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運命を決めるのは誰ですか?4

「リュエット」

「ヴィルレリクさま」


 庭に出ていた私に、ヴィルレリクさまが声を掛ける。色素の薄いヴィルレリクさまは、花の少ない冬の庭にいると冬の御使いのようだ。白い息を揺らしながら近付いてくると、私の近くで立ち止まった。


「何してるの?」

「お、お墓参りを……」


 私が濁して言ったからか、ヴィルレリクさまは察したようだ。

 生き物の、ではない。魔力画のお墓である。

 私の部屋から見下ろせるこの位置には、私の腰ほどの大きさの苗木が植えられている。私の身代わりになって灰と化してしまった魔力画たちをここに埋めていると、庭師が「木を植えてはどうか」と教えてくれたのだ。

 この木は、大きく育つと夏に小さな実を沢山つけるらしい。小鳥が好んで食べにくるのだそうだ。小鳥の魔力画たちの灰を埋めた場所なので、それも素敵だと思って植えてもらった。


 ヴィルレリクさまと並んで、しばらくその苗木を眺める。

 私のポケットには、相変わらず魔力画が入っている。けれど、もうこんなふうにいくつも埋める必要はないと思う。そう思えるのもこの子たちが守ってくれたおかげだ。


「風邪ひくよ」

「はい」


 ヴィルレリクさまがこちらに手を差し出す。私はちょっとだけ迷ってから、その手に自分の手を載せた。

 昨日、ミュエルにあんなことを言われたせいでヴィルレリクさまのことを変に意識してしまい、ちょっと冷静になろうと外に出ていたのに。ヴィルレリクさまがやってきたので、結局私の気持ちは落ち着くことはなかった。


 玄関へと戻ると、話し声が聞こえる。中に入るとお兄さまが立ち話をしていた。その相手が私に気が付いて軽く手をあげる。


「ラ、ラルフさま!」

「ご機嫌麗しゅう、リュエット嬢。この度は大変だったね」


 お、推しが、推しが家にいる——!!

 美しい金髪碧眼に、眩しく輝く笑顔。キラキラと春の陽気を振りまいているようだ。

 まさに王子。王子ではないけど。


 ラルフさまはヴィルレリクさまがうちに遊びに行っていると聞いて、お兄さまの様子見も兼ねて一緒についてきたのだそうだ。お兄さまが生徒会役員で良かった。

 ラルフさまのダンブルグ家も、聖画盗難の被害に遭った家のひとつだ。ヴィルレリクさまと従兄弟という関係からか、事件のことについてもある程度知っているようだった。


「あんな事件に巻き込まれて、ティスランはともかく、リュエット嬢は恐ろしかっただろう」

「いえ、そんな……」

「リュエットはこう見えて勇猛果敢だからな。教会でもマドセリア夫人相手にゥグッ」


 お兄さまの足をヒールで踏むと、お兄さまは口を噤んでくれた。

 推しに何を吹き込もうとしているのか。

 ラルフさまは気にした様子もなく、私に微笑み、そして花束をくれた。


「表向きにあれこれできないから、簡単なものだけど。お詫びと労いにどうぞ」

「わあ、ありがとうございます」


 推しと花束という構図だけでもかなり素敵なのに、推しが花束をくれた。

 温室で育てたものだろうか。この時期には見かけないような鮮やかで柔らかい花が沢山束ねられている。

 ラルフさま、やっぱりかっこいい……永遠の推し……

 お兄さまのついでだとしても、推しに花束を貰えたというだけでも嬉しすぎる。


 うっとりした気持ちで花束を眺めていると、急にその花束が視界から消えた。

 隣を見上げると、ヴィルレリクさまが花束を持っている。絵になる構図のヴィルレリクさまは、代わりにというように私の手に四角いものを載せた。

 魔力画である。ふくっと膨らんだ小鳥がいっぱい並んでいる。


「かわいい!」

「誰か、これそのへんに飾っといて」


 ヴィルレリクさまに言われて、侍女が慌てて花束を受け取っていた。


「ラルフ、ティスランの部屋に行けば? サンルームは僕とリュエットが使うから」

「おい、なぜ貴様が仕切るのか」

「探してた予算案の資料、ティスランが溜め込んでるよ」

「だからなぜそれを知っているんだヴィルレリク」


 お兄さま、学校の資料を持ち帰るのはどうかと思う。ヴィルレリクさまにバラされてお兄さまは気まずそうに階段を登っていった。ラルフさまは笑いを堪えながらヴィルレリクさまの肩を叩いてそれに続く。


「お前、いつになくわかりやすいな。リュエット嬢、ヴィルレリクのことよろしくね」

「は、はいっ」

「じゃあまた」


 おかしそうに手を振ったラルフさまに振り返しながら、私は推しの眩しさに目が眩みつつ混乱した。

 ヴィルレリクさまがわかりやすいって。

 私がラルフさまから貰った花束を取り上げたことかな。

 それって、その、あれかな。そういう意味だと思ってもいいのかな。

 もしくは私の態度が丸わかりすぎて、ミュエルだけでなくラルフさまもわかってしまっていて、なんかそれで笑っていたとか……


「リュエット、行こう」

「あ、はい、こちらへ」


 変に照れてしまってヴィルレリクさまの顔を見るのが恥ずかしい。

 侍女のネルにお茶をお願いしてヴィルレリクさまをサンルームへと案内しながら、私は意識的に魔力画を鑑賞しながら歩くことに集中しようとした。






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