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叛逆の騎士と聖剣の巫女  作者: yukizakura
Shout of Beast《シャウト オブ ビースト》
9/21

第9話

遅くなってすみません!

では、どうぞ!




 蒼天の朝の日。

 ルシアはルナと戦った後、身体が疲労していたのか、直ぐにアリナが待っている宿屋に戻り、ベッドの上に飛び込んでいた。

 ボロボロになった2人を見て、アリアは何かを言いたげな表情を浮かべていたが、余りのルシアとルナの関係の良さに口出し出来ない。それに、他にも深い関係が2人の間にあるのではないかと、考えていたのだ。


「はぁ……」


 朝食を作りながらため息を吐くアリナ。

 最近、ルシアが話してくれなくなったのも、ルナが来てからのことだ。聖剣の巫女の彼女とルシアに何故、関係性があるのか、ルシアは本当は凄い人ではないかと考えが浮かぶ。

 そして、又してもため息を吐いてしまう。

 ルシアの事を考えているのが原因だとわかっているのだが、それでも心から愛しいと思っている人の事を考えない事など出来ない。それと程に、アリアは自分自身がルシアの事を大切に思い、大好きだと思っている事を再度、この時に実感したのだった。


「ルシア……」


 アリナは、料理の手を止めないまま、ボソッと小さく吐息のように囁く。それは、まるで甘える子供のような声だ。

 だが、アリナは後ろにいる人物に気づいていなかった。


「ん? 呼んだかアリナ?」

「……えっ? えっ、えっ!?」


 声を聞いた瞬間に振り向くアリナ。

 振り向いた先にいたのは、紛れもないルシアだったのだ。先ほどのアリナの囁きを聞いていたのか、疑問気に首を傾げている。そのルシアの反応を見て、アリナは聞かれたと思い首元から真っ赤に染まりきったのだ。

 プシュとアリナの頭から煙が上がる。ルシアの視線を見ると、変な方向に視線を向けて目が四方八方に泳ぎ切っていた。


「ど、どうしてルシアがここに!? まだ、朝早いでしょ!? えっ……えっ!?」


 アリナは未だに驚いているのか、呂律が上手く回らずにテンパっている様子だった。


「今日は少し調べたい事があるんだよ」

「ふ〜ん……調べたい事ね」


 ルシアがそう言うと、アリナは何かを察したのか普段の様子に戻る。そして、嫌味を言うかのような感じて、ルシアに言葉を述べた。

 アリナは気づいていたのだ。これから、ルシアがルナと一緒に町に行く事を。調べると言うのは口実で、2人で買い物や食事をするのではないかと被害妄想、並みに考えていた。

 アリナは嫉妬に近い感じだと薄々感じていた。しかし、大好きな男性と他の女性が一緒に行動することに、嫉妬を覚えない女性などいないだろう。もちろん男性の場合もだ。


「どうせ……ルナと一緒にでしょ?」

「な、何故、それを……」

「はぁ……だと思った。最近のルシアは、ルナと2人で行動してるもんね。今日の朝なんか、一緒な部屋から出て来たし」


 アリナが話している事は、今日の朝に目撃した事だった。アリナは、ルナと関係性を深めたのか、ルシアが寝ている間に「ルナさん」と言っていたが、「ルナ」と愛想よく言うようになっていた。そして、ルナも寝てアリナも深い眠りについて、朝を迎えた。

 その朝の日に、久しぶりにアリナはルシアを起こしに行こうと部屋に向かう、するとルシアの部屋の中からルナが出て来たのだ。

 この事に、アリナは大いに驚いた。男性と女性が一緒な部屋から出てきたなど、如何わしい事をしているに違いないと考えていた。

 後からルナに聞いた話によると、ルシアの部屋の中では、アリナの思っているような如何わしい事はやっていなかったらしく、調べ物の相談をしていただけと聞かされた。

 だが、アリナはそれを信じていなかった。いや、信じようとしたけれど、どうしても心から、何かをしたのではないかと言う考えが消え去らない。疑いが増える事がに、別の事を疑ってしまう疑心暗鬼の状態に陥っていた。

 今でもルナの言葉を信じきれていないのだ。

 ルシアに対する言葉に棘があったのは、その所為だろう。


「その事に関しては、本当に何もない。俺はルナと調べ物をしていただけなんだ」

「本当に? 如何わしい事してたんでしょ?」


 アリナは真実を聞いた為か、グイグイとルシアに向かって言葉を問いかける。


「してないから! 断じて、ルナとそんな事をする事はないから!」

「でも……ルシアも男性だし。そう言う、突発的な気が起こるんじゃないの?」

「男性の皆んなをケダモノだと思わないでくれ。決して、俺はそんな事をしてないから」


 ルシアは真剣にアリナに言い寄った。ルシアからの視線を受け取り、アリナは渋々、ルナの言っていた事を信じる事に決めた。


「分かった……信じる」

「ふぅ……良かった」


 ルナを信じたと言うよりは、ルシアの事を信じたに近いかも知れない。ルシアのその真剣さが、今のアリナに届いたのだろう。

 それからのアリナには、いつも通りの笑顔が戻っていた。今日のアリナは、朝から不吉なぐらいに笑顔を見せていなかったのだ。

 その事に、ルシアは心配を抱いていた。しかし、ルシアはアリナが何に悩んでいたかは、見当がつかなかった。


 ようやくいつもの平穏な日々に戻ったとルシアは思いながら、アリナの朝食を食べていた。先程から見ていなかったが、ルナとエリナは2人で階段を降りてきた。


「あぁ……ご飯出来たんだ」

「やった! 朝ごはん、朝ごはん!」


 多分、2人で遊んでいたのだろう。

 ルナは、疲れたのか椅子に座る時、テーブルにグタッと倒れ込んだ。ボソボソと「疲れた……」と呟いていた。それを見て、ルシアとアリナは、笑顔で微笑んだ。

 エリナによると、ルナはどんな遊びにも参加してくれる面倒見がいいと分かった。その所為で、疲れ切っているのは可哀想だった。


 ルナは疲れているが、アリナの作った朝ごはんを一口食べると、先ほどが嘘のように感じさせるほどに、元気になっていた。エリナと一緒な食べ方でルナは朝ごはんを食べる。

 その2人には無邪気と言う言葉が一番似合う。そう心の中でルシアは考えていた。


「今日はギルドに調べに行く事を覚えているよな、ルナ?」

「ぼぇ?」


 ルナはアリナの料理を口に頬張ったまま、ルシアの言葉に返事を返していた。しかし、それでは伝わっていないと思い、ルナはゴクッと料理を飲み込んで再度、言葉を返す。


「うん。分かっているよ」

「そうか……あ、それと調査ついでに、ギルドに依頼が来ていたら、それを受けるから剣の準備もしといてくれよ」


 これを聞くのは初めてだったのか、ルナは首を傾げてルシアの方を向く。それに、「早く言え」と言いたげな表情を浮かべていた。

 ルナの表情を見て、ルシアは諦めた。ルナほどの技量を持つ人材がいたら、ギルドの依頼など楽々とこなせる自信がある。だからこそ、ルナの手を借りたいと思っていた。


「……ダメか?」


 ルシアは、似つかないほどの上目遣いで、少し機嫌が悪くなったルナに視線を送る。


「はぁ……分かったわよ! 準備して行けばいいんでしょ!」

「お! 因みにスライムかもしれないからな」


 ルナは、ため息を吐いた後、そっぽを向きながら、ルシアに向けて叫んだ。すると、ルシアは、喜んだような表情を見せる。

 そして、言わなくていい言葉を言ったのだ。

 ルナは「スライム」と言う単語を聞いた瞬間に、眉間に皺を寄せてルシアを睨みつける。それは余りにも平凡な毎日に似つかない。殺気のこもっている視線だった。


「ルシア……今、なんて言ったの?」

「……えっ、なんか言ったか?」


 ルシアはヤバイと思い白を切る。

 首筋からは冷や汗が溢れていた。


「惚けるな! スライムって言ったでしょ!? スライムってあのスライムでしょ!」

「スライムがそんなに悪いか?」

「悪いに決まってるでしょ!」


 ルナはスライムと言いまくり、もう何が何だか分からない。そんなにスライムが嫌なのかと、ルシアは心の底で思っていた。

 しかし、アリナの方を向くと、アリナも鋭い視線でルシアの事を睨みつけていたのだ。小言で何かを言っているように見える。口の動きからして「ケダモノ」と言っていた。


「可愛いだろ? あのプニプニとした感じ」

「いや、プニプニなのは一握りだけで、他のスライムは全員がドロドロしてるの!」


 ルナがそう語ると、アリナも同意するかのように何度も頷く。悪寒がしたのか、ルナは身体を身震いさせて、再度、ルシアを睨んだ。

 しかし、ルシアはそれのどこか嫌なのかと思っていた。確かにスライムは、ドロドロの奴が殆どだが、あのドロドロを付着した感じは、魔獣の返り血を浴びる感じに近い。それに、スライムのドロドロは返り血みたいに、鼻腔を劈く匂いなどしないのだ。

 それだから、余計に嫌な理由が分からない。


「スライムの何が嫌なんだ?」

「あのドロドロとした感じと、それに服の隙間に入って来たときの感じが気持ち悪い!」


 ルナは「キモい」と連呼しながら、ルシアに向かって必死に叫んでいた。それを見て、単に女性はスライムが嫌いだと理解した。

 同じ反応をアリナも取っているから、本当に女性はスライムが嫌いなんだろう。


「まぁ……嫌なのは分かった」

「ギルドに行っても、スライムだけは手伝わないからね! スライムは死滅すればいいわ」


 ルナが言った言葉には願望が混じっているようにも感じた。ルナの前でスライムの話をするのは止めようとルシアは思ったのだ。




 ***



 スライムの話が終わり、ルシアとルナはアリアの宿屋を後にして『エリシア』に来ていた。平日にも関わらず、エリシアの町は商人や主婦や子供達で賑わっている。小さい最北端の町だとは思えないほどだ。


「凄い人ね……」

「あぁ……いつもこんな感じだ」


 ルシアとルナは会話を交えながら、目的であるギルドの方向に進んでいた。ギルドに行く理由は、行方不明になった人が本当に、このエリシアに在住したか調べる為だった。

 マーリンの情報によると、この町は突如として人が消え去っているらしい。らしいと言うのも、町の人は消えた人に関して、一切合切、何も知らないのだ。

 隣町の商人が、この町を訪れた際に、その異変に気付いたと言う。そして、その行方不明の人物の事を町の人は知らないのに、その商人は普通に知っていた。この報告を受けて、マーリンは何か起きてると思ったのだろう。

 そして、この町の異変を調べる為に、ルナがやって来た事になる。ルナによると、前々からこの町にルシアがいるとマーリンから言われていたらしい。

 マーリンはこの世界で最強と言われる魔法の使い手でもある。ルシアの居場所を突き止めるなど、造作ではない事なのだ。

 ルナの話だと、マーリンはルシアの居場所を町の異変を調査する条件として教えた。そして、ルナがこの町に来た理由になる。


「行方不明の人物ね……」

「本当に知らないのルシア?」

「あぁ……2年間、ここに住んでるが、そう言う話を聞いたことはないな」


 ルシアにも思い当たる節が無かった。行方不明になっている人物がいた場合は、ギルドなどに依頼が入る筈なのだ。しかし、そんな依頼を2年間の間、ルシアは見た事がない。

 近しい人間が行方不明になったとしたら、直ぐさま気づく筈だとルシアは思っていた。


「門番をやっていたエグトリアさんの事、ルシアなら知ってる筈だけど?」

「門番をやっていたエグトリアさん? そんな名前の人、この町には居なかったような」


 ルナが前に聞いた来た事と同じ事だったが、本当にルシアには思い当たる節がない。門番をやっている人は、この町にもいた。しかし、その人物が誰か思い出せないのだ。


「どうして行方不明と気付いたんだ?」


 ルナの話だと行方不明になった人物は、町の人は知らない事になる。どうやって知らない事になっているのか分からないが、ルシアが知らないのも、この異変が原因だろう。


「商人の人が気付いたそうよ。隣町に出かける前は、門の前に立っていたのに、ある日突然、姿が見えなくなったらしいの。その商人は、町の人にユグトリアさんの事を聞いて回ったんだけど、まるで最初からこの町に居なかったようなに、皆んなが知らなかった」

「そんな事があるのか……」


 ルシアは、考えても考えても分からなかった。自分がいるのに、そのような事件が起こるなど、不思議で堪らない。魔力マナを使ったりして、この異変を作っているのだとしたら、ルシアは一目散に気づくだろう。

 だが、魔力マナや精霊と言った類のモノを使っている感じはしないのだ。その所為で、どうして起きているか分からなかった。


「これで、ギルドの在住表を見て、ユグトリアさんの名前があったら、余計に訳が分からなくなってくるな」

「うん……手詰まりになるね」


 そうしているうちに、ルシアとルナはギルドの前に辿り着いていた。ゆっくりと扉に手を掛けて、ギルドの中に2人は消えて行った。




次回も多分、日常編です。

では、また会いましょう!

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