表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/53

第15話 妹勇者のお披露目と、兄の旅立ち。

【異世界生活4日目 朝】


「タイヨウお兄さん、朝ですよ。起きてください」

けもみみ妹のエリーにそう声をかけられて起きる俺。


「昨日は酷い目に会った」

俺はそう呟き、その原因を作った当事者の方を見る。

 カミラは幸せそうに自分のベッドの上で熟睡している。


 とりあえず、井戸に体を拭きに行き、さっぱりしたところで、魔物狩りの装備に着替え、酒場でエリーと朝食を食べ、昨日の状況を説明した。さすがに戦闘狂のエリーもドン引きだった。

 レベル21越えの魔物を狩りまくる。俺にはちょっと早すぎたようだ。


 その後はいつも通り、傭兵ギルドで魔法石の換金をして、エリーと魔物狩りに行く。

 今日は南の門から南の街道を南下する魔物狩り。ここも肉食獣天国、わんにゃん祭り(カーニバル)パート3だ。


 ちなみに昨日の夜の魔物狩りで拾ったランク2の魔法石、少し大き目な魔法石はランク1の3倍の価値、10個で銀貨1枚だそうだ。

 中魔法石33個で銀貨3枚と小銀貨1枚、小魔法石70個で銀貨2枚と小銀貨1枚、端数をまとめて小銀貨1枚、合計、銀貨5枚と小銀貨3枚になった。カミラとの分け前は銀貨2枚と小銀貨4枚ってところだな。

 

 エリーとの狩りの途中、スライムやトカゲなどを倒しつつ、レッサーウルフやレッサークーガを倒しまくり、お昼の1時近くまで魔物狩りをして魔法石が142個手に入った。換金して、銀貨4枚と小銀貨3枚。エリーと半分こだ。

 

 それと俺もエリーもレベルが1上がり、俺がレベル32、エリーがレベル26になった。


 その後、酒場でお昼ご飯をエリーと食べて、宿の自分の部屋に戻る。

 部屋に戻ると、なんか、夜型のカミラが珍しく昼間に着替えて出かける準備をしている。


「カミラ、どうしたんだ? 出かけるのか?」

俺は驚いてそう声をかける。


「何言っているの、お兄ちゃん? お兄ちゃんの実の妹ちゃん見に行くんでしょ。私も行くよ」

そう言って、自称マジックバッグからにゅ~っと紺色のマントを出す。


「でも、カミラ、肌が弱くて日が出ている時間に外に出ると日焼けでやけどするんだろ?」

俺は気になって聞いてみる。


「そんなときの為にこのマントだよ。陽の光を完全に遮断し、顔の部分には闇魔法で光が入らない魔法障壁が張れる完全日焼け防止マントだよ」

カミラがそう言っていつも着ている服とよく似た紺色のマントを纏う。

 そして、顔の部分には、よく意識高めなおばちゃんが身に着けているような巨大なサンバイザーのようなものが着いている。


「なんか、日焼けにうるさいおばちゃんみたいな格好だな」

俺はそう言って笑う。


「よく分かったね。これ、お母さんのお古だよ。お母さんも日焼けにはうるさかったからね。ただ、このマントを着ると動きが阻害されるから、魔物狩りには使えないんだよね」

カミラがそう答える。

 なるほど、戦闘向けではないので、普段の生活くらいなら、日焼けを避けられるが、これがあるからと言って昼間の魔物狩りができるわけではないと。


「エリーも行くのか?」

俺は一応聞いておく。


「それはもちろん行きます。将来義理の妹になる方ですから、本来なら挨拶しておきたいくらいです」

エリーが興奮気味にそう言う。


「そうか」

俺はとりあえず、あまり触れないようにスルーする。


「それと、勇者様のお披露目を見終わったら、旅の準備もしないといけませんね。タイヨウお兄さんの着替えを全部移動させるとなると、今使っているリュックでは小さい気がします。あと食料ですね」

エリーがそう教えてくれる。

 まあ、ぶっちゃけ、カミラのアイテムボックスに全部放り込めばいい気もするが、彼女自身、あまりアイテムボックスの事は知られたくないみたいだし、カモフラージュも込めて、服とか盗られても困らないもので荷物らしいものを作った方がよさそうだしな。


「ちなみに、移動は乗合馬車使うんでしょ? 私は日中歩いて移動するのはさすがに無理だし」

カミラがそう言う。


「そうだね。そうしたら、お兄さんと私はギルドで乗合馬車の護衛をしながら移動するといいかもしれないですね。護衛の為に歩きにはなりますが、単独での移動より安全性は高くなりますし、お金も貰えるんでお勧めですよ」

エリーがそう教えてくれる。


「ちなみに目的地まで何日かかるんだ?」

俺は気になって聞いてみる。


「隣の町には朝出発して夕方には到着します。そして、もう1日移動すると、冒険者の町と呼ばれるキッシュという名の町があります。そこが北東のダンジョンに行く拠点となる街で、とりあえず、その町が目的地になりますね。なので2日ってところでしょうか?」

エリーがそう教えてくれる。


「まあ、逆を言うと、この世界、馬車で1日移動できる距離のところにそれぞれ宿場町みたいなものがあって休みながら移動する感じかな?」

カミラがそう付け足す。

 なるほど。馬車や徒歩1日で移動できる距離に町ができていくそんな歴史でこの国ができたようだ。


 とりあえず、俺とエリーは傭兵ギルドで仕事を聞いてみる。

 毎日北に行く乗合馬車と商人の馬車の一団がいるそうで、護衛の仕事の依頼もあるらしい。いつも、定員割れで空きが少しあるらしいので、仕事を回してもらう。

 ただし、国籍不明で住所不定の俺は人物信用度ゼロ。そんな仕事を受けられるはずもなかった。

 そういえば、ギルドカードを作った時にそんな表記あったな。

 まあ、商人の馬車の護衛の仕事を住所不定の冒険者と称して盗賊団に仕事を引き受けられても商人たちは困るもんな。 


 しかたがないのでエリーの婚約者でエリーが保証人になることで、俺の信用度を上げなんとか受けさせてもらえる。

 エリーは戦時下避難民ではあるが、一応この国の住人で戦火の下にある町にだが住居もあり両親もいるということで、人物信用度☆2だ。おれはその庇護下に置かれて、かつ、魔物狩りの功績も加味されて人物信用度☆1.5という扱い。

 まあ、☆なしだった俺からすると仕事の幅が増えてありがたい。最初の目的だった王城の兵士になるには人物信用度が全然足りないけどな。


 そして、エリーが何故かとてもうれしそうだ。

 

 2時くらいになったので、3人で王城に出発する。俺は変装とまではいかないが、宿屋でタオル代わりに売っている布を新たに買い、それをバンダナ代わりに頭に巻き、目が隠れるぐらいまで深々と下ろす。



【異世界生活4日目 昼2時過ぎ】


 お披露目会場の王城の城壁前広場に向かう俺達。

「日差しが強くなってきたので、日よけのフードとかも買った方がいいかもしれませんね」

俺の被っているバンダナを見てエリーがそう言う。

 確かに、乗合馬車の護衛をするなら買っておいた方がいいかもな。エリーの分も必要だろう。


「ちなみに、私は、傭兵ギルドのカード持ってない、工房ギルドのカードしか持っていないから、護衛の仕事は無理だからね。ま、昼間戦うのも嫌だしね」

カミラがそう言う。

 ああ、知っているから声をかけなかったんだ。

 彼女は訳ありらしいので傭兵ギルドでカードが作れないそうだ。

 偽名とか使っているからかと思ったが、エリーの反応を見ると偽名ではないし、魔人族の国に家があるのも事実ではあるようだ。年齢の問題だろうか? そもそも魔人族の国の住人って事が問題なのか?


 そんなことを考えながら歩いたが、考えてもしょうがないし、カミラに聞くのも気が引けるので、忘れることにする。悪い奴じゃなさそうだしな。


 

「結構、人が集まっていますね」

勇者のお披露目会場の城壁前の広場に到着し、エリーがそう感想を漏らす。

 確かにギュウギュウ詰めってほどではないが、結構人が集まっている。最前列を競い合うみたいな熱気はなく、一応見ておこうくらいの関心か?


「まあ、今後の戦争に影響するからね。勇者が弱かったら、兵士もいっぱい死ぬし、税金もどんどん使われちゃうし、逆に強ければ兵士もいらないし、税金の節約になって国民たちはうれしい。そんな感じかな?」

カミラが興味なさそうにそう言う。

 それに巻き込まれた妹のあてなはたまったもんじゃないな。

 

 そんな感じで、最前列ではないが、少し前の方の位置を確保でき、妹のあてなが登場するのを待つ。

 なんか警備の兵士が沢山いるので、追放された俺としては気が気じゃないのだが。

 まあ、見つかったら殺される。みたいなことはないよな?


 俺はなるべく目立たないようにしながらその時が来るのを待つと、王城の城壁の上が慌ただしくなる。

 なんか偉そうな鎧まみれの兵士、いや騎士か? そんな集団が城壁に集まりだし、落ち着いたところで、見たことがあるおっさんたちが顔を出す。

 俺がこの世界に来た時にみた自称王様のおっさんと、推測だが偉そうな聖職者のおっさんだ。


 俺は無意識に顔を隠すように下を向いてしまう。


 なんか、文官風のきらびやかな服を着たおっさんが前説のような講釈を述べて、偉そうな聖職者のおっさんが宗教っぽい話をして、最後に王様らしいおっさんが、挨拶をして、とうとう妹のあてなが登場する。


「それでは皆の者、この国を救う救世主、勇者アテナを紹介しよう」

王様が最後にそう言い、城壁の前の広場に集まった観衆が一斉に拍手する。

 そして現れた、美少女。そう俺の愛すべき妹あてなの登場だ。


 なんか偉そうな鎧を着た男女に挟まれて、偉そうな魔法使いっぽいおっさんや聖職者っぽいにいちゃんに囲まれて、あてなが城壁の上に現れる。

 真っ白な清純そうな騎士の着るような服に包まれ、白銀の鎧を身に纏い、赤くも見えるきれいな長い髪を後ろに束ね、その髪色によくあった真っ赤なマントを身につけたあてなが俺の目の前に登場した。

 城壁の上と城壁の下、全く手の届かない距離だが、妹の元気そうな顔をみて俺は安心する。顔色もよさそうだし、ひどい目には合っていなそうだ。


「タイヨウお兄さんの妹さん、アテナさん? 可愛らしい女性ひとですね」

エリーが驚くようにそう言う。

 そうだろ、そうだろ。俺の愛しの妹あてなは可愛いし、美人だし、中身も最高だ。

 俺はエリーの反応に気分が良くなる。

 

「この勇者様は、歴代の勇者を超える才能を持ち、しかも、聖剣使い。自在に世界最強の剣を呼び出し、扱う力を持った、まさに歴代最強のお方だ。私はこのお方の力をお借りし、この長く続いた魔王との戦争に終止符を打つことを国民の皆に約束しよう。さあ、勇者様、国民の皆に最強の証、聖剣をお見せいただきたい」

王様が熱く語りだし、最後にあてなをエスコートし、城壁の一番前に出たあてなは両手を上げると、その両手が輝き出し、手の中には巨大で美しい1本の剣が現れる。

 

「あれが聖剣なんですね」

エリーが見とれるようなまなざしでそう呟く。

 確かに見とれるほど美しいし、強そうな剣だ。そしてその剣以上に俺の愛すべき妹アテナは美しかった。


「ヤバいね。あの子本当に強いよ」

カミラがあてなを見てそういう。

 そしてそれと同時にあてながカミラを見る。


「さすがに勇者ね。スキルとステータス覗いたのがバレて、逆に覗かれそうになったよ」

カミラが慌てて俺の後ろに隠れてそう言う。

 そして、あてなと俺の視線が合う。

 そして、複雑な顔をするあてな。何か言いたそうだが言えないって顔をしている。


「あてなのことは俺が守るし、その為にも俺はもっと強くならなくてはいけない」

俺は独り言のようにそう呟く。

 いや、そう再確認させられた。


 あてなが危険な目に合わないように先回りして戦い続け、最後は、魔王を倒し、あてなをさらって逃げられるぐらいの力をつける。

 無能な俺には厳しい道のりになるが、それをしなければ、不幸になるのはあてなだし、俺はあてなが幸せになる為にはなんだってする。

 今までだって、両親を失ったあてなが何の不自由もなく高校を卒業し、大学に入り、卒業させることもできた。その為に社畜にだろうと父親代わりだろうと母親代わりだろうと何にだろうとなれた。

 勇者を越える勇者になるくらいどうってことない。あてなの為になるんだったらなんだってしてやる。

 俺はそんなことを考え、あてなを見つめ続ける。


 最後にあてなは手に持った聖剣を消し、俺に背を向けて退場していく。

 その後、教育係と名乗る、騎士や魔法使い、神官たちの紹介があり、今後のスケジュールなども報告があった。

 北東のダンジョンでの勇者の力の証明、実力的なお披露目は掲示板に書かれていた1か月後ではなく、半月後に早まったとのこと。予想以上に勇者の能力が高く、成長も著しいということで、半月後にはダンジョン攻略も可能だろうという事でスケジュールが早まったらしい。

 やばいな。さらに難易度があがった。


「お兄ちゃん、ゆっくりしていられなくなったね」

カミラが俺の後ろに隠れたまま嬉しそうにそう言う。

 こいつ、またスパルタする気満々だな。この戦闘狂め。

 だが、カミラのそのやる気と自信、そして実力は実に頼もしいし、頼りになる。


「少し、忙しくなるが、二人とも力を貸してくれ」

俺はそう言って2人の手を握る。


「ま、家に帰るまでだけどね」

「妻ですもの。夫の為に全力をつくします」

カミラとエリーがそう答えてくれるが、なんて答えたらいいか困る解答だな。


 教育係という奴らの話も終わり、王様の面倒臭そうな話も終わり、勇者のお披露目会が終了する。

 なんか、観衆たちも勇者アテナの強さにあてられたのか、少し興奮が伝わってくる。

 まあ、それだけ、俺の妹、あてなは可愛いし、強いし、いい女だからな。

 俺は少し自慢げになる。


「そういえば、タイヨウお兄さんの実の妹、アテナさん? 私より年上でしたね。こういう場合って、私がお姉さんでいいんですかね? 私が妹になるんですかね?」

エリーがどうでもいい事を言い出す。

 とりあえず、元の世界では兄の奥さんは年下でも義姉さんだ。


「タイヨウお兄さん、それじゃあ、今からお買い物に行きましょ? 日よけフードに移動のためのバッグ、食料や日常品も必要ですね」

俺が呆れ顔をしていると、エリーが楽しそうにそう言い、俺の手を引く。


「お兄ちゃん、買い物終わったら、今日もレベル21越えの魔物でスパルタだからね」

カミラがそう言って笑い、宿屋の方に帰っていく。

 というか、お前も移動するんだろ? 準備は大丈夫なのか? というか、準備を手伝え。

 俺はそう思いつつも、エリーに引きずられるように市場や商店街の方に移動する。


 移動に必要なものをエリーと相談しながら買い、宿屋で荷作りをする。


 そして、夕食を3人で食べて、夕食後はカミラの宣言通り、昨日の北に伸びる街道でレベル21超えの魔物を相手にスパルタ魔物狩り。

 さすがに明日の朝、早くから移動になるので、早めに上がったが、昨日同様、何度も死にかけたし、体力も精神的にもフラフラで限界ギリギリって感じだった。

 鶏肉のステーキを無理やり喉に通し、少し早めに就寝する。

 明日は朝の8時から乗合馬車の警備をしながら隣の街に移動するのだ。


 次話に続く。

 勇者育成スケジュール早まりました。

 いや、1か月あったら、さすがに無能お兄ちゃんも凄く強くなっちゃいそうだなって思ったりしたりしなかったり。

 とりあえず、明日から、北に町二つ移動した冒険者の町キッシュに移動します。

 お兄ちゃんは、妹のあてなが到着するまでに、ダンジョンで魔物を狩りまくって、ダンジョンを空っぽにするつもりらしです。


 ちなみにスパルタという言葉は主人公が勝手に翻訳しているだけで、きっと異世界での別の似たような言葉や逸話がある感じですw スパルタという都市があるわけではありませんw


 本日もブックマーク1名様ありがとうございます。やる気がでます。

 ちょっと先が気になるって方、ぜひブックマークをお願いします。

 ブックマークと☆5が素人作家の原動力になるのですw

 

 本日もお読みいただきありがとうございます。次回もぜひお読みください。

 感想ご意見お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ