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叛逆の騎士と聖剣の巫女  作者: yukizakura
Shout of Beast《シャウト オブ ビースト》
14/21

第14話

なんか文字が変かも……

まぁ、でも多分大丈夫っ!




 ルシアとルナはエリシアに戻っていた。

 そして、今はアリナの経営する宿屋にいる。アリナの宿屋に戻った時、ルシアの様子を見て、アリナは心配そうに声をかけた。だが、ルナの方を見て、優しく笑顔で微笑んだ。

 それから、ルシアとルナは部屋に戻って、異変について情報を整理している最中だった。


「先ずはユグドが生きている事だ」


 ルシアはテーブルに座りながら言う。

 テーブルの上には、紅茶の淹れられたカップが湯気を立てて置かれていた。


「どうしてお父さんが生きてるって分かったの? 何か確信があったんでしょ?」


 ルナは吹っ切れた様子で語る。

 ルシアとは反対側のテーブルに座っているわけではなく、ルナはルシアのベッドに腰を下ろして、ルシアの方を向いていた。


「あぁ……精霊宿しの亜人オークを覚えているな?」

「……うん」


 精霊宿しの施された亜人オークの討伐をルシアとルナは既にギルドに報告している。しかし、精霊宿しについては言ってはいない。問題になるという事もあるが、精霊宿しについてルシアが知っていると、可笑しな事になるのだ。ルシアは素性を隠している。

 ギルドに素性がバレた場合は、直ぐにこのエリシアから追い出させる。いや、運が悪いとギルドの冒険者の全てが敵になるのだ。

 そんな事をルシアは望んでいない。クレセリアからも、異常に魔力淀んだ魔性石だった為か疑問を抱いていたが、どうにか誤魔化していた。


「あの亜人オークを殺した際に、核となる心臓の部分があったんだ」

「心臓? それって……」


 ルナは急に表情を青ざめる。


「あぁ……人間だった頃の名残だ」


 魔獣の場合は心臓など持っていない。その代わりに、核となる魔性石がある。しかし、精霊宿しを施された者が魔獣になった場合、人間だった頃の名残で心臓が存在するのだ。

 しかし、それではユグドが生きている理由にはならない。答えは他にあるのだろう。


「だが、心臓があるのは、精霊宿しを施されてから時間が経っていないからだ」

「えっ……最近に精霊宿しが行われたってこと!?」


 ルナは口を両手で塞ぎながら驚いた。

 そんなルナに対して、ルシアは頷いたまま説明を再開する。


「あぁ……1ヶ月未満の場合は心臓がある。それ以上の奴はもう魔獣と変わらない」


 しかし、これは魔獣に変異した精霊宿しの実験者だ。他にも変わる者はいる。

 今回の精霊宿しを施され、亜人オークに変わったが、それは悪魔の影響だろう。天使を施されていた場合は最も変わっていた。

 それでも敵には変わりがない。精霊宿しを施されて無事だったなど、普通はあり得ない。


「だから……お父さんは生きているのね」

「あぁ……精霊宿しはユグドしか出来ないからな」


 ルシアの言う通り、ユグドにしか精霊宿しの方法は分からない。1ヶ月前に精霊宿しが施されたとするならば、ユグドは生きていると考えるのが必然だろう。

 しかし、ルナは深く考えた様子を見せた。


「なら、このエリシアの異変もお父さんが行なっている事なのルシア?」


 少し弱々しくルナは言葉を吐いた。だが、あの時のように恐怖に竦んでいる訳ではない。

 瞳は真剣に真っ直ぐとルシアを向いていた。

 ルシアは何かを知っている様子だ。既にこの異変の真相に気づいているのかも知れない。

 ルシアは表情を暗くさせ、


「いや違う。この異変は別の者が仕組んでいる。それもユグドに関係している人物がな」


 微かに震える声で呟いた。

 その事にルナは首を傾げて問う。


「騎士ってこと?」

「あぁ……ルナはグラシを知っているか?」

「えっ? ……グラシ!?」


 ルナはルシアの言葉を聞いて驚いた。

 ルシアが述べたグラシと言う男性は、アリナから聞かされていた人物だったのだ。しかし、グラシはルシアに殺された筈。なぜ、このアリシアに関係しているのか分からない。

 そんなルナの反応を見てルシアは、


「知っているのか……」


 驚いた表情を見せて言葉を発する。


「なら、アリナの夫と言う事と、俺がグラシを殺した事についても知っているな?」

「……うん」


 ルナが頷くと同時に、ルシアは固唾の飲み込んだ後に、静かにグラシについて説明した。

 ルナはベッドに座りながら耳を傾ける。


「グラシは精霊宿しを施され、半獣になっていた。それを殺したのが俺だった」

「精霊宿し……お父さんが……」


 ルナは暗い表情のまま下を向いた。

 憎悪と怒りが心の底から湧いたのだろう。

 しかし、ルナは直ぐに顔を上げて、ルシアの方を向いて説明を促した。ルナはユグドを止めないと行けないと考えていたからだ。


「そして、グラシの得意な魔法が消失だ」

「……消失?」


 ルナは聞いた事の無い魔法に首を傾げる。


「あぁ……消失はグラシ出ないとまともに扱えない。効果は記憶を消失させる」

「えっ? 記憶を消失させる?」


 又してもルナには理解出来なかった。

 そんなルナを見てルシアはため息を吐く。そして、ルシアはテーブルの上に剣を置いた。


「そ、その剣って!?」


 ルナはその剣に見覚えがあったのだ。その剣は紛れもないグラシが持っていた剣だった。

 ルシアはルナが分からないと思い、先ほど密かにアリナから剣を借りていた。借りるその時にアリナは何も言わずに剣をルシアに渡した。躊躇する事なく笑顔で渡したのだ。

 もしかするとアリナは気づいているかも知れない。ルシアの秘密についての全てを。


「あぁ……グラシの剣だ。名前はロストレイブ。消失の魔法に特化した剣」

「これがグラシの剣なのね……」


 テーブルの上に置かれていた剣は、青く澄んだ刀身を見せていた。だが、ロストレイブには何か悍ましいモノが微かに感じ取れた。

 その横にルシアは自分の剣を置く。


「このロストレイブは、俺の持っているクラレントと同じ魔剣に属する剣だ」


 魔剣と言われる剣は、普通の剣とは違い、精霊の宿った剣の事を魔剣と呼ぶ。その精霊が悪魔の場合は魔剣となり、天使の場合は聖剣と呼ばれるのだ。

 持つのには凄まじい技量が試される。

 ロストレイブもクラレントと同じ魔剣。ルナの持っている聖剣と反する剣という事だ。


「ルナ、一度立ってくれないか?」

「うん……分かった」


 ルシアに言われた通りにルナは立ち上がる。

 ルシアもテーブルの上にあるロストレイブを握りしめてルナの方に近づいた。ルナはその事に少しだけ不安な表情を浮かべる。


「あ、そんなに警戒しなくてもいい。今から魔法の消失がどんなものか見せるだけだ」

「えっ? 本当に!?」


 ルシアはそう言いながら剣を引き抜いた。

 青い光が放たれ、青く透き通る刀身が現れる。それは青空のように美しかった。


「大丈夫……少し経てば記憶は戻るから」

「ちょ! そう言う事じゃないでしょ!?」


 ルナは驚いた様子で狼狽える。

 そんなルナに対してルシアは苦笑を浮かべたまま、剣を構え出した。

 ルナも決心したかのように静かに目を閉じる。ルシアの事だから痛い事などする筈が無いと信じていたが、それでも怖かった。


「じゃ、行くぞ! 剣技ーー消失の記憶ロストデイズ


 ルシアの握りしめていた剣は、藍色の光を放ちながらルナの身体を切り裂いた。しかし、ルナの身体には一つも傷はない。ルナ自身にも何が起きたのかさっぱり分からなかった。


「あれ……何が起きたの?」

「ルナ……グラシを知っているか?」


 呆然とするルナに対してルシアは質問する。


「グラシ? ……聞いたこと無いけど?」


 ルナは首を傾げながら答えた。

 それに、本当に知らない様子だ。これが記憶の消失の効果なのだろう。

 しばらくするとルナは驚いた様子で、固まったまま、ルシアの方を見つめていた。

 何か言いたげな雰囲気だ。


「ルシア……さっきの何?」

「効果が切れたか?」


 無言でルナは頷いた。


「なんか頭の中から、急にグラシの事について忘れたような感じがしたんだけど……」

「それが消失の魔法だ。他人の記憶から、記憶の一部を消す事ができる魔法。グラシの場合は、記憶を全て消せていたがな」


 ルナはそれを聞いて悪寒を覚えた。

 グラシが戦場で、この魔法を使った場合、使われな者は何も出来なくなる。いや、生きている事すら忘れてしまうかも知れないのだ。

 ルナは悍ましいと思いながら、


「消失の魔法の事は分かったけど、この異変について何か関係してるの?」


 ルシアに向かって問う。

 ルシアは鞘にロストレイブを納めて、椅子に腰を下ろしていた。

 そして、ゆっくりと話し始めた。


「あぁ……エリシアの異変も消失。ユグドが生きていると分かった今、グラシが生き返っている可能性も出てきた」

「つまり……これはグラシの仕業なの?」


 恐る恐るルナはルシアに聞く。


「精霊宿しを施されたグラシだろうな」


 それを聞いた瞬間にルナは震えた。

 先程の消失の魔法を受けて、その力がどれだけ強大か分かったからだ。それに、精霊宿しを施されて、半獣となっているグラシの力の域は、遥かに騎士のレベルを越している。

 この異変の原因がグラシであるならば、この町中の人から記憶を消せる事になるのだ。そんな相手にどうやって戦えばいいか、ルナには何も浮かんでこなかった。

 もし、亜人オークのように再生能力まで有していたら、ルナは何も為す術がない。その事に心の底から自分の力を呪った。


「……何か策はあるの?」


 ルナは暗い表情で問う。

 ルシアは考えた様子を見せた後、


「ルナの聖剣の力を借りれば、勝てる見込みはある。俺だけでは、多分苦しいだろう」


 苦笑しながら言葉を述べた。

 ルナはルシアの言っていた事に疑問を覚える。ルシアは聖剣の力を借りると言っていたが、ルナには思い当たる節がなかったのだ。

 もう一度、ルシアの瞳を見つめる。しかし、ルシアの視線は揺らぐ事がない。本当に真剣に先程の言葉を言っているのだろう。


「聖剣の力なんてないよ……」

「いや……ある。お前は、その聖剣エクスカリバーの本当の力を発揮出来ていない」


 ルシアはハッキリと強い口調で言った。


「そのエクスカリバーが本来の力を発揮すれば、俺なんて手も足も出なくなる」

「ほ、本当に?」

「あぁ……必ずな」


 真剣にルシアは述べた。

 何にも迷う事なく言葉を紡いだのだ。

 その事にルナは驚いた。自分の持っている剣の実力を発揮出来ていない事と、ルシアが足も手も出なくなる事に衝撃を受けたからだ。

 ルナは鞘の聖剣に視線を送る。


「どんな能力なの?」

「聖剣の本当の力は魔力を消す事だ。魔法や剣技の全てを無効化する。絶対的な力だ」


 ルナはその場に固まった。

 ルシアの言っている事が理解出来ない。そんな能力が実在したら、何も出来なくなる。最強と言っても過言ではない程の能力だろう。

 ルナは無理だと思った。だが、それでも聖剣の力を発揮させないといけないと思った。自分の為ではなく、ルシアの為になりたい。

 彼女はその一心で動き始めた。


 その夜は綺麗な星が見え、遮るかのように獣の泣き叫ぶ声が星に向かって轟いていた。



さて……次回訓練とかするか? いや、話的に変になりそうだな……なので次回も日常編です!

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