は半壊しており、警備兵もいない。

 町を守る防壁と畑を守る3重の石垣。それがこの町の作りのようだ。そして、3つ目の石垣は機能していない。


 3つ目の石垣を抜けると、農道のように整備された道が少し荒れた道に変わる。開拓のための道だろう。今はほとんど使われていない感じか。


 さっそく、レッサーウルフが現れる。

 こいつらはレベル15前後なので、同じくレベル15前後なミユキとフブキだとかなり苦戦しそうか。

  

「エリー、二人を守りながら適度に戦闘経験を積ませてやってくれ」

俺はそう言い、俺自身はレッサーウルフに単身で挑む。

 なんだかんだ言って俺もレベル43になった。このレベルの魔物なら苦労せずに戦えるようになっている。


 しかも、鍛冶師の爺さんにもらった小盾(バックラー)がなかなかいい。

 レベルが上がって力もつき、メイスを片手でも扱えるようになったので、盾でオオカミ達を牽制するといい感じで優位に立てるのだ。


 盾でオオカミを牽制しつつ、襲い掛かってきたオオカミを盾で押しのけ、同時にメイスでオオカミの横っ面を殴り倒す。2匹目のオオカミも同じように盾で受けて、メイスで脳天を殴り、地面に叩きつける。

 いいリズムでレッサーウルフが倒せるのだ。


 雪豹族の双子もわちゃわちゃしながらも何とか戦闘できているようで、二人がオオカミに囲まれないようにエリーがフォローしつつ、なんとか魔物達を倒せているようだ。



「ミユキとフブキがレベル20を超えるまで、このあたりで魔物狩りしてもいいかもしれないな」

俺はエリーにそう言い、エリーも頷く。

 そして、俺は困ったことに気づく。


「そういえば、ミユキとフブキのレベルってどうやって確認すればいいんだ?」

俺はそう呟く。俺とエリーは傭兵ギルドのカードがあるので、それにレベルやステータスが自動で更新されるので確認できるが、二人はカードを持ってないよな?

 カミラの鑑定スキルはレアスキルなのであまり公表できるものではないらしいから彼女には頼れない。


「ああ、私は傭兵ギルドのカードを持っているよ」

フブキがそう言って首元から見慣れたカードを取り出す。

 フブキのレベルは16。ステータスをみると、さっき本人が言っていたようにAGIすばやさが異常に高く、次いでDEXきようさが高かった。


「私は、鍛冶師をめざしていたので、工房ギルドのカードしかありません」

申し訳なさそうにそう言うミユキ。


「そうしたら、ミユキも傭兵ギルドのカード作ればいいじゃん。将来的にレベルが上がって、私とお祖父ちゃん3人で鉄くずを拾いに行けるようになったら魔法石を換金するのに必要になるし」

フブキがそう言う。


「でも、お金ないし、お祖父ちゃんもお金に余裕ないと思うから」

ミユキが申し訳なさそうにそう言う。

 確かにこのカード作る時結構銀貨とられたもんな。ちょっとした魔道具みたいだし。


「まあ、これからダンジョンで魔物狩りするわけだし、魔法石を換金すればお金が貯まるでしょ? お金が貯まったら、ミユキちゃんの傭兵ギルドのカードを作ればいいんじゃないかな? それまではフブキちゃんのカードのレベルを基準に活動を決めればいいんじゃない?」

エリーがミユキを慰めるようにそう言う。


「鉄くずを貰うのに魔法石までもらっちゃっていいの?」

ミユキが申し訳なさそうにそう聞いてくる。


「そうか、そこらへんの計算してなかったな。鉄くずの価値ってどんなもんなんだ?」

俺は鍛冶師見習いでもあるミユキに聞き返す。


「鉄くずは魔法石に比べると価値は低いですね。ただ、武器や防具に加工すると価値は跳ね上がるので、何とも言えません。お祖父ちゃんが冒険者の人達と鉄くずを拾いに行っていた時は魔法石を貰ってなかったみたいですね。戦えるのは前半のみで、後半は鉄くずを背負うので戦えず、足手まといになることも含めてもらわないんだと思います」

ミユキがそう教えてくれる。


「そうは言っても今回はミユキとフブキには将来的にレベルが上がったら、ダンジョンへの道案内と行きの護衛役をお願いするわけだしタダというわけにはいかないよな」

俺はそう呟いて悩む。

 

「そうですね。二人には鉄くずが貰えるっていうメリットもありますし、逆に私たちが持ち帰って鉄くずを売ることもできないことはないですもんね」

エリーもそう言って悩む。


「だったら、ミユキとフブキの2人で1人分の魔法石を分ける感じでどうだ? ただ働きは可哀想だし、かといって鉄くずが手に入るメリットが2人にはある。そして、鉄くずの運搬で後半は戦力外になる。だったら、魔法石は半分だけあげる。このあたりでどうだ?」

俺はエリーに相談しつつ、雪豹族の双子にそう提案する。


「魔法石はもらえない物と考えていたので、もらえるならうれしいです」

ミユキがそう言う。


「そのあたりで順当かもしれませんね。今日明日あたりは二人のレベル上げに付き合う訳ですし、私達からしたら時間的な赤字ですしね」

エリーが笑顔でそういう。結構計算高い子だな。


 そんな感じで魔法石の分配は双子で1人分、鉄くずは全て双子にいくことになった。まあ、ダンジョンに行くわけではないので鉄くずの話はまだ先だが。


 こんな感じで、雪豹族の双子の育成と北東のダンジョン攻略が始まった。


 次話に続く。

 雪豹の尻尾って太くて可愛いですよね。尻尾の太いネコ科の動物、大好物です。

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