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4話 精霊

はぐれ精霊を探知し、屋上へ向かう。

屋上のドアに手をかけたところで谷に聞かれる。

「今後は同業者として話すこともあるだろう。名前を聞いておこうか。」

同業者、か。確かにスペイン時代も小学校の陰陽師時代もチームを組むことはよくあった。ただ、ほとんどのケースが大人と組むパターンばかりだったので同年代は初めてだな。

ふと、心を弾ませながら


「俺は中山秀一だ。」と屋上のドアを開けながら答えた


「そうか、ハァ、中山か。ハァ」

こいつめっちゃ息切れしてる。大丈夫かな…


屋上に出ると真ん中のあたりに精霊がいた。

傍から見れば単なる窓ふきとかに使われそうな白い毛玉だが、風の精霊はだいたいこんな感じだ。


早速、ここに来るまでの経緯を聞いてみることにした。


「どうされましたか?」


「その気配、貴殿は陰陽師か?山にあやかしが現れたようでな…一旦ここへ避難しているのじゃ。悪いことをするつもりはないのじゃ。」


「なるほど、山に。」


それで山を追われたのか。あやかしを祓えば恐らくこの精霊も山に戻れるだろう。


「あやかしがどうも風の性質を持っているようでの。居心地が悪いのじゃ…急ぎではないんじゃが、なんとかしてくれんか…?」


闇落ちする気配は今のところないし、急ぎでもないようだ。


「そうですか。それでは本日12時ごろにお邪魔いたします。」


「おぉ!貴殿が何もできなくても応援を呼んでくれるとありがたいのじゃ」


多分若いからひよっこと思われたかな…?

「お任せください。」


この会話の間、谷はよくわからないタイミングで首を縦に振っていた。まあ、風の精霊も話しにくそうにしてなかったからいいか。何なら無視されてたっぽい。


風の精霊は一旦散歩してくるとのことで、去っていった。


谷に振り返り、今日の予定を伝える。

同業者だ。体力は劣るようだが、俺よりも察知能力は高いようだし、同行してもらおう。


「とのことだ。今日は幸い始業式だけで、12時下校だから午後、山へ行くこととしよう。」


すると彼はパァァと花が咲いたような顔で、「あぁ。尻尾を掴むぞ。」と上ずった声で返してきた。少し気持ち悪い。


教室に戻り、丁度チャイムが鳴った。みんな自分の席に戻り、俺と谷もそれぞれの席に座る。


初老の丸メガネをかけたパッとしないおっさんが入ってきた。この世はパッとしないおっさんで溢れているようだ。


「えー。担任の山村です。今年入学された〜」と長々とスピーチが始まり、自己紹介後、恙無く高校初日は進行し、終わりを告げた。


俺の自己紹介は普通だった。

「中山秀一です。よろしくお願いします。好きな食べ物は春雨サラダです。」


周りからは「もっと、『混沌のカオスゲートの氾濫ガッ』とか、『死にたくなきゃ俺に近づくな』」とか言うのかと思ったといった呟きが聞こえた。危険人物として認識されているのだろうか…カオスゲートは今のところ開く予兆はないしな。


高校生活一日目で同業者に学校で会えたのは僥倖だ。今までは同業者は寺か教会にしかいなかったからな。


色々動きやすくなるかもしれない。


就業のチャイムの後、谷に声をかける。


「おい、谷。山へ行くぞ。」


片付けていた筆箱が谷の手から落ちる。


「わっ、っと」


落ちた筆箱を拾い上げ、鞄に片付け、顔を赤くしつつ、何もなかった風に彼は答えた。


「さあ、行こうか。風のやまない内に。」


風のあやかしだからな。止むことは滅多にないと思うが…

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