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レジェンドガール  作者: 井村六郎
第三章 猛襲、ロイヤルサーバンツ!
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第二十七話 情熱の女、ラトーナ

前回までのあらすじ


砂漠を横断する杏利とエニマ。立ち寄った廃城で、二人はゼドと再会した。

「あいつ、超魔!?」

 突然の超魔の襲来。杏利とエニマは驚き、ゼドは無言で睨み付ける。

「初めまして、女勇者さん。私はラトーナ。あなたの事はウルベロから聞いたわ」

 名乗るラトーナ。ゼドは彼女の口から飛び出した、ウルベロの名前に反応した。

「お前はウルベロがどこにいるか知っているのか!!」

「知らないわ。あいつまたどっか行っちゃったんだもん。知ってても教えないけどね。あいつの事は嫌いだけど、さすがに私は仲間を売るような女じゃないから」

「ならお前の主の居場所を吐け!!」

「それも教えな~い。そんな事したら、イノーザ様に怒られちゃうもん」

 ゼドの質問には、一切答えないラトーナ。今度は杏利が質問した。

「どうやらあたしを捜してたみたいだけど、何しに来たの? まぁ、言わなくてもだいたい想像出来るけど」

「うふふふふ♪ イノーザ様に逆らう女勇者様を~、ブチ殺しに来ちゃいましたぁ~♪」

 ああ、やっぱり。と杏利は思う。魔王の手下が勇者を捜しに来る理由など、一つしかない。

「それにしても、こんな砂漠の真ん中まであたしを捜しに来るなんて、ご苦労な事ね。そんなにあたしを殺したかった?」

「もっちろん! 私達の障害を排除したらぁ~、イノーザ様いっぱい褒めてくれるから!」

「……ずいぶんとまぁイノーザの事が好きなのね。どうやら魔王様は相当いい男で女ったらしみたい」

 ラトーナの口調に苛立ちを感じながら、杏利は皮肉のつもりで言った。

 しかし、次の瞬間に衝撃を受ける事になる。


「イノーザ様は女だよ」


「……は?」


 ラトーナが言った事を理解するのに、二秒掛かった。


「……えっ?」


 そこからさらに深いところまで理解するのに、また二秒掛かった。

(え、つまりこのラトーナっていう超魔、アレなの?)

 今までの反応から見るに、間違いなくラトーナはアレだ。

(こいつもかッ!! こいつエニマと同じ性癖の持ち主なのかッ!!)

「ど、どうした杏利!?」

 杏利は両手を地面に着いて、ラトーナに出会った不幸を嘆き、エニマは驚いて、ゼドは無表情で杏利を見る。

「心配しなくていいよ~。私が全てを捧げる相手は、イノーザ様だけだから♪」

 らしい。というかガチの百合なら、杏利を殺そうとはしない。とりあえず、杏利が貞操を心配する必要はなくなった。

「じゃあ、確か杏利ちゃんだっけ? 殺してあげるから、カモ~ン♪」

 わざとやっているのかわからないが、非常にウザい挑発をするラトーナ。

「……いいわ。やってあげる」

 杏利はそれに乗り、戦う事にした。

「ゼドはそこで見てて。エニマ! 行くわよ!」

「うむ!」

 ゼドをその場に待たせて、槍化したエニマを持ち、杏利は戦いへと向かう。彼女の姿を、ゼドは無言で見送っていた。



「おいでおいで!」

 さらに挑発するラトーナ。

「はぁっ!!」

 斬りつける杏利。それを避けるエニマ。ラトーナの可愛らし容姿も相まって、まるで蝶と戦っているかのような錯覚を覚える。

「ふっ! はっ! たっ! やっ!」

 ラトーナは杏利に素早く接近し、顔面を狙っての四段蹴りを放つ。

(速いけど、ウルベロほどじゃないわね)

 それをかわす杏利。

「やぁっ!」

 ラトーナは間髪入れずに回し蹴りを繰り出すが、杏利は飛び退いてかわした。

(見えるわ。こいつの動きが)

 ウルベロほど速くはない。充分見切れるレベルだ。

「エニマ。あたし、あいつの動きが見えるわ」

 自分が強くなっている実感を覚え、エニマに語りかける杏利。


「わしも見えたぞ。黄色じゃった」


 杏利はエニマの言葉を理解するのに少しかかり、理解した瞬間にエニマを地面に叩きつけた。


「ぱんちらっ!!」


 その後、エニマを拾い上げて詰め寄る。

「ど・こ・見てんのよあんたは!! 動きの話してるんでしょうが!!」

「いやすまん。つい出来心で……」

「なにが出来心だこの変態槍!!」

 謝るエニマに、杏利は激怒し罵倒する。

「えっ、もしかしたら見ちゃった? いや~ん! エニマちゃんのヘンタ~イ♪」

 自分が蹴りを放った瞬間にパンツを見られたのだとわかったラトーナは恥ずかしそうに、しかしどこか嬉しそうにスカートを押さえ、くねくねと身体をくねらせていた。

「……何をやっているんだあいつらは……」

 呟くゼド。まともなのは彼だけである。

「変態さんにはお仕置き~♪」

 攻撃を再開するラトーナ。杏利とエニマは喧嘩をやめて、ラトーナの攻撃をさける。杏利も攻撃していくが、当たらない。

「やるじゃない。やっぱり他の超魔とは違うってわけね」

「当たり前でしょ? 私はイノーザ様に選ばれた精鋭の超魔、ロイヤルサーバンツの一人。それにいつも、イノーザ様からお力を頂いてるの。口移しでね♪」

「あんたも充分変態だっての!!」

 最後の一言を聞いた瞬間寒気がした。ラトーナは本当に、マジもんのガチレズである。

「イノーザ様は私の全てだけど~、杏利ちゃんも結構タイプだよ~? 可愛い顔してるし~」

 さらに寒気がした。どうやら気に入られているらしい。

 一刻も早くこの女を消し去らなければならない。そう思って繰り出した杏利の突きをかわしたラトーナは、

「だから……」

 杏利に接近して両肩を掴み、

「杏利ちゃんにも熱いベーゼをプレゼント♪」

 もっともっと寒気がする事を言った。

 だが、ラトーナは口付けをしてこない。その代わりに口が、いや、口の中が光り始める。続いて感じる、尋常ではない熱波。これは危険だと感じた杏利は、エニマを押し付け、ラトーナを薙ぎ倒す。

 それと同時に、ラトーナの口から閃光が放たれた。閃光は城の一部を貫通し、当たった部分は赤く溶けている。

 熱光線だ。熱いベーゼ(物理)である。

「杏利ちゃんひど~い。私のベーゼを受け取ってくれないんだ~」

 ゆっくりと起き上がるラトーナを見て、杏利は飛び退く。冗談ではない。あんな熱光線を喰らったら、マジックマントがあっても即死してしまう。放つ前の余波さえ防ぎきれていなかったのが、その証拠だ。

「そんなひどい子には、本気出しちゃおうかな」

 ラトーナの皮膚が黒くなり、衣装が濃い紫を基調とする毒々しい色に変わって、手元にギザギザの刃が付いた短剣が出現する。

 ウルベロと同じ現象だ。今のところこの現象が確認されているのは二人だけで、他の超魔にはなかった。ラトーナもウルベロも、特別な超魔なのかもしれない。

「こうなっちゃったら、さっきほど優しくないよ?」

 一気に速度が上がり、ラトーナが突っ込んでくる。短剣はリーチが短いが、懐に飛び込めば一方的な攻撃が可能だ。杏利は防御に切り替え、ラトーナの攻撃を防ぐ事に努める。

「あははっ!」

 と、突然ラトーナが離れ、片手を振った。すると無数の火球が出現し、杏利に向かって飛んでくる。

「くっ!」

 エニマでは防ぎきれない。杏利は片手でマントを掴むと、回転しながら翻し、全ての火球を弾き返した。さすがマジックマント。この程度の炎なら余裕で防げる。

「私の能力は熱量操作」

 ラトーナの周囲に無数の火球と、火柱が上がった。ただでさえ暑い砂漠の気温がさらに上がり、ラトーナの姿が陽炎で揺らめいている。

「私の、イノーザ様への熱ぅ~い情熱。たっぷりと味わいなさい!!」

「!!」

 次の瞬間、火球が飛び掛かり、火柱が蛇のようにうねって、杏利に襲い掛かった。

(ふざけた女だが、実力は本物か……)

 ゼドは杏利の戦いから、ラトーナの戦闘力を分析している。

 熱量の操作。耳に聞けば単純な能力だが、容易に大破壊を引き起こし、単体との戦闘も、複数人との戦闘もこなせる、危険な能力だ。先程の熱光線も、直撃していればこの城を一瞬で融解・蒸発・霧散させられるだけの威力がある。

(あの女も確かに腕を上げているが、勝てるかどうかはわからんな)

 杏利の戦闘力は、この前ゼドと戦った時よりも遥かに強く、その成長力は目覚ましい。しかし、ラトーナもまた超魔としては、一線を画する実力者だ。力の差は、拮抗している。

「はぁぁぁっ!!」

 襲ってくる火球と火柱を、エニマとマントで防ぎながら、反撃の隙を探る杏利。

「炎には水よ!! アクロディア!!!」

 杏利は水流を放つ。水属性の上級魔法だ。

「ふっ!」

 だが、ラトーナが目に力を入れると、彼女の前に超高熱の炎の壁が出現し、水流を蒸発、相殺してしまった。

「アクロディア!!!」

「無駄よ!!」

 再度アクロディアを唱える杏利。また同じように相殺するラトーナ。

 しかし、杏利は水流を放ちながら接近していた。それに気付けず反応が遅れたラトーナは、

「スキルアップ!!!」

 さらに能力を高めた杏利に、腹を斬りつけられた。


 だがその瞬間、ラトーナの姿が消えた。


「お見通しよ~ん♪」

 背後から聞こえるラトーナの声。振り向いた杏利は、さっき斬ったはずのラトーナの存在を確認し、飛び掛かろうとするが、足が地面から離れない。

「!?」

 見ると、足元に氷の床が出来ており、杏利の足は氷付けにかれて張り付けられていた。地面は砂だが、かなりの範囲が凍らされており、足を上げる事は出来ない。

「熱量を操るって言ったでしょ? 熱量を増やせば炎が出せるし、熱を減らせば氷が出せる。私が出せるのが炎だけだって思った?」

 騙された。ラトーナは熱量を操れる為、炎も操れるし、氷も操れるのだ。

「これが私の能力、マクスウェルよ。あとさっきのは、このオベロンの能力」

 言いながら、ラトーナは自分の短剣を杏利に見せる。

「オベロンは私の分身を作る事が出来る。こんなに簡単に捕まえられるなんて、杏利ちゃんって意外と単純?」

「この……バカにして……!!」

 激怒した杏利は、魔法を唱えようとする。

「おっと!」

 だがそれより早く、ラトーナが火球を飛ばした。杏利はエニマでそれを弾いたが、タイミングをずらされてしまった。それからも無数の火球が杏利の周囲に出現し、四方八方から攻め立てる。間違って杏利の拘束を解かないよう、上半身を狙って。

 その間に、ラトーナは自身の能力で、オベロンの刀身に火を点けた。火は炎となり、長く伸びて刃となる。エニマよりも長く、反撃しようにも火球の攻撃が激しすぎて手が回らない。

「私の勝ちね。バーンカッター!!!」

 炎の刃を振り下ろすラトーナ。


 しかしそれより早く、観戦に徹していたゼドが動き、ラトーナの背中を居合いで斬りつけた。


「ぎゃああああああああああッ!!!」

 けたたましい悲鳴を上げて倒れるラトーナ。その拍子に火が点いたオベロンを落とし、火が周囲の氷を解凍して、杏利は拘束から逃れる事が出来た。

「ゼド!!」

 反射的にゼドのそばまで駆け寄る杏利。

「ここまでだ。お前はこの女に勝てない。ここからは俺がやる」

「でも、あんた魔力が!」

「いいハンデだ」

 ゼドの魔力はあまり多くない。だが、彼にとってはいいハンデ、らしい。

「……このクソが!! 私は野郎なんてどうでもいいんだよ!!」

 ゼドに対して激昂するラトーナ。どちらかというとゼドに斬られたからというよりは、男に攻撃されたという事実が許せないといった感じだ。

「お前がウルベロの居場所を吐かない以上、お前には俺が奴と戦う前の肩慣らしになってもらう」

「ふざけるな!! このクソ野郎ォォォォォォォ!!!」

 怒りのラトーナは跳躍し、空を飛ぶ。そこからオベロンの力を使い、数十もの分身を作り出してゼドと杏利を包囲する。

 オベロンで作れる分身の数は、最大で三百人。その上ラトーナ自身の戦闘力も高いので、いかなる相手も容易く圧殺出来る。

「蒸し焼きにしてやる!!」

 数十人のラトーナの周囲に、大量の火球が出現する。小さいが、上級火属性魔法と同等の熱量だ。あんな火球を連発されたら、ひとたまりもない。しかも、この中からたった一人の本体を見つけ出さなければ、何度でも分身を展開されてしまう。


「……なら、まとめて片付ける」


 次の瞬間、ゼドと杏利を守るように、無数の青い西洋剣が出現した。ただの剣ではなく、魔力の剣だ。

「こ、これは、エーテルブレードか!!」

「エーテルブレード!? 何それ!?」

「魔力を凝縮して剣を作り出す、魔法剣の奥義じゃ!!」

 エニマが驚きながら説明する。

 魔法剣士は、剣に魔力を込めて攻撃する。魔力に属性を付ければ、燃える剣や稲妻が迸る剣など、魔法効果と斬撃を合わせた攻撃を放つ事が出来る。

 しかし、そのさらに先の技術として、自身で魔力の剣を作るという技が存在する。

 その剣は空中に配置する事で飛び道具として使え、魔力を凝縮して作る為、普通に魔法を放つ以上の威力を持つ。魔力によっては、物質の剣を超える強度と切れ味を持つ剣を作る事も出来る。それが魔法剣の奥義、エーテルブレードだ。

 エーテルブレードもまた属性を持たせる事が出来、属性によって色が変わる。今ゼドが作ったのは、水属性のエーテルブレードだ。

「……死ね!!」

 火球を一斉に飛ばすラトーナ。それに合わせて、ゼドはエーテルブレードを飛ばす。エーテルブレードは火球を貫通し、ラトーナ達に突き刺さる。ゼドはエーテルブレードを、マシンガンのように矢継ぎ早に精製し、射出を続け、どんどんラトーナを刺していく。回避する者がいれば、それが本物だ。

「くっ!」

 一体が動いた。ゼドはそれを見逃さずに跳躍し、刀で斬りつけ地面に叩きつける。

「すごい……」

「うむ……」

 杏利とエニマは、ゼドの戦いぶりに圧倒されていた。

 特にエニマが驚いている。それもそのはず。エーテルブレードの体得には、最低でも十年以上の歳月を必要とするのだ。見たところ、ゼドの年齢は杏利とさほど変わらない。あの歳でエーテルブレードを完成させるなど、エニマの目から見ても異常だった。

「貴様ァ……!!」

 ラトーナは着地したゼドを睨み付ける。ゼドは再びエーテルブレードを二本精製し、射出した。

「もう効かない!!」

 ラトーナは炎の壁を作り、エーテルブレードを相殺する。

「ゼドのエーテルブレードでも貫けないなんて……!!」

 杏利は戦慄する。しかし、ゼドは落ち着いていた。

「そうだったな。お前はそれが出来たんだった。なら、これはどうだ?」

 再度エーテルブレードを、今度は一本作るゼド。しかし、そのエーテルブレードは、深い青だった。

「二つの属性を融合させたのか!!」

 エニマは見抜く。ゼドは、水属性と氷属性の二つを融合させたエーテルブレードを作ったのだ。属性の融合は、魔法を使う者全員にとっての高等技術である。それをゼドは、まるで呼吸をするかのように容易く、素早く、自然にやってみせた。

 ゼドは融合エーテルブレードを放つ。ラトーナはまた炎の壁を作るが、氷は水の温度を下げる。極低温の水剣は炎の壁を貫き、

「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 ラトーナの腹に突き刺さった。

「ゆ、許さない……許さない……!!」

 ラトーナは自分の腹に刺さったエーテルブレードを引き抜く。

「このままじゃ済まさない……絶対に!!」

 ラトーナはオベロンを消して両手を広げ、それから前に向けた。

「マクスウェルボンバァァァァァァ!!!」

 右手から超高温の炎が、左手から極低温の氷が飛び出し、地面を這いながらゼドに向かって進んでくる。

「黒龍咆哮!!!」

 対するゼドは、刀に闇属性の魔力を宿して腰溜めに構え、刺突を繰り出しながら解放した。強烈な破壊の闇が一直線に飛んでいき、炎と氷を吹き飛ばす。

 だがゼドの技、黒龍咆哮はラトーナに当たらなかった。どうやらマクスウェルボンバーは、目眩ましの為に放った技だったようだ。ラトーナはもう、そこにいなかった。

「逃げたか……」

 そう言った直後、ゼドは片膝を地面に着く。

「ゼド!!」

「大丈夫か!?」

 杏利は駆け寄り、エニマもまた人化して駆け寄る。

「……魔力切れだ」

 ゼドは魔力切れを起こしていた。エーテルブレードを連発するやら、黒龍咆哮などという大技を使うやら、本当に魔力が少ないのかと不安になっていたが、やはり魔力を使いきるつもりで戦っていたのだ。

「……エニマ、手伝って」

「うむ」

 杏利とエニマはゼドに肩を貸し、城に向かって歩いていく。

「何をしている……?」

「あんたはあたしにとって目標なのよ。倒れてもらっちゃ困るわ」

 ゼドは強い。その強さに、杏利は一種の憧れを抱いている。だから、助ける。

「……今なら俺に勝てるぞ」

 ゼドは杏利に言う。魔力を使い尽くした今の自分になら、杏利は勝てると。

「やらないのか? 俺にやられて頭にきているんだろう?」

「弱ってるあんたに勝ったって、意味ないじゃない。あんたが倒さなきゃいけない魔王軍の一人なら、話は別だけど」

 頭にきていないと言えば、嘘になる。だが、恩を感じてもいるのだ。負けを知らなかった自分に敗北を教え、さらに強くなりたいという意思を与えてくれたゼドに。



 魔王城。

「どうしたラトーナ!! ぼろぼろじゃないか!!」

 戻ってきたラトーナを見て、イノーザは驚いた。

「ぐすっ……イノーザ様ぁぁぁん……」

 ラトーナはべそをかきながら、イノーザに抱き着いた。

「女勇者と一緒にいた、ゼドって野郎に辱しめを受けましたぁぁ~。屈辱ですぅ~。慰めて下さぁ~い」

「よしよし……」

 イノーザはラトーナの頭を撫でて、慰める。

(……これで例の女勇者と接触していないのは、俺だけか)

 ラトーナを見ながら、ヴィガルダは思った。

(近々会いに行った方がいいかもしれんな……)

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