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レジェンドガール  作者: 井村六郎
第二章 運命の出会い
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第二十三話 勇者と宣教師達

前回までのあらすじ


張り込みの結果、教会の神父が魔王軍と結託し、怪事件を引き起こしていたという事が発覚した。裏切り者!裏切り者!


本性を現した神父と、魔王軍との激突が始まる!




…まぁ、いつものパターンなんですけどね。あーあ、かったりぃ~。自分で書いている事とはいえ、ワンパターンで飽きてきたな。もっとどでかい敗北でもさせるか…。

「悪いがジマロ。あいつは任せるぜ」

「心得ました。キシュナ様も私の功績について、イノーザ様によろしくお願いします」

「……ああ、わかってるよ。いつも通りイノーザ様にお伝えしておく」

 ジマロにキシュナと呼ばれた超魔は、モンスター化したギロチンに飛び乗る。ギロチンは跳躍し、天井をぶち抜いて外に飛び出していった。

「すごいパワーじゃな……」

「待ちなさい!!」

 キシュナを追いかけようとする杏利。

「待つのはお前だ!!」

 それを阻止しようジマロは杏利に銃口を向け、引き金を引く。そこにロージットが割り込んで、光導の書のバリアで防いだ。

「彼の相手は私がします。杏利様とエニマ様、ジェイクはあの超魔を止めて下さい!!」

「「はい!!」」

「うむ!!」

 杏利とエニマはキシュナを追って、階段を引き返す。

「死ね!! 死ね!!」

 五発、ベレッタM92を撃つジマロ。しかし、そのことごとくが、光導の書のバリアに防がれてしまった。

「神は慈悲深く、されど邪悪の徒には容赦をしない。故に己を崇める者に力と、敵を討ち滅ぼす機会を与える。これは神の使徒の最高の栄誉なり」

 光導の書は書と呼ばれているように本で、中にはライズン教団の教えと退魔の法が記されており、詠唱する事によって様々な効果を発揮する。また、この光導の書は変化する。今ロージットが唱えたのは、光導の書の力とロージットの力を倍増させる効果を持つ退魔法だ。

 第一形態は聖書型。光導の書の初期形態であり、この状態で持ち歩く。パラディンの称号を持つ者が、力を使う決意をする事で起動し、この形態の時は敵からの攻撃に対して自動でバリアを張り、あらゆる攻撃を防ぐ。

 ちなみにパラディン以外が起動呪文を唱えても、光導の書は力を発揮しない。強力なリミッターが掛けてあって、パラディンにしかそれを解除出来ないのだ。解除出来たとしてもパワーが強すぎて、並みの聖職者にはこの退魔兵装を制御出来ない。最強の聖職者であるパラディンだからこそ、使いこなす事が出来るのだ。

「断罪の戦輪は使徒の意のままに空を飛び、神に敵対する者の首を速やかにはねる」

 詠唱中もバリアが保護してくれる為、安全は保証されている。

 ロージットの詠唱を阻止しようと、残弾を全く考えずに撃ち続けていたジマロのベレッタM92は、弾切れを起こす。ちょうどそのタイミングで、光導の書が一瞬発光し、ノコギリのような刃を持つ巨大な輪に姿を変えた。

 光導の書、聖輪型。上記の部分を読み上げるか、暗唱すると、この形態になる。このまま振り回して切りつける事も出来るが、本当の使い方は、

「はっ!」

 投擲。ロージットは取手を持ち、光導の書をジマロ目掛けて投げつける。すると、光導の書は空中で回転しながら、光の魔力を纏って飛んでいき、ベレッタM92を切断した。切り口は赤熱、溶断されている。

 戻ってきた光導の書を受け止めるロージット。攻撃したのは、ベレッタM92だけだ。聖輪型の光導の書は、飛ぶ軌道を自由に操る事が出来る。武器だけを破壊させてもらった。

「あなたにはまだ聞かねばならない事があります」

「見くびるな!!」

 無力化した、と思いきや、ジマロはもう一挺、ベレッタM92を取り出した。ジマロがイノーザからもらっていた拳銃は、二挺あったのだ。

「!!」

 発射される弾丸を避け、光導の書で弾く。聖書型なら自動でバリアを展開してくれるが、それ以外の形態では展開してくれない。その為、聖書型以外を使う時が、ロージットの弱点である。弱点を打ち消す為、次の詠唱を始めた。

「神が与えたまいし鎧は、災いを跳ね返す守りと、邪悪を粉砕する力をもたらす」

 銃撃に晒されながらも、淀みなく詠唱を終えるロージット。光導の書は白い鎧へと変化し、ロージットの全身を包み込んだ。

 第三形態、聖鎧型。ブラックオリハルコンの次に頑丈と言われる、ホワイトミスリルという金属で作られた鎧に変化し、使用者の肉体を保護しつつ、身体能力を強化する。特にライズン教団が使用するホワイトミスリルは、祝福を受けているので邪悪な存在に対して特に効果を発揮する。

「くっ!!」

 撃ち続けるジマロ。ロージットは銃弾を受けても構わず駆け抜け、ベレッタM92を掴むと奪い取り、握り潰した。ジマロは慌てて離れるが、ロージットは特に追いかけるような動きをしない。

「あなたが求めた力などこの程度です。信仰心に勝る力はないと、理解出来ましたか?」

「……ギルライツ!!」

 逆上したジマロはロージットに向けて、光弾を放つ。ジライツの上位に位置する、中級光属性魔法だ。しかし、光導の書の鎧には傷一つ付けられず、それでもどうにかロージットを打倒しようと、ギルライツを使い続ける。

「何が信仰心だ!! パラディンのお前にはわかるまい!! 力にも、財力にも、幸運にも恵まれたお前には!!」

 ロージットは裕福な家庭に生まれ、天才的な戦闘センスを持ち、何かと運が良かった。この世界で生きる為に必要なあらゆる要因に恵まれているロージットが、ジマロは羨ましくて、妬ましかった。

「……やはりあなたは理解していないようですね」

「何!?」

「今の私があるのは、信仰あってのものなのです。私の両親がライズン教団の神、クリアレス様を信仰し続けていたからこそ、私は神に愛されし者として生まれる事が出来ました」

 ロージットの両親もまた、熱心なライズン教団の団員達である。彼らのおかげで今自分は全てに恵まれていると、ロージットは信じている。

「もちろん私も信仰を続けました。パラディンの称号は、決して容易に手に出来ない。それはあなたも知っているはずです」

 ライズン教団の団員であるなら、パラディンの称号の獲得の難しさは全員心得ている。ロージットも血の滲むような努力と布教活動の果てに、ようやく獲得出来たのだ。

「それらは全て、信仰心あっての事。あなたも信仰心を捨てなければ、素晴らしい神父になれたはずなのに……」

「黙れ!! 黙れ黙れだぁぁまれぇぇぇぇぇ!!!」

 ひたすら魔法を撃ち続けるジマロ。しかし、ジマロの魔力が尽きるほど攻撃しても、ロージットにはダメージを与えられなかった。ロージットは聖鎧を解いて聖書に戻し、ジマロに尋ねる。

「あなたが銃を受け取る時、魔王イノーザに会ったはずです。イノーザの居場所を教えなさい!」

 ライズン教団も、イノーザの居城の場所を把握出来ていない。ジマロに聞きたい事とは、その居城の場所だ。

「……私がお会いしたのは、イノーザ様の影だけだ。銃はキシュナ様を通して頂いただけで、イノーザ様本人にはお会いしていない……」

 その答えを聞いて、ロージットは光導の書のあるページを開いた。審判の章。相手の発言に、虚偽があるかどうかを見抜く為の項目だ。真実ならば左のページが青く光り、嘘をついていれば右のページが赤く光る。今回は、左のページが青く光った。嘘はついていない。

「……魔王に仕える事をやめ、再び神を崇める気はありますか?」

 ジマロがやった事は背信行為だ。しかし自分が犯した罪を悔やみ、改めるつもりがあるのなら、ライズン教団では機会が与えられる。戻ってくるつもりはないか、ロージットは尋ねた。もし断るなら、この場でジマロを殺さねばならない。

「戻るものか……私はもう、口だけの貴様らなどには従わん!!」

 ジマロは拒否した。自分がやった事を、罪だと思っていない。ナイフを取り出して、襲い掛かってきた。

「神が生み出した八つの子らは、刃となりて使徒に従う」

 ロージットはそれをかわして詠唱。光導の書は八つの刃に変化して飛び交い、ナイフを破壊する。

 第四形態、聖刃型。八つの刃に変化させて操り、光線を発射して攻撃も出来る、完全遠距離兵器。

 光導の書が、ジマロの周囲を飛び回る。ただ遠距離攻撃をするだけが、聖刃型ではない。ロージットの魔法を強化する役目もあるのだ。囲うように動き、ジマロの行動を制限しながら、ロージットの魔法の威力を上げる、力場を作り出す。

「裁きの聖光(ジャンジ・ホーリィ)!!!」

 発動したのは、ロージットのオリジナル魔法。空から聖なる光の柱を落とし、対象を消滅させる魔法だ。

「ぐわあああああああああああああ!!!」

 断末魔を上げて消えるジマロ。神を、教団を、そしてこの世界を裏切った背信者は、今ここに裁かれた。

「神罰、執行完了」

 神の代わりに裁きを下したパラディンは、己の武器を聖書に戻し、そのページを閉じた。



 ロージットがジマロと戦っていた頃。

「さぁ、暴れろアニマ!! この街を破壊し尽くせ!!」

 キシュナは自分が作ったモンスターに、アニマと名付けている。ギロチン型のアニマは咆哮を上げ、まずは今しがた自分がいた教会を破壊しようと突進する。

「はぁっ!!」

 だが、横から飛んできた何者かの蹴りを受けてアニマは吹き飛び、キシュナは転げ落ちた。

「ぐっ……な、何だ!?」

 頭を振り、何が起きたのかを確認するキシュナ。

 そこにいたのは、先程女性を逃がしたマリーナだった。マリーナは修道服を掴むと、勢い良く脱ぎ捨てる。その下には、半袖に短パンの、動きやすい服装があった。

 マリーナはモンクだ。術よりも格闘を得意とする、僧侶とは別ベクトルの聖職者である。

「マリーナさん!!」

「マリーナ!!」

 そこへ、杏利とジェイクも駆けつけてきた。

「大丈夫ですか!?」

「はい。あの女性には避難して頂きました」

 どうやらマリーナは、無事女性を避難させる事に成功したようだ。

「ちぃ……だったらこいつでどうだ!!」

 キシュナが片手を上げた瞬間、キシュナとアニマの周囲に、数十人の造魔兵が出現した。

「いつでもこの街を襲えるように、こいつらを待機させてたのさ!! 行け!!」

 キシュナは造魔兵達に命令を下し、一斉に突撃させる。

「超魔の相手は私がします」

「では、僕が造魔兵の相手を!」

「じゃあギロチンのバケモノは、あたしが!」

 マリーナはキシュナに向かい、ジェイクが十字架を出し、杏利がアニマと戦う。

「畜生がっ!!」

 剣はロージットとジェイクの同時攻撃で弾き飛ばされているので、キシュナも素手だ。

「やぁぁぁぁっ!!」

 マリーナはキシュナの拳をかわして、逆に拳の連打を胸板とみぞおちに叩き込む。普通の造魔兵ならこれで終わっているが、キシュナはまだ倒れない。

「がはっ!!」

師匠せんせいからの叩き上げを舐めないで」

 マリーナは右拳に光属性の魔力を込め、

「セイントナックル!!!」

「ごぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 キシュナを殴り飛ばした。魔法剣士と同じく、魔力による簡易的な能力の強化は、モンクの基本技術だ。それに、最強の聖職者であるロージットから、直々に鍛えてもらっている。弱いわけがない。キシュナは素手での戦いに慣れていなかったようで、マリーナはキシュナを早々に戦闘不能にした。

「神の光よ。あまねく地上に降り注ぎたまえ!」

 ジェイクは造魔兵の攻撃をかわしてながら唱え、十字架を放り投げる。

「ギルジライツ!!!」

 投げた十字架に向けてギルジライツを唱えると、光弾が十字架にぶつかって反射、拡散し、雨のように造魔兵達に降り注いで倒した。これもただの十字架ではなく、ライズン教団の退魔兵装、セイヴァークロスである。ライズン教団の中でも、それなりに実力と地位がある者が使う事を許される兵装で、光属性の魔力を増幅する効果があり、熟練者はこういう使い方も出来る。

「はぁぁぁぁっ!!」

 最後に杏利。エニマを構えて突撃し、アニマもまた突撃してくる。互いの力は互角で、どっちもはね飛ばされた。

 と、アニマのギロチンの両側に、鎖で繋がった二枚の小さなギロチンが出現し、アニマはまず右のギロチンを伸ばしてきた。それをかわす杏利。しかしアニマは、間髪入れずに左のギロチンを伸ばして、鎖で杏利を締め上げた。硬い。太い。加護を使っても、杏利は鎖を引きちぎる事が出来ない。そこに再び突撃してくるアニマ。

「スキルアップ!!」

 だが、杏利もただでやられはしない。ヒンベルから教わった、身体能力を引き上げる能力を使い、パワーアップした腕力で強引に鎖を引きちぎった。

「うぇりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 そのまま飛び掛かり、エニマを振り下ろして、アニマを脳天から両断する。直後に真横から斬りつけ、アニマは完全に沈黙した。

「お、俺のアニマが……こんなにあっさり……!!」

 一ヶ月もの時間を掛けて育ててきた可愛いペットがあっさり倒され、キシュナは震えている。

「あなたの主人、魔王イノーザはどこ?」

「答えろ! 魔王の手先め!」

 キシュナの前に立ち、イノーザの居場所を聞き出そうと、マリーナは拳を、ジェイクはセイヴァークロスを向ける。

「……誰が喋るか……この下等種族ども……!!」

 だが次の瞬間、キシュナは二人を罵倒した後、爆発した。自爆。勝てないとわかって、情報を漏らさないよう、自爆したのだ。

「……結局わからずじまいか……」

 杏利は警戒を解いた。



「先程は、お恥ずかしいところをお見せしました」

 杏利達と合流したロージットは、造魔兵達の死体を裁きの聖光で消滅させてから、杏利に詫びた。

 実はこのところ、世界中の宗教団体から、魔王に付く離反者が出始めているという。ライズン教団も例外ではなく、ロージットが粛清した背信者も、これが初めてではないそうだ。

「我々の不始末は、我々が解決すべき事。それを勇者様に手伝って頂くとは、お恥ずかしい限りです……」

 ロージット達には、内部粛清の役も与えられている。魔王軍は強いので、確かな実力を持つパラディンの彼が選ばれる事は、納得出来るのだが、やはり過激だ。

「魔法の件ですが、今夜はもう遅いので、明日にしませんか?」

「……そうですね。あたしも疲れましたし」

 ロージットの提案で、魔法の修練は明日という事になり、今夜は解散という事になる。



 宿で、杏利は呟いた。

「魔王って、一体何なのかしらね」

「何じゃ急に」

「今回あの神父が使ってた銃。あれがどうにも気になってね……」

 ジマロ神父が、イノーザからもらったと言っていた拳銃、ベレッタM92。なぜあんなものを、イノーザは持っていたのだろうか。

 杏利はこの世界の銃を見ていない。しかし、遠距離攻撃の主要兵器が大砲なのだ。ならば、それほど性能がいい銃は造られていないはずである。よくてライフルや、初期のリボルバーといったところか。にも関わらず、ベレッタM92。明らかに、文明のバランスが取れていない。

 ロージットから聞いた話によると、イノーザが現れて世界に宣戦布告したのは、五年前。それまでイノーザの名前は、風の噂程度にも聞いた事がなかったという。

(魔王イノーザ……一体何者なの? ……まさか……)

 杏利の中に、一つの仮説が立とうとしていた。



「イノーザ様」

 魔王城。イノーザの前に膝を付き、報告に現れたヴィガルダ。

「戻ったか。それで、どうだった?」

「は。この世界の人間達は、順調に力を高めつつあります。造魔兵達も、少々戦闘が厳しいようです。の(・)では」

 最後の一言を聞いて、イノーザはニヤリと笑った。

「ほう、そうか。ようやくだな」

 そして、決断する。

「造魔兵の生産ペースをレベル3から4に。武装レベルも2から4に引き上げろ」

「生産ペースは承りましたが、武装レベルをそこまで上げるのですか?」

 ヴィガルダは異を唱える。せっかくこの世界が滅んでしまわない程度の攻撃をしているのに、こちらの攻め手を一段飛ばしで強化して、本当に大丈夫なのかと。

「問題あるまい。連中には魔法という力があるし、こちらとしては早く文明レベルを上げてやりたい。少し時間を掛けすぎたからな」

「かしこまりました」

 イノーザの決定は覆らない。主の言葉を信じ、ヴィガルダは玉座の間を後にした。

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