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叛逆の騎士と聖剣の巫女  作者: yukizakura
Lost in the Darkness《ロスト インザ ダークネス》
21/21

第1話

少し最後が変かもです。

やっと新章の始まりです!



 ここはエリシアから数十キロ離れた所に位置する街……その名もエリアフーレ。各地の町から商業をする為に、沢山の人で溢れかえっている、活気のある賑やかな街だった。

 第2の王都と呼ばれる、このエリアフーレは商業だけではなく、魔法や剣術と言った騎士になる為の設備も充実しているのだ。

 その中でも、アステラと呼ばれる剣技祭。

 これがエリアフーレの名物だ。

 春から夏にかけて、厳しい暑さでも……厳しい冬でも生き抜くと誓う為の伝統的な戦い。

 それが、剣技祭アステラなのだ。

 その為、街の人々は皆が商業人か騎士の見習いや魔法使いの見習いなど多くの人が居る。

 そんな街を1人の騎士と巫女が歩いていた。


「ルシア……ここって?」

「ん……エリアフーレだけど?」


 ルシアと呼ばれる男性は、首を傾げて周りの景色を見渡していた。その男性の隣に立っていた金髪の少女は「えっ?」と言いたげだ。


「いや……だけどって言われても……」


 その少女は何か納得がいかない様子。


「なんでエリアフーレなのっ! ここって、商業とか戦闘とかの街でしょ!?」

「……そうだけど?」


 ルシアの返答に少女はガクッと肩を落とす。

 それを見ている本人のルシアは、頭の上に疑問符を浮かべて、分からないと言っていた。

 ため息を吐いて少女は、


「はぁ……なんでエリシアみたいな田舎から、こんな都会に出ないと行けないの!? いきなり過ぎるでしょ!?」


 街の中に指をさして少女は叫んだ。


「だってルナ……マーリンが騎士らしき反応が、このエリアフーレからするって言ってたからな……しかも以外に近かったし」


 街並みを一望しながらルシアは語る。

 そんなルシアの様子を見て、ルナは呆れた様子でルシアに言葉を返した。


「まさか……楽しんでるの?」

「まさか……そんな風に見えるか?」


 ルシアが鋭い視線をルナに向ける。

 だが、ルナは怯む事がない。それ以前に、何かを悟るような視線をルシアに向けた。それは、まるで新婦が出す独特の視線だった。


「それが見えるのよっ!」

「そうか?」

「ーーそうよ!」


 仲睦まじくルシアとルナは戯れ合う。

 ルナは、ルシアがなぜ楽しそうにしているか知りたかったが、その話は後にした。どうせ、後々に分かるだろうと感じていたのだ。

 既にエリシアで起きた出来事から、1ヶ月近くは時が経過している。その間に、ルシアとルナは色々の町を転々として、最近にマーリンからの連絡で、このエリアフーレに来た。

 そんな長い時間、ルシアと暮らしていれば、色々と互いの事も分かってくる。最初は、ルシアの事を憎いと思っていたルナも、今は随分と丸くなってルシアの世話をしている。最初は、喧嘩のような事が多々あったが、今は何事も感じ取れてしまうほどに理解した。


「はぁ……これからどうするの?」

「一先ず……ギルドに登録に行く」


 悩む様子なくルシアは返答する。

 だが、ルナは呆れた表情を浮かべていた。

 その答えは直ぐに分かった。


「ルシア……ギルドの場所知ってるの?」

「…………」


 ルナの視線を逸らすルシア。

 分からない事は明白だ。

 それでも、ルシアは黙って白を切る。


「……本当にどうするの?」

「誰かに聞くしかないか……」


 仕方がなく、ルシアは近くにいた屋台の親父さんに声をかける。その親父さんは、立派な白い髭を生やして、身体つきが良い。昔は、鍛冶屋をしてたと思えるほどだった。


「……すまない」

「お、どうした? このエリアフーレ発祥の魔性石のネックレス一つ買ってくか?」


 ルシアが声をかけると、親父さんは屋台の上に並べていたネックレスを一つ手に持ち、ルシアとルナに見せてくる。そのネックレスは、至ってシンプルだが、魔性石が使われているためか、蒼く透き通るように綺麗だ。

 しかし、ルシアはネックレスを買う為に、親父さんに話しかけたのではない。直ぐに、ルシアは頭を垂れ、本題に入る。


「……道を聞きたいんだが……」

「あぁ……道か。エリアフーレは、無駄に広いからな……迷子にでもなったか?」


 心配そうな表情を見せる親父さん。


「いや……ギルドに行きたいが、そのギルドに行く道が分からなくて……」

「ギルドに行きたいのか……もしかしてお前さん、剣技際に出る予定なのか? なら、この大通りを真っ直ぐ行って、右側にあるよ」


 丁寧に親父さんは説明をする。

 それを聞いたルシアはもう一度頭を垂れた。

 ギルドへの行く道が分かったので、ルシアは早速、ギルドに向かおうと足を進めようとしたが、隣にいたルナを見て固まった。


「行くぞ…………ルナ?」

「わぁぁぁ……♡」


 ルナは、屋台の上のネックレスを見て、目の色をハートに変えていた。こう見ると、普通の少女に見えてくる。

 それも仕方がない。

 ルナはこれでも16歳なのだから……


「はぁ……欲しいのか?」

「えっ?」


 ルシアは、そんなルナの様子を見て、ため息を吐いた後に、ルナに優しく尋ねる。しかし、それを聞いたルナは、ルシアの顔を上目遣いで見上げて、驚いた様子で固まった。


「ルシアが買ってくれるの?」

「一つぐらいからいいぞ」


 それを聞いた瞬間に、ルナは買うと決めていたのか、真っ先に一つのネックレスを手に取る。そのネックレスは、親父さんが勧めた蒼い輝きを放つ、あのネックレスだったのだ。

 ルナは嬉しそうに頬を緩めている。

 それを見て、なぜかルシアは嬉しかった。


「親父さん……これ頼む」

「お、買ってくれるのか! 銀貨4枚だよ」


 ルシアは、懐から銀貨を4枚取り出す。


「まいど!」


 ルシアは銀貨を渡す代わりに、親父さんから買ったネックレスを受け取った。隣で見ているルナが、今か今かと待っている。


「ほら……」

「わぁぁぁ……ありがとルシアっ!」


 ルナは、ルシアの手からネックレスを受け取り、そのネックレスを首に掛けた。


「ルシア! 蒼色が少し濃ゆくなってるよ!」


 そのネックレスは急に深い蒼色に変わる。

 まるで、深淵の炎のように綺麗だった。


「これは……」


 先程までは、そこまで濃ゆい蒼色ではなかったネックレスが、ルナの首に掛けた瞬間に、深みを増して、余計に綺麗に輝いた。

 ルシアは、なぜそうなるか分からない。

 疑問を抱いているルシアに対して、


「これがエリアフーレの名物品! 魔性石を使っているから、持ち主の魔力の多さに生じて、輝き具合が違うって事だ!」


 親父さんが笑顔で説明する。


「なるほど……」


 ルシアは納得したのか、別のネックレスも見ては、これもいいかもな……と呟いている。

 嬉しそうに喜ぶルナのネックレスを親父さんは、もう一度眺めていた。

 それも、不思議そうな形相でだ。


「お嬢ちゃん……魔力が多いね? もしかして、この兄ちゃんと剣技祭に出る予定なのかな?」

「……剣技祭?」


 ルナはポカンとした様子で首を傾げた。

 隣にいたルシアも、親父さんの言葉に耳を傾けている。ルシアも、先程から話に出ていた剣技祭とやらに興味があるのだろう。

 ルシアも一応は騎士の端くれだ。


「お前さん達……知らないのか?」


 ルシアとルナはコクっと顎を下げる。

 すると、親父さんは優しく説明してくれた。


「剣技祭ってのは、自分の力量を測る場所と、それを見せつける場所でもある。魔法や剣技を使って相手を倒す決闘だな」

「誰でも参加出来るのか?」

「ギルドに申し込めば誰でも出れるよ」


 しばらくルシアは考えた。


「……検討してみるよ」

「そうしてくれ!」


 ルシアはそう言うと、親父さんの店を後にする。親父さんは、ルシアが行くと分かると、ルナを少しの間、呼び止める。


「嬢ちゃん……彼氏さんを大切にな」

「えっ!? か、彼氏!? ち……違いますよ! ルシアとはそう言う関係じゃあ……」


 ルナは頬を赤く染めて戸惑う。

 親父さんはそれを見てニヤっと笑みを浮かべる。何か企んでいるような感じだ。


「でも……あの兄ちゃんは凄いね。纏っているモノがそこらの奴とは違う。アレは、死の苦しみを分かっているね……」


 親父さんの言葉にルナは驚いた。

 まさか、ルシアの気配を感じ取ってしまうなど、思っても見なかったからだ。それに、親父さんは悲しい目でルシアを見つめていた。


「……そうなんですか?」


 そんな親父さんにルナは首を傾げて問う。


「うん……あの兄ちゃんの側についてやりなさい。多分、お嬢ちゃんがいないと、でないとあの兄ちゃん……直ぐに壊れるよ」


 ルナはその言葉を心に刻む。

 ただのおじさんの戯言かも知れないが、ルナは本当にそうなってしまうのではないかと、少しだけ考えてしまったからだ。

 ルシアは強い。

 だが、それは表面的な面だけだ。

 心まではルシアは強くはない。

 ルナは、親父さんに頭を下げると、ルシアの元に駆け寄って行く。その初々しい姿を、親父さんは笑みを浮かべて見守っていた。



 ***



 親父さんに教えられた道を辿り、ルシアとルナは、エリアフーレのギルドに来ていた。ギルドの中は、エリシアとは比べ物にならないほど広く、多くの冒険者で溢れている。

 その人混みを掻い潜って、ルシアは受付がいるカウンターに辿り着くことが出来た。


「……すまない」


 手前にいた受付の女性に話しかける。


「どうしました? 剣技祭の受付は、あちらのカウンターになるのですが……」

「いや、冒険者登録に来た」


 ルシアはそう言うと、懐からエリシアでクレセリアに渡された推薦状を台に置いた。その推薦状を、受付の女性は手に持ち、ゆっくりと文字を黙読して行く。全てを読み終わると、一枚の契約書を棚から取り出した。


「ルシアさんですね……推薦状があるので、能力調査と身元の確認は大丈夫です。一先ず、この書類に名前をお書きください」

「……分かった」


 ルシアは、受付の女性が差し出した契約書の書類に名前をペンで書いた。これで、推薦状があるルシアは冒険者として活動出来る。

 だが、隣にいるルナは別だ。

 受付の女性はルナに気づき声をかける。


「こちらの方も登録ですか?」

「あぁ……でも俺しか推薦状はない」

「なら、初期登録からですね」


 すると、受付の女性はカウンターの裏に行き、少し経つと数枚の書類を持って帰って来た。その中には、魔力を測る魔性石もある。


「えぇ……では、名前を教えてください」


 受付の女性の問いに、答える前にルナは一瞬だけルシアに視線を送った。ルナは、ここで正体をバラしていいのかを心配していたのだ。しかし、ルシア以外であれば、正体がバレても問題ではない。寧ろ、ルナの場合は、歓迎されるだろう。何せ、ルナは聖剣を持つことが出来る巫女なのだから……

 ルシアの意図を読んだのか、ルナはため息を吐いた後にゆっくりと名前を述べた。


「ルナ……ルナ・ペンドラゴンよ」

「えっ? ……えっ!? 聖剣の巫女っ!?」


 受付の女性は驚きの余りに叫びを上げた。

 それを聞いたのか、周りにいた人々が皆、静かに黙り込んでしまう。そして、人々の視線が、ルナに向かって集まった。

 口々に「本当なの……」と言う声も上がる。

 ルナは自分で思っている以上に有名なのだ。

 聖剣の巫女と言ったら、誰しもがルナ・ペンドラゴンと答えれる程に知られている。それに、ルナの力も大概の人は知っているのだ。


「本当に聖剣の巫女なのですか?」

「うん……そうだけど」


 恐る恐るルナは答える。

 すると、それを聞いていた人や受付の女性は目の色を変えて、ルナに向かって質問する。


「なんで聖剣の巫女なんて方が、こんなエリアフーレにやって来たのですか!? それに、冒険者登録ってどう言うことなんです!?」

「それは……」


 周りにいた人たちも「なんで冒険者に?」や「隣にいる奴は誰だ?」と会話をしていた。

 ルナが中心的に目立っていたが、隣にいたルシアにも多少なりとも視線は向けられていた。だが、やはり皆の注目はルナだ。

 受付の女性の質問にルナが答えるのを、皆が皆、今か今かと待っていた。


「ちょっと……大事な用件があってね」

「用件ですか?」


 受付の女性は不思議そうに首を傾げる。


「極秘だから言えないの……ごめんね」

「いえ……私こそ取り乱しました」


 形相を変えた受付の女性は、頭を下げて謝ると、冒険者登録を再開する。


「えっと……では、こちらの書類に出身地と本名をお書き下さい。その後に、実力を測るために魔性石に触れてください」


 ぺこりと頭を下げて、受付の女性は魔性石の準備の為に席を外した。このギルドの魔力の測り方は、魔性石を使う。一般的に普及している方法で、魔獣から採取した魔性石に、魔力を送り、強度な物が魔力に寄って反応を示すと高度の魔力だと測る事ができるのだ。

 その準備が出来る間に、ルナは言われた通りに書類に出身地と本名を書いて行く。


「書き終わりましたか?」


 魔性石の準備が終わったのか、受付の女性はルナが居るカウンターに戻って来た。そして、その手には魔性石を使った道具がある。

 四角形の透明の箱の中に、魔性石を加えた魔力を測る道具だ。もし、魔性石が割れた際に、魔力の放出を押される為だろう。


「はい……これ」


 ルナは書類を描き終わり、受付の女性へと書類を手渡した。受付の女性は、書類の内容を確認して、不備がない事を再度、確認し終わると、ルナの前に魔性石を置いた。


「では、次に魔力を測りたいと思います」


 周りにいた人々は、静まり返っていたが、今は既に騒いでいる。だが、視線はしっかりとルナの方を向いていた。皆が、ルナの魔力がどの位か興味があるのだろう。


「ここに手を置いて下さい」

「……分かりました」


 受付の女性の指示通り、ルナは魔性石を使った道具の上にゆっくりと手を置いた。すると、次の瞬間に四角形の透明の箱に入っていた魔性石が、光を放ちカタカタと震え出す。

 それを見ていた人々は「おぉ……」と歓声をあげる。どのぐらい凄いのかルシアには分からず、隣にいるのに首を傾げていた。


「凄いですね……聖剣の巫女は……」


 それを見ていた受付の人も声を上げる。


「……そんなに凄いのか?」


 今まで疑問に思っていたルシアが問う。

 すると、受付の女性は目の色を変えて、ルシアに向かって差し迫るように答えた。


「凄いですよ! ……普通の人でも、魔性石を震えさせるぐらいが限界なのですから……」


 受付の女性に寄ると、ギルドで働いているが、魔性石が光っているのを初めて見たらしい。普通なら魔性石が微かに動くが、ルナの場合は、結構な勢いで震えている。これで、ルナの実力は本当に知れ渡ってしまった。


「これで……終わりです」


 ルナは冒険者登録の書類や試験を全て終わらせた。ルナも冒険者の仲間入りになる。


「では……これをどうぞ」

「……これは?」


 受付の女性は、金属で出来た小さなドッグタグのような物を渡して来た。ルナは、それを受け取り、ルシアの方を見ると、ルシアもそのドッグタグのような物を貰っていた。


「冒険者だと証明する物です。亡くなった時の身元確認やこのエリアフーレでの宿泊施設の割引などが可能になります。失くすと再発行に、時間が掛かるので大事にして下さい」

「……分かりました」


 ルナは静かにドッグタグを仕舞い込む。


「登録は完了です。依頼を直ぐに受けられますが、どうしますか?」


 ルシアとルナは少し考える。

 だが、最初から意見が決まっていたのか、余り相談する事なくルシアが答えを出した。


「いや……宿屋を紹介してくれないか?」

「宿屋ですか? それなら、フランデルと言う宿屋がここから近くて安いですね」


 受付の女性は、無料で配られる街の案内図を取り出して、宿屋フランデルがある場所を指やしてルシアに丁寧に教える。

 確かに、ギルドから距離は離れていない。


「なら、そこに行ってみる」

「お気をつけて……」


 ルシアは一度会釈をして、ルナと一緒にギルドから出る。ギルドから出るとき、やはりルナの影響か沢山の視線が向けられた。

 そして、その中には人機は鋭い視線をルナに向けていた者がいた。


「アレが……聖剣の巫女ね」


 その者は可愛らしい少女だった。

 紅い髪を後ろで一つにまとめ、幼い容姿だが、放っている気配が違う。特徴的な紅い目からは鋭い視線を出していた。


「待ってなさい……私が必ず」


 その少女はルシアたちの後を追うようにギルドから離れて行った。少女の腰には、紅く燃え上がるような剣が添えられていた。

基本的に戦闘はまだかな?

次で少し出るか……出ないか。

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