第六十四話 邪悪の襲撃
前回までのあらすじ
ゼド超リア充。
「見れば見るほど、デカイ国だな。まぁ、それでこそ潰しがいがあるってもんだが」
ヒノト国から少し離れた場所。
ウルベロをリーダーとする超魔達は、先行してこれから攻め落とす場所を下見していた。
「ウルベロ様。お言葉ですが」
と、バズラムがウルベロに質問する。
「こんな真っ昼間から仕掛けるんですか? 夜仕掛けた方がいいのでは……」
確かにバズラムの言う通り、定石としては守りが手薄になる夜を狙うべきだ。
しかしウルベロは、警備が一番厚い、昼間に攻撃を仕掛けると言うのである。
「バカ。お前らの力をテストするのが目的なのに、夜に仕掛けてどうすんだよ。相手が全力の状態でいるところを叩き潰してこそ、ロイヤルサーバンツに相応しいんだ」
「……なるほど。それもそうですな」
「心配しなくても、あれだけの数の造魔兵がいるんだ。負けやしねぇさ」
ウルベロは入念な準備を重ね、二万体もの造魔兵を量産した。例えこの三人に充分な実力がなくとも、これだけの数がいれば確実に圧殺出来る。
「ま、造魔兵どもが奴らを潰す前に、お前らが終わらせるって思ってるけどな。期待してるぜ?」
「はっ!」
「必ずウルベロ様の、そしてイノーザ様の期待にお応えしてみせます」
「お任せ下さい」
この任務で力を認めてもらえば、晴れてロイヤルサーバンツに入隊出来るので、三人とも気合いが入っている。
「ああ。よろしく頼む」
ウルベロはにこやかに返す。
(せいぜい頑張りな。お前ら全員ここで切り捨てるけど)
心中では嘲笑っていたが。
「さて、下見はこんなもんでいいだろ。そろそろ仕掛けるぜ」
ウルベロは片手を天高く掲げ、城で待機している造魔兵達を呼び出した。
「殿!! 殿!! 大変でございます!!」
クニミツの前に、一人の侍が駆けつけた。
「何事か」
「魔王軍です!! 魔王軍が攻めてきました!!」
「何!?」
「それも恐ろしい数です!! 軽く見積もっても一万は超えているかと……!!」
「!!」
これまでも、ヒノト国が魔王軍に攻め込まれる事態は、何度かあった。だが、一万以上などという大軍勢を相手にした事はない。
「ふん。連中、いよいよ本気になったらしいな。直ちに迎撃を始めよ!」
「は、ははっ!」
敵は多いが、やるべき事は変わらない。
「正義の先駆けヒノト国。貴様ら邪悪の軍勢などには、断じて落とされんぞ!!」
そう言って、クニミツは自身の刀を手に取った。
洪水のように、ヒノト国に向かっていく造魔兵達。
その軍勢のあちこちが、爆発で吹き飛ばされている。
「すげぇ威力だな。あれがヒノト国特別製の、桜砲か」
ウルベロは感嘆した。
ヒノト国には、六枚桜の力で威力を増した弾を、さらに加護を受けた大砲で発射する、桜砲という兵器がある。当たれば陸戦型造魔兵すらバリアの上から一撃で吹き飛ばす、超威力の兵器だ。
「だが時間の問題だな。あと少しでこっちの兵隊が入り口にたどり着く」
しかし、さすがに数が多すぎて、造魔兵を止めきれない。まもなく造魔兵達は、ヒノト国の入り口にたどり着くだろう。
「造魔兵が中に入り込んだら、混乱に乗じて城に入る」
「「「は」」」
城の中は強敵だらけだろう。しかし、だからこそ三人の実力を試すにはうってつけだ。
「そろそろだな」
造魔兵が何十体か入り込んだのを確認したウルベロは、三人とともに、城へと侵入した。
「まさか魔王軍が攻めてくるとはね……」
「いきなりじゃったな。しかし、わしらがいる時でよかったのう」
杏利とエニマは、向かってくる造魔兵を次々と倒していく。
魔王軍の大軍勢に、ヒノト国の兵士達は奮闘したが、やはり数の差は覆せず、城門は突破されてしまった。今は攻め込んでくる造魔兵を、迎撃しているところである。
「ま、今のところ造魔兵だけだし、これならすぐ返り討ちに出来そうだけどね」
「杏利、それは……」
「わかってるわかってる。敵の大将を誘き寄せる為にわざと言ったから」
強敵登場のフラグを立てる杏利。
すると、何かが杏利に向かって飛び掛かってきた。
杏利はエニマを振るい、それを弾き飛ばす。
それは、シャーズだった。シャーズは双剣を抜き、再び杏利に襲い掛かる。
「ほぉら、おいでなさった!」
迎え撃つ杏利。
シャーズはかなり素早い。床や壁や天井を跳ね回り、あらゆる角度から襲い掛かってくる上、武器が双剣なのもあって、手数も多かった。
だからと言って大人しく封殺されてやるほど、杏利は弱くもないし優しくもない。
「見切った!」
シャーズの攻撃を全て防ぎきり、両手を振り下ろしてきたところを見計らってエニマの柄で跳ね上げ、みぞおちに蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ!?」
苦しみながら吹き飛ぶシャーズ。
「スパレイズ!!」
追い打ちに、杏利はスパレイズを唱えた。巨大な雷が、光を放ちながらシャーズに命中する。
「はい命中。さて、どうかしら?」
相手は超魔だが、もう杏利は超魔を簡単に倒せるくらいに強くなっている。今は、超魔にどの程度のダメージを与えたかで、自分の強さを計っているのだ。
しかし、煙の中から現れたシャーズは、無傷だった。
最初は全身黒焦げになっているのかと思ったが、よく見ると肌が紫色になっているだけだったのだ。
この現象は、前にも見ている。
「あんた、ロイヤルサーバンツ!?」
これはロイヤルサーバンツのヴィガルダ、ラトーナ、ウルベロの三人の戦闘形態と、非常によく似ていた。
「ロイヤルサーバンツ候補の一人、シャーズ。お前、一之瀬杏利だな? お前を倒して、ロイヤルサーバンツに昇格してもらう」
「なるほど、候補ね。っていうか無傷って……軽くショック受けたんだけど」
ロイヤルサーバンツに近い存在だというのなら、杏利の魔法に耐えられるのも、頷けるというものだ。
しかし、本当にそれだけだろうかと、エニマは思う。
(杏利の上級魔法は、まともに喰らえばゼドでさえダメージを受けるほどじゃ。なのに、無傷じゃと?)
付け加えさせてもらえば、杏利はゼドにダメージを与えた時より強くなっている。ダメージを抑えるくらいならわかるが、それでも無傷というのはあり得ない。
(何か嫌な予感がする。保険をかけておくか)
「アタックガード!!」
このまま戦い続けているとまずいと感じたエニマは、アタックガードを唱えて杏利の防御力を上げる。
その直後、シャーズの姿が消えた。
「あぐっ! あああっ!」
それから、杏利が悲鳴を上げて倒れた。消えたと思ったシャーズが、杏利の背後に現れており、背中を斬ったのだ。
しかし、服が少し切れた程度に留まっており、すぐ立ち上がる。危ないところだった。もしエニマが違和感に気付いてアタックガードを唱えてくれなければ、乙女の柔肌に大きな十字傷が刻み付けられていたところだ。
「私は時間を操れる。時間を止めて、背後に回り込んで斬った」
「……へぇ、そういう事……」
シャーズがネタばらしをしてくれたおかげで、杏利はシャーズがスパレイズに無傷で耐えた理由にも気付いた。
自分の表皮に流れる時間を一瞬止めたのだ。時間が流れなければ、何も起きない。時が止まった表皮には、傷付いたという時間が流れないのだ。シャーズは時間停止という無敵の鎧で、杏利の魔法を防いだのである。
「私が出来るのは止めるだけじゃない」
シャーズはそう言って、剣を片方杏利に向けた。すると、アタックガードが解除されたではないか。
いや、解除されたのではない。アタックガードの時間が巻き戻され、かけられる前の状態に戻ってしまったのだ。
(……これヤバいんじゃない?)
杏利も、能力バトル系の漫画はよく読む。時間操作系の能力は、数ある能力の中でも反則級の能力の一つだ。杏利は今、その能力の使い手と戦っているのである。
(さすが、ロイヤルサーバンツの候補者ね。ぶっちゃけ他のロイヤルサーバンツよりこいつの方が強いと思うけど)
自分はこの強敵に勝てるのか、杏利は少し不安だった。
「はっ!」
サクヤは掌底を造魔兵のみぞおちに叩き込む。造魔兵は大きく吹き飛んで、後ろにいた五体の造魔兵を巻き込んで爆発四散した。
シンガとリュウマ達も、次々と造魔兵を倒していく。
今、クニミツが六枚桜へ祈りを捧げに行っているのだ。六枚桜はテンノウイン家の者が祈りを捧げる事で、自分のみならず国民全員に加護を与える。
銃による攻撃にも耐えられる六枚桜の加護だ。それさえあれば、魔王軍がどんな兵器を使おうとも真正面から戦える。
それもあって、まだヒノト国側には一人も死者が出ていない。
「さすがはヒノト国の姫とその従者。造魔兵程度では相手にもならないな」
だが、それは戦局を一変する力を持つ相手が、まだ戦っていないからでもあった。バズラムの登場だ。
「超魔!?」
「ロイヤルサーバンツ候補のバズラムだ。貴様の首をイノーザ様に謙譲し、新たなロイヤルサーバンツに加えて頂く!」
雑魚など眼中にない。バズラムの目的は、サクヤの首だ。魔王軍にとって厄介の種であるヒノト国の姫を殺し、イノーザに報告すれば、ロイヤルサーバンツへの昇格は揺るぎないものとなるだろう。
「貴様!!」
「姫に触れる事は許さんぞ!!」
先手を打って、先に攻撃を仕掛けるシンガとリュウマ。
「邪魔だ!!」
しかしバズラムが片手を向けると、二人は吹き飛んでしまった。
「シンガ!! リュウマ!!」
「付き人の心配などしている場合か!?」
バズラムはサクヤにも片手を向ける。向けられた瞬間、サクヤの全身が、まるで超重量の鎖を巻き付けられているかのように重くなった。
「身体が、重い……!!」
「これが俺の重力操作だ! 重力の向きを変えれば!!」
「あっ!!」
「アカガネ!!」
背後からバズラムに斬りかかろうとしていたアカガネだったが、バズラムがもう片方の手を向けた瞬間、吹き飛ばされた。
「アカガネ! ちっ! 邪魔くせぇ!」
シキジョウも加勢に行きたかったが、造魔兵が多すぎて近付けない。
「さて、このまま押し潰してやるか!!」
バズラムはサクヤにかけている重力を強めた。
銃弾を超える速度で氷のエーテルブレードが数本飛び、数十の造魔兵を貫通、切り裂いていく。
「弱すぎる。話にならん」
ゼド本人も、一瞬で十体の造魔兵を斬り伏せる。
人海戦術など、この男に対して何の意味もない。ゼドは既に、魔法使い数十万人規模の魔力を身に付けているのだ。彼を消耗戦で倒そうと思えば、何日もぶっ続けで戦わせなければならない。たかだか二万程度の造魔兵では、それは不可能だ。
「では、私のお相手をして頂けますか?」
そんなゼドの前に現れたのは、カチュアだった。
「私はロイヤルサーバンツ候補の超魔、カチュアと申します。造魔兵よりはあなたを楽しませられると、自負しておりますよ」
そう言いながら、カチュアは片手をかざす。すると、カチュアの手の中に刀が現れた。
「同じだと思うがな」
二本の火のエーテルブレードを飛ばし、爆発させ、周囲の造魔兵を全滅させてから、ゼドはカチュアに斬り掛かった。
まず、胴を斬りつける。これは防がれた。しかし一度防がれた程度では止まらず、二撃、三撃、四撃と、目にも留まらぬ速度で斬りつけ続ける。
一方カチュアは、それを全て防ぐと、一度後退し、再び斬り掛かってきた。
「!」
そこでゼドは気付く。カチュアは先程、ゼドが打ち込んだのと全く同じ角度、速度、数の攻撃を打ち込んできたのだ。
「私の能力は複写。一度見た攻撃や武器、体感した能力や技を、完璧にコピーする事が出来ます。倒せばもっと詳細にコピー出来るのですが、あなたの太刀筋は見切りました」
カチュアはゼドの攻撃を受ける事でその太刀筋をコピーし、見切ったのだ。
「先程からあなたの戦いをずっと見ていましたから、こんな事も出来ますわ」
そう言いながら、カチュアは氷のエーテルブレードと、火のエーテルブレードを作って飛ばす。
ゼドは刀に闇を纏わせ、エーテルブレードを破壊した。
「スパレイズ!! ウイエルガ!!」
だがカチュアの攻撃はまだ終わらず、今度は魔法まで使ってきた。
ここに攻撃する準備が予想以上に掛かった為、カチュアは一人外に出て様々な敵と戦い、魔法や技をコピーしたのだ。
「私はコピーした技を無消耗で使えます。このまま攻撃を続ければ、いかに並外れた力の持ち主といえど……」
さらに魔法を使い続けるカチュア。ゼドは刀で防ぎ続けているが、無消耗のカチュアと多少であっても消耗するゼドでは、どちらが有利か火を見るより明らかだ。
ゼドもそれはわかっているようで、再度カチュアに接近戦を仕掛ける。
「無駄ですよ」
迎え撃つカチュア。
二人は激しく打ち合うが、同じ太刀筋であるがゆえに決着はつかない。
(ですが、私にはあなたの太刀筋を見切っているというアドバンテージがあります)
その為、どこで反撃すればいいかもわかる。あと数撃打ち合わせ、隙が出来たところを見計らって、そこをカチュア自身の腕で仕掛ければいい。
(ここだ! ここをしのげば――)
遂に、ゼドの太刀筋の弱点が見えた。この攻撃を防げば、少しだけ硬直時間が発生する。そこを攻撃すれば……
そう思った瞬間、カチュアは胴を斬られた。
「ぎゃああああああああああ!!」
悲鳴を上げて崩れ落ちるカチュア。今の攻撃を防げば、ゼドに隙が出来るはずだった。だが、防げなかった。それは、途中でゼドの太刀筋が変わったからだ。
「どうして……私はあなたの太刀筋を、完全に見切ったはず……!!」
「敵の技は盗め。それが武術の基本だ。だが俺の家には、お前のような盗人を殺す為に、幻露剣という技が組み込まれている」
幻露剣とは、あらかじめいくつもの太刀筋を編み出し、それをいつでも切り換えられるようにしておく技だ。敵にわざと自分の太刀筋を見切らせ、完全に慣れさせたところで、いきなり別の太刀筋を繰り出して敵を殺る。
「やはり変わらなかったな。俺は退屈なままだ」
「……ふ、ふふふ。まさか私の力がこの程度だと思ってらっしゃいますか?」
カチュアのコピー戦法を出し抜いてみせたゼド。だが、カチュアはまだ、自分の本領を発揮していないのだという。
「見せて差し上げますわ。この私の本気を」
立ち上がったカチュアは、両手を広げる。
「コピードールズ!!」
その瞬間、カチュアの周囲に、魔法使いや戦士など、様々な人間が現れた。
「これが私の複写能力の第二段階、コピードールズですわ。今まで私がコピーした相手を模倣した、コピードールを作り出す」
カチュアの周囲に現れた者達は、自分が能力をコピーし、そして倒した者達の姿をした、人形だ。
「あらゆる能力をコピーし、それでいて万軍に匹敵する戦力を持つ、私こそが最強!! 私こそが新しいロイヤルサーバンツとして、相応しい超魔なのですわ!!」
確かに、コピーするだけでも恐ろしい能力だが、コピーした相手そのものを作り出すなど、反則としか言いようがない。
「……下らんな」
だが、そんな力を目にしてなお、ゼドの反応は冷ややかなものだった。
「その顔を苦痛に歪ませて差し上げますわ。行きなさいコピードールズ!!」
カチュアは人形達に命令し、ゼドに突撃させた。
そして二分後に全滅した。
「ば、馬鹿な……!!」
カチュアがコピーした相手は、皆この世界でもかなりの使い手だった。人形の数も、三十を超えていた。
それなのに、ゼドはそれらを容易く全滅させた。
「もう終わりか。大して強くもないくせに、よく俺に挑もうなどと思ったものだ」
「……ち、ちくしょぉぉぉぉぉぉぉふざけやがってぇぇぇぇぇぇ!!」
ゼドの反応を崩す事が出来ず、カチュアは逆上した。そして、その黒い本性を現した。
「こうなったら最後の手段だ!! スーパーコピー!!」
カチュアが叫ぶと、カチュアの全身から光が放たれ、ゼドに命中。かと思ったら、ゼドに吸い込まれた光が飛び出し、カチュアの中に戻った。
それからカチュアが両手をかざすと、もう一人のゼドが現れる。
「また人形か」
「こいつはただの人形じゃねぇ!! 私は一日に一回限りだが、まだ倒していない相手の全能力をコピーする事が出来るのさ!! 自分自身と殺し合え!!」
今までの人形と同じ命令を受け、オリジナルゼドを殺そうと動き出す人形ゼド。
二人の戦いは互角だった。力も技も、全てが拮抗している。互いが互いの手の内を知り尽くしているがゆえに、決着はつかない。
だが、このままでは確実にゼドが負ける。何せ戦っているのは人形で、カチュア自身は全く動いていないのだ。相討ちとなってもカチュアは死なず、カチュアの一人勝ちとなる。
「ふざけるなよ。俺の憎悪が、貴様ごときに模倣出来るものか!!」
ゼドの攻撃が激しくなった。だが、人形ゼドはゼドの全てをコピーしている。オリジナルに対抗するべく、こちらもペースアップした。
「何をしようと無駄だ!! お前は自分の分身と殺し合って、死ぬんだよ!!」
カチュアの言う通り、このまま戦い続ければ相討ちだ。
しかし徐々に、徐々にではあるが、オリジナルが人形を上回り始めた。
「どうした!? なぜ負けている!? お前はそいつの全てをコピーしているんだぞ!?」
わけがわからず狼狽するカチュア。人形は、本当にゼドの能力全てをコピーしている。相討ちならわかるが、負ける理由はない。
しかしカチュアは気付いていなかった。
彼女が作る人形は、能力こそ模倣出来るが、人格や感情までは模倣出来ない。それらはカチュアに依存している。
いくら能力や技をコピーしようと、そこに中身が伴わなければ、ただの真似だ。ゼドは憎しみ一筋にここまで強くなった。その憎悪が、ゼドの力をさらに強めている。
感情のある剣とない剣ではどちらが強いか、それは自明だった。人形ゼドはオリジナルの刀で、ズタズタに斬殺されたのだ。
「そんな……私の力が通じないなんて……!!」
カチュアは震えていた。無敵だと思っていた自分の力が全く通じない相手が現れて、恐怖しているのだ。
そこへ、拍手が聞こえてきた。
「いいねいいねいいねぇ! 最高だよお前!」
聞き覚えのある声。まさかと思ってゼドが見てみると、そこにはウルベロがいた。
「ウルベロ……!?」
忘れるはずがない。見間違えるはずがない。ずっとずっと追い求めていた相手が、目の前にいたのだ。
「ウルベロ様!!」
カチュアはウルベロに駆け寄ってすがり付く。
「この男は強すぎます!! 私には無理です!!」
「だろうな。だから出てきたんだよ」
ウルベロはずっと、三人のロイヤルサーバンツ候補の戦いぶりを見て、審査していた。危なくなったら助けると、約束も取り付けている。
「心配すんな。こいつは俺が相手してやるよ」
そう言ったウルベロを見て、心から安堵するカチュア。
その直後、ウルベロはカチュアを突き飛ばし、
「けどお前は用済みだ」
オルトロスで斬りつけた。
「……えっ?」
カチュアは間抜けな声を上げて、息絶える。
「お前の能力は俺にとって危険だからな。始末させてもらったぜ。おっと!」
ウルベロはカチュアの死にも全く動揺せずに斬り掛かってきたゼドの刀を、オルトロスで止めた。
「ちょっと落ち着けよ。もう少しだけ話させてくれって」
それから、ゼドを跳ね返す。着地したゼドは、憎悪をみなぎらせながらウルベロに尋ねた。
「俺を覚えているか?」
「もちろん。しかし、いい具合に仕上がったぜ。あのコピー能力を、真正面から俺への憎悪で破るとはな」
カチュアの能力は、ウルベロから見ても非常に厄介な能力である。だからこそ、ゼドの実力を計るにはちょうどよかった。そしてゼドは、カチュアのコピー能力を己の力と技、そして憎悪のみで打ち破ってみせたのである。
「絆だの愛だの友情だの連携だのに頼ってるやつはダメだ。やっぱり、お前みたいに自分の力だけに頼ってるやつの方がいい」
「言いたい事はそれだけか。俺はもう、貴様とこれ以上話す事はない」
話す言葉などない。ゼドがウルベロに対して持ち合わせている感情は、憎悪のみだ。今にも爆発しそうな憎悪を、ぶつけたくて仕方なかった。
「その首、斬り落としてやる!!」
かつてこの男が姉にしたのと、同じ最期を遂げさせる。ゼドはウルベロに刀を向けた。
「お前は俺に勝てねぇよ」
そんなゼドを見て、ウルベロは不敵に笑った。




