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五滴目  譲渡種、伝染種。&眷属を追う公安十三課。

眷属の種類とそれを追う組織。

解説回です。

「おめでとうございます。今日から貴方は高位眷属です」




パチパチパチ——————————


突拍子も無い杉野の発言の後に、椎名は無表情のまま小さな手を打ち鳴らした。


「え、何。このシュール映像。ド、ドッキリか、なんか?」


間に耐え切れず、小牧が呟く。

すると杉野が首を横に振って否定の意を露わにした。


「そんな事ございません。マジもマジ。大マジでございます。この短い時間で貴方を特定するのは結構骨が折れましたが、それはそれ。もし証拠が欲しいと仰るのなら、そちらの窓からそっと電柱の影をご覧ください」


そう言われて、小牧はちらりと窓の外を見た。


そこにはベージュのトレンチコートを着た若い男が、牛乳とあんパンを手に持ちながら、電柱の影立っていた。

手に持った食事をしながら、モゴモゴと口を動かす。

そして定期的に小牧の部屋の方を確認していた。


「警視庁公安部十三課の前園警部補です。東大文一、つまり法学部を次席で卒業したエリート候補生。キャリア組の一人です。ほら、室井さん的な方です」

「あぁ、あっち側ね」

「はい。幼い頃から刑事モノに目がなく、憧れだけで入庁したところまでは素晴らしいのですが、その想いが強すぎて現場で七転八倒する、所謂【イタいタイプ】の刑事です。なんで性格は青島さん寄りでしょうかね。今は現場研修中で、二人組バディで【連続男子強姦事件】の捜査中で、貴方を張り込んでる最中のようです」


そこまで説明を受けると、小牧の頭の中に三つの疑問が浮かんだ。


「え?なんでそんなに詳しいの?おっさんも警察?」


一つ目の疑問をぶつけると、杉野はいいえ、と首を横に振った。


「私たちは、とある喫茶店の従業員です。まぁ、その話は置いておいて、貴方の疑問にお答えしましょう。私が前園警部補の事について詳しいのは、【彼らが私たちに詳しいから】です」


杉野は紳士的に人差し指を立てて、続けた。




*******




「彼ら警視庁公安部十三課は、いわばタイマ系の部署です」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・大麻」

「違うよ〜、ユカリン?それは言っちゃダメなヤツでしょ〜。そうじゃなくて対魔系。まぁ、退魔系でも良いかな?」


杉野は、椎名の突然の発言を優しく諭しながら、説明を続けた。


「とにかく、我々、そして貴方のような眷属や、その他の法では扱えないような事を専門に扱う部署で、良く事件で鉢合わせになったり、時としてガチンコ勝負をしなければなかったりと、腐れ縁の間柄なのです。だから自然と情報は入って来るし、仲も良くなります。向こうはどう思っているか分かりませんが」


そこで杉野は肩を竦めて、両の掌を上に向けた。

小牧は二つ目の質問をぶつけた。


「さっきから、眷属って言ってるけど、何それ??」


すると待っていたかと言わんばかりに、身振り手振りを大きくして、杉野は答え始めた。


「眷属とは何か!?良い質問です!!それがこの話の始まりでもあり、私や貴方の堕ちた先!!魑魅魍魎発、妖異玄怪経由、修羅神仏着の、異類異形で妖異幻怪な百鬼夜行の総大将!!大トリを飾るのが!!あっ♪眷属われわれな〜の〜で〜すぅぅぅぅぅ!!♪」


歌舞伎のように大見栄を切りながら、ポーズをとる杉野に、「よっ」と感情のない声で合いの手を入れ、紙吹雪を散らす椎名。

彼らと自分の間に、かなりの温度差を感じながら、小牧は「お、おう」と呟いた。


「失礼。取り乱しました」


すぐさま自分を取り戻し、ごほんと喉を通し紳士的になる杉野。


「つまり眷属とは、吸血鬼。ヴァンパイアの事です。その中でも貴方は高位眷属、【ヘル・ヴァンパイア】と呼ばれるのが我々、【譲渡種】です」

「譲渡種?」


それに頷き、肯定の意を示す椎名。


「・・・・・・・・・・譲渡種は、力を渡す種族。伝染種は、力を移す種族・・・・・・・・・・・・・・・・」


そう呟くと、杉野が椎名の頭をポンポンと叩き「はい、良く出来ましたぁ。花マルです」と優しく声を掛けると、椎名は「・・・・・・花、・・・・・・マル、」と嬉しそうに頬を赤くした。


「譲渡種は、持っている異能力チカラを他者に譲ってしまうと、自分は普通の人間に戻ってしまいます。その分、普通の【ヴァンパイア】つまり【伝染種】よりも、強力な異能力を持っているのが通常です。我々(ヘルヴァンパイア)には、こういった紋章が、身体のどこかに浮き出ます」


そう言うと、杉野は腕の内側を、椎名はフリフリの靴下を脱いで、足の甲を見せた。

それを見て、小牧は昨夜、女に口付けをされた首筋を触った。


「そうです。貴方の首にあるその紋章です。伝染種は、漫画やアニメのように、首筋にガブリ。代わりに自分の血を与え、相手の血を穢す事によって仲間を増やします」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・血吸いは、下衆」

「そう、我々は奴らを【血吸い】と蔑称せざるを得ません。ゲスのやり方です。我々は、異能力を手に入れても理性が効きます。しかし奴らは、欲望や本能が刺激されて我慢出来ないようです。十三課の方達は、そんな相手とやり合っているうちに、私たちを一緒くたにしてしまったようです。全く以ってイイ迷惑です」


そこで杉野はもう一度、肩を竦めて両の掌を上に向けた。


「だから我々は日夜奴らと闘い、『自分たちは人間の敵では無い』と宣伝活動に打ち込んでいるのです!!そして、貴方もそれに選ばれました!!おめでとう!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぱんぱかぱーん」


どこから出したか分からないクラッカーを取り出し、二人が小牧に向かって同時に引く。


と、その時。

椎名が、ピクリと何かに反応した。




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ヤツらが、来る」

次回

バトル回を予定。

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