第13話
文字数が少ないので、1時にもう1話投稿します。投稿が遅くなってすみません。
ルナは静かに地面に膝を落とす。夕暮れの光がルナを嘲笑っているように見えていた。
驚きの余り言葉が上手く出てこない。呼吸するのさえ、侭ならなかった。
「ルナ……」
そんなルナを見てルシアは胸が痛くなる。なぜ、そのような感情が湧いたのかは分からない。だが、今のルナは見ていられなかった。
嗚咽が混じった声で泣くルナ。
先程、ルシアも同じ状況だったのだ。ルシアの場合は、頭の中でユグドが生きている事を確信して、そのショックで弱音を吐いた。
だが、ルナの場合は重さが違う。ユグドは、ユナの唯一の父親なのだ。それに、精霊宿しの話を聞いて、余計に心に響いた。
ユナは、ユグドに対して抱いていた憧れと、ユグドに対する怒りが渦巻いている。自分自身でも、何をすればいいか分からなかった。
「……ルシア……ごめんなさい」
なぜかルシアに謝りたかった。ルシアにこれ以上、重荷を背負わせたくなかった。
ルナはその一心で頭を下げる。
「ルナは悪くない。悪いのは、ユグドを殺せなかった……俺だ」
ルシアは頭を下げようとする。
しかし、それを遮るようにルナが、ルシアの手の上に自分自身の手を重ねる。その手は暖かかったが、震えているとルシアは感じた。
「ねぇ……ルシア。本当にお父さんは生きているの?」
掠れる声で震えながら囁くルナ。
「あぁ……ユグドは生きている」
「そうなんだ……」
ルシアの言葉を聞くと、ルナは今まで保っていた感情が糸のように途切れてしまう。
涙が溢れる。嗚咽の混じった声で泣いた。
ルシアはそんなルナを抱きしめる。胸からルナの鼓動が伝わってくる。それに、泣いている声が心に響いて苦しかったのだ。
「ルナ……大丈夫だ」
泣くルナの耳元でルシアは囁いた。
それを聞いたルナは、ルシアの腰に手を回し、ルシアの身体を強く抱きしめる。
「ルシア……ルシアっ!」
表情を崩して叫ぶルナ。
ルシアはそのルナを見る度に、心の奥が締め付けられるような苦しさを覚えた。
しばらくすると、ルナは自分自身の中で整理出来たのか、泣き止んだ。
しかし、未だにルナの身体は震えている。ユグドが生きていると思うと怖いのだろう。いや、ルシアがあの時のように変わってしまうのではないかと、ルナは考えていたのだ。
「……大丈夫か?」
「うん……でも、このままでいて」
ルナは弱々しく言葉を発した。
それと同時にルシアを強く抱きしめる。
ルシアもそんなルナの頭を優しく撫でた。ルナの頭を撫でるたびに、心が安らいぐ。その時だけは嫌な事を考えなくて済んだからだ。
「ルナ……聞いてくれ」
だが、ルシアには話さないといかない事があった。それはユグドの事だとルナは直ぐに理解して、ルシアに頷いて返していた。
「俺はユグドを殺す」
「うん……」
「でも、ルナに協力して欲しい」
ルシアは真剣にルナに訴えた。
その目は紛れもなく真っ直ぐだ。どこにも揺らぐ事のない決心が見えていた。
ルシアは酷だと理解している。だが、ルナの力は余りにも強力だ。
いや、それだけが理由では無いだろう。ルシアはルナに側にいて欲しかった。隣で、一緒に歩いて欲しかっただけなのだ。
ルナは考えながらも、未だに手が震えている。それを紛らわせるかのようにルシアの袖を力強く握りしめて、視線を上げた。
「私……役に立たないよ?」
「違う。ルナは強い。俺よりも遥かに……」
苦笑を浮かべて言葉を紡ぐルナに対して、ルシアは直ぐに言葉を返した。その言葉には、ルシアの本心が混ざっているようだった。
しかし、ルナは更に言葉を紡いだ。
「未だに怖いの……震えだって、一向に止まる気配すらないし……弱いよね、私」
ルナは涙を流しながら囁いた。
ルナの手を見ると、ルナの言葉の通り震えている。それを見たルシアは、ルナの手を自分の手に重ねて握りしめた。
「俺だって怖いよ。あの時だって、恐怖で弱音を見せてしまったしな」
「……ルシア」
笑いながら話すルシア。
そのルシアの手は、ルナの手を握りしめてきたが、微かに震えていたのだ。その事に、ルナは驚きを隠さないままルシアを見つめる。
ルシアは強がっているだけなのだ。
大人と言っても、命をかけるのには誰しもが恐怖する。怖いと言う感情を忘れてしまっている人は、それは只の狂った人間だ。
「ルナ……俺の隣を一緒に歩いて欲しい」
ルシアは心の中で感じていた。
出会った時から、ルナは特別だった。ルナがいるだけで、ルシアは心が安らいだ。弱々しく生きている自分に自信が湧いてきた。
ルシアの罪を赦してくれる。そんなルナをルシアは守りたいと思っていた。
ルナはルシアみ見つめながら、
「……はい」
小さい声で嬉しそうに囁いた。
うん……日常編だw
そろそろ、ラストに向かってきました!
では、また会いましょう!