寂れたゲーム
―――ユーザネームを入力してください。
無機質な音声案内にしたがって、画面に表示されている記入個所に『ガノス』と入力する。
――――虹彩認証を開始します。
無機質な音声案内は続く。
頭につけられた精密機械――なんて名前だったかは忘れた――で、僕の虹彩を認識するために、青白い光が放たれている。
三年近く毎日のようにログインのために行っているのに未だに慣れない。
――――プレイヤーを『ゲノス』として認証します。
誰もが夢見る異世界を。
そんなキャッチフーズで三年前の夏に発売と同時に、世界中で売り切れ続出となったオンラインゲーム『テイルズ』も今や、プレイヤー総人口は五十万人を下回っている。
普通のゲームだったなら、五十万人というプレイヤー数は異常な数だ。
しかし、全盛期には一千万人近くいたプレイヤーが今では、10パーセントにも満たしていないのだ。
過去の勢いはどこへ行ったのか、その広大な世界ではプレイヤーを見かけることも少なくなった。
『テイルズ』は、その名前の通り、物語調であるということ、広大な世界観、複雑な設定、何よりも群を抜いて美麗とも称されるグラフィティが売りであった。
それも、プレイヤーが多かったからこそ映えるものだったのだ。
ゲーム仲間の話によるとあと半年もすれば、大幅なアップデートがあり、今の四分の三ほどのNPCや舞台が削られると言う。
テイルズの発売と同時に熱に浮かされていた僕としては、それがなんとも言えないもの悲しさを持っていて、止めるに止めれなかった。
周辺のギルドたちをことごとく、つぶしていったミュルクート森林大同盟も、活動しているのは僕ぐらいになってしまった。
「そういえば、14時からは定期メンテだったか……」
今は、14時2分。
メンテ開始時刻からとうに過ぎていた。
しかし、心配はない。
時間になると自分のギルドから出られなくなり、ログインができないだけで、ログアウトは自由にできるのだ。
特にすることもないので、ログアウトを押し、僕は現実の自室へと戻った……はずだったのに。
だというのに、精密機器を取り外した僕の目の前では、ゲームや洋画さながらの光景が広がっていた。
頑張ってゲームの話を書いたのに、設定作ったのに!!
なのに、ここから先の話ではほとんど、というか全くゲームの話必要ないなんてえ!!!
不定期に更新していきます