第三話
〝ステージクリア!〟
俺が巨大なネズミ型モンスターを倒すと、ウインドウに文字が表示される。
俺はキリのバックアップもあって、順調に先へと進んでいた。
「攻撃方法にはなれたかい?」
キリの質問に頷きで答える。
この世界での攻撃方法は大きく分けて四つ。
まず基本となるのが武器での物理攻撃と詠唱による魔法攻撃。
この二つは普通のRPGでもあるのでなじみが深い。
しかし、もう二つが問題なのだ。
「あのさ、体当たりによる痛み分けダメージと踏みつけによるボーナスダメージっているか?」
体当たりはともかくとして、出てくるモンスターほとんどの体躯がプレイヤーの二倍以上である現状では踏みつけダメージなんて期待できない。
「あぁ、それねぇ。あったら面白いかなっと思ったんだけど、やっぱりダメ?」
「いや、この世界にはあらゆるスキルがある設定なんだろ? それと組み合わせれば使えるかもしれないけど……」
今、この世界はウイルスの影響でスキル機能がoffになっている。
それだけでなく、武器はブロードソードしか出ないし、敵であるモンスターはケミカルな色になっている始末だ。
「こっちも寝る間も惜しんで復旧作業を続けているから、タスクも頑張ってくれ!」
「あいよ! ちょうどここから第二ステージだぜ!」
俺はゲートをくぐると荒野から森のステージへと移動する。
「さて、ここもちゃっちゃと進んでやるぜ!」
俺はブロードソードを構えると、道を塞いでいる芋虫型のモンスターに斬りかかる。
〝MISS〟
あれ? 当たったと思ったけどな?
俺はもう一度、モンスターへソードを振り下ろすが……
〝MISS〟 〝MISS〟
いや! 絶対おかしい!
こうなりゃ魔法だ!
「くらえ! フレイムボール!」
俺は火属性魔法を繰り出すが……
〝MISS〟
「……なぁ、キリぃ。この世界の当たり判定がどうなっているか知らべてくんない?」
「う、うん。もう調べたよ……多分、君の予想通り」
やっぱりかぁ!
ストレスバグの一つ〝当たり判定消失〟かぁ~
「萎えるわぁぁ」
俺ががっくりと肩を落とした時、これが好機とばかりにモンスターは俺に体当たりをしてくる。
〝DAMAGE〟
「ぐばぁ! なんだよ! 敵の当たり判定はそのままかよ! ん? って事は……」
俺はあることを思い付き、モンスターに体当たりを繰りだす。
〝HIT〟〝DAMAGE〟
二つの表示が飛び、モンスターは倒れる。
「やったぁ! そうか、身体の当たり判定はそのままなのか!」
キリは大喜びだが、俺はそれどころではない。
「やったぁじゃねぇよ! メチャクチャ痛いんだけど! これじゃHPが持たねぇって!」
不満を漏らす俺にキリはしばらく黙り込むと、アッと声を挙げた。
「そうだ! いい考えがあるよ! ちょっと待ってて!」
キリはそう言うとまたカタカタとパソコンで何かを入力していく。
すると、俺の目の前にアイテム表示がある草が現れた。
「薬草だよ! これでHPが回復できるはず!」
これで体当たりし続けろって事か?
鬼畜めぇ……っと言っても他に方法がないんだから仕方がない。
俺は薬草を取ると口に運んだ。
「う! うぇぇぇえ……クッソ苦い!」
「ま、まぁ薬草だからね……そこもリアルにこだわってみたんだけど」
キリは昔から変な所にこだわるんだよなぁ……図工の時間とかも放課後まで残って作品を仕上げていたっけ。
そんな性格だからプレイ専門だった俺と違って、ゲームを作ろうと志したんだろうけど――今は話が別だ!
「こんな所までこだわるなよ! もっとマシな物無いのか?」
「武器のデータと一緒にアイテムデータもほとんど破損しちゃったからね。今はそれしか出せないんだ!」
マジかよ……っと内心思ったが、ここでボヤいても仕方ない。
「分かったよぉ……じゃあ、どんどん突撃していくからそっちもジャンジャン薬草生やしてくれよな!」
「よっしゃ、任して!」
そこからはただの地獄だった。
回避できるモンスターはともかくとして、イベントモンスターや必要な素材を落とすモンスターには文字通り体を張って向かっていく。
そして、痛い思いをした後に待っているのは苦い薬草を食べては吐くという最悪のご褒美。
俺は人生で初めてゲームを止めたいと思ったことをキリには内緒にしておくのだった。