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ドラゴンリベレーション  作者: 山田康介
魔境の天業竜山:ドラゴンと魔物
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ドラゴンに転生していた

一話目です。読んで頂きありがとうございます。

それではどうぞよろしくお願いします。

「つ、疲れた……」


 俺は真中独(まなかひとり)。現代日本の25歳成人男性で、ゲーマーで、コミュ障で、社畜だ。

 今日も上司の尻拭いのために終電まで働いて、3日ぶりに帰ったアパートのベッドに倒れこんだ。スマホをポケットから取り出して時間を確認する。


「もう、1時か……。これからちょっと寝たらまた出勤か。今日は新作ゲームの発売日なのに、また積みゲーが増えていく……」


 枕に顔をうずめて目を瞑った。

 積みゲーか。最近はゲームをやっても楽しめなくなっていたし、どこか批判的な目で見てしまうようになっていた。


「俺も歳なのかな。それともこの生活のせいで心が枯れているのか。……どっちも同じか」


 それにしても、この社畜生活は酷い。あの会社に入る前はこんなはずじゃなかったのに。趣味も楽しめなくなるなんて、最悪の会社に入ったものだ。

 順調に中学高校と歩を進めたものの、大学を卒業してから始めて入った会社がブラックだったばかりに、人生を損なってしまった。


 いや、高校生の頃に唯一の友人を失ったのが原因か?異文化交流部とかいう部活に所属していた唯一の友人が、部の活動で出掛けた先で部員ごと失踪してしまったのだ。

 あの事件の後、友人を捜すために各地を回ったりしていたせいで学校の成績は暴落。第一志望の大学には行けなかったし、結局友人は見つからず。俺は元からやる気のない性格と合わさって、自堕落な生活を繰り返すようになっていた。

 その結果がコレなのだから、自業自得というモノだろう。

 最終的に趣味だったゲームもほとんどやらずに半死半生みたいな生活だ。


 ……ヤバい。枕に顔が埋まって息ができない。それなのに体が動かない。どうしよう。

 このまま寝たら確実に窒息する。朝になる頃には俺は死んでいるだろう。早く起きないと。

 

 必死に体を動かそうとするが、指の一本さえ動きそうにない。もう俺の体には体力も気力も残ってないみたいだ。

 あ、意識落ちる。死ぬなコレは。


 ああ、こんな人生ならもっと好きな事して生きればよかったな。

 

 

 気付いたらドラゴンが目の前にいた。大口を開けて。


「えー、であるからして我々天業竜(てんごうりゅう)の司るスキルは運命を司る物でもあり、我々は世界の均衡を保つためにそれらを管理運営しなければならないのだ」


 歳を取ったドラゴンが俺の目の前で講釈を垂れている。そして俺の周りにいる沢山のドラゴンが大人しく座って話を聞いている。

 

 なんだ、この夢。俺は死んだんじゃないのか? これは走馬灯? いやどんな走馬灯だよ。

 

 そんなセルフツッコミを決めながら、俺は状況の確認をした。この夢やけにリアルだ。何かおかしい。

 一先ず、ゆっくりと俺の両手を見ると、三本しかない指に鋭い爪と鱗が生えている。そして尻には慣れない尻尾が生えている。

 うん、これは夢だ。俺がドラゴンになってるなんて、そんな事はありえない。

 俺は、ゆっくりとその三本指の手で顔を抓って確信した。


 痛ッ! 嘘だろ、夢じゃない。俺……本当にドラゴンになってる。

 頬の痛みを抑えて、思考を回す。落ち着け俺。

 今の状況を考えると俺は昨日のベッドで、あのまま死んでしまった。そして俺は転生した。ドラゴンに。

 ……これで合っているのだろうか。死の実感がないのでどうにも夢を見ているような気分だ。


「……おいっ、ヒトゥリ!聞いているのか!」


 ゴオオオと暴風のような息が俺の顔を打つ。

 ヒトゥリというのはどうやら俺のここでの名前らしい。ヒトリがヒトゥリって……。

 目を細めて暴風を受け止めていると、講義をしていたドラゴンがまくし立てる。


「ぼーっとしているんじゃない! お前達幼竜をわざわざ集めて講義をしているのは、我々天業竜の使命を伝えるためなんだ! そんな事では使命を全うする立派な成竜には成れんぞ!」


 ……とりあえず今は大人しく講義を聞くことにしよう。これ以上唾混じりの暴風を飛ばされたら、たまった物じゃない。

 

「我々天業竜はおおよそ全ての生命に与えられるスキルを司っている。スキルは神より授けられた運命を暗示すると言われている。つまりスキルとはその生命の辿る運命であり、我々は謂わば運命を管理する者であると言える……」


「センセーそんな事はいいからよ。早くステータスの見方を教えてくれよ! 俺ら今日はそれを楽しみにしてたんだぜ!」


 俺の横に座っていた岩みたいな土色の鱗とデカい体を持ったドラゴンが口を挟んだ。


 人の話している途中に口を挟むなんてな。だが、なんて言った? ステータスの見方? まったく、心の踊る単語を出すじゃないか!

 俺と同じような事を思っているドラゴンが多かったのだろう。期待のまなざしを受けて、講義役のドラゴンは「これだから最近の若いドラゴンは……」とか言いながら説明を始めた。


「ステータスの見方は簡単だ。ただ念じるだけで良い。自らを知りたいと。そうすればお前達のみに見えるようにステータスが現れるはずだ」


 ほうほう。それではやってみるか。「ステータス」と。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ヒトゥリ

種族:コモンドラゴン

称号:孤独な者

ユニークスキル:天業合成(てんごうごうせい) 異界之瞳(いかいのひとみ)

スキル:竜魔術 爪牙技

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 俺の眼前を覆うようにステータス画面が現れた。ほうほう。ステータスと言ってもHPとか攻撃力の表示はないタイプか。

 種族は天業竜じゃないのか……? いや、天業竜は生れを示す名なのか? 日本の関西で生まれたから関西人とか、そういう。

 称号は孤独な者……見なかったことにしよう。俺はどうせボッチでコミュ障で社畜だよ。

 ユニークスキルの説明とか見れないんだろうか。これじゃどんな物なのかさっぱり分からない。通常のスキル方は大体何となく分かるけど。


 そう考えた途端、ステータス画面が表示を変えてユニークスキルの詳細な情報を表示してくれた。

 えーと、『天業合成』は所持しているスキルを2つ以上消費して、新たなスキルを得る。『異界之瞳』は異世界の知識からの視点を得る。

 『異界之瞳』は俺の前世の記憶の事か? これってスキル扱いになのか。『天業合成』の素材にしたら……いや、考えるのはよそう。恐ろしい事になる気がする。

 それよりも『天業合成』の方だ。このユニークスキルはもしかして、滅茶苦茶俺に合っているのではないか?


 俺は前世ではかなりのゲ―マーだった。かといってプロではないし、ガチ勢と言われるような異常なほどのやり込みなんかはしていなかったが。

 それでもゲームと名の付く物は機会が許す限りはやっていた。その中でも気に入っていたのが、カードゲーム、TRPG、育成といったゲームだ。

これらのゲームに共通するのは効率だと言う人もいるだろう。だが、俺は声を大にして言いたい。


 これらのゲームの醍醐味はロマンではないかと!

 自分の好きなテーマ、種族、スキル、キャラクター! 単純に最適解の構成を目指していく楽しみ!

 そして、これらのゲームでよくある「面白いんだけど、ちょっと微妙(弱い)んだよなぁ」というガチ勢には採用されないような残念な物共!

 それらは確かにちょっと微妙かもしれない。それでも十二分に活躍の余地はあるし、何よりそこにはロマンがある!

 強さを追い求めるのも、どうにかして活かそうと風変わりな使い方をするのも、どちらも求道、探究の輝きがある!


 決めたぞ! 俺はこのスキルを合成する『天業合成』で、失ったロマンを取り戻してやる!

 

「そもそも、このステータスは我々の同胞である天瞳猿(てんどうざる)と呼ばれる種族が、管理を行っていて……」


 その後も講義役のドラゴンは話を続けていたが、もうその話を聞いている者はほとんどいなかった。

 俺も自分のスキルについて考えるのに夢中だったので、ほとんど聞いてはいなかった。

 

 だって、新しい人生……竜生だぜ? 自分の好きな事して生きるって決めたよ。

評価や感想を頂けると嬉しいです。


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