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レジェンドガール  作者: 井村六郎
終章 伝説になれ
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第八十五話 機械仕掛けの魔王

前回までのあらすじ



遂にウルベロとの因縁を制したゼド。杏利、エニマ、ゼドの三人は、全てに決着をつける為、イノーザの元へと向かう。

そこで明かされたのは、イノーザはこの世界の存在ではなく、別の世界で上位存在に造られたアンドロイドという驚愕の真実だった。

イノーザの目的は、闘争による文明の加速と記録。そしてその目的を終わらせる為、杏利に殺してもらう事だった。イノーザを殺さずに済む道を探そうとする杏利達だったが、それも虚しく、イノーザの戦意を高揚させる自衛プログラムが起動してしまう。

望まずして生まれた悲しい人形の使命を終わらせる為、杏利達は最後の戦いを始めるのだった。



ネタバレ。イノーザの名前はゼノアのアナグラム。


Zenoa → Enoza


ちょっと無理矢理だけど。

 杏利が右から、ゼドが左から、それぞれ渾身の一撃を叩き込む。

 イノーザはそれを、両手に持つレーザーブレードで受け止めた。

「はっ!!」

 そこから気合いとともに、二人を弾き飛ばす。

 さすがは魔王イノーザ。ロイヤルサーバンツ程度なら今ので終わっているが、イノーザには全く通じない。

「やぁっ!!」

 素早く斬り込む杏利。心臓目掛けて突きを繰り出し、イノーザが右手のレーザーブレードでそれを上に跳ね上げ、左手のレーザーブレードで逆に突きを繰り出す。それを横に回転しながらかわし、杏利はイノーザの横腹にエニマを叩きつけた。

「ぐっ!」

 イノーザが一瞬顔を苦痛に歪めた。ダメージが入っている。攻撃が通る。杏利とエニマは、イノーザにダメージを与えられるほど、強くなっている。もう彼女との力の差は、絶対的なものではない。

 だが、与えられたダメージは微々たるものだ。致命傷には程遠い。イノーザは右のレーザーブレードを振って杏利を遠ざけ、左のレーザーブレードを振った。レーザーブレードから光の斬撃が飛び、杏利に追い討ちを掛ける。

 しかしそこへゼドが割り込み、真上からの一撃で斬撃を叩き潰した。今度はゼドが攻撃する番だ。杏利と入れ替わるようにイノーザの前に飛び込み、何度も高速で斬りつける。イノーザは二刀流という単純な物量で拮抗し、そこから少しずつ攻撃の速度を上げて、ゼドを圧倒し始めた。

 もちろん、杏利も黙って見てはいない。ゼドの隣に並び、同時にイノーザを攻撃する。戦う相手の数が増え、両者の戦いが拮抗する。しかし、相手は疲れ知らずのアンドロイド。このままではいつまで経っても埒が開かない。

 そこで杏利とゼドは、一気に勝負を決める事にした。二人は同時にイノーザの両腕を跳ね上げ、がら空きになった胸板へと、これまた同時に蹴りを叩き込む。

「がぁっ!!」

 ダメージを受け、イノーザが下がった。今がチャンスだ。杏利は間髪入れず、イノーザ目掛けてエニマから光線を放ち、ゼドも刺突を繰り出しながら、烈心から光の魔力を放った。

「っ!!」

 この攻撃を受けて、イノーザは壁に叩きつけられる。

「バニドライグ!!!」

「操雷乱舞!!!」

 最後にありったけの魔力を込めて、杏利はバニドライグを、ゼドは操雷乱舞を放ち、イノーザに直撃させた。

 ここまでの流れは、打ち合わせをしたわけでも、アイコンタクトを取ったわけでもない。二人の考える事が同じで、心が深く通じ合っていたから出来たのだ。

「これで終わりじゃないでしょ? さっさと立ちなさいよ」

 と、杏利がイノーザを挑発した。間違いなく今までで一番大きなダメージが入ったはずだが、この程度で倒せる相手ではない。これで勝てるなら、そもそも異世界から杏利を呼ぶ必要がない。それがわかっているから、挑発したのだ。

「ふふ、ふふふ……さすがだよ。ここまでたどり着いただけはある」

 案の定、イノーザはレーザーブレードを破壊され、ダメージを受けてボロボロになってこそいるが、全く淀みない足取りで歩いており、瀕死というわけではない。

 そう、歩いている。杏利とゼドは、仕掛けない。先程と雰囲気が違っており、うかつに飛び込めば返り討ちにされかねない。なのでイノーザの動きに注意し、何をされてもすぐ対応出来るようにしている。

「これ以上本気を出さないのは失礼だ。ならば、私も本気を出そう」

 イノーザは自分の玉座にたどり着き、スイッチを操作した。すると、玉座の後ろに、武器が現れた。それも、一つや二つではない。数十、いや、数百、下手をすると数千はあるのではないかという、武器の山だ。マシンガンやガトリングガンなどの銃器類、ロケットランチャーやバズーカなどのミサイルや砲の類い、剣やら槍やら斧、スタンガンやレーザーブレード、高周波ブレードなどの近接武器、見た事のない武器も大量にある。どうやら今のは、この部屋にこれらの武器を転送する為の操作だったようだ。

「何のつもり? まさか、その武器の山を使ってあたし達と勝負する、なんて言うつもりじゃないでしょうね?」

「そのまさかだよ」

 杏利は冗談半分で言ったが、イノーザは本当にこの大量の武器を使って戦うつもりらしい。

「でもこのままじゃ使い辛くて仕方ないから、使いやすくするよ。私の心想を使ってね」

「「!?」」

「やはり貴様、心想を使えたんじゃな!?」

 今イノーザは、心想を使うと言った。杏利とエニマの予想通り、イノーザは心想が使えたのだ。


「柔弾硬性筋繊維、超有機金属骨格、次元輪廻永久エンジン」


 詠唱を始めるイノーザ。杏利は最初、イノーザが何を言っているのかわからなかった。


「衝撃転移疑似内臓、高エネルギー圧縮人工血液、学習進化皮膚、ラプラスアイズ」


 だが、言葉を聞いている内に、それはイノーザを構成する部品や、コンピュータ―の事なのだとわかった。


「リブラティックハードブレイン、ヒアデラヒムコンピュータ―、ジェムナイトシステム、ワールドダイブシステム」


 イノーザが詠唱を続けるに従って、武器が次々と浮かび上がり、イノーザの背中へと吸い込まれていく。


「ゴッドブレイクプログラム、デビルイクシードプログラム、ヒューママインドプログラム、カオスエンドシステム、コスモスフュージョンシステム、アンリミテッドエボリューションシステム、ウォーズシステム、アウェイクン」


 やがて、全ての武器がイノーザに吸収された。


「心想、顕現」


 そして、己の心想の名を告げる。


「機械仕掛けの魔神皇(デウス・エクス・マキーナ)」


 機械で出来た神。それが彼女の本質であり、心想の名もまた、それを意味する能力を発現した。

「待たせたね。それでは、第二ラウンド開始だ!!」

 イノーザは両手を広げる。すると、彼女の胸から腹に掛けて、服が、皮膚が、無数の銃口に変化し、鉛弾やエネルギー弾を乱射してきた。

「スキルアップ!!」

 二人は慌てて回避し、杏利が能力を強化してイノーザに迫り、脳天目掛けてエニマを振り下ろす。

 だが、イノーザの左手がマジックハンドに変化し、伸びてエニマを掴んで杏利を引き寄せた。

「アタックガード!! ストレングス!!」

 困惑しながらも、咄嗟にアタックガードとストレングスを発動する杏利。この判断はこれ以上なく正しかった。

 なぜならイノーザの右手が、巨大なパイルバンカーに変化し、引き寄せた杏利のみぞおちに杭を打ち込んだからだ。

「がぁっ!!」

 そのあまりの衝撃に、杏利はエニマを放して吹き飛ばされてしまう。もし防御力を上げていなかったら、この程度では済んでいない。

 イノーザの攻撃はまだ終わらない。エニマを放り投げ、両肩を四連装のロケットランチャーに変え、杏利に追い討ちを喰らわせたのだ。

 ゼドはイノーザの背後に回ると、一気に斬り掛かる。だが、イノーザの背中から、マチェーテが装着された四本のアームが伸びてきて、ゼドを攻撃。仕方なく、ゼドは下がる。下がったところでイノーザが左腕を巨大な砲身に変えて、光線を発射。ゼドを吹き飛ばした。

「大丈夫か杏利!! 今治すぞ!! リカローア!!」

 イノーザからの攻撃でズタボロにされた杏利を、エニマが治す。ゼドもどうにか立ち上がり、回復魔法でダメージを回復する。

「これが私の心想、機械仕掛けの魔神皇」

 イノーザは全身のあちこちから出現させた武器を収納しながら、自分の心想について説明した。

「あらゆる物質を自身へ融合し、強化する能力だ。融合する武器に依存する能力だし、解除すると融合も解けてしまうから、いちいち武器の山を用意しなければならないのが難点だが、お前達の心想にも匹敵する能力だと自負しているよ」

 融合した武器は、今やってみせたように、イノーザの意思でいつでも、いくらでも使う事が出来る。加えて武器には心想の力が備わる為、相手の心想の防御を撃ち抜けるのだ。

「せっかく心想を使ってやったんだ。お前達も使え。今のままだと、死ぬぞ?」

 好戦的な笑み。それは脅しでもなんでもなく、事実だけを言ったのだろう。杏利は今の攻撃を受けてわかった。イノーザは、ただ取り込んだ武器を使えるようになったわけではない。自分にとって使いやすい形に自在に組み換え、そして一撃一撃が必殺の威力を秘めている。

 このまま対抗手段を使わずに戦い続ければ、間違いなく、死ぬ。

「「心想、顕現」」

「世界に降り注げ、黄昏の光!!」

「布都御魂・護光剣聖!!」

 ゼドも杏利と同じ事を考えていたようで、一緒に心想を発動した。

「いいのかね詠唱を破棄して? いくらでも待ってあげたんだよ?」

「これ以上時間を掛けるつもりはないのよ!!」

 早くイノーザを倒さなければ、外で戦っている仲間達が力尽きてしまう。その前に、何としてでもイノーザを倒す。今まで温存していた力をフルに使って、杏利はイノーザに向かって走った。

「ワンパターンな……」

 再び前面を銃口に変え、乱射を行うイノーザ。杏利はそれを掻い潜って、イノーザに飛び掛かる。

「功を焦ったか!! そんな事で私は倒せないぞ!!」

 イノーザは右腕を、腕三本分の太さのレーザーブレードに変えて、その一撃を受け止めた。心想を使う事によって、レーザーブレードの出力も桁外れに上昇している。杏利が心想でコーティングせずに斬りつければ、エニマは真っ二つにされてしまっていただろう。だが、それでも長くは受け止められない。

 イノーザは左腕も、全く同じレーザーブレードに変えて、嵐のような連続攻撃を仕掛けてきた。杏利はエニマを振り回し、イノーザの連撃とせめぎ合う。

 ゼドはイノーザの背後に回り、跳躍して、烈心に刀を融合させ、横に振った。空間に、白銀の光の軌跡が残る。その軌跡が大きく開き、その中から、大量の光のエーテルブレードが飛び出してきた。

「相棒はいくらか頭がいいようだ。だが!!」

 後ろに目でも付いているかのような反応をするイノーザ。これでは、さっきのマチェーテアームでは対処出来ない。しかし、イノーザは背面にも銃口を出現させ、銃口を上へと傾け、エーテルブレード目掛けて掃射した。発射された弾丸は、エーテルブレードの雨と拮抗する。

 せっかくゼドが機転を利かせて編み出した作戦にも、容易く対応してしまうイノーザ。

 しかしイノーザは、ゼドの作戦がまだ終わっていない事に気付く。

 ゼドは今、床に着地している。だが軌跡は消えず、エーテルブレードの掃射も終わらない。

 この攻撃方法は、心想の応用だ。あの軌跡は、今ゼドが融合させた心想の刀そのものであり、エーテルブレードには心想の力が宿っている。もし心想の力で強化していなければ、エーテルブレードは拮抗出来ない。

 その間にゼドは、イノーザに向かって走り出した。先に上から攻撃を仕掛ける事で、イノーザの攻撃の照準を、この本命の突撃から外させたのだ。これだけの掃射に拮抗出来る、エーテルブレードの雨。銃口を一つでもゼドの迎撃に使えば、撃ち漏らしたエーテルブレードに斬り裂かれる。加えて杏利が正面から攻撃してきている為、少しでも集中を切らせば杏利の一撃をもらう事になる。

(本当に頭がよく回る。だがその作戦には一つだけ穴があるぞ!!)

 イノーザは両足をブースターに変化させ、点火しながら横に避けた。そうだ。イノーザが回避に徹してしまえば、エーテルブレードは杏利の全身を貫く。同士討ちしてしまうのだ。

 しかし、その時ゼドが再び烈心を振った。烈心から光が飛び、その光は刀に変化して杏利の盾となり、エーテルブレードの雨をイノーザが逃げた方に弾き飛ばす。

 軌跡に変化した刀は、一本だけだ。イノーザが回避を選択し、自分と杏利を同士討ちさせるところまでが、ゼドの読みである。あとはイノーザが、どこに逃げるか。その確認だけがしたかった。それさえ出来れば、あとは逃げた方向にエーテルブレードを跳ね返すだけだ。

「ぐぉあっ!!」

 予想外な攻撃を受けて、イノーザは撃ち落とされる。

「ゼド!」

「ここまで来て、お前を怪我させるようなドジは踏まない」

 ゼドは刀を回収し、イノーザの動きに警戒しながら言った。

「杏利!! 追い討ちじゃ!!」

「うん!! ビルツジライガ!!」

 エニマに促され、まだ立ち上がれないでいるイノーザに、ビルツジライガを叩き込んだ。

「ちぃっ!!」

 だが、イノーザを中心に球状のバリアが展開され、ビルツジライガは防がれてしまう。

「防御装置も取り込んでたのか……!!」

 バリアを使うと予想していなかったので、防がれた。わかっていればバリア貫通を使って、確実にダメージを与えられたのだが。

「ふふふ……少し油断したよ……」

 身体を元に戻すイノーザ。自己修復能力があったのか、それともそういう装置も一緒に取り込んでいたのかはわからないが、傷まで元通りに回復する。

「想像以上だ。お前達がここまでやるとは思っていなかった。やはりここを最終決戦の場所にするのは惜しい」

「……何ですって?」

「最終決戦に相応しい舞台を、用意してやると言ったんだ。特にお前にとってな、一之瀬杏利!!」

 この城は最終決戦の場所として相応しくない。今から本当の最終決戦として、相応しい場所を用意する。しかもそれは、杏利に関係がある場所らしい。

 一瞬その事に気を取られ、イノーザへの反応が遅れた。イノーザは自身の体内に取り込んだ、短距離転移装置を使い、再び玉座へと移動し、驚くべき速度でスイッチを操作し始めたのだ。

「やめろ!!」

 杏利は光線を放つが、イノーザの背中から伸びたアームに弾き飛ばされる。遠距離攻撃では駄目だと察したゼドが駆け出すが、一手遅かった。

「ふふ」

 イノーザが最後の操作を終えたのだ。この玉座にも、転移装置が搭載されている。その装置で使う対象を三人に定め、城の外へと転送した。

 ひとまず外敵を排除したイノーザは、玉座へと座り直し、スイッチを操作して無線を起動する。

「全軍に通達する。直ちに帰投せよ。繰り返す。直ちに帰投せよ」



 外で造魔兵達と戦っていたキリエ達は、困惑していた。今まで激しい数の暴力を仕掛けてきていた造魔兵達が、突然戦闘を放棄し、城へと戻り始めたのだ。

「どうなってるの?」

「わかりません。勝てないと察して撤退を始めたわけでは、なさそうですが……」

 キリエとウンディーネとサクヤは、顔を見合わせている。実力だけなら彼女達が勝っていたが、数ではイノーザ側が圧倒的だった。このまま造魔兵を補充し続ければ、いずれ必ず圧殺出来ていたのだ。逃げる理由がない。

「世界各地で転移反応多数。あの造魔兵と呼ばれる敵性体は、世界中からあの拠点の中に収容されているようです」

「世界中から!?」

「イノーザは、今世界中に散らばっている造魔兵達を、回収しているのか!?」

 ルカイザーの分析を聞き、アヤとチェルシーは驚く。造魔兵の回収が行われているのはここだけでなく、世界中。侵略活動を行っている全ての造魔兵を、イノーザは集めているのだ。

「でも、おかげで今造魔兵に襲われてるところは助かってるんでしょ? ならよかったじゃない」

「……そんな簡単な話じゃないと思うけど……」

 ティナの言う通り、現在造魔兵から襲撃を受けている国は助かるだろう。しかしなぜこんな事が起きているのかわからず、ミーシャは胸騒ぎを感じていた。

「師匠!! マリーナ!! あれを!!」

 ジェイクが何かに気付き、ロージットとマリーナはその方向を見る。

「あれは、杏利様とゼド!!」

 そこには、イノーザによって城の外へ飛ばされた、杏利とゼドがいた。

「杏利様!! ゼドさん!!」

 マリーナが二人を呼び、一同は二人のそばに駆け寄る。

「一体、何が起こっているんですか?」

「魔王イノーザは!?」

 シンガとリュウマが矢継ぎ早に二人に尋ねた。

「ごめんなさい。イノーザはまだ倒せてないわ」

「わしら、奴にここまで飛ばされたんじゃ。なんでも、杏利に関係のある最終決戦に相応しい舞台を用意するとか言っておったが……」

 杏利とエニマが答える。


 その時、イノーザの城の中央。城で一番高い部分。恐らく先程まで杏利達がイノーザと戦っていた場所が、強い光を放った。


 その光はさらに強い光を発したかと思うと消え去り、代わりに空には巨大な穴が出来ていた。


「な、何よあれ!?」

 驚くキリエ。ロージットは冷静に、事態を分析する。

「あれはもしや、空間の穴では!? 千年前の魔科学大戦では、空間に穴を空けてトンネルを作り、相手の拠点に直接攻め込む兵器が造られていたと聞いています」

「その通りです。あれはそれと同じ技術で作られた、次元の穴です」

 ルカイザーが肯定する。魔科学大戦時代の技術とは違うだろうが、とにかくイノーザは空間に穴を空けた。

 と、第二の異常が起こる。全ての造魔兵が回収されると同時に、城を中心に大規模な地震が起き始めたのだ。

「何だ、地震か!? しかもあの城から!?」

「早くあの城から離れないと、まずいですよ!!」

 シキジョウとアカガネから指摘を受けた杏利が、光で全員を包み、素早く城から移動する。ちなみに、杏利とゼドはまだ心想を発動したままだ。

 城から離れたところで、事態の詳細が掴めた。城が浮上し、大地から離れたのだ。

「し、城が……浮いてる……!!」

 アヤはルカイザーの中から、この状況を見て戦慄していた。ルカイザーならまだわかるが、これほどまでの大質量が、あんな簡単に浮かび上がるというのは、かなりのショックを受ける。

「……なんという事じゃ……!!」

「エニマ?」

 エニマが何やら呻いている。気になった杏利が問い掛けた。


「あの穴の向こうは、杏利の世界に繋がっておるぞ!!」

「何ですって!?」


 イノーザが次元に空けた穴は、杏利の世界に繋がっているらしい。エニマは限定的だが次元を越える力を持っており、杏利を呼び出す時にその世界の気配を感じた為、それがわかったのだ。穴の向こうから杏利の世界の気配を、強く感じたのである。

「奴は杏利の世界まで侵略しようとしておる!! 杏利と関係のある最終決戦に相応しい舞台とは、こういう事じゃったか!!」

 それなら、確かに杏利と関係がある。


「気に入ってくれたかな?」


 その時、城からイノーザの声が聞こえてきた。

「イノーザ!!」

「今お前の世界に繋がる穴を空けた。同じ異世界からやって来た者のよしみで、お前の世界で決着をつけてやろう。私との決戦を望むなら、この次元戦艦ポルマーを、私を追ってくるがいい。お前なら、出来るだろう?」

 イノーザは杏利を挑発し、イノーザの城、次元戦艦ポルマーは、穴の向こうに消えていった。

「……エニマ。あたし一人の力じゃ、イノーザは倒せそうにないわ」

 杏利は空に残ったままの穴を見て言う。

「何を言うておるか。ゆえに、わしが力を貸すと言うたじゃろうが」

 杏利が今更な事を言ったので、それに不審感を覚えるエニマ。

「悪いけどエニマ、今すぐ決めて。最後まであたしと一緒に戦うのか、それともこの世界に残るか」

「なぜそんな事を訊くんじゃ! 訊くまでもないじゃろうが!」

 何も考えずに、杏利とともに行くというエニマ。杏利はわからず屋の槍に、こう一喝した。


「訊く必要があるから訊いてるのよ!! あっちに行ったら、あんたはこっちに戻ってこれないかもしれないわ!!」



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