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第12話 兄、新しい妹、犬耳少女と魔物狩りに行く

【異世界生活2日目 深夜】


「いや~、スリリングで楽しかったね」

自称魔法使い見習いの幼女、カミラが上機嫌だ。


「スリリングじゃ済まねえ。一つ間違えば俺、死んでいたぞ」

俺は先ほどまでのレッサーウルフやレッサークーガとの闘い、通称『ワンニャン祭り(カーニバル)』を思い出し寒気がする。

 レッサークーガはまだいい、群れないから多くても3体相手。カミラと分担すれば1体ずつ倒すことも可能だった。しかしレッサーウルフはヤバイ。常に6体前後で襲ってくる。しかも連携して襲ってくる。そしてヤバくなると、カミラと分担しても3体同時攻撃とかもあり、皮手袋か革靴を噛まれて命の危険を味わう。そんな繰り返しだった。


 まあ、無理をしたおかげで、二人ともレベル25になったが。


「とりあえず、飯を食って寝るぞ」

俺はそう言って、酒場に入り、遅い夕食、いや、夜食をカミラと二人で食べる。時間はすでに夜の12時らしい。

 食事を食べ終わり、酒場の裏口でカミラと歯を磨いてから部屋に帰る。ちなみに歯ブラシはなく、宿屋で木の棒が貰えるので、それを奥歯で噛んでブラシ状にして楊枝と歯ブラシの中間みたいな使い方で歯を磨くらしい。あと、生水は怖いのでうがいは湯冷ましの水だ。

 なぜかカミラの分まで食事代を払わせられるが、今夜の魔物狩りの分け前から天引きする予定だ。 

 

「おかえりなさい。タイヨウ兄さま、カミラちゃん」

部屋に戻るとドアの音で起きてしまったのか、エリーがむくりと起きて寝ぼけ顔で迎えてくれる。


「悪いな、起こしてしまったな」

俺はそう言ってエリーに謝る。

 エリーは外でも着られそうな部屋着兼私服のような、飾り気の少ないワンピースのような格好で上体を起こしている。

 俺はとりあえず、荷物を床に下ろす。


「大丈夫ですよ。やる事もなかったので、お洗濯した後はお掃除をしてすぐ寝てしまいましたし」

エリーが眠そうに目をこすりながらベッドの縁に座り直すとそう言う。

 掃除もしてくれたらしい。確かに床が綺麗だし、ベッドメイキングもされている。


「それと、明日はどうしますか? 魔物狩りを一緒にしてくれるんですよね?」

エリーがそう聞き返す。


「ああ、エリーは朝どうするんだ?」

俺は逆にエリーがどうしたいか聞き返す。


「私は、6時の教会の鐘で起きて、少しお洗濯と、元の部屋に干してある洗濯物を取り込んで、この部屋にお引越ししたいので、7時くらいからでしょうか? 魔物狩りに行けるのは」

エリーがそう答える。


「それじゃあ、ちょうどいい。7時に起こしてくれ。一緒にご飯を食べてから魔物狩りに行こう」

俺はそう答え、明日の予定も決まる。


「私は昼まで寝るから起こさないでね。あと、昨日みたいに朝食テイクアウトお願いね」

カミラはそう言うと、魔法使い風の紺色の洋服を脱ぎ捨てて、洋服の下に着ていた鎖帷子(チェーンメイル)を脱ぎ捨て、アイテムバッグに放り込むと、ブーツを脱いで、肌着の状態でエリーの寝ていたベッドに飛び込む。


「魔法使い風の服の下は鎖帷子(チェーンメイル)だったのか。魔法使いというより完全に前衛だな。しかもガチの」

俺はカミラの装備を始めて見てちょっとドン引きした。


「カミラちゃんは魔法使いというより魔法剣士に近いのかもしれないですね」

エリーがそう言って笑う。


「おっと、悪い悪い。話し込み過ぎたな。寝ている途中だったんだろ。ゆっくり休んでくれ。俺も寝るし」

俺は慌ててそう言い、エリーも休むよう勧める。


「はい、タイヨウお兄さん、お休みなさい。そして、明日は宜しくお願いします」

エリーはそう言ってペコリとお辞儀をすると、カミラと一緒に横になる。

 カミラとエリーは、ここに来る前、別の町で友達だったらしいが、こんな夜型娘とどんな付き合いをしていたのか不思議になる二人だ。

 

 俺はそんなことを考えたが、とりあえず、考えないことにする。

 荷物を移動させ、鎧を脱ぎ、肌着姿のまま、ベッドに入る。気候は結構暖かい地域のようで、肌着に毛布で凍えることなく寝られる感じだ。

 俺は、午前中死にかけたのと、それによってMPを使いすぎて、よっぽど疲れていたのか、どっと睡魔に襲われ眠りにつく。



【異世界生活3日目 朝】


「タイヨウお兄さん、朝ですよ。起きてください」

エリーにそう起こされて目を覚ます俺。


「ああ、おはよう、エリー。起こしてくれてありがとうな」

俺はよっぽど疲れていたのか、朝の教会の鐘に気づかず寝てしまっていたようだ。

 エリーはもう、装備も整え、魔物狩りに行ける状態のようだ。


「悪いけど、ちょっと、待っていてくれ。井戸に体を拭きに行ってくる」

俺はそう言って、服を着ると、宿屋の受付でもある酒場のカウンターで昨日買ったタオル代わりの布と石鹸を持って井戸に行き、体を拭いて、頭を洗う。

 子供とはいえ、女の子達もいるしな。身だしなみはしっかりしたい。

 というか、エリーやカミラはそのあたりどうしているんだ?


 その後、俺も部屋で装備を整え、酒場でエリーと一緒に朝食を食べる。


「そういえば、エリーやカミラはお風呂とかどうしているんだ? というかこの世界、お風呂、お湯につかったりする施設とかあるのか?」

俺は朝食を食べながら気になったことを聞いてみる。


「お風呂? お湯につかる習慣ですか? そういう風習はないですね。綺麗な川がある場合は水浴びしたりしますけど。それと、普段はこの宿に、お湯で体が洗える、土間のようなところがありまして、有料ですが、そこで多めのお湯で体を拭く感じですかね? もちろん、男女別ですよ」

エリーが少し恥ずかしそうにそう教えてくれる。

 まあ、シャワールームみたいな感じか? 浴槽はないけど、お湯で体を軽く流すくらいの風習はあると。


 そんな感じでこっちの世界の生活の事を聞きながら朝食を食べ、カミラの分のテイクアウトを買って部屋に置いて、出かける準備をする。

 お昼ご飯と非常食は昨日全く食べなかったので残っている。朝食の時に水筒に湯冷ましの水を入れてもらったので準備万端だ。

 今日の分の宿代、銀貨1枚、小銀貨2枚払い、エリーの部屋を血で汚してしまったお詫びで銀貨3枚渡す。今日からエリーと同室になる話もしたが、宿屋の女将に疑いの目を向けられたので、カミラの友達、妹の友達だったという事で事なきを得る。まあ、カミラが妹という嘘以外、嘘は言ってないしな。


 魔物狩りの前にギルドの受付で、昨日の夜の魔物狩りの精算をする。もちろん話慣れたアイナさんの窓口だ。

 昨日は魔法石220個。銀貨7枚と小銀貨1枚、魔法石が4個余る。まあ、カミラの分け前は夕食代と朝食テイクアウト代引いて、銀貨3枚と小銀貨1枚ってとこだな。割り切れない部分は宿代として俺が貰う。

(ちなみに小銀貨5枚で銀貨1枚の価値だ)


「レッサーウルフの経験値は美味しいが、魔法石を考えると損した感じだな。倒すのに時間がかかるから、スライムやスモールフロッグを倒しまくった方が魔法石は多く手に入るし」

俺はギルドの受付のアイナさんから銀貨を受け取りそう話す。


「そうですね。もう少し強い魔物ですと、ランク2の魔石になって金銭的にもお得になるんですが、レッサーウルフはランク1の魔石なので強さの割に損した気分になるって皆さん言われますね」

アイナさんがそう言って笑う。


「それと、昨日助けてくれた野良ヒーラーさんってエリーちゃんだったんですね」

アイナさんがそう付け足す。

 まあ、実際に、完治させてくれたのはカミラだし、エリーにはカミラが治癒魔法を使えることは内緒にしているらしいので、別の第三者の野良ヒーラーに回復してもらったことになっているが、命を助けてくれたヒーラーという意味では間違っていないのであえて訂正はしない。

 

「でも、それって・・・」

さらにアイラさんがそう呟き、考え事をし始める。

 ヤバい事案ですか? もしかしてロリコン犯罪者容疑で捕まる?


「ええ、タイヨウさんとは私が成人になったら、婚姻の関係を結ぶ予定です」

エリーがそう言って突然俺と腕を組む。


「そ、そういう関係だったんですね」

アイナさんがドン引きしている。


「獣人族の問題って、義理の兄みたいな家族の関係じゃダメなのかな?」

俺はアイナさんに相談する。


「ダメです」

エリーに即答される。


「とりあえず、パーティメンバーになったし、まあ、今のところエリーは未成年だし義理の妹みたいな感じで、な?」

俺はアイナさんとエリーを交互に見ながら一生懸命弁明する。


「タイヨウさん、将来的には男らしく責任取ってあげてくださいね」

アイナさんが呆れ顔でそういう。

 獣人のぺろぺろ事案は世間一般的に知られていることっぽいな。俺はアイナさんの言葉にがっくりうなだれる。そしてエリーが不満そうに頬を膨らます。


「ま、まあ、とりあえず、魔物狩りに行こう。早くレベルも上げたいしな」

俺はそう言って逃げるようにギルドから出る。

 今日も西門から出て、町の周りの少し離れたところをぐるりと回る感じか。


「そういえば、エリーって、戦えるのか? 神官だから後衛とか?」

俺は西門に向かって歩きながら気になって聞いてみる。

 俺が子供のころ遊んだRPGでもゲームによって神官の扱いはだいぶ違うからな。


「ええっと、私は、先日説明した通り、回復魔法がほぼ使えないので、前衛です。というか、獣神を崇める人の大半は黒獅子王様を崇める黒獅子王派なので、回復魔法が使える神官はほとんどいません。まれに私の母のように回復魔法が使える銀狼姫派の神官もいるんですが、基本、獣神教の神官は、身体強化と防御魔法が少し使えるだけの修道僧(モンク)が大半ですね」

エリーがしれっという。

 マジか・・・? 回復魔法が使えない上に、殴り僧侶を越えで修道僧(モンク)かよ。というか、獣神教の事が良く分からない。二宗派あるのか?


「ちなみに、今から銀狼姫派とかいう宗派の神官とかにはなれないのか? お母さんみたいに」

俺はクラスチェンジに期待をかける。


「無理ですね。生まれつき、獣神、夫婦神の夫である黒獅子王様の恩恵を受けるか、妻である銀狼姫様の恩恵を受けるか、魂で決まってしまうらしいです。奥様の銀郎姫様の恩恵を受けることは獣人族の中でも結構稀ですね」

俺はがっくりと肩を落とす。

 エリーに回復役を期待するのは無理そうだ。

 俺は回復魔法が使えるエリーのお母さんにチェンジをお願いしたくなった。


「なんか、ひどい事考えてません?」

エリーがそう言って頬を膨らます。


「私だって、回復役としては役立たないかもしれないですけど、前衛としては結構役に立つんですからね」

エリーはそう言って、背負っていた鞄のポケットから、武器を取り出し装備する。

 もしかして、武器って、メリケンサックかよ!?


 俺はエリーが手にはめた武器を見て愕然とする。

 なんか、一昔前のヤンキー漫画の不良が使いそうなメリケンサックに棘のついたような結構予想のはるか上を行く武器を装備するエリー。


「神官ってメイスとか鈍器系の武器を装備するのかと思っていたよ」

俺はそう言って少しドン引きする。


「獣神教の神官は修道僧(モンク)、格闘家に近いですからね。とりあえず、殴って蹴ります。私のお父さんは格闘家なのでかなり格闘技には自信がありますよ」

そう言って、自信ありげに構える。

 いや、そういうのを期待していたんじゃないのだが。


 回復魔法皆無で殴り神官、しかもメイスで殴るんじゃなくて、拳で殴る修道僧(モンク)ときた。

 可愛い顔をして、予想を裏切る、予想の180度逆を行く武闘派美少女神官だった。


 もう、どこから突っ込んだらいいか分からない。

 俺は呆然として、西門をくぐり、町の外に出る。


「タイヨウお兄さん、今日はどうしますか? レッサーウルフにリベンジ図りますか?」

呆然とした俺にそう声をかけるエリー。


「え? レッサーウルフ倒せるの? ちなみにレベルはいくつ?」

俺はエリーのセリフにさらに呆気にとられる。


「ええっと、レベルは23ですが、私、素早さが高いのでレッサーウルフと相性いいんですよ。レッサーウルフより早く動けるみたいな? まあ、さすがに一人だと苦戦しますが」

エリーがそう言ってにっこり笑う。

 マジか? ここにカミラみたいな戦闘狂がもう一人いたよ。見かけは清楚で気弱そうな美少女なのに。

 俺はさらにドン引きする。

 とりあえず、今日は町の周りをまわってスライムとかカエルとかトカゲあたりの雑魚魔物を倒そうと思ってたのに。


 しかもエリーは突拍子もない行動に出た。

 西の街道を少し歩き、森が見えたので、そこから北上し、森の縁を歩いて、スライムやカエルを倒しに行こうかとおもったところで、


「タイヨウお兄さん、いましたよ。レッサーウルフがいましたよ。行きましょう!」

嬉しそうにエリーがそう言うと、はるか遠くに見える、点のようなオオカミらしい存在に向かって走り出す。


「ちょ、おま、待て、・・・・」

俺は慌てて声をかけようとするが、聞く耳持たず、というより、かなり遠くまで全族力で走り出してしまったエリー。叫ばないと聞こえない距離だ。

 俺は慌てて彼女を追いかける。


「遅いですよ、タイヨウお兄さん」

俺に向かって振り向くと楽しそうに笑いながらそういうエリー。セリフと表情はデートで浮かれる可愛い小さな彼女って感じだが、エリーの振り向いた瞬間、レッサーウルフがエリーの死角から飛び掛かる。


「あぶな」

俺が慌てて声をかける前に、エリーは振り向きざま、くるりと反時計回りに独楽のように体を回転させ、横に1回転、その勢いで左足を力強く、地面を踏み抜き、その足を軸に、左手の甲でレッサーウルフの横顔をぶん殴る。

 目にもとまらぬ速さで裏拳をぶちかます美少女。

 レッサーウルフが弧を描いて5~6メートル吹き飛ぶ。


 そして、エリー自身は、その回転した勢いで、さらに右足を一歩踏み出し、先ほどと同じように地面を踏み抜き、左こぶしを左腰で絞り込むように構え、さっきのレッサーウルフの影から襲ってくる2匹目のレッサーウルフに左アッパー、レッサーウルフがくるくる縦回転して浮かびあがり、そのレッサーウルフの腹めがけて右手のストレート。左右のワンツーで、レッサーウルフの腹が爆発したように吹き飛ぶ。


「タイヨウお兄さん、早くしないと、私が全部倒しちゃいますよ?」

そう言って笑い、構え直す。

 残り、健在のレッサーウルフは3匹、レッサーウルフもドン引きだ。最初に殴られた1匹は地べたで寝そべり、ぴくぴくして泡を吹いている。


 レッサーウルフはエリーのあまりの強さに距離を置いて警戒している、いや、ドン引きしているのかもしれない。


 俺は慌ててメイスを構え、エリーのフォローに入るが、この状態、俺のフォローいるのか?

 俺はとんでもない少女を妹にしてしまったのかもしれない。


 次話に続く。

 タイヨウお兄さんもオオカミ達もドン引きですw


 ブックマーク2名様、☆も2名様? ありがとうございます。やる気が出ます。

 少し先が気になるなと思っていただけた方、ブックマークや☆いただけると作者かなり喜ぶので宜しくお願いします。多分執筆スピードが上がりますw

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