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レジェンドガール  作者: 井村六郎
第五章 光の勇者
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第五十九話 暴帝再び

前回までのあらすじ



教団組、再登場!!

「アレクトラ様。第一防衛ラインが突破されました」

 ノアギガントの調整を行っていたアレクトラに、造魔兵が報告した。

「ほう。かなりの大部隊を展開するように頼んでおいたはずだが、思いのほか早く突破されたな。造魔兵が弱いのか、頼んでおいた数を展開してくれなかったのかわからないが、使えんやつらだ」

 辛辣な言葉を吐くアレクトラ。

「まぁいい。防衛ラインはまだあと二つある。それまでには、ノアギガントの調整も終わるさ」

 戦力にはまだ余裕がある。そう言ってアレクトラは、ノアギガントの調整を再開した。

「アレクトラ様。高い魔力を持つ者を連れてきました」

 すると、今度は別の造魔兵達が、一人の女性を連れてきた。

「おお、よくやったな。これでノアギガントの調整も終わる」

 喜ぶアレクトラ。ノアギガントの調整はほぼ終わっており、あと一つ要素があれば完成していたのだ。

「私をどうするつもり?」

 高い魔力を持つ女性、キリエはアレクトラに訊いた。

「なぁに。この私が世界の王として立つ為の、名誉ある生け贄になってもらうだけさ」

 アレクトラは笑って答えた。



 聖馬車に乗り、クマイトに向けて進む杏利達。

「今日はここで休みましょう」

 半日ほど進み、時刻は夜。クマイトまでは、まだまだかかる。戦った造魔兵も、あれで全てとは思えない。ロージットの提案で次の戦いに備え、休む事にした。



 夜が明けて、出発。だが二時間ほど走ったところで、また聖馬車が急停止した。理由は言わずもがな、新たな魔王軍だ。

「ったく、どんだけいんのよ……!」

「杏利様!」

 再び戦おうとする杏利を、マリーナが押さえつけた。

「杏利様の心想は、我々にとっての切り札です。私達が戦いますから、今は体力を温存して下さい」

 確かに、この先まだどれだけ魔王軍が控えているかわからない。その上、アレクトラとも戦わなければならないのだ。

 先日の戦いでその技術力の全てを奪われたはずだが、アレクトラ自身が残っていれば、まだいくらでも再起は出来る。魔王と手を組んでいるので、むしろさらに厄介になっているかもしれない。

 アレクトラとの戦いでは、間違いなく杏利の心想が切り札になる。だから、今いたずらに杏利を疲弊させるのは得策ではない。

「さぁ、行きますよ!」

「「はい!!」」

 マリーナとジェイクは応え、ロージットと共に魔王軍に向かっていく。

「大丈夫かしら?」

「問題ないじゃろう。あやつらも伊達に聖職者を名乗っておるわけではない」

 杏利は少し心配になったが、エニマはそこまで心配してはいないようだった。彼女もこの世界における聖職者が、どういう人間かを見ているのだ。それと今まで倒してきた造魔兵の力を、照らし合わせただけである。

「一度下げます」

 今回の魔王軍は、軍用ヘリと戦車を引き連れていた。なので、ここに馬車を置いたままだと危ない。戦いに巻き込まれないよう、リュートは馬車を下げた。

「大波となりて薙ぎ払え!! ビルツジライガ!!!」

 まず先に仕掛けたのはジェイク。セイヴァークロスを介して、ビルツジライガを唱える。だがただの光線ではなく、拡散する波となって、多くの造魔兵を消し去った。

「光の戦輪(シャイニング・リッパー)!!」

 ロージットは聖輪型となった光導の書に光の魔力を流してから投げる。すると、光導の書を中心に巨大な光のリングが出現し、光導の書ブーメランのように飛んで、全てのヘリを真っ二つにして墜落させた。その後リングが消えて、光導の書はロージットの手に収まる。

「セイクリッドラッシュ!!!」

 戦車の砲撃をかわし、マシンガンの弾幕をすり抜け、次々に敵を殴り倒していくマリーナ。しかし、彼女の拳は戦車の装甲に阻まれた。

(硬い! この武器は、一体!?)

 鋼鉄の装甲を持ち、岩をも一撃で吹き飛ばす戦車という兵器は、やはりこの世界に存在しない兵器だった。だからマリーナは、戦車を知らない。

(でも……!!)

 だが知らないなら知らないで、特に問題はない。なぜなら、こういう頑丈な相手への対処方法を、彼女は心得ていたからだ。

「セイクリッドラッシュ!!!」

 さっきよりも力を込めて、戦車にラッシュを繰り出す。しかし今回は、一ヵ所を集中して。魔力で強化された拳を一点に、何度も叩き込まれた戦車の装甲は粉砕された。

「ギルビライツ!!」

 空いた穴に向けてギルビライツを放り込まれ、戦車は内側から弾け飛ぶ。



 ロージット達の圧倒的な力によって、魔王軍は全滅した。

「すごい……」

「言ったじゃろ? 伊達に聖職者を名乗っておる連中ではないと」

 杏利は心配していたが、エニマの言った通り何の心配もいらなかった。ロージット達の力は、彼女の予想を遥かに越えていたのだ。

「終わりました」

「すごいですねロージットさん……二人も……」

「師匠からたくさん仕込まれましたからね」

「はっきり言って、師匠に修行をつけてもらう方が大変でしたよ」

 あれだけの数の造魔兵を相手にするより大変な修行はどんなものなのか、杏利はとても気になった。大して疲れているようにも見えないし、ぶっちゃけこの三人がいれば戦争が出来る。

「では、先を急ぎましょうか」

 これで道は開けた。ロージットの命でリュートは再び聖馬車を走らせ、一行はクマイト跡地へと向かう。



 同じ展開なので省略させてもらったが、またしても造魔兵の軍団が杏利達の行く手を阻み、再びロージット達が撃破した。

「まさか、第三陣まであるとは思いませんでした」

「ええ。ですが、問題のクマイトまであと少しです。とはいえ、油断は出来ませんが」

 ロージットの予想では、クマイトにはもっとたくさんの造魔兵が駐屯している。今まで以上に、激しい戦いになるだろう。杏利は持っていた回復アイテムを三人に渡し、クマイトに着くまでの僅かな間に、少しでも休憩しておくように言う。

「助かりますが、杏利様はよろしいので?」

「大丈夫です。あたしには心想がありますし、エニマがついていてくれますから」

 回復も行える杏利の心想。それに、エニマという心強い味方がいる。杏利がエニマの頭を撫でてやると、エニマは嬉しそうに目を閉じた。

「信じ合っておられるのですね。誰かが誰かを信じられる。これほど素晴らしい事はありません」

 ロージットは両親がライズン教団の信徒であり、生まれると同時に入信させられ、幼少期から教団の役に立つ為、厳しい修行を積んできた。苦しいとは思わなかった。なぜなら、クリアレスは常に世界を安定させなければならず、自分で解決すべき事を滅多に実行出来ないと両親から聞かされていたからだ。

 ライズン教団は、クリアレスの意思を代行する者達である。その一人として選ばれた事は、ロージットの誉れだった。

 マリーナとジェイクは元々孤児院の出であり、ロージットが引き取った。二人とも熱心にクリアレスに祈りを捧げており、また互いを強く信じていたから、ロージットは二人を選んだのだ。

「信じるという事。その素晴らしさを、元の世界に戻られても忘れないで下さいね?」

 ロージットは杏利に言った。



「到着しました!」

 聖馬車が停まり、リュートがクマイトに着いたと告げる。急いで降りる杏利達。だが杏利達は、最初そこがクマイトであるとわからなかった。

 何もなかったからだ。町などどこにもなく、代わりに巨大なクレーターが、一つ、存在するのみ。

 だが、そのクレーターだけでわかる。ここには確かに町があり、そしてそれが壊滅させられたのだと。

「……ひどいわね……死体一つ見つからないわ。ここまで徹底してやる?」

「やるじゃろうな。あの男なら」

 アレクトラがこんな事をした理由なら、大体の検討はつく。

「邪魔だった、というところかの」

 エニマの言葉に、杏利は頷く。ノアを失ったアレクトラは、ここに何かをしに戻ってきたのだ。しかし戻ってきてみれば町が出来ていたので、邪魔だったから消し去った。それが二人の予想だ。

「しかし、妙ですね」

「道中あれだけの造魔兵がいたのに、ここには一体もいないとは……」

 本当に何もない。マリーナとジェイクが見る限り、人間も、動物も、造魔兵の姿さえ見えない。本来なら、大量の造魔兵を集めて、守りを固めておくべき場所のはずなのに、肝心の造魔兵が一体もいないのだ。罠が張られている様子もない。

「とにかく調べてみましょう。造魔兵に守らせていたからには、何か必ず理由があるはずです」

 ロージットの言う通り、意味もなくあれだけの造魔兵を配置していたはずがない。あれらは間違いなく、ここを守る為の防衛ラインなのだ。


 だが、彼らがクマイトを調べようとした時、地響きが起き始めた。


「何!?」

 驚く杏利。間もなくして、クレーターの中心が横にスライドするようにして開き、穴の中から百メートルを越える巨大なロボットが出てきた。

「な、何よあれ!? ロボット!?」

 再び驚く杏利。

「ふはははは、素晴らしい反応だ。私の最高傑作、ノアギガントの威容を気に入ってくれたようだな」

 続いて、ロボットからスピーカーで拡張された声が聞こえてきた。

「この声は……!!」

「ああ。忘れたくても忘れられないわよ、こんな嫌味ったらしい声!」

 エニマも杏利も、この声には聞き覚えがある。

「おや、見覚えのあるゴミがいるな? あの時の槍使いか」

「アレクトラ!! あんたやっぱり生きてたのね!!?」

 声の主、アレクトラも杏利とエニマの存在に気付いた。

「さすがに死んだと思ったがな。だが、魔王軍が協力してくれたのだ。そのおかげで私は、千年ぶりにこのノアギガントを完成させる事が出来た」

 ノアギガントの頭の部分がスライドし、そこからアレクトラが競り上がってきた。その姿は、この前出会った時と全く変わっていない。

「ま、まさか、あれが恐怖の暴帝アレクトラ!?」

「忌むべき帝王が、本当に生きていたとは……!!」

 マリーナもジェイクも、アレクトラの姿を見て驚いている。

「えらい言われようね、アレクトラ」

「ふん、何とでも言うがいい。すぐノアギガントの力で貴様らを処刑してやる」

「あの魔科学兵器を完成させる為に、このような真似をしたのか。だがあいにくだな! 今回も貴様の野望が成就する事はない!」

 エニマはアレクトラの所業に怒りを覚えたが、杏利もエニマも強くなったし、心強い味方もいる。今回も自分達が勝つと確信していた。

「これを見てもそんな事が言えるか?」

 アレクトラは不敵に笑い、片手をかざす。すると、ノアギガントの胸の中心にある黄色い宝玉が光り、中から人間が出てきたではないか。

「「キリエ!!」」

 それを見て、杏利とエニマは驚愕する。宝玉の中から出てきたのは、キリエだったのだ。彼女は両手と両足を、光るリングで拘束されて、空中に浮かんでいる。

「杏利!! エニマ!!」

 気絶していたキリエだったが、自分を呼ぶ声で目を覚まし、二人の名を呼ぶ。

「おや、知り合いだったかな?」

「あんた、キリエに何をしたの!?」

「ふふふ。このノアギガントの動力はな、生きた人間の魔力なのだ。敵国の人間を盾に使う為に、私がそう設計したのよ!! どうだ!! これで私を攻撃出来まい!!」

 確かに、これではノアギガントを攻撃出来ない。うかつに破壊すれば、キリエも巻き込んでしまう。

「……ちょっと待って。アレクトラ!! あんたキリエをどうやって手に入れたのよ!!?」

 ここで杏利は気付く。キリエはペイルハーツにいたはず。それがどうして、ここにいるのだろうかと。

「魔王軍に頼んだのだ。高い魔力を持つ人間を連れてくるようにな」

 その話が本当なのだとしたら、ペイルハーツは魔王軍の襲撃を受けた事になる。アヤは? チェルシーは? ティナは? ミーシャは? 彼女達はどうなったのだ?

「杏利様!」

 最悪の光景を脳裏に浮かべていた時、ロージットの声を聞いて自分を取り戻した。

「あなたと彼女にどのような繋がりがあるかは存じません。しかし、今は目の前の暴帝を討ち倒す事が先決です」

「でも、このまま戦ったらキリエが……」

「必ず手はあります! 諦めてはいけません!」

 そうだ。その通りだ。今はキリエを救出しながらアレクトラを倒し、ノアギガントを破壊しなければならない。アヤ達の生死は、その後で確かめに行けばいいのだ。

「杏利!! 私に構わないでこいつを倒して!!」

「黙っていろ。動力の分際で、魔力を供給する以外の作業をするな」

 アレクトラが手を下げると、キリエは宝玉の中に引きずり込まれ、消えた。

「お前達には未来などない。だが私の輝かしい未来は、お前達の屍の先に広がっているのだ!!」

 アレクトラの姿が、ノアギガントの内部へと消える。

「さぁノアギガント!! 攻撃開始だ!!」

 アレクトラがそう叫びながら、ノアギガントを操作する。すると、宝玉の両脇と、両足のハッチが開き、中から大量のミサイルが飛び出してきた。

「バニドライグ!!」

 慌ててバニドライグを唱え、ミサイルを迎撃する杏利。だが予想以上に数が多く、全てを撃ち落とす事は出来ない。

「神の光よ。聖なる流星となれ!! ギルライツ!!」

 それを見ていたジェイクが、セイヴァークロスを介してギルビライツを唱える。放たれたギルビライツは無数の魔力弾となって拡散し、ミサイルを全て撃ち落とした。

「ほう……だが、ノアギガントの武装はまだまだこんなものではないぞ!!」

 再度ノアギガントを操作するアレクトラ。すると、空になったミサイルが再装填されて発射され、目からも光線を発射してきた。

「まずは足を止めます!! 行きますよ、マリーナ!! ジェイク!!」

「「はい!!」」

 駆け出すロージット、マリーナ、ジェイク。

「あたし達も、行くわよ!!」

「うむ!!」

 杏利もエニマを手に、ノアギガントに突撃していった。

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