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PRECIOUSGIRLS~戸倉恵一MEMORY~  作者: 近江玲也
1/5

1話

あー、眠い・・・・・・・・。


――――――朝から止まらない欠伸に目尻に溜まる涙を拭うのも面倒くさい。徹夜でのゲームは少し控えた方が良さそうだ。日差しは眩しく、上を向くことが出来ない中、陰になった近くの壁に寄りかかりながらスマホを操作する。


 すると、俺と母さんの待つところに制服を着ている子供とその母親が小走りでこちらに来る。


「恵一、おはよう」


「おはよう」


彼女は『瀬川咲菜』と言い、一言で表すと『陽キャ』だ。俺みたいな『陰キャ』とは違い、顔は可愛く、運動神経は抜群。俺とも分け隔てなく喋ってくれるくらい優しくて、いつも笑顔で、元気で。欠点を挙げるとすれば少し頭が悪いという所だが、俺と同じ高校に合格したのだから欠点と言えるのか難しい。


そんな咲菜だからこそ、咲菜のことを好きになった男の噂もいたと聞いたことがある。


 今日の入学式、どういうわけか咲菜と一緒に行くことになったが、咲菜にとって、これほど嫌なことはないだろう。咲菜からすれば、俺みたいな存在はその辺に落ちてるガムのようなもの。咲菜はそれを運悪く踏んでしまったのだ。しかも、それを踏んでしまったのは咲菜が生まれる前からというのだから、不憫としか言いようがない。


 電車に乗ると、ちらほらと席が空いていた。その中で俺は一番端の空いている席に座り、持っていたリュックからイヤホンを取り出す。そして、それを耳に付けて、音楽を聴き始めた。


ランダムに流れた音楽に耳を傾けて、その音色に溺れていく。自然と瞼は目を閉ざし、暗く、四方には誰もいない、何もない、独りの世界へと進んで行く。歩いてみたが、どこに進んでいるのかも分からず、諦めた俺は歩みを止めた。


どれくらい時間が経ったか分からない。その暗い世界に一筋の光が迷い込んだ。


「・・・・・・・・着いたよ」


誰かに肩を叩かれ、目を覚ます。座っている俺の目の前の咲菜を見て、自分がいつの間にか寝てしまっていたことに気付いた。周りにいる乗客がずらずらと出ていくのを見つけ、どこかに着いたのを寝ぼけた頭で理解する。駅名を確認すると、今着いたのはこれから通う高校の最寄り駅だった。


着いたのか・・・・・・。


少し落ち込みながら立ち上がり、イヤホンをしまって、電車を降りる。寝不足が酷く、春の暖かな空気に触れると、一回寝て収まったはずの眠気が襲ってきた。抗う時間すら許されず、欠伸をすると、横からの視線を感じ取る。


「どうした?」


「え?いや、緊張感ないなぁって思って」


「咲菜も緊張してないでしょ」


「まぁ、そうだけど。でも恵一は気が抜け過ぎ」


咲菜に言われ、少し考える。


「・・・・・・そう?」


「うん、そう」


咲菜は呆れたように笑っていた。

『PRECIOUSGIRLS~戸倉恵一MEMORY~』1話を見ていただき、ありがとうございます。

これは『CROSSMEMORIES』というシリーズで、その中でも『戸倉恵一』にスポットを当てた作品です。他にも作品がいくつかあるので、お時間ある時に覗いてみてください。

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