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6 服を脱がされたら

 布服を剝がされ、生まれたままの姿となる。

 やせ細った手足。少し膨らんだ胸。薄汚れた肌。

 初めて()()()を直接見たが、全体的に不健康な体つきをしていた。


「……あなた、歳はいくつですか」

「————」


 フェルリアの質問に答えようとしたが、息が漏れるばかりで声にならない。

 何度か声を出そうとするも、()()()()()()()


「もしかして、声が出せないのですか?」


 首を縦に振り、肯定の意を示す。


「このことは、ニズ様はご存じで?」


 ニズが理解しているかは、はっきりと分からないため首を(かし)げる。


「……分かりました。あとでニズ様に伝えておきます」


 フェルリアは小さく溜息をついて、自分の服を脱ぎ始めた。

 脱ぎにくそうなメイド服を手慣れた手つきで脱ぎ、近くの棚に片づけた。

 着痩せするタイプなのか、思ったよりもグラマーな体型をしている。


「こちらです」


 フェルリアはタオルを一枚持って、奥の扉の方に歩き出した。俺もその後を追いかける。

 扉を開けると、そこは案の定、風呂場だった。

 大きな浴槽が一つ中央にあり、その周りを取り囲むように体を洗うための場所が用意されている。湯気が充満しており、どこか甘いいいにおいがする。


「一人で洗えますか?」


 フェルリアが俺に尋ねてきた。

 無駄なプライドが邪魔をして、首を縦に振る。

「そうですか。分からないことがあったら言って……呼んでください」


 それだけ告げると、フェルリアは静かに移動し、黙々と体を洗い始めた。

 俺も一つ席を空けた場所に行き、体を洗おうとする。

 しかし、ここで問題があった。

 水の出し仕方が分からなかった。日本のシャワーや銭湯の流し場とは全く勝手が違った。ただの壁といくつかの洗髪剤らしきボトルが置かれているだけだった。

 ものは試しにいろいろ触ってみるも、うんともすんとも言わない。


「こことここを同時に押すと、お湯が出ますよ」


 どうすべきか困っていると、フェルリアが声を掛けてくれた。

「ありがとうございます」と口パクをして、頭を下げる。

 言われた通り操作すると、何もない壁からお湯がシャワーのように出てきた。丁度よい水温で、とても心地いい。

 髪を濡らし、洗髪剤を付ける。けれど、髪が思ったよりも長く、うまく指が通らない。

 女の人はどうやって髪を洗っているのだろう……。


「————全く、不器用ですね」


 慣れない長い髪と悪戦苦闘していると、タオルを体に巻いたフェルリアが俺の後ろにやってきた。


「それでは痛んでしまいます。交代してください」


 フェルリアは、手に洗髪剤を付けると、流れるように俺の髪を洗い始めた。

 しっかりと髪の根本まで触りながらも、優しくリズミカルに洗われていく。美容院のヘッドスパを連想させる手つきだ。


「あなた、自分の名前は分かるのですか?分かるなら指で書いてください」


 髪を洗いながらフェルリアが聞いてくる。

 ()()()()なら分かるが、()()()()は分からない。正直、どうやったら今の名前が分かるかも分からない。

 答えようがないため、控えめに両手でバツ印を作り、分からないことをアピールする。


「それも困りましたね。これも後でニズ様に報告ですね」


 報告して何か分かるのだろうか……。


「この後のことですが、入浴後はあなたの服の採寸を行います。その後、五日後に向けていろいろと準備をしていきます。その奴隷の紋章がある限り逃げられませんが、頑張ってついてきて下さいね」


 奴隷の紋章とは、胸元に彫られたこの模様のことだろう。

 というか、五日後に何があるというのだろうか。フェルリアに聞いたらお教えてくれるのだろうか。

 分からないことばかりだ。


「はい、それでは流します。目をつむってください」


 フェルリアが俺の頭にお湯をかける。頭がさっぱりとした。

 そのままフェルリアは俺の髪をゆっくりととかして、湯船に浸からないように巻いてくれた。


「五分後に出てきてください。時間厳守でお願いしますね」


 フェルリアは湯船に浸かることなく、元来た扉の方に向かった。


 分からないことばかりだが、なんとなく、フェルリアは悪い人ではないことが分かった。

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