6話
早速学校のあと、谷と共に山へ向かった。
気配の濃い方になるべく直線で向かうようにしていると後ろを付いてきていた谷が突然声をかけてきた。
「な…中山!き(ハァ)け(ハァ)。」
めっちゃ息切れしてる。
き…け…?
何を言おうとしたんだ?
わからん…もしかすると「きをつけろ?」か?
そういえば眼帯を取っているし、魔眼を使った関係で魔力が削れているのかもしれない。
とりあえず、本人に聞いてみることにした
「谷、どうかしたのか?」
「速すぎ(ハァ)疲れ(ハァ)。」
今回は割と聞き取れた。77.78%くらいだろう。
だが、分からん。
早すぎ…?憑かれ…?
もしや、
『早すぎる。憑かれてるぞ!』か?なるほど、近くでこちらの出方を伺っているということか。
一旦谷の言うことの真偽を確かめるため、詠唱を唱え、眼帯を取った。
「精霊よ。我に力を。この要求が通るのであれば我が魔力を献上せん。」
魔力の流れが見えるようになった。
かなりの素早さで山頂から風の魔力がこちらへ一直線に向かってくる。憑かれてはいなかったようだ。『(移動速度が)速すぎる憑かれるぞ。』だったのか?
この速度なら、ここらで結界を構え、迎え撃ったほうが良いだろう。谷のお陰で奇襲は防ぐことに成功した。
「なるほど。そうだな。ここらにするか。」
結界用の印を書き記した巨大な札を作成し、魔力を込めたあと地面に敷く。
谷は恐らく眼帯を外していることから、体力を相当消耗しているのだろう。結界には疲労回復効果もあるため、結界内で引き続き警戒してもらうことにした。
結界の展開が終わり、谷が呟いた。
「そろそろか…」
接敵まであと1分といったところか。ここまでくれば精霊眼がなくても探知できる。
谷の探知能力は俺の数十倍らしい。やはり連れてきて良かった。探知に特化しすぎて体力はないようだが。
「ああ。」
二人の間に緊張感が走る。
「とりあえずは術式も張った。相手に気づかれなければ、こちらの思った展開に持ち込めるだろう。」
ようやく現れたあやかしはイタチの腕の部分がカマになっているような姿をしていた。
カマイタチだ。歴史に名前が残るのは大体大妖怪と相場で決まっている。風の鬼でなかったことに安心するべきだろう。
「カマイタチ殿、突然こちらの山へ訪問された理由を聞きたい。」
戦うことは難しいことではないが、戦わずして解決できるに越したことはない。
「前にいた住処が人間の都市開発とやらで住めなくなった。我に争う気はない。静かに過ごしたいが、貴様の気配に若干の敵意を感じ、下って参った。」
なるほど…住処を追われたあやかしか。
こういうあやかしは人間に復讐を行うパターンと行わないパターンがあるが、今回は後者のようだ。和解に持っていけるのであればそれが一番良い。なんなら人間の行為で迷惑をかけているわけだ。
「先程、こちらの山の風の精霊がカマイタチ殿の来訪で山を追われたようだ。おそらく、そなたの溢れ出る風の魔力が原因だろう。風の精霊と共存できるようこちらで過ごす際はお抑えいただけないだろうか?」
魔力は慣れていない者が浴びると不快感を伴う。
耐性がない場合、気を失ってしまうケースも確認されているのだ。
「委細承知した。人間よ、手間をかけたな。」
突然カマイタチから発せられる魔力が小さくなった。
とても友好的なあやかしで戦わずして場を収められたのは大きい。
知性のあるあやかし、人語を理解するものは総じて手強いため、一瞬覚悟を決めていたのだ。
これにて一件落着。山を下り、精霊に報告し、戻ってもらうとしよう。
「よし、谷、戻るか。」
振り返ると谷は大きく伸びをしていた。
スイッチが入ったように雰囲気が変わると
「ああ、戻ろう。風が止む前に…」
もう止んでいるが…
カマイタチ「後ろのやつ、なんでずっと寝とるんやろ…」