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レジェンドガール  作者: 井村六郎
終章 伝説になれ
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第七十五話 近付く

前回までのあらすじ



エニマ、強化完了。

ラトーナ、爆死。

「前にも言ったはずだ。例の件については、私以外の者に話してはならない。時が来れば、私自ら話すと」

 イノーザは、自分の許可なく、真の目的をラトーナに話したヴィガルダを咎めていた。

「お前のせいで、ラトーナが死んだ」

「申し訳ありません」

「……なぜだ。なぜラトーナに話した?」

 イノーザに問われ、ヴィガルダは少し間を空けてから話す。

「私自身、試したかったのでございます。奴が私のように全てを知った上でなお、イノーザ様にお仕え出来る器の持ち主かどうか」

 ラトーナがイノーザにとってまことの臣下であるか、ロイヤルサーバンツの資格を持っているかどうか、ヴィガルダは試したかったのだ。結果はまぁ、この通りだったが。

「まさかここまで取り乱すとは思いませんでした。もう少し、思慮の深い女かと……」

 そこまで言ってから、ヴィガルダは首を横に振った。

「……いや。私でさえ、最初は取り乱しました。ラトーナは力も精神も、ロイヤルサーバンツの中では一番弱く、また最もイノーザ様の存在を支えにしていた者。このような事を話しては、とても耐えられますまい。軽率でした」

「いや、いい。お前はお前なりにラトーナの事を、そして私の事を考えた上で行動をしたのだ。咎めたりしてはならんな……許せ……」

 ヴィガルダの行動は、決して背信ではない。彼は二人の為を思って、ラトーナに真実を話したのだ。褒められこそすれど、咎められるいわれはない。イノーザは無礼を詫びた。

「勿体無き御言葉」

 ヴィガルダはイノーザに一礼し、玉座の間を出た。



「よお、ヴィガルダ」

 玉座の間を出てすぐ、ヴィガルダはウルベロに出くわした。

「ウルベロ。貴様今までどこに行っていた」

「まーたまた。あんた、俺の能力の事知ってるだろ?」

 そこまで聞いて、ヴィガルダはウルベロがどこに行っていたのかを察した。また復讐者を殺しに行っていたのだ。

「それより聞いたぜ? ラトーナが例の女勇者と戦って死んだって? しかも自爆したって」

 どうやらウルベロもまた、ラトーナの戦死の報告を聞いたらしい。

「勝てねぇってわかったから、せめてイノーザ様の為に道連れにしようと自爆したんだろ? すげぇじゃねぇか。よっぽど強い忠誠心がなきゃ、出来ねぇ事だ」

 ウルベロの言葉を聞いて、ヴィガルダは思う。そうだ。ラトーナは杏利と戦って負けたのではなく、自爆した。イノーザから与えられている愛に、少しでも報いる為だ。ラトーナもまた、イノーザに忠実な、ロイヤルサーバンツの一人だったのだ。

「……ああ。お前にそう言ってもらえれば、奴も救われるだろう」

「俺あいつに嫌われてたから、それはないって。ところでさ、あいつどうやって一之瀬杏利を見つけたと思う?」

 唐突に話を切り替えるウルベロ。そういえば、ラトーナはどうやって杏利を見つけたのか、ヴィガルダは知らなかった。

「……わからん。お前は知っているのか?」

「断定は出来ねぇが、恐らくこいつを使ったと思うぜ」

 そう言って、ウルベロは、ある機械をヴィガルダに見せた。

「これは?」

「生体反応探知機だ。特定の相手の生体反応を記録する事で、相手がその星のどこにいようと見つけられる。ラトーナがずいぶんと熱心に造ってたのを思い出してな」

「……なぜそれをお前が持っている? 本来ならそれはラトーナの持ち物のはずだが」

「俺もこっそり同じものを造ってたんだよ。ま、一之瀬杏利の生体反応は、あいつが自分の部屋から出た隙に、ちょっとな」

 ラトーナが杏利探知機を造っていたのは、ウルベロも知っていた。ウルベロも同じものを造っており、ラトーナが部屋から出たのを見計らって忍び込み、杏利の生体反応をコピーしたのである。

「ウルベロ……」

「いいじゃねぇか。俺達全員が一之瀬杏利に用があるわけだしよ」

(俺の場合、お前らとはちょっと違うけどな)

 本当はウルベロも、ラトーナの部屋になど忍び込みたくはなかったが、探知機完成の為にはどうしても必要な事だったから仕方ない。

「で、俺はこいつをあんたにくれてやろうと思ってる。どうだ?」

「……お前の分はいいのか?」

「ああ、もう一個造ってあるからな。で、どうする? 使うか使わねぇかはあんた次第だが」

 ヴィガルダは考える。これさえあれば、一発で杏利を見つける事が出来る。しかし、今行って大丈夫なのか。次に杏利と戦えば、恐らく全てが決まる。

「……まぁ渡すだけ渡しとくよ。俺はもう少し準備してから行く。何せラトーナが自爆を決め込むくらいだからな」

 ウルベロもラトーナを嫌ってはいたし、自分に及ぶはずもないと思っていた。しかし、ラトーナの力は、並みではないのだ。

 ラトーナを倒すなら相当の実力が必要で、そんなラトーナに勝てないと思わせるほど杏利が強くなっている。それなら迂闊に仕掛けるのは、自殺行為と言えるものだ。

 慎重には慎重を、準備には準備を重ねなければならない。

(始めたら後戻り出来ねぇからな)

 もちろんウルベロの場合、ヴィガルダとは別の意図があって慎重になっているのだが。

「……」

 ヴィガルダは探知機を持ったまま、しばらく立ち尽くしていた。



 杏利達はもう一日ビンクス達の家に泊まり、翌日出発する事にした。

 そして、翌日。

「本当にお代はいいんですか?」

 杏利はエニマを打ち直してくれた代金を払おうとしていた。借り物の槍を壊してしまった弁償もしようとしていた。だが、ビンクスは首を横に振った。

「お代は結構です。いつもの仕事だったならまだしも、今回は特別中の特別。我々が長年待った、するべき事をしたのですから、お代を受け取るわけにはいきません」

「魔王を打ち倒して頂く事。それが我々にとっての、最高の報酬です」

 イノーザを倒すのは当然の事。今さら言われるまでもない。

「……それじゃああたしの気が済みません。せめて、これぐらいは受け取って下さい。あたしからのほんの気持ちです」

 しかしタダというのは気が済まないので、十万ギナビンクスに渡した。

「……勇者様のお気持ちだというなら、喜んで。身に余る光栄です」

 それなら受け取ると、ビンクスは受け取った。

「しかし、これからどこへ行かれるのですか?」

 ビンクスは杏利に、次はどこへ行くのかと尋ねる。もちろんイノーザを捜しに行くのだが、やはりアテはない。

 ぶっちゃけ本人が何度も言っているのでほとんど諦めていたが、ラトーナからイノーザの居場所を聞き出すつもりだった。だからスーパーガンゴニールストライクで消滅させず、引き抜いて大ダメージを与えるに留めたのだが、自爆されてしまった。

「もし行くあてがないのでしたら、南の最果てにある、パルトーネという町に行かれてはいかがですか?」

「パルトーネ?」

 エニマを打ったのは、鍛冶屋のみではない。数人の賢者もまた、彼女の制作に協力した。パルトーネはその賢者の一人の、出身地である。

「あの町は七魔仙人の長、混世のレギドの故郷でもあるのです」

「あの魔仙人の!?」

「はい。そしてパルトーネには、禁断の大魔法が封印されています」

「禁断の……大魔法……」

 どうやらパルトーネは、ペイルハーツに匹敵するレベルの魔法の町らしい。

「それって危ないんじゃないですか?」

「非常に危険です。しかし、魔王襲来に際してあの町の人々が、禁断魔法を復活させるかもしれない。あなたにはそれを、確認して頂きたいのです」

 今回現れた魔王は、七百年前と比べてあまりに強すぎる。あまりに大きな戦力を持っている。それだけでなく、何かがおかしい。何かが違う。この異常な脅威に対して、パルトーネの住人達が禁断魔法を復活させ、使うかもしれない。

「何もなければそれで良し。ですが、どうにも胸騒ぎがするのです」

「本来ならば、勇者の槍エニマ・ガンゴニールに縁のある我々が確かめねばならない事なのですが、我々はここを離れられません」

「……わかりました」

 二人の頼みは、イノーザを捜しに行くついでだ。ついでだが、杏利の名を見聞する意味でも、禁断魔法の使用を阻止する上でも、無駄にはならない。なので杏利は了承した。



 杏利はスレイプニルに股がり、パルトーネを目指す。目指しながら、杏利はエニマに尋ねた。

「エニマ。あんた、禁断魔法について、何か知ってる?」

「……実を言うと、知っておる」

「本当!?」

 これは驚いた。禁断魔法というくらいなのだから、杏利は千年以上前の魔科学大戦時代ぐらいの魔法だと思っていたのだが、エニマは知っていたのだ。

「禁断魔法は、わしと同時期に作られた魔法でな。もしわしと和美がグライズの討伐に失敗したら、代わりに使われるはずだったのだ」

「……なるほど。つまり、魔王グライズを倒す手段は、複数用意されてたってわけね」

「じゃが、あの魔法の使用は、本当にどうしようもなくなった時の最終手段じゃ。槍が召喚した勇者が敗れ、世界中のあらゆる武器や魔法、古代の技術が敗れ去った時の為の、正真正銘の最終手段」

 杏利はエニマの声に、震えが生じているのを察知した。

「怖いの?」

「……ああ、恐ろしい。名前を話すのも、詳細を教えるのもはばかられる、この世で最も恐ろしい最強最悪の魔法。いくら追い詰められていたとはいえ、あんな魔法を生み出すとは正気を疑う。一歩間違えればこの世界を滅ぼしかねないというのに……」

「……なんかすごそうね……」

 エニマが怖れている。怖がっている。ここまで怖れるとは、一体どんな魔法なのだろうか。気になったが、杏利はエニマを配慮してこれ以上聞かない事にした。

「もういいわ。あんたがつらいなら、これ以上聞かない」

「すまんな。だが、名前を知らなければなるまい」

 エニマはもうこれ以上禁断魔法について話したくなどなかったが、勇気を振り絞り、名前だけでも杏利に教える。

「その魔法の名は、サタンルード」



 杏利達がパルトーネに向かう一日前。

 ペイルハーツのすぐ近くには、巨大な廃城があった。

 調べたところ、この城は千年以上前からこの地にあり、魔科学大戦とも何らかの関係を持っているらしいのだが、それ以上は何もなく、今は古代の遺物も全て調査の為に運び出された後。せいぜい肝試しとして使われる程度の、空っぽの城だ。

 とはいえ、なぜかモンスターが全く寄り付かず、安全が保障されている為、肝試しの体すら成してはいないのだが。

 その城の城壁の周りで、ひたすら魔法の練習に勤しんでいる少女がいた。

 彼女はアヤ。姉のキリエが魔王軍に連れ去られた時に何も出来なかった無力感から、毎日魔法の特訓をここでしている。

「早かったね、アヤ」

 遅れてチェルシーがやってきた。彼女は冒険者志望なので、いずれ様々なダンジョンに行った時に備えて毎日ここで特訓している。アヤにここでの特訓を勧めたのは、何を隠そう彼女なのだ。

「遅かったじゃない!」

「すまない。宿題を片付けるのに、少し手間取ってしまってね」

「珍しいわね、あんたが宿題で手間取るなんて。まぁいいわ。早速始めましょ!」

 ここからは、より実践的な特訓に入る。対戦形式の特訓だ。

 始まる魔法剣と魔力弾の応酬。

「うん。前より強くなってるよ」

「この程度じゃ全然駄目よ! この程度じゃ、ゼドさんにも杏利お姉ちゃんにも追い付けない!」

 魔法剣をかわしながら、チェルシーはアヤの上達を評価するが、アヤは全く満足していない。


 その時、


「すきありぃっ!」


 横から少女の声とともに一撃が飛んできて、アヤはそれを防いだ。防いだが、その小さな身体ではとても殺しきれない威力だった為、城壁に叩きつけられ、そのまま城壁をぶち抜いて城の中に飛び込んでしまった。

「えっへへ~、手応えあり!」

 笑うティナ。彼女とミーシャも特訓に参加しており、アヤは自分に隙があったらいつでも打ち込んでくるよう言っていたのだ。

「おや、マジカルシャフトが届いたみたいだね」

「うん! 新しいマジカルシャフトも、いい感じ♪」

 ティナのマジカルシャフトは、暴走したゼドに叩き斬られてしまった。しばらくは素手で特訓していたが、今日の昼間にやっと新しく注文したものが届いたのだ。

「お姉ちゃん……やりすぎ……」

 ミーシャがおずおずと注意する。いくら風化が進んで脆くなっていたとはいえ、城壁を一発で突き破るほどの勢いで相手を吹き飛ばす一撃など、どう考えてもやりすぎだ。

「平気でしょ。すぐ出てくるって」

 ティナはといえば、全く気にしておらず、すぐに出てくると思っていた。

 ところが、いつまで待ってもアヤが出てこない。

「……おーい!! アヤーっ!! さっさと出てきなさいよー!!」

 少し心配になったティナが、大声で呼び掛けても、返事がなかった。

「……死んでるんじゃないでしょうね?」

「死んではいないだろうさ。アヤも鍛えているから、せいぜい気絶だね」

 チェルシーは、恐らく気絶しているであろうアヤを起こしに、城の中に入っていった。ティナとミーシャも、それに続く。

「アヤ! 大丈夫かい!?」

 チェルシーが呼び掛けても、アヤは返事をしなかった。夜の城の中は真っ暗で、アヤがどこにいるのか、全然わからない。

 仕方なく、チェルシーはトラベルポーチからランプを取り出し、魔法で火を点けて、辺りをよく探してみる。

「……おかしい。アヤの姿がどこにもない」

「アヤーっ!! どこにいるのーっ!?」

「アヤちゃーん!!」

 なぜかアヤの姿が見当たらず、三人は探す。

「ここよここー!!」

 すると、どこからかアヤの声が聞こえてきた。三人がもっとよく探してみると、床の一部に大きな穴が空いている。それはちょうど、アヤが吹き飛ばされて叩きつけられたと思われる壁の真下だった。

 恐らく吹き飛ばされたアヤはすぐに戻ってこようとしたのだろうが、床が脆くなっていて崩れてしまい、落ちて戻れなくなったものと思われる。

「今行くわ!」

 ティナはマジカルシャフトを穴の底に向けて伸ばし、三人はそれを梯子代わりにして降りていった。

「アヤちゃん! 今治すね!」

 穴の底にたどり着き、ミーシャが真っ先にアヤを治療する。かなり高い場所から落ちたが、大事はなかったようだ。

「それにしても、この城にこんな場所があったとはね……」

 チェルシーは周囲を見回して呟く。彼女がこの城に入った回数は十や二十では利かないが、それでもこんな場所は初めて見た。もしかしたらここは、隠し部屋の類いかもしれない。

「お手柄だよ二人とも。せっかくだから、ちょっと調べさせてもらってもいいかな?」

「私はいいわよ」

「あたしも! なんか宝探しみたいで楽しいし!」

「私も……」

 冒険者見習いの血が騒いだチェルシーは三人に確認を取り、三人も協力して、この部屋を調べる事にした。

「チェルシーちゃん! 見て!」

 と、ミーシャが早速何か発見したらしい。

 ミーシャが見つけたのは、壁に刻まれた文だった。見た事のない文字で書かれていて、読む事が出来ない。

「これは古代文字だ」

 文を見たチェルシーは、それが今より遥か昔の文字で書かれている事を看破し、解読に入る。彼女は古代文字も勉強しているので、簡単な解読が出来るのだ。

「この部屋を見つけられた者が、心正しき者である事を願う」

 解読した文を読み上げるチェルシー。内容から察するに、やはりここは隠し部屋のようだ。

「私は竜帝ルカイザーが封印された場所と、封印を解く方法をここに遺しておく」

「竜帝ルカイザー!?」

 アヤは驚き、ティナとミーシャも息を飲む。竜帝ルカイザーといえば、教科書にも載っている、最強の魔科学兵器の名前だ。

「だがその前に、これだけはわかっていて欲しい。我々は決して、殺戮を行う為に、あれを造ったわけではないのだ。戦争を止めなければ、世界が滅んでしまう。その為だけに、仕方なく造ったものなのだ。本当なら今すぐ壊してしまうべきなのだろうが、あれは私の子供だ。葬り去るには、あまりにも忍びない。だから私はルカイザーを封印し、心正しき者が使いに来る事を願って、この書き置きを遺した」

 きっとこの文を書いた人間は、ルカイザーを造った国の研究者か何かなのだろう。

 ルカイザーは千年前の魔科学大戦でも、過剰戦力すぎると言われている兵器だ。しかし、これを書いた人間は過剰戦力であると知りながらも、捨てる事が出来ず、葛藤を重ねた後、封印するに留めたのだ。

 だから、封印の解き方を遺したこの場所に来る者が、虐殺などしない、自身の栄華の為だけにルカイザーを使ったりしない、心正しき者である事を願ったのである。

「ルカイザーは大いなる十字の重なる場所に封印してある。封印を解くには清らかな心を持つ、四人の乙女の祈りが必要だ。重ね重ね、これを見ている者が心正しき者である事を、私は切に切に願う」

 チェルシーはルカイザーが封印されている場所と、封印を解く方法、そして結びの文を読み上げ、言葉を切った。

 アヤは提案した。

「ねぇ、ルカイザーを復活させられたら、杏利お姉ちゃん達を助けられない?」

 最強の魔科学兵器、竜帝ルカイザーを復活させれば、それは杏利にとって大きな力になるはずだ。

「そうだね。少し危険だけど、杏利姉さんを助けるにはすごくいいアイディアだ」

「うん! あたし達でルカイザーを復活させて、杏利お姉ちゃん達を助けよう!」

「怖いけど、頑張る!」

 全員が同意し、ルカイザーの封印を解きに行く事になった。まずは、ルカイザーが封印されている場所がどこなのか、考える。

「大いなる十字の重なる場所って、どこかしら?」

 ティナは他の三人に尋ねる。数秒の思案の後、チェルシーが答えた。

「考えられる場所としては、マズエルの地上絵だね」

 マズエルの地上絵とは、ここから遥か南に行ったところにある、巨大な十字状の地上絵の事だ。十字の重なる場所とは、この地上絵の中心にあたる場所の事ではないかと、チェルシーは予想した。

「きっとそれよ! あとは、四人の清らかな心の乙女ね!」

 ティナは頷く。封印の場所がわかっても、封印を解く方法を用意しなければ意味がない。四人の乙女を探し出して、ルカイザーが封印されている場所に行くのだ。

「……」

「……ミーシャ。どうしたの?」

 ミーシャが自分達を、じっ、と見ているに気付いて、アヤが尋ねた。

「……一」

 ミーシャは、アヤを指差す。

「二」

 次にチェルシーを、

「三」

 その次にティナを指差し、

「四」

 最後に自分を指差した。

「……四人……」

 ミーシャは呟く。そうなのだ。ここにいる全員で、ちょうど四人なのである。ルカイザーの封印を解くのに必要な、清らかな心を持つ乙女と、同じ人数がいるのだ。

「……まさかそんな……」

 アヤは首を横に振る。こんなのは偶然だ。ありえないと。

「でも、今から乙女を四人探すのは、時間が掛かりすぎる。清らかの基準もわからない」

「そうよね……行って、みる?」

 チェルシーの言葉に同意し、ティナは残りの二人に聞く。アヤもミーシャも、頷いた。



 翌日。

「えっ? マズエルの地上絵に?」

 アヤ達はキリエに、マズエルの地上絵までの引率を頼んだ。四人のお小遣いでは飛空船の代金なんて払えないし、それに教科書の挿し絵で見ただけの、初めて行く場所だ。彼女達だけでは心もとない。

「いいわよ。でも飛空船五人乗りとなると、ちょっと高いから、馬車でいいかしら?」

 さすがのキリエも、五人分の飛空船往復代金を払えるだけの余裕はない。馬車だと最低でも五日はかかる距離だが、今は夏休みなので、学生組み四人とも、時間の余裕はある。

「それでいいわ! とにかく、マズエルの地上絵に連れていって欲しいの!」

「わかったわかった。そんなに必死にならなくても、可愛い妹の頼みなら聞いてあげるわよ」

 こうして、五人はマズエルの地上絵に行く事になった。

 ちなみに、竜帝ルカイザーの事については、キリエ以外の誰にも話してはいない。書き置きを書いた人物との約束を、守りたかったから。

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