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しいな ここみ様主催企画参加作品

慈悲は絶望の助けになるか


地球統一政府の初代大統領は自身の執務室で1人の男と向き合っていた。


「博士! その数字に間違いはないのか?」


「間違っている可能性は残念ですがかなり低いです。


統一政府のスーパーコンピューターだけでなく統一前の各国政府が所有していた全てのスーパーコンピューターを使い、それぞれ数千回から数万回以上計算した上での結論ですから」


「それでは約20年後に博士が3年前に発見した巨大隕石が地球に激突して、人類が滅亡する可能性が高いと言うのだね?」


「隕石の激突そのものでも甚大な被害を被りますが、それよりも激突に伴う2次3次の被害により滅亡する可能性が高いのです」


「全世界の国々が1つの国家に統一されてまだ5年しか経っていないのに、なんて事だ。


それで……人類はこのまま滅びるのか? 生き伸びる事は出来ないのか?」


「実はある対策を講じれば、生き延びる事ができます」


「何! 本当か? どのような対策を取れば生き残れるのだ?」


「私たちは隕石が激突する可能性が高いと知った時点で、如何にすれば人類が滅亡せずに済むかを考えました。


あらゆる情報を解読し査定した結果、私たちは見つけたのです、人類が逃げ込める場所を」


「それは何処にあるのだ?」


「地下です。


世界各地の地下3万メートルから5万メートルの所に、巨大な地下空間が多数存在する事を私達は突き止めたのです。


その地下空間を私たちは、20世紀前半に活動していたSF作家が書いた地底世界の名称から、地底世界ペ〇シダーと仮称しました」


「それでは我々人類は、これから地底人として生きて行く訳か?」


「違います。


残念ながらこの地底世界で生活する事はできません。


巨大な地下空間と言ってもそのSF作家が描いた地底世界と違い太陽の代わりをする物がありませんし、その地下空間自体が凄まじい程の高温で、我々生身の人間が生きて行ける物では無いのです」


「では、どうやって生き延びるのだ?」


「コールドスリープです」


「コールドスリープだって?」


「はい、各地の地下空間に100億の国民全員を収容出来るコールドスリープの施設と、その施設に電力を供給する原子力発電所などを建造して、人類がまた地上で生活出来るようになるまで眠り続けるのです」


「どれ程の期間眠り続けるのだ?」


「計算では、地表が人類が生存可能な気温に戻るのに約10万年はかかると思われます」


「そんなに長い年月が必要なのか? 


だが人類が生き延びる為に必要な事なのだね?


……フー……分かった。


人類が生き延びる為にコールドスリープ計画を推し進めよう。


計画をP計画と名付けて、人類の生き残りを賭けて全世界が、全人類が一丸となって計画を推進しよう」


「分かりました、大統領閣下」


大統領の承認の下、人類の生き残りを賭けたP計画は推し進められる。


ペ○シダーと名付けられた地下空間にコールドスリープ施設とコールドスリープ施設に電力を供給する原子力発電所、数十年毎に交換が必要な核燃料貯蔵施設と交換された使用済み核燃料の保管施設が急ピッチで建造される。


それと共に人類が目覚めたあと必要になる食料や物資を備蓄しておく、巨大な貯蔵倉庫も建造された。


その建造された施設群はタウンと名付けられる。


隕石が激突する半年程前、100億を超える全国民を収容するためペ〇シダータウン通称PTが、00001から10000までの数字が割り振られ完成した。


1つのPTに100万人の国民が収容される。


完成したPTから順に国民が次々と送り込まれ、コールドスリープに収容されて眠りに付く。


巨大隕石が刻一刻と地球に近寄って来ているのが視認できる激突数日前、P計画の陣頭指揮を取っていた大統領が、自身が眠りに就くコールドスリープ装置が置かれている施設の前で博士に尋ねた。


「博士! 君達はコールドスリープで眠りにつかないというのは本当なのか?」


「はい、全人類が滞り無くコールドスリープで眠りについた事を確認する任務と、隕石を見つけた者として最後まで隕石の観測を続けたいという思いがあるからです」


「そうか……仕方が無い、10万年後に目覚めた時に博士の力をまた借りたいと思っていたのだが、博士のその思いを尊重しよう。


博士、今までありがとう、そしてさようなら」


「大統領閣下もお気をつけて」


博士は大統領やその随員をコールドスリープの装置の中に寝かせ、装置のスイッチを稼働させた。


地上の隕石観測所に戻って来た博士の下に、各地の部下達から次々と報告が入る。


「「「コールドスリープ装置に入る事を拒否した少数の者たちを除き、国民の殆ど全てを無事に寝かせつけました」」」


「ご苦労、上の奴等に巨大隕石の偽装を解いて良いと連絡してやれ、それから戦闘艇を派遣させて地上に残っている地球人共の駆除を行わせろ」


「分かりました。


フー、やっと此の変身スーツを脱ぐことができるのか」


「ああ、地球人共にバレないように40年以上の間着続けてたからな。


しかし地球人共を騙して地下に送り込む事より、統一政府を作らせる事の方が面倒だとは思わなかったな」


「本当ですよ。


あ、そう言えば、コールドスリープの目覚めの時間を100万年後に設定するよう言われましたが何故ですか?」


「100万年コールドスリープ内で眠っていれば、コールドスリープ内で死んでミイラ化するだろうからな。


地球人共に対する慈悲だよ」


「慈悲?」


「ああ。


40年地球人共と付き合っている間、言うことを聞かないペットと戯れてる気分にさせられてたからな。


居座られると邪魔な奴等だか、我が祖国暗黒星雲大帝国に占領されあらゆる資源を略奪されて荒廃した地球を、目覚めたとき見せられて絶望させるのは忍びないという思いからの、最後の慈悲だよ」


「その慈悲は絶望に対する助けになるんですかね?」


「さあな」






誤字報告ありがとうございます。

直しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] わぁ……そういうこと(´・ω・`) まぁ慈悲かそうでないかと言われると……彼らなりの慈悲なんでしょうね。 それにしてもすごい科学技術力だなぁと思いました。 地底に空いた巨大な空間にコールドス…
[良い点] 『10万年も食糧や電力がもつの!?』と思ってたら、意外な方向で謎が解けました(*´ω`*) 意外でした。 意外でした。
[良い点] 「宇宙人企画」から参りました。 タイトルが格好いいですね。 長年の大がかりな偽装で、じっくり計画を練って侵略していったと思うと、とても怖いなあと感じました。 地球人の誰か、気づいてほしかっ…
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