4 契約されたら
破られた部分が垂れて、自分の胸元の肌が露わになる。
咄嗟のことで驚いたが、声は出せなかった。
「契約内容についてなのですが、基本事項以外のご注文はございますか?」
「鄙サ險ウ繧ケ繧ュ繝ォ」
「畏まりました。それでは、言語スキルをお付けいたします。別途料金が必要となりますので、ご理解ください」
「蛻?°縺縺」
男は手に短いナイフとお札のような紙を取り出した。
俺の胸元にお札を置き、ナイフをその上に添える。
刃物を向けられ、反射的に体が逃げようとする。
「動くな」
男がつぶやくと、俺の体は動かせなくなった。
そして、男はお札に書かれた模様を辿るようにナイフを動かし始めた。
刃先はお札を簡単に貫通し、俺の肌まで到達する。
「…………ッ!?」
プチプチと肌が裂ける感覚と、鋭い痛みが襲ってくる。しかし、逃げることはできない。
裂けたところから血が流れ出し、肌を伝って落ちていく。
一分ぐらい経ったところで、男はナイフとお札を離した。胸元には、独特な模様が彫り込まれていた。
切れた皮膚から血が滲み出ている。
「それでは、ニズ様。あなたの血を少し頂きます」
「縺薙l繧剃スソ縺」
「分かりました。お預かりします」
ニズと呼ばれている男は、中には赤い液体が入っている小さな試験管を男に渡した。
男は、試験管を開けて、中身を俺の胸元の模様に垂らした。
「……ッッ!!」
燃えるような痛みが走った。まるで熱湯を掛けられているようだ。
傷口から少し煙が上がり、焦げるような匂いがする。
痛みに耐えること数分後。痛みは治まり、傷口の血も綺麗になくなっていた。
「こちらで契約の儀は完了でございます。他に何かご心配なことはありますか?」
「特にはないが、言語スキルがどのくらい機能しているか、確かめてもいいか」
「どうぞどうぞ。こちらはもう、あなた様のモノでございますので」
ニズは、手に持っていたケースを男に押し付けて俺の前まで来た。
「俺の言葉が分かるか」
「……」
話したくても、まだ声が出せない状態だった。ニズの目をじっと見つめ、首を縦に振る。
「分かるならいい。付いてこい」
ニズは、それ以上話すことはなく、急ぎ足で部屋を出ようとする。
どうしていいいか分からず俺その場でポカンとしていた。
「付いていきなさい。命令だぞ」
男に背中を押され、ゆっくりとニズの後を追うようにした。
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部屋から出た後は、人通りの少ない通路を歩き、外に出た。
外には、馬車のような乗り物が一台用意されていた。
ニズに乗るように命令され、馬車に乗った。
「家まで行ってくれ」
ニズが運転手に話しかけると、馬車はゆっくりと動き出した。
馬車が進む中、ニズは外を見ているだけで何も話さなかった。
やることもないので、俺も外を眺める。
外を見ていると気付いたことがあった。
ここは「日本」や「地球」ではないということだ。
見知らぬ建物が立ち並び、生き物がそこら中にいる。
外国かと思ったが、さすがに翼の生えた猫は見たことも聞いたこともない。
一体ここはどこなんだ……。
馬車の小刻みな揺れを全身で感じていると、眠たくなってしまい、俺の意識はここで途絶えた。




