1話 これまでの道
初投稿です。
最後まで読んでいただければ幸いです。
俺の名前は中山秀一。
今日から高校1年生のできたてほやほやの男子高校生。
耳元でうるさい目覚まし時計を黙らせつつベッドから芋虫のように這い出て伸びをする。
眠気に逆らいつつ起き上がり洗面所へ。時計は朝の7:00を示している。無事、初日からの遅刻は回避できそうだ。
身支度を整えつつ、読者の皆様に自己紹介でもしておくか。読者ってなんだ?
俺は陰陽師だ。あと、悪魔祓いでもある。タイトルを見てわかったとか言うな。タイトルってなんだ?
このような複雑な人生を形成した理由を登校ついでに説明すると12年前に遡ることになる。
あれは3歳の頃の話だ。
ふと、気になったことがあったため、俺は母さんに質問した。
「おかあたん、なんでちらないひとがおうちにいるの?」
3歳児がわけのわからないことを口走る夕食時、当然母さんも父さんもこいつ何言ってんだ?という表情を堂々と隠すこともなく晒していた。
「秀くん、家族じゃない人って誰かな?ここには秀くんと、お母さんと、パッとしないおじさんしかいないよ?あっ、お父さんのことよ!」
「ちょっと母さん!ひどいじゃないか!全く、失礼しちゃうな。」
と、満更でもない父さん。皆様ご察しの通り父はMだ。
脱線した。
「おとうたんのうちろにちらない人がいるの。」
両親は慌てた。俺がそれを言った直後、味噌汁を溢したこともあり、二重で。
母は父の後ろを見るも何もおらず、父は振り返るも窓にくっついたカエルの下腹部しか見えない。カエルのことをおじさんと呼ぶよう教育したのかな?と考え、母の顔をじっと見つめる父。なんか失礼なこと考えてんな?と察し、射殺すような目線で父を見つめる母。
父が折れた。「もしかして、昨日お墓参り行った時に幽霊が付いてきてたりして…」
父の高校時代の知り合いに霊能力者がいたらしく、早速家族で当家を訪ねた。
結果、父は凍った豆腐の角に頭をぶつけて亡くなったパッとしないおっさんに憑かれていた。
パッとしない同士引き寄せあったんだとか。
子供が幽霊を見ることができると知った両親は僕のことを怖がり…はしなかった。
「秀一!すごいじゃないか!幽霊が見えるなんて!」
「流石私の子供ね!」
「【僕たち】の子供だよ。」
「あら、そうだったかしら?最近物忘れがひどくて…」
「ちょっと母さん…」
と言った感じで、ありきたりな物語にあるあるの、気味悪がられるというパターンにはならなかった。
その後両親は【見えている】という事象が幽霊に危害を加えられる原因になり得る可能性があると考え、幽霊からの護身術を覚えるべき、と有名な陰陽師、【三光陰家】に俺を連れて行った。
最初、三光陰家の皆様は親バカをこじらせたご家族がいらっしゃった…早速ご退出願おうと考えたらしいのだが、このままでは追い出されると思った父が
「なあ、秀一、なんか幽霊転がってないのか?」と僕に問いかけ、
「あそこで自分の乳首をイジってるムキムキのおじちゃんの幽霊がいる。」
と俺が伝えたところ
「分かりました。入門を認めましょう。確かに見えているようですね。あれは3代前の当主です。」
といった具合で、平日学校のあとは毎日3時間、土日は5時間ずつ通うことになった。
その後【神童】と呼ばれ、メキメキ実力を付けた俺は小学校を卒業する頃には過去最高峰と言われる陰陽師になっていた。
そのタイミングで、スペインの教会から異文化交流とやらで陰陽師と悪魔祓いの若手の技術者を交換留学させる海外技術員交換制度に参加。
破魔の方法をお互い学習させるための制度らしい。
中学時代はスペインで過ごすこととなった。
悪魔祓いの技術を学びつつ現地の中学に通い、血反吐を吐くこともあったが悪魔祓いの術は中学校3年間でマスターした。
陰陽師で覚えたことで応用できるものが多かったのが大きかった。
留学が終わった際、教育を担当していたムキムキ神父から是非スペインに残ってほしいと言われたが、やはり一度日本へ戻ることにした。
そして迎えた高校生活一日目、長々と話していたせいで既に校門に到着している。
どうやらかなり注目されているようだ。
中学時代に悪魔を封じ、封印の術式を人目から隠すため包帯を巻くこととなった右手。
小学時代に大精霊と契約し、捧げた右目、普段は魔力温存のため眼帯で塞いでいる。
簡易除霊道具として首にかけている少し大きいシャーペンサイズ十字架。
悪魔に一度乗っ取られかけ、色素がなくなった白髪。
制服にこのような出で立ちが加えられれば目立つのも当然。仕方のないことだ。
「ガチの中二病患者が学校におるんやがwww」
「あれはやばいwこじらせすぎ」
などといった呟きが聞こえる。
中二病ってなんだ…?
終いには携帯を取り出し、写真を取る奴らもいた。
やれやれ、初日から先が思いやられる。