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第18話 兄、冒険者の街につく。そしてダンジョン攻略の準備。

【異世界生活6日目 夕方】


 不自然な巨大なネズミの群れに襲われたが、何とか撃退して、目的地の街についた俺達。

 乗合馬車と商人の馬車、合計5台の馬車を守って北上する旅は無事終わった。


「お前達、最後の戦いで活躍したじゃないか、魔法を使いまくっていたお嬢ちゃんの分も含めて、少し多めに報酬をやろう。またよかったら警備を頼むぞ」

そう言って、馬車の集団のリーダーらしい、乗合馬車の御者のおっさんが少し多めに銀貨をくれる。

 当初の契約では銀貨8枚だったが、最後の活躍を買われて銀貨12枚貰うことができた。


「銀貨12枚なら、また仕事請負ますよ」

俺はそのおっさんを冷やかすようにそう言って笑う。


「その時は、魔法使いのお嬢ちゃんも働いてもらうけどな」

おっさんはそう言い返してくる。

 今日は2人で銀貨24枚だったが、今度は3人で銀貨24枚、つまり、当初の契約通り、1人銀貨8枚ってことだな。それ以上、報酬を上げる気はないということか。

 まあ、利益と安全を天秤にかけて色々考えると銀貨8枚が限界ってところなんだろう。

 そして、最後の大ネズミの群れは滅多に起こる事ではないんだろうな。

 他の護衛をしていた他のパーティメンバーたちとも挨拶をかわし、商人の馬車が移動しだすので、俺達も雰囲気で解散となる。


 そんな感じで、護衛の仕事も終わり、馬車の集団とも別れ、とりあえず、この町の傭兵ギルドに向かう。

 

「この銀貨、カミラちゃんにも分けた方がいいですよね?」

エリーが困った顔で俺に聞いてくるので、


「とりあえず、2枚ずつ、銀貨4枚渡しておけばいいだろ。カミラは魔法石を大量に手に入れたし、俺達もミディアムラットを半分は倒したしな。2日間ほとんど何もしなかったカミラに同じ金額渡すのも馬鹿らしいし、それぐらいが順当だろ?」

俺はそう言って笑う。エリーも困った顔で笑う。


「二人ともどうしたの?」

カミラが後ろから聞いてくるので、


「馬車の集団のリーダーのおっさんが、少し多めにくれたから、お前にもおすそ分けしてやろうってな」

俺はそう言って、銀貨2枚をカミラに渡す。

 エリーも銀貨2枚をカミラに渡す。まあ、これくらいがちょうどいい。


「ん~? なんか怪しいな。本当はもっと貰ったんじゃないの?」

カミラがそう言って訝しむが、あきらめたように笑って、この話は終わる。



「そういえば、この町って、冒険者の町って呼ばれているらしいが、この先には他にも冒険者が集まるような町はないのか?」

俺は傭兵ギルドの建物に向かいながら、この町の事が気になってカミラに聞いてみる。


「ああ、ここから先は、魔人族との交戦地帯になるから、ここより先は戦場、兵士の世界になるんだよ。だから、素人で冒険者が暮らせる街の最前線がここって感じで、これより先は戦場の中の町、言うならば兵士の町って感じになっちゃうわけ。まあ小さいギルドの出張所みたいなものはあるとは思うけどね」

カミラがそう教えてくれる。


「それに、ここから先は魔獣の森、昔は冒険者が魔獣の森に挑む際の最前線の拠点って感じだったらしいですよこの町。今は魔獣の森も木を切り倒されて、開拓されて、もっと北にも町ができましたけどね」

エリーがそう付け足す。


 なるほど、かつての人間世界の最北限がここで、今の一般人が暮らせる最北限がここ。ゆえに冒険者の町ってことか。

 俺はこの町のいきさつを理解した。


 そして、目的の傭兵ギルドに到着する。一番北限の傭兵ギルド、冒険者が集まるギルドというだけあってギルドの規模も大きかった。首都の冒険者ギルドと変わらない大きさで、受付の数も首都と同じ3つだ。ただし、中は閑散としているが。

 一応、北東のダンジョンの情報も知りたいのでギルドにも顔を出してみる。


「こんにちは。見ない顔の方々ですね。初めての方ですか?」

受付嬢が俺達を見てそう挨拶してくる。少し警戒したまなざしだ。


「ああ、王国の首都、ウルの町から来た」

俺はそう言って、傭兵ギルドカードを見せる。

 エリーも慌てて、ギルドカードを見せる。


「私は、付き添いでギルド員じゃないけどね」

カミラがそう挨拶をする。


「タイヨウ様とエリー様、レベル42にレベル37ですか。結構お強いですね」

受付嬢がそう言って愛想笑いをする。仲介業として、強い人材が来てくれるのはありがたい事なんだろう。


「それで、私達は、北東のダンジョンに挑みたいんですが、何か仕事の依頼とかありませんか?」

エリーが受付嬢にそう聞く。

 ダンジョンの魔物を駆逐出来て、しかも報酬ももらえたら万々歳だしな。


「そうですね。昔は、開拓期や停戦状態の時代は魔物減らしの為に、ダンジョンの探索や、ダンジョンに巣食う魔物の駆除依頼などが王国から来ていたんですけどね。今は戦争で王国にお金もないみたいで、そう言った依頼はどんどん減ってしまって、あるのはこの町の防壁の守衛か、周りの魔物を倒して魔法石を売るような出来高制のお仕事、あとは魔人族との戦争での傭兵の募集くらいしか今はないんですよね。現状維持が精いっぱいって感じです」

受付嬢が残念そうにそう言う。


「そうなると、今までと変わらない感じだね。ダンジョンの魔物を倒して、魔法石を換金する感じ? 報酬はあまりおいしくないけどね」

カミラがそう言う。

 要は傭兵ギルドの本業の仲介業か介さない仕事、魔法石を買い取って、横に流す仕事なので、俺達もあまりもうからないのだ。

 まあ、魔法石が日常生活にも燃料のような位置づけで利用されていて、価値があり換金できるのはありがたい。

 魔物をただ働きで駆除するなんてやりたくないしな。


「報酬の件は申し訳ありませんが、ダンジョンの周囲や、中の魔物の数を減らしていただけるのは本当にありがたいです。ダンジョンは放っておくと、魔物が増えて、あふれ出すので。魔物がダンジョンからあふれ出すと、ダンジョン由来の魔物に追われて森に元々住んでいた魔物がさらに森からあふれ出します。今はその森からあふれ出した魔物を駆除するだけでも精一杯って感じです。報酬の割も合わないので、冒険者の人数もどんどん減ってきて困っている感じです」

受付嬢が本当に困っているようにそう言う。

 さっきで街道で襲って来たミディアムラットの群れはそれが原因なのかもしれないな。


「まあ、報酬が良いからといって、この町の防壁を守る仕事をしていても仕方ない。カミラが言う通り、ダンジョンに行って魔法石で生活費を稼ぐしかなさそうだな」

俺はエリーとカミラにそう言い、二人とも頷く。

 俺の目的は、妹あてなの最初の勇者の仕事、北東のダンジョンの掃除を先回りして俺達だけでやってしまおうって事だしな。

 それで、エリーとカミラのレベルも上がれば二人も自分の町に帰るという目的の達成に近づくしな。


「それじゃあ、明日あたりから、準備でき次第、北東のダンジョンで魔物の駆除をするから、魔法石の換金を頼む。宜しくな」

俺はそう言って、受付嬢に挨拶をする。


「よろしくお願いしますね、タイヨウさん、エリーさん。私はギルド職員のトゥーラと申します。何かありましたら気軽にお声がけください」

そう言ってトゥーラさんがほほ笑む。

 まあ、この町でも、受付嬢は固定した方が楽そうだな。何人も受付嬢の顔や名前を覚えるのが面倒臭そうだし。


 ちょうどいいので、さっき倒したミディアムラットの魔法石も換金しておく。俺とエリー、ランク2の魔法石がそれぞれ50個、銀貨5枚ずつになった。

 そういえば、カミラの分はどうするんだ? 換金せずに魔法を使うときの為にキープしとくのだろうか? まあ、言われたら換金してやればいいか。


 そんな感じで、ギルドへの挨拶も終わり、ギルドの壁に貼ってあった近隣の地図を確認してなんとなくだが目標の北東のダンジョンの位置を確認しておく。その後、隣に併設された酒場兼、宿屋に足を運ぶ。酒場の規模も首都のギルド直営酒場と同じくらいだ。結構大きい。


「とりあえず、宿屋で部屋を借りて落ち着きましょう。もうすぐ日も暮れますし、明日以降の行動も決めないといけないですしね」

エリーがそう提案する。


「そうだな。女将さん、部屋を頼む。ツインの部屋を一つ」

俺はそう言って、酒場のカウンター兼、宿屋のフロントに立つ女将に声をかける。


「やけに幼い子供を連れているね。子連れかい?」

ここでも宿屋の女将に怪しまれ、警戒のまなざしで見られる。

 

「妹と妹の友達だ。戦火に巻き込まれて首都に避難したが、生まれ育った町に帰りたいからレベルを上げながら北をめざしている」

俺はそう説明する。間違ったことは言ってないしな。

 今日はエリーが余計な事を言わないようにカミラがけん制している。


「それは大変だね。ということは、アラッタの町の出身かい?」

宿屋の女将がそう聞いてくるが俺には地名はよく分からない。


「そうです。父が戦士で戦争の最前線で戦っていて、家族はその町に住んでいました」

エリーがそう言う。


「そうかい、残念だけど、今、アラッタの町は孤立しているらしいよ。王国軍は魔王軍の襲撃を受けて、撤退、戦争の最前線はニネべの街まで後退しているそうだよ。アラッタの町は非戦闘員が取り残されて情報も入ってこないみたいだね」

宿屋の女将がエリーに同情するようにそう言う。

 まあ、俺に地名を言われてもさっぱりだが、雰囲気からして、以前の戦争の最前線だったアラッタの町で王国軍が負けて、撤退、1個手前の町、ニネべの町で防衛線を引いている感じか?


「まあ、魔人族は獣人族や非戦闘員には友好的だから、アラッタの町の住人とは上手くやっていると思うけどね」

カミラが俺にそう教えてくれる。


「まあ、獣人族たちもいいとばっちりだよね。自分たちの国を人間族に奪われて、移住させられた土地は魔人族との戦争の最前線とは」

宿屋の女将さんがエリーのイヌミミを見て同情するようにそう言う。

 エリーも悲しそうにイヌミミが垂れる。


 とりあえず、1日の宿代、銀貨1枚と小銀貨2枚を払い、鍵をもらって部屋に上がる。

 宿の作りも一緒だな。1階と2階がシングルルーム、3階がツインやダブルの部屋、4階は女性専用って感じか。

 俺達の部屋は301号室。階段のすぐ隣の部屋だった。


 部屋に入ると、とりあえず、重い荷物を置き、カミラとエリーはベッドをソファー代わりに座り、俺は備え付けの丸机と椅子のセットがあったのでその椅子に座り、3人で向き合う。

 

「それでどうする? 明日からさっそくダンジョンの攻略をしてみたいんだが、ダンジョンへの行き方を知らない。さすがに道案内とかいないと無理だよな?」

俺はカミラとエリーに聞いてみる。


「そうだね。森の中を歩くから地理を知っている人がいるといいかな? まあ、最悪、私の『鑑定』スキル的な何かでダンジョンのある方向とか分かるし、町に帰る方法もそれでなんとかなるし、森で3人がはぐれちゃっても『鑑定』スキルっぽいなにかで見つけることもできるし、何とかなると言えば何とかなるんだけどね。あと、魔法通信なんて言う便利な生活魔法もあるよ」

カミラがそう答える。


「カミラの『鑑定』スキル万能過ぎるだろ・・・」

俺は呆れてそう言う。

 エリーも呆れ顔で笑う。


「まあ、でも、もう一人くらい仲間が欲しいね。前衛職で。できればダンジョンまでの道のりに詳しい人?」

カミラがそう言う。


「なんでだ? ダンジョンってそんなに強い魔物が出るのか?」

俺は気になってカミラに聞き返す。


「そういう訳じゃないんだけど、移動って、昼間移動じゃない? そうなると、私、日よけマントで戦えなくなるから、ダンジョンまでの移動の間はお兄ちゃんとエリーちゃんの二人で戦うことになるんだよ」

カミラがしれっとそう言う。

 ダンジョン内は太陽の光がないから昼間でもカミラも戦えるらしいが、問題はダンジョンに行くまでの日焼けが悩みらしい。


「マジか?」

俺は聞き返す。


「うん、マジ。それか、夜に移動して夜に帰ってくるっていう方法とか、最悪ダンジョンに泊まって魔物を狩り続けるって方法もあるんだけど、それだと、エリーちゃんが体力的にも精神的にもついてこられないと思うんだよね。だから、片道3時間らしいけど、朝に移動してダンジョン攻略、日が暮れたら帰ってくる感じで宿に戻ってしっかり寝る感じがいいかなって。帰りは日が落ちてから移動すれば私も戦えるけど、行きはどうしようもないね」

カミラがそう言っていくつか案を出してくれるが、朝から移動して夜帰ってきて宿で寝る方法が一番無難そうではある。俺の『24時間戦える』のスキルが活用できなくなるが。


「なんか、王国が財政難でダンジョンがほったらかしみたいですし、キャンプして戦い続けるのは無理っぽいですよね。せめて、何度か通って魔物の数が減ってきたらですかね? ダンジョンに泊まっての攻略は」

エリーがそう言う。今現在ダンジョンもその周辺も魔物だらけらしい。


「とりあえず、道案内できる仲間が見つけられないか、傭兵ギルドの窓口で聞いてみるか」

俺はそう締めくくる。


「そうですね。そろそろ夕食の時間ですし、食堂に降りるついでに聞きに行きましょう」

エリーがそう言う。


「もうすぐ6時になるよ。ギルドの窓口も閉まっちゃうから急ご?」

カミラがそう言って急かす。

 確か18時を過ぎるとギルドの受付業務は縮小されて、20時になると完全に閉まってしまうみたいなことを首都のギルド受付のアイナさんが言っていたな。


 俺達はとりあえず、急いでギルドの受付に向かう。

 さっき話をした受付嬢、トゥーラさんに相談だ。


「どうしたんですか? そんなに慌てて?」

トゥーラさんが少しびっくりして聞いてくる。


「ああ、ギルドの窓口が閉まる前に、北西のダンジョンまで案内してくれる人を紹介してもらえないかなって。できれば戦闘もできる人がいいかな?」

俺はさっそく本題に入る。


「あー、最近はダンジョンに行く人が少ないですからね。見つけるのは難しいかもしれませんね」

トゥーラさんが困った顔でそういう。

 戦争で王国からの支援が滞って、ダンジョンで魔物を減らす作業は危険な割に報酬が魔法石だけと、割に合わなくなってダンジョンに行く人が減ってしまったらしい。というより冒険者自体が減っているそうだ。


「マジかぁ」

俺はそう呟きぐったりと肩を落とす。


「最悪、ベテランの冒険者を雇って道案内してもらうこともできますが、その場合、かなりの金額の謝礼金が必要になりますね。拾った魔法石では毎日赤字になるくらいのお金が必要です」

トゥーラさんがそう提案してくれる。


「それだったら、私が気合と根性でダンジョンまで道案内するよ。魔法石があれば魔法で援護くらいはできるしね」

カミラが俺にそういう。まあ、お金は大事だしな。


「困ったな」

「困りましたね」

俺とエリーが声を合わせてそう言って悩む。


「うーん、あまり傭兵ギルドとしてはお勧めしたくはないんですが、この町の西の方に住んでいる、鍛冶屋のおじいさんがたまに酒場にきてダンジョンに一緒に行ってくれる戦士を探していたことがありましたね。最近は見ませんが。ギルドを通さない仕事依頼なので、あまりお勧めしたくないんですが、どうしても困るようならその鍛冶屋のおじいさんを訪ねてみてはどうでしょうか? ギルドを通さない、お互いの利害関係だけで成立する契約なので私たちはお勧めしませんし、何か起きても補償はできませんが」

トゥーラさんが、困った顔で、俺達にしか聞こえないように小さい声でそう教えてくれる。

 本来なら、鍛冶屋のじいさんが傭兵ギルドにお金を払って仕事を依頼するのが筋だもんな。ギルドの経営もその依頼の仲介料で成り立っている。


「そのおじいさんって戦えるの?」

カミラが小さい声で聞き返す。


「昔はギルドの人達と一緒に戦っていたみたいですが、今はどうでしょう? かなりご高齢でしたし、最近は酒場でも見なくなりましたし、第一、ダンジョンに行く冒険者がいなくなりましたしね」

トゥーラさんがそう言って首をかしげる。

 大丈夫か? それ? もしかしてもう亡くなっているとかないよな?


「行ってみるだけ行ってみましょう」

エリーがそう言う。


「そうだな、ダメだったらカミラのよく分からないスキルと魔法でダンジョン向かえばいいしな」

俺はエリーにそう答える。

 最悪、魔法石が無駄になるが、ダンジョンまでの道のり、昼間のミディアムラットとの戦いの時みたいにカミラが魔法石を消費して魔法を撃ちまくるという戦いもできなくはないしな。


「まだ、お店が開いているかもしれないし、急いで行ってみましょ?」

エリーがそう言うので、トゥーラさんに鍛冶屋の詳しい場所を聞いて3人で向かうことにした。


 次話に続く。

 ダンジョン行くならもう少し仲間欲しいですね。仲間。

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