5 屋敷に着いたら
儚い記憶が蘇ってくる。
見慣れたリビングの景色。俺は静かに椅子に座っていた。
俺の正面にはゲームをしている姉。その隣には本を読んでいる妹がいる。
母親らしき人の声が聞こえてきて、姉と妹が席を立つ。俺もその後に続いて手伝いに行く。
料理を運び終えると、父親が帰ってきた。スーツを脱いで、俺に渡してくる。慣れた手つきでスーツをハンガーに掛ける。父親は水を一杯飲むと、椅子に座った。
全員が揃ったところで、晩御飯を全員で囲う。
何気ない日常。それが当たり前で、変わることなんてない世界。
いつも幸せだった―――。
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「起きなさい」
ニズに声を掛けられて目が覚めた。
馬車は動きを止めていた。ニズが馬車の扉を開け、外に出た。その後に続いて、俺も降りる。
馬車の目の前に、大きな扉があった。扉は開かれており、奥に大きな屋敷が見える。
「お帰りなさいませ、ニズ様」
馬車の隣に、背の高い黒髪のメイドが一人立っていた。ニズに深々と頭を下げる。
「ああ、ご苦労。特に変わりはないか」
「カルラ様が昨晩、いつもの『お楽しみ』をなさり、使用人が一名重傷を負いました。命に別状はありません。また、その際に別館の壁が壊れてしまいました。今は応急処置を行い、明日修理の者が来る手筈となっております」
抑揚をほとんどつけることなく、淡々と説明を行っていく。
カルラ様とは、ニズの家族だろうか……。『お楽しみ』とは一体……。
「そうか。分かった。カルラに後から私のところに来るように伝えなさい」
「畏まりました」
「それと、この子は五日後に必要となる。ここでの暮らし方と、最低限の作法を教えておきなさい。担当はフェルリア、君に任せる」
「—————畏まりました。使用人室の空き部屋を使ってもよろしいでしょうか」
「問題ない。くれぐれもバレないようにな」
「ありがとうございます。問題のなく、進めていきます」
ニズはそれだけ伝えると、速足で扉の奥に向けて進み始めた。
慌ててニズの後ろをついて行こうとすると、メイドの人———フェルリアが腕を伸ばし、俺を静止させた。
「あなたは私と一緒に来てください」
そのままフェルリアに手を引かれ、強制的に移動させられる。
開いている大きな扉ではなく、隣の小さな扉を開けて中に入った。
というかこの人、すごく力が強い。引っ張られている腕と肩が痛い。すごく焦っている気がする。
「さあ、今のうちに入ってください」
小屋のような場所にたどり着くと、フェルリアは俺を小屋の中に押し込んだ。
中は暗く、何も見えない。
「明かりよ、部屋を照らせ」
フェルリアが声を発すると、部屋の電気がついた。まるで魔法のようだ。
小屋の中は、奥に長い構造になっており、左右に扉がいくつかあった。中央には螺旋階段のような物もついていた。
「こちらです」
フェルリアは、またぐいぐいと俺を引っ張り始めた。
抗うこともできず、フェルリアに導かれるように移動していく。
奥の方に移動し、新しい部屋に入った。そして、入ってすぐにフェルリアが俺の方を向いた。
「失礼します」
フェルリアはいきなり俺の服に手をかけて、布服をめくりあげた。




