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レジェンドガール  作者: 井村六郎
第二章 運命の出会い
21/89

第二十話 杏利vsゼド

前回までのあらすじ


三人目の主人公キターーーーー!!!

 剣士、ゼド・エグザリオン。満月で最強状態となっているパープルガーディアンを、杏利とエニマが全く敵わなかった相手をいとも容易く倒してしまう、化け物染みた実力の持ち主。杏利とエニマはゼドとともに、月光の迷宮を脱出した。

「おお! お帰りなさい!」

「すごい! 本当に戻ってきた!」

 若者二人は、杏利達が戻ってきたのを見て、感激している。満月の夜に月光の迷宮に突入して、戻ってきた者を見たのが相当嬉しかったのだろう。

「これ、取ってきたわ」

 杏利とゼドは、パープルクリスタルが詰まったトラベルポーチを、村長に渡す。

「ありがとうございます。これで皆も助かります」

「それにしても、一体いつからこんなダンジョンがあったのかしらね?」

 いつ出来たダンジョンなのか、誰がどうやって見つけたのか、全くわからない不思議なダンジョン、月光の迷宮。

「村でもよくわかってはいません。ですが可能性があるとすれば、千年前に起こったとい大戦が原因でしょう」

 村長の話だと、今から千年前。魔科学の全盛期と呼べる時代に、とても大きな戦争があったのだそうだ。

 魔科学世界大戦。世界中のあらゆる国が、どの国の魔科学が最も優れているか決めるという馬鹿げた理由で引き起こした、最大最悪と呼べる大戦争だ。魔科学で作られた数々の兵器をぶつけ合い、たくさんの人間が死に、多くの文明が滅んだ。空間に異常を引き起こす魔科学兵器もあったそうで、月光の迷宮はそれが原因で誕生したダンジョンだと言われている。

「昔話はこれくらいにしておきましょう。ヒンベルさんと村人達が待っています」

 古代に起きた戦争も気になるが、今は死にかけている村人達を救う事が先決だ。パルフキュアーを完成させる為、一同は鏡をずらして月光の迷宮を閉じ、ヒンベルの家に向かった。



 ヒンベルの家に着いた一同は、採掘してきたパープルクリスタルをヒンベルに渡し、ヒンベルは大至急パープルクリスタルから魔力を抜き取って薬に込め、パルフキュアーは完成。まだ解毒が終わっていない人達に飲ませ、村を襲ったバイオラの脅威はようやく消え去った。

「ところでどうじゃった? 初めて潜ったAランクダンジョンの感想は」

「……軽はずみな気持ちで入っちゃいけない場所だって事はよーくわかったわ」

 エニマから月光の迷宮に突入した感想を聞かれ、杏利は苦い顔をしながら答える。正直な話、杏利は月光の迷宮を舐めていた。まさかここまで危険なダンジョンだとは思わなかった。もしゼドが来てくれなければ、杏利は死んでいる。まさに、地獄を見た気分だ。Aランクダンジョンに挑戦する気が失せたというわけではないが、突入する為に念入りな準備が必要だという事は、骨身に染みてわかった。

「ヒンベルさん。これからもまた、あの迷宮に行くつもりなの?」

「必要な事ですからな」

 月光の迷宮は毎日構造を変える。パープルガーディアンも、三時間ほどすれば復活してしまうのだそうだ。あのダンジョンの難易度は、これからもずっと変わる事はない。

 だが、パルフキュアーを作るには、どうしてもパープルクリスタルが必要になる。だからこれからも、ヒンベルは月光の迷宮に潜り続けるのだ。

「心配されずとも大丈夫。まだヘマをするほど衰えても、ボケてもおりません。それまでにはきちんと、後継者を育てておきますよ」

 それまでは自分以外、誰もあそこには立ち入らせない。本来ならギルドが見張りを立てる事だが、ヒンベルがその代わりをしている。ギルドにも影響力を持つ彼がいてくれるなら、この村は大丈夫だ。

「それにしても、まさか君が来てくれるとはな。いやぁ、ずいぶんと逞しくなった!」

 ゼドは小さい頃、父と共にここに来た事があったらしい。その時、ゼドの父がヒンベルの護衛をしたのだそうだ。

「それで、ここには何をしに? 君は最近あちこちで腕試しをしていると聞いているが、もしかしてパープルガーディアンに挑戦しに来たのか?」

「そうだ。わざわざ満月の夜に到着するよう調整したが、とんだ雑魚だったな。時間を無駄にした」

「ほほう、最強状態のパープルガーディアンを雑魚呼ばわりか。どうやらしばらく見ない間に、恐ろしく強くなったようだ」

 最強状態のパープルガーディアンは、ヒンベルでさえクリスタルの採掘を断念し、逃走を選択するほどだ。それを雑魚のようにあしらえるとなれば、魔王軍と最前線で戦い続けている、大国お抱えの冒険者達に匹敵するか、上回るくらいの強さである。

「それと、ここにはもう一つ、情報を欲して来た」

「情報?」

「ウルベロという超魔がどこにいるか、知らないか?」

 ゼドから尋ねられて、ヒンベルは考える。時々外の情報は入ってくるが、そんな超魔の存在は知らない。昼間現れたのも、バイオラという超魔だ。

「いや、知らない。そのウルベロとかいう超魔が、何かしたのか?」

「……俺は奴を見つけ出して、殺さなければならない。その理由を知れば、あんたは俺を止める。だから、言わない」

 どうやらゼドは、ウルベロという超魔を捜しているらしい。ヒンベルは理由を訊いたが、ゼドは話そうとしない。

「……詳しい詮索はしない。君も子供じゃないからな。だが、わしは大魔導師だ。魔法とはすなわち、精神の力。この力をある程度極めると、読心魔法ほどではないが、相手の感情が読めるようになる」

「……何が言いたい?」

「……君の心に、とても強い憎しみの色が見える」

 何があったのかはわからないが、ゼドはウルベロをとても強く憎んでいる。ヒンベルには、それがわかった。

「どうしても気になるなら、読心魔法を使って俺の心を読めばいい」

「言ったろう。詮索はしないと。だが、一人で何でも背負わないで欲しい。つらい時は頼ってくれ」

「……余計な世話だ」

 ゼドはどこかに行こうとする。杏利はそれを、慌てて呼び止めた。

「どこに行くの?」

「宿を取るだけだ。俺も疲れないわけじゃない」

 てっきり村を出ていってしまうのだと思って、杏利はホッとした。ゼドのあの実力なら、夜も普通に出歩けるだろうから恐ろしい。

「しかし、何があったんじゃろうなぁ……」

「昔はあんな子じゃなかったんですが……」

 村長とヒンベルは不安そうに言った。 彼らは立場上、この村を動けない。だからゼドの故郷に行きたくても、会いに行けなかったのだ。それだけでなく、村人全員に極力村から出ないよう言っている。魔王軍を恐れてだ。だから基本的に外から情報が入ってくるのを待つしかないし、ゼドと会ったのも五年ぶりだったりする。

「五年の間に何かがあったか……」

 エニマは予想を付ける。それしか考えられない。

「……」

 杏利はゼドが向かった方角を見ていた。



 宿を取ったゼドは、与えられた部屋でくつろいでいる。


コンコン


 が、しばらくすると、誰かがドアをノックする音が聞こえた。ゼドは立ち上がり、ドアを開ける。

「……お前か」

 ドアの外に立っていたのは、杏利だった。もう夜も遅いし、彼女も宿を取ったのだ。エニマは部屋に待たせている。

「何だ」

「実はあたし、あんたを捜してたの」

「腕試しが目的か?」

「……うん。よくわかったわね」

「簡単な推測だ」

 ゼドは月光の迷宮突入前に、村長から杏利についてある程度情報を得ている。情報が正しければ、自分を雇ったりする必要はないだろう。自分の力が必要なほど、弱い人間には見えない。ならば、自然と腕試しが目的なのだと推測出来る。

「朝になってからでいいから、あたしと戦って欲しいの」

 ゼドもまた、伝説の聖槍が選んだ異世界の勇者というのには興味があった。

 実際に見るまでは。

「断る。あの程度の雑魚にも勝てないお前など、話にならない」

 会ってみて、ゼドは杏利にがっかりした。七百年前魔王グライズを倒した勇者は、まさしく世界最強の実力者だと聞いていたが、杏利はパープルガーディアンにすら勝てない、世界最強とは程遠い女だった。

「そんなの、やってみなきゃわからないじゃない! 相性っていうのもあるし!」

「……相性か……」

 必死に食い下がる杏利を見て、ゼドは考える。確かに、相性というものはある。杏利も巨大なモンスターよりは、人間サイズの相手と戦った方がやりやすいだろう。

「一理ある。わかった。明朝だな?」

「うん。それで、あたしがあんたに勝ったら、何であんたがウルベロっていう超魔を追ってるのか教えて欲しいの」

「なぜ教える必要がある?」

「あたしも魔王と戦ってるからよ。敵の情報が欲しいわ」

 本当は純粋に興味があったからなのだが、ここでゼドの機嫌を損ねるのはまずい。

「……勝てたらな」

「その代わりにあたしは」

「いい。お前のような女から何をもらおうと、不快なだけだ」

 ゼドは杏利とこれ以上話をしたくないようで、バタンと扉を閉めてしまった。



 自分の部屋に戻ってきた杏利。

「何よあいつ!! 感じ悪いったらありゃしない!!」

 ゼドの対応に、相当ご立腹だ。

「杏利。お前本気か? 奴の力を見ただろう」

「もちろん本気よ」

 エニマはやめるべきだと言ったのだが、杏利はやると言って聞かない。

「見てなさい! 絶対ぎゃふんと言わせてやるんだから!」

「こっちが逆にぎゃふんと言わされなければいいがの」

 杏利は絶対にゼドに勝つと意気込んでいたが、エニマは不安だった。



 明朝。杏利とエニマ、そしてゼドは、ヒンベルがよく魔法の修練に使っているという裏山を使い、決闘を行う事になった。ちょうど開けた場所があり、修練にも決闘にもうってつけだ。

「いつでもいいぞ。かかってこい」

 完全に杏利を下に見ているゼドは、挑発してきた。

「それじゃあ遠慮なく……!!」

 杏利は自分が出せる最大の速度で突撃し、ゼドを斬りつけた。対するゼドは、刀すら抜かず、右によける。杏利はすぐ横薙ぎに一閃、払うが、ゼドは一歩、軽く飛び退いてエニマの射程距離から出る。

「……!!」

 進みながらゼドを射程距離に入れ、攻撃を繰り返す杏利。だがその度にゼドはかわし、射程距離から出てしまう。

「逃げるだけ!? その腰に提げてる刀は飾りかしら!?」

「コフィラナ!!」

 杏利は挑発し、エニマが巨大な氷塊を放つ。

 しかし、ゼドは拳一発でコフィラナを破壊した。

「必要があれば抜く」

「……今のは抜かせられると思ったんだけど……」

 魔法を使えば、ゼドに刀を使わせられると思っていた。だが、魔法を使ってなお、ゼドは素手で対応してみせたのだ。しかも、正面から殴り砕くという方法を使って。杏利並みか、それ以上の馬鹿力である。

「だったら……!!」

「バニス!! スパルク!! コフィル!!」

 杏利の意思を読み取ったエニマが、魔法を使う。ただし、使うのは下級魔法だけだ。とはいえ、質の低い魔法ほど連発が容易になる。エニマは自分の、ひいては杏利の周辺から火球、電撃、氷塊を次々と放ち、弾幕を張ったのだ。

 さすがに数が多すぎる為、ゼドはそれをかわしきれず、仕方なく徒手空拳で防ぎ、弾き、捌いている。魔法をこんな風に防げるというのは、相当頭がおかしい話ではあるが、魔法でダメージを与える事が目的ではない。

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 魔法を唱えているのはエニマだ。杏利は何の問題もなく行動出来、ゼドを攻撃出来る。本命はこっち。杏利の攻撃を当てる事だ。

「っ」

 ゼドはようやく刀を抜き、杏利の攻撃を防いだ。杏利はそのまま何度も打ち込み、ゼドはそれを防ぎ、強い力が衝突した反動で二人が離れる。

「昨日も思ったけど、すごいわねその刀。それも何か、伝説の武器とかだったりするの?」

 さっきから叩き折るつもりで打ち込んでいるのに、ゼドの刀は刃こぼれすらしない。昨日パープルガーディアンと戦った時も、エニマでも通常状態では破壊出来ないボディを易々と斬り裂き、攻撃を防いだりしていた。ただの武器とは思えない。

「無銘だ」

「……えっ?」

 ところがゼドは、自分が使っている刀は特に名のある名工が打ったわけでもない、無銘の武器であると答えた。

「無銘の武器がそんなに頑丈なの?」

「魔力を流し込めば、どんな武器だろうと強化出来る」

「魔力を流し込むだと? お前、魔法剣士か!」

 エニマはゼドが魔法を使う剣士、魔法剣士である事を見抜く。

 ゼドの故郷、イルボートは、魔法と武術を組み合わせた、独自の戦闘法を持つ者達が作り上げた里である。ゼドもまた里に住まう者達の例に漏れず、魔法と武術の達人だ。

 魔法剣士はただ魔法と剣技を使うというだけでは呼ばれず、魔法と剣技を極めた者が名乗る事を許されると言われている。魔法剣士の基礎技術と言えるのが、魔力を流す事による武器の強化だ。この技術があれば、強い武器がなくても強敵相手に渡り合える。

 また自身の魔力を操る事で、簡易的な身体能力強化も行えるのだ。本場の身体能力強化魔法ほど、劇的な強化ではないが、自分の意思でいくらでも調節が出来るし、タイムリミットも飛躍的に長くなる。パープルガーディアンとの戦いでは、それを使ったのだ。

「わかるか。俺は俺自身の力で戦っている。お前のように、強い武器に頼っているわけではない。半端で弱いやつほど、強い武器を使いたがる。名のある武器に頼るのは、自分の強さが限界に達した時だけだ」

「……つまりあんた、あたしが弱いって言いたいの?」

「弱い。お前は降って沸いたチャンスに浮き足立っているだけの、弱く哀れな雑魚だ」

 即答。そして断言。相性など関係なく、ただただ弱い。その言葉に、杏利の怒りは怒髪点を突いた。

「っざっけんなこのカス野郎!!!!」

 どこまでも自分を下に見ている。杏利はそれが許せなかった。

 ここで、エニマの加護がさらにグレードアップし、杏利の能力が五倍になる。目にも止まらぬ速度で動き、ゼドを攻撃した。だがゼドは、甘いと言わんばかりに刀で攻撃を止める。加護が強化されたにも関わらず、ゼドにダメージを与える事が出来ない。

 しかし、さすがに今までほどの余裕はなくなっていた。刀で防いでいるのが、その証拠だ。ゼドは必要な時以外、刀を使わない。刀を使わなければならない攻撃を、杏利が繰り出しているという事だ。

「さっきよりはマシになった。だが……」

 ゼドは一度距離を取る。

 さっきも言った通り、剣に魔力を流し込んで強化するのは、魔法剣士の基礎技術だ。ここでゼドは早く戦いを終わらせる為、基礎の先、応用技術を見せる事にする。

 今ゼドが刀に流し込んでいるのは、ただの魔力。魔力は属性を持たせる事で、様々な属性の魔法へと変化する。では刀に流し込まれている魔力に、例えば火属性を持たせると、一体どうなるか。

「炎の、剣……!!」

 答えは簡単。刀身が燃える。杏利は目の前で起きている現象に驚愕した。

 これが、魔法剣。火属性の魔力を乗せれば刀身は燃え上がり、水属性の魔力を乗せれば水を纏う。魔法剣士が魔法剣士と呼ばれる由縁の技であり、これが出来るようになって初めて一人前になる。

「さっさと終わらせるぞ。ファイアーソード」

 ゼドは火属性の魔法剣、ファイアーソードを発動させた刀を振るい、炎の刃を飛ばしてきた。

「うっ!!」

 それをかわす杏利。直後ゼドが接近し、攻撃を防ぐ杏利。

「サンダーソード」

 今度は刀に雷属性の魔力を乗せ、雷属性の魔法剣、サンダーソードを発動する。

「ああああああああああああっ!!!」

 雷は金属であるエニマを伝わり、直接杏利を攻撃する。エニマの加護を纏っていてもダメージを受ける雷。ゼドの魔力は恐ろしく高い。またゼドも魔力の扱いに長けているので、自分の雷で感電するなどという事はない。

 力を失って崩れる杏利を、蹴り飛ばすゼド。

「……リカイア!!」

 杏利は回復魔法を唱えて、ダメージを回復させる。

「エニマ。ガンゴニールストライクよ」

 ゼドは強い。強すぎる。いつでもこちらを一撃で仕留められるこの男を相手に戦闘が長引けば、敗北は必至だ。ならば先に全力の一撃を当てて、短期決戦で倒すしかない。

「それしかなさそうじゃな……」

 バリアを張るエニマ。

「「ガンゴニール、ストラァァァァァァァイクッ!!!」」

 そして、ゼド目掛けてガンゴニールストライクを放った。

「……」

 対するゼドは、正眼の構えを取る。するとゼドの前方に、赤、青、緑、茶の四つの魔力の塊が出現した。ゼドの刀も、黒い魔力を纏う。赤は火属性。青は水属性。緑は風属性。茶は土属性。そして黒は、闇属性だ。

 次の瞬間、四つの魔力塊から、魔力の奔流が放たれ、バリアに直撃。そのまま、バリアを消し飛ばした。

「!!」

 ゼドはその瞬間に接近し、杏利の刺突を回避しながら、刀を一閃。エニマの柄を真っ二つに斬り裂き、破壊した。それから、杏利の顔面を殴り飛ばす。

「エグザリオン家に伝わる魔法剣の奥義、四魔一刃しまいちじんだ。これを使わせただけ上等といったところだな」

 四魔一刃。四つの魔力の奔流で相手の防御を剥ぎ、刀の一閃で仕留める。エグザリオン家の奥義の一つであり、これを使う事になるとはゼドも予想外だった。

 だが手加減していた。ゼドがその気なら、杏利はエニマごと真っ二つにされている。最後の拳は、手加減していた事の証明である。

「理解出来たか? お前の力はこの程度だ。お前は弱い。俺と戦う資格すら、ありはしない」

 四魔一刃を使った理由は、ガンゴニールストライクを破る為である。他に理由はない。つまり、ガンゴニールストライク以外は、ゼドにとって脅威になり得ないという事なのである。

「時間を無駄にした」

 ゼドは刀を納め、どこかに旅立っていく。

 去っていくゼドの姿を見ながら、杏利は理解した。これが敗北なのだと。元の世界で負けなしを誇っていた杏利が、実力でも気概でも完全に打ちのめされた。

「……っ……!」

 悔しい。悲しい。生まれて初めて経験する敗北に涙を流しながら、杏利は意識を手放した。

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