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第四話

 体当たりのみが判定となったステージは2~3ステージまで及んでおり、バグ領域を抜けたのはちょうど2日後の事だった。


 俺は残っていると錯覚するほど繰り返した見当たりダメージと苦い薬草によってグロッキー状態になっていた。


「タスク、大丈夫かい? こんな方法しかなくて――」


「いや、大丈夫! こんなことで俺たちの夢が諦められっかよ!」


 俺は自分を奮い立たせると、キリに笑顔を向ける。


「さぁ、次のステージに進もうぜ! 後四日しかねぇんだからさ!」


 俺は自分の言葉にハッとし、モニターを見ればキリの目の下には大きな隈がある。

 ゲームの中だから気付かなかったが、生身のキリはかなり無理をしているはずだ。

 現にこうして部下たちを帰した後でも俺に付き合ってずっと起きている。


「なぁ、キリ。お前は少し休んだ方が良いんじゃないか?」


「いや、大丈夫だよ。君がこんな思いをしているのに僕だけ休むわけにはいかない!」


 そう言っているキリは見るからにやつれている。


「とりあえず、コーヒーでも飲んできたらどうだ?」


「う、うん。じゃあ、少しだけ外すね! すぐに戻って来るから――」


 キリはふらふらと立ち上がり、机から離れようとするが――

 支えを離れたキリの身体はまるで棒倒しの棒の様に傾いていく。


「あ、危なっ――」


 俺が叫ぼうとしたその時だった。


「おっと危ない」


 倒れ込むキリの身体を支える人影。

 画面外に切れていてそれが誰だかは分からない。


「全く、こんなになるまでゲームで遊ぶとか……さすがのボクでもついていけないね!」


 その軽く憎たらしい声が響き、俺はその人影の主を悟る。


「一体、何の用だよ。……(ケイ)!」


 キリを椅子に降ろし、俺のモニターに振り向いた顔は異様にむくれていた。


「何の用だじゃ無いよ! こっちから電話しても全然出ないんだから!」


 出ないって言われてもなぁ……出れるような状態じゃないし


「何かあったと思って心配して探してみれば、まさかゲームで遊んでたなんて! リーダーなんだからもっと自覚を持ってよね!」


 こいつは(ケイ)


 俺がリーダーを務めるゲーマーチームの副リーダーだ。

 そして何故か俺のスケジュール管理を生業としてしまっている。

 まぁ、俺が良く遅刻しそうになるのが原因なんだが……


「それにキリも何でこんなにボロボロなのさ? 一体、何してたの?」


「いろいろ事情があるんだ……電話出れなかったのは悪かったと思うけどさ」


「事情って何? もう大会まで時間ないんだよ?」


 まさか、ゲームに閉じ込められてるなんて言えるか!

 変な心配をかける上に、こいつを巻き込みたくないんだよな……こいつまで何かあったらチームが完全に回らなくなる!


「何でもいいだろう! あんまり細かいと嫁の貰い手がなくなるぞ!」


「またそんな事を! ボクに大きいこと言うのはリーダーとしてちゃんとしてからにしてよね!」


 いつもの口論がモニター越しで始まろうとしたその時――


「待ってよ、ケイ。全部僕のせいなんだ!」


 意識を取り戻した、キリがケイを制止する。

 俺は止めようとしたがモニターの中では何もできない。

 そのままキリはケイに全ての事情を説明してしまった。


「なんてこった……まるでゲームのシナリオみたいだね。そういう事ならボクも協力させてもらうよ!」


「おいおい、お前にはいざとなったらチームを率いてもらわないといけないんだからな!」


「そのいざが起きないようにしようとしてるんじゃないか! それにキリはもう限界だよ?」


 椅子に座りながら燃え尽きるように寝ているキリを見て、俺はケイの提案をしぶしぶ承諾する。


「じゃあ、頼むぞ! さっさと進めるから!」


「OK! 大抵のナビゲーションはキリから教えて貰ったから任せといて!」


 こう見えても、ケイは頼りになる奴で副リーダーを任せたのも堅実な戦略を好む俺に対して、かなり奇抜だが効果的な戦略を思い付くのがケイだったからだ。

 俺たちの全く違う戦略が化学反応を起こして急激に勝率が上がったのはまさに運命だと思ったもの。


「さぁ、行くよタスク!」


「おう、いつも通り頼むぜケイ!」


 俺は剣を改めて構えると、道を進み始めた。

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